Presentation is loading. Please wait.

Presentation is loading. Please wait.

”生まれつき”なのか ”病気”なのか ~そしてどう治すのか~

Similar presentations


Presentation on theme: "”生まれつき”なのか ”病気”なのか ~そしてどう治すのか~"— Presentation transcript:

1 ”生まれつき”なのか ”病気”なのか ~そしてどう治すのか~
稲垣貴彦 滋賀県立精神医療センター 滋賀医科大学精神医学講座  第63回近畿学校保健学会 at 滋賀医科大学

2 利益相反の開示 演者は以下の団体からの資金提供を受けている。 滋賀県(寄附講座所属)
本発表と直接関係はないが、                                           演者は以下の団体からの資金提供を受けている。 塩野義製薬(受託研究) JA共済(研究助成) 大塚製薬(奨学寄附) 滋賀医学国際協力会(研究助成)

3 不登校はあるとき始まるものである

4 文部科学省(2010)によると 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」 平成23年8月4日文部科学省
文部科学省(2010)によると 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」   平成23年8月4日文部科学省

5 文部科学省(2010)によると 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」 平成23年8月4日文部科学省
文部科学省(2010)によると 「平成22年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」    平成23年8月4日文部科学省 つまり。          多くの場合           思春期の不登校は               「ある時」               始まるものである

6 心の成長曲線を考えてみる

7 子どもだと成長曲線はこんな感じ

8 発達障害の子どもだって精神病になる

9 不登校の成り立ちを検討する

10 文部科学省(2014)によると 「不登校になったきっかけと考えられる状況」 ~平成25年度児童生徒の問題行動など生徒指導上の諸問題に関する調査~ 平成26年10 月16日文部科学省
中学生・高校生最多は 無気力

11 どこで躓いているのか 朝起きる 朝食をとる 身支度する 家を出る 駅・バス停に向かう 電車・バスに乗る おりて学校に向かう 校門を くぐる
校門を  くぐる 校舎に入る 教室に入る 友達と しゃべる 先生と しゃべる 授業を  受ける クラブに 出る 帰る 宿題をする

12 朝が起きられない 寝付きが悪い 夜に何かしている 睡眠の問題(睡眠不足) ほとんどの精神疾患で寝付きが悪くなります
寝付きが悪いから何かをしている場合があります。 布団に入ったら眠れるのかそうでないのかを確認することが大事です

13 朝が起きられない 厳密には起きられないのではなく、起き上がれない 全身倦怠感の問題 抑うつエピソードに特徴的な症状です
普通はそれでも我慢して起きようとするので、                    それすらできないぐらいだるい結構重症な状態です。

14 家を出ることができない 意欲がない 出るのが怖い 家を出たくない 「無気力」に相当する症状です 「不安」に相当する症状です
抑うつエピソード、統合失調症でよく見られる症状です 出るのが怖い 「不安」に相当する症状です 抑うつエピソード、統合失調症でよく見られる症状です。               不安障害の可能性も考えます。いずれにしても治る病気です。

15 学校や教室に入ることができない いじめられる・友達とうまくいかない 入ろうとすると何が起こるのかを確認する
いつからいじめられ始めたのか、いつから友達とうまくいかないのか                          精神疾患のほとんどが対人能力を低下させるので、                                   発症すると友達とうまくいかなくなりますし、いじめられやすくなります。                                                 精神疾患であれば、治療すれば治ります。                                              いじめられなくなりますし、友達との関係も回復します。 恐怖感が襲ってくる。冷や汗が出て、動悸が止まらず、過呼吸になる 「不安」に該当する症状です                                                   抑うつエピソード、統合失調症でよく見られる症状です                       不安障害と可能性も考えます                                                 いずれにしても、治る病気です。

16 友達としゃべることができない 先生としゃべることができない
の説明をする前に。

17 頭が回らない状態です 思考制止 授業が頭に入ってこない 宿題ができない 抑うつエピソードに特徴的な症状です
無理に動かそうとすると、                  どんどん悪化します。 治療で治るので、 治るまでは休息をとるのが基本です。 多くの場合「無気力」に該当する症状です。

