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ボンドの効果 ―法と経済学による分析― 桑名謹三 法政大学政策科学研究所
法と経済学会2009年全国大会資料 2009年7月5日 ボンドの効果 ―法と経済学による分析― 桑名謹三 法政大学政策科学研究所 URL: 2009年7月5日 ボンドの効果 ―法と経済学による分析―
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ボンドとは 企業が生産活動に伴い第三者に損害を与えたとき その損害のうち損害賠償法に基づき企業に責任があると認められた金額を
企業が債務不履行に陥った場合に 企業に代わって保険会社が被害者に保証金を支払う 保険会社が行なう保証で保証証券と呼ばれる 2009年7月5日
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責任保険とは 企業が生産活動に伴い第三者に損害を与えたとき その損害のうち損害賠償法に基づき企業に責任があると認められた金額を
ベースにして算出した保険金を企業に代わって保険会社が損害を被った第三者に支払う保険 したがって、損害賠償法の内容に保険金支払いが影響を受ける 2009年7月5日
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なぜ強制化なのか 加害者が賠償資力不足の場合は十分な被害者救済が不可能となる
被害者救済上の問題:1960年代の考え方 日本における政策事例:自賠法や原賠法など 加害者が賠償資力不足の場合に加害者の防災行動が社会的に最適な水準から逸脱する 資源の最適配分上の問題:1980年代以降の考え方 日本の政策にはこの考え方はないが、海外では常識となっている 厳格責任の方が、過失責任より賠償資力不足の影響を受けやすい 2009年7月5日
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海外における事例 ドイツでは、一定以上の規模の事業場については、環境リスクをカバーする責任保険が強制化されている。
スウェーデンでも同様の強制付保化政策が実施されている。国が保険者となっており、カバーはボンドに近いものである。 米国のCERCLAやOPAではボンドも金融保証の一つとして認められている。 オランダの土壌汚染浄化のためのファンド(COFIZE)はボンドと同様のカバーである。 2009年7月5日
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研究の目的 ボンドと責任保険の比較分析 先行研究と異なるモデルの使用 無限カバーの効果 有限カバーの効果 モラルハザードの特徴
強制化政策実施時に留意すべき事項 2009年7月5日
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先行研究(Shavell, 1986)の内容 賠償資力不足の企業が選択するリスクは最適レベルより大きくなる。
賠償資力不足の影響は過失責任の方が厳格責任より小さい。 企業の資産が大きくなるほど選択されるリスクは小さくなる。 企業の資産が一定レベル以上になると選択されるリスクは常に最適値となる。 完全情報下で企業が十分大きな保険金額の責任保険を購入すれば選択されるリスクは最適値となる。 不完全情報下ではリスクは最適化されない。 2009年7月5日
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先行研究(Shavell以外)の内容 ボンドを分析した研究は存在しない。 使用されるモデルはShavellのものをベースとしている。
不完全情報下のみの分析。 リスクのモニタリングを工夫することによって、リスクを最適化できる。 Polborn(1998):ボンド型カバーではモラルハザードは生じない。 2009年7月5日
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賠償責任のルール 厳格責任 企業の過失の有無にかかわらず企業は損害賠償責任を負わされる 過失責任
企業の過失の有無にかかわらず企業は損害賠償責任を負わされる 過失責任 企業に過失がない場合は、企業は損害賠償義務がない。具体的には、企業が最適なリスク以下のリスクを採用していた場合に無責となる。 2009年7月5日
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モデル 企業の利潤: リスク: てん補金 保険: ボンド: プレミアム(完全情報): プレミアム(不完全情報): 実てん補金:
保険: ボンド: プレミアム(完全情報): プレミアム(不完全情報): 実てん補金: 2009年7月5日
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モデル 有事故時資産 無事故時資産 賠償資力があるときの期待資産 賠償資力がないときの期待資産 2009年7月5日
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主要な仮定 事故があるときの資産は、ある v の値までは正で、それを超える v のときは負である。
賠償資力不足のときの期待資産は、ある vのとき最大値をとり、その値未満の v においては増加関数、その値超の v においては減少関数である。 2009年7月5日
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企業の最適化行動 事故があった場合の資産を正にするという制約条件の下、賠償資力がある場合の期待資産を最大化する v を求める
2009年7月5日
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ボンド・保険無の場合の資産・期待資産 2009年7月5日
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分析の手法 てん補金、実てん補金がvに依存しないものとして解析的な分析を行った。
この場合の確率関数は、環境工学で用いられる対数正規分布のものを採用した。 2009年7月5日
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関数の特定化 価格: 費用関数: 有害物質制御費用関数: 損害額関数: 2009年7月5日
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関数の特定化 確率関数: ただし 2009年7月5日
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ボンド・保険無しの場合の初期資産とリスク
2009年7月5日
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Shavellモデルにおける資産とリスク
2009年7月5日
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分析結果(完全情報・無制限カバー) ボンドは企業に手配のインセンティブを与えない(解析)
企業がリスク中立者でなければリスクは最適化されない(解析) ボンドを政策として使用する場合には強制化が必要 2009年7月5日
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分析結果(完全情報・有限カバー) 実てん補金は同額の資産とほぼ同じリスク抑制効果がある(解析)
実てん補金が負となる場合が存在し、その場合は強制化によって企業が選択するリスクが高くなってしまう(解析) 2009年7月5日
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実てん補金・初期資産とリスク 2009年7月5日 法と経済学会2009年全国大会資料 2009年7月5日
ボンドの効果 ―法と経済学による分析―
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考察(完全情報・有限カバー) 保険の場合、保険条件を変えることによって実てん補金を負にして期待利潤を増加させることができる
完全情報下のモラルハザードが発生する可能性がある 強制付保化政策は保険条件も規制しなければ政策の目的を達成できない 企業の資産が大きい場合ボンドの方がプレミアムは保険より小さくなる 2009年7月5日
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分析結果(不完全情報) ボンド(厳格・過失責任)の場合はプレミアムモラルハザードが発生する(解析)
保険(過失責任)の場合もプレミアムモラルハザードが発生する(解析) 保険(厳格責任)の場合はモラルハザードヘブンが発生する場合がある(数値) 2009年7月5日
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ボンドの効果 2009年7月5日
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責任保険の効果 2009年7月5日
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考察(不完全情報の場合) ボンドの場合は責任のルールにかかわらずモラルハザードはプレミアムモラルハザードに限定される
プレミアムはボンドの方が保険より小さい プレミアムモラルハザードの程度もボンドの方が保険より小さい モラルハザードヘブンの活用方法を検討する必要がある 2009年7月5日
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まとめ 環境リスクのような複雑なリスクについては次の点においてボンドの方が責任保険より優れている 完全情報下のモラルハザードを回避しやすい
プレミアムモラルハザードの程度が小さい プレミアムが小さく企業の負担が軽減される コントロールするリスクの複雑さに応じてボンドと責任保険を使い分ける必要がある 2009年7月5日
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