18 友達としゃべることができない 先生としゃべることができない
思考制止で実は説明がつきます。 頭が回らないので 何を話したら良いのかわからなくなる 相手の言っていることが頭に入ってこない 話をすること自体がおっくうになる 「無気力」に該当する状態になります

19 私の臨床経験において 稲垣貴彦 滋賀県における試み 精神科、28(4): , 2016

20 基礎解析 対象:平成24年1月から平成26年9月にかけて滋賀医科大学精神科思春期青年期外来を受診した不登校の学童生徒(18歳以下)
不登校の  患者数 120名 (男子58名 女子62名) 年齢 平均14.8歳(SD=2.16、中央値15.0)  対象年齢が10歳~24歳のため10歳未満の児童はほとんどいない 初診時GAF 平均31.3(SD=6.33、中央値32.0) 治療途中の 転医       あるいは中断 30例

21 診断の内訳 注:診断の定義 DSM-IV-TRの各章毎に分類(例:1章 発達障害、5章 精神病性障害)
 ただし6章気分障害に関してはうつ病性障害と双極性障害に細分化

22 不登校の原因と考えられる診断の内訳 注:診断の定義 DSM-IV-TRの各章毎に分類(例:1章 発達障害、5章 精神病性障害)
 ただし6章気分障害に関してはうつ病性障害と双極性障害に細分化

23 不登校離脱率 不登校離脱率 観察期間 69.5% Kaplan-Meier 法による不登校離脱率の計算

24 不登校離脱に影響を与える 因子の探索 Cox比例ハッザード回帰分析(ステップワイズ法) 結果 有意な説明変数 β SE(β) p
不登校離脱に影響を与える           因子の探索 Cox比例ハッザード回帰分析(ステップワイズ法) 対象:120例全例 目的変数:不登校離脱と最終診断からそれまでにかかった時間 説明変数:年齢・性別・初診時GAF・診断変更の有無・診断変更までの期間・ 最終診断 結果 有意な説明変数 β SE(β) p 相対リスク(95% 信頼区間) 初診時GAF 0.033 0.020 N.S. 1.034(0.994~1.075) 年齢、性別、診断内容は不登校の経過に有意な連関を認めなかった AIC=551.0 単回帰分析:N.S. 不登校離脱率 発達障害なし:71.3% どのような重症度であったとしても、どのような診断であったとしても、その診断に基づく適切な治療が行われれば、約70%の患者は8ヶ月以内に不登校から離脱する。 発達障害あり:64.0% 観察期間

25 本邦の不登校の児童に対して、 うつ病の診断が適切にされていないのではないか
考察1 当科の診断は先行研究で呈示された疾患割合と大きく異なる。 当科での疾患割合は文部科学省の呈示した不登校の原 因を説明するのに矛盾がない。 うつ病の主要症状に「興味・喜びの著しい減退」や「思考力・集中力 の減退」がある。これは文部科学省の呈示した不登校の原因のうち 「無気力」「学業不振」そして「対人関係の問題」を説明するのに十 分である。 我々は危惧する 本邦の不登校の児童に対して、                                     うつ病の診断が適切にされていないのではないか                           

26 発達障害が治療抵抗因子として 過剰評価されているのではないか
考察2 当科では20名の患者に対して発達障害と診断している。 しかし、そのうち発達障害が直接不登校の原因になっていたのはたったの3名 であった。 当科での治療経過において、発達障害を有していた患者は、                       有さない患者と比較して有意差がなかった。 したがって、                                       発達障害は治療抵抗因子ではないと考える。 我々は危惧する。 発達障害が治療抵抗因子として                  過剰評価されているのではないか                  

27 子どものうつ病への                    対応について検討する

28 有病率 自閉スペクトラム症:1.5% 注意欠如多動症:大体5% うつ病(大うつ病性障害):女子の12%、男子の7%
統計によって差が大きい。診断技術の差なのか文化の差なのか結論は出ていない。 うつ病(大うつ病性障害):女子の12%、男子の7% 16歳までにうつ病を経験する。 IACAPAP TEXT BOOK 自閉スペクトラム症があると うつ病の有病率:70%(50%は反復性) Lugnegård T, Res Dev Disabil. 2011 注意欠如多動症があると うつ病に3.9倍なりやすくなる Fayyad J, World Health Organization Survey, 2007

29 うつ病の発生する割合 16歳で成人と同じ割合になる 12歳頃から発症が増え始める Hasin. 2005

30 うつ病を治療すると IACAPAP TEXT BOOK 2014

31 Interruption Of Development 子どもは早く治さないとこじれる

32 滋賀医大の実情に戻りますが 滋賀医科大学を受診した不登校の子どもの、発症から受診までの期間は
リハビリテーションが絶対に必要なんです これには薬は効かない 白血病の子どもが、1年入院して最終的に骨髄移植して、ようやく寛解 さぁなおった!と学校に行ったとして。 まともに適応できるでしょうか? 半年間で病気が治ったとしても2年近くは発症から経過することになる 滋賀医科大学を受診した不登校の子どもの、発症から受診までの期間は 平均 21ヶ月 中央値 12ヶ月

33 子どものうつ病に対する薬物療法 有効性と安全性が最も確認されているのは、フルオキセチン エスシタロプラム(レクサプロ)
しかし日本では使えない エスシタロプラム(レクサプロ) 6歳から17歳対象のRCTでは無効(Wagner, 2006) 12歳から17歳対象のメタアナリシスでは有効(Bridge, 2007) 他に有効性を示す文献(Emslie, 2009 Hetrick, 2012) セルトラリン(ジェイゾロフト) 有効ではあるが、有害作用も多い(Wagner, 2003) ω3脂肪酸 (エパデール) あまり知られていないが、RCTで有効性が既に示されている(Nemets, 2006) 増強療法で、リチウムや少量の抗精神病薬の追加などは検討できる しかし、これらに関しては十分なエビデンスはまだ存在しない。

34 子どものうつ病に 使ってはいけない薬 三環系抗うつ薬(アナフラニール・トフラニールなど) フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)
無効であるばかりか副作用が多く、使い物にならない(Hazell, 2013) フルボキサミン(ルボックス・デプロメール) そもそも効果に関する研究がされていない。 パロキセチン(パキシル) 無効(Hetrick, 2012) ミルタザピン(リフレックス・レメロン) 単剤では無効(Hetrick, 2012) 増強療法としての使用に関してはまだ可能性を残す。

35 と、薬物療法の解説をしたところでなんですが 結局そんなに薬は効きません しかも
と、薬物療法の解説をしたところでなんですが 結局そんなに薬は効きません しかも Hammad et. al., Arch Gen Psychiatry. 2006;63(3):

36 改善がなければ中等症以上と同じプロトコルへ
NICE(英国)のガイドライン 軽症 4週間の    経過観察 改善がなければ中等症以上と同じプロトコルへ DSM-5における         「軽度」の定義 診断基準を満たすために必要な数以上の症状はほとんどなく 症状の強さは苦痛をもたらすが何とか対応できる程度であり 症状は社会的または職業的機能における軽度の障害をもたらす 不登校である時点で   軽症であることは    ありえない

37 実は薬はフルオキセチン以外 ほとんど使わない
NICE(英国)のガイドライン 中等症 以上 診断と 精神療法 抗うつ薬併用検討 フルオキセチン 診断の みなおし 自殺の リスクが髙ければ 入院 ECT 精神病 症状が あれば 少量の抗精神病薬併用 日本で可能なのは 認知行動療法 対人関係 療法 家族療法 どんな精神療法なのかも             指定されています 治療の主軸を担っているのは                 精神療法 実は薬はフルオキセチン以外           ほとんど使わない

38 不登校に対する認知行動療法+α 本人を対象にする 認知行動療法 家族を対象にする 応用行動分析に基づくペアレント トレーニング
本人を対象にする                  認知行動療法 家族を対象にする               応用行動分析に基づくペアレント           トレーニング 学校に行きたくない子どもを          行く気にさせる               動機づけ面接

39 睡眠の改善に対する認知行動療法 布団に入っている時間と、実際に寝ている時間を記録につけてもらう。 睡眠日誌の作成
①眠れないのに布団に入らないこと 布団の中では寝るだけ。ゲーム・スマホ・漫画などは布団の外で ②日中は寝ても良いから布団の外で(リビングのソファーなど) ③朝日をできるだけ長く拝むこと 睡眠衛生指導

40 本人を対象にする認知行動療法 行動実験 課題: 例…ひとまず学校に行ってみる 予想される困難 対策 自己評価: 点/100
実際にやってもらって、結果どうであったか、を振り返ってもらいます。 行動実験 課題:  例…ひとまず学校に行ってみる 予想される困難 対策 自己評価:   点/100 自己評価:    点/100

41 家族に対する応用行動分析 本人の望ましい行動の「前に」家族が何をしているかのモニタリング
本人の望まれざる行動の「後に」家族が何をしているのかモニタリング 日付 良かったこと どうしてそれが起こったのか 自己評価 点/100 日付 本人の望まれざる行動 その直後の家族の対応

42 認知行動療法を体系的に勉強するために CBTを学ぶ会 定期的にCBTの学習会を開催しています。
定期的にCBTの学習会を開催しています。 CBTを学ぶ会主催の分だけではなく、各地の学習会を紹介していますので、是非ご 覧下さい。 CBT CASE CAMPという合宿も間もなくあります。 7月16日 認知行動療法基礎研修会 7月17日18日 CBT Case Camp(合宿) ちょっと料金が高いですが、CBTのセラピストと仲間になるにはうってつけの会です。

43 学校に行きたくない子どもを 学校に行く気にさせる
学校に行きたくない子どもを                    学校に行く気にさせる 動機づけ面接(原井宏明 方法としての動機づけ面接 岩崎学術出版社 2012) 本人を中心において変化動機を引き出し強化する方法 例えば、「学校に行きたくない」という子どもは沢山いる。 「学校に行くことが望ましい行動である」事を知らない子どもは、ほぼいない。 「学校に行きたくない」気持ちと「学校に行きたい」気持ちの                        両価性(アンビバレンス)の中で複雑に揺れ動いている。 どんなに「学校に行きたくない」と強く主張する子どもでも同じである。 この「アンビバレンス」を探って明らかにし、矛盾を解消する方向に                   子どもが向かうようにしていく。 日本動機づけ面接協会

44 私の今後の活動

45 精神医学の知識が市民の常識になるように 例えば、肺炎になって病院にかかると、抗生剤と解熱剤が処方されて、大 体1週間ぐらいで治る事は誰でも知っている。 同じように、精神的な病気になれば、どのような治療がされて、どれくらい治 るのか、市民の皆さんに知っておいて欲しい。 イギリスでは、NICEガイドラインは12歳以上の人だったら誰でも読めるように平易な文 章で記載されており、Webで公開されていて、それから逸脱する医療は国が許容しな い。もし医者がNICEのガイドラインを知らないと言ったら、それはすさまじい軽蔑の対象 になる。 IACAPAPはIACAPAP TEXT BOOKをウェブ上で公開している。英語が読めれば誰 でも無料で閲覧することができ、発展途上国の臨床教育や市民への啓発活動に活 用されている。 health 現在私達が日本語訳に取り組んでいる。(ご協力をお願いいたします)

46 ご静聴 ありがとうございました

47 滋賀医科大学の現状を振り返る 不登校の患者120名のうち
発達障害の有病率から考えると、もっと紹介されてこないとおかしい 発達障害の診断が、患者を適切な医療につなげる妨げになっている可能性 当科と院外で発達障害の診断が一致したのはたったの3/15 全員生育歴の聴取が不十分で、WAIS、WISCの結果だけで発達障害と言われている。 発達障害の診断が前医でされていた患者:22名(うち当院小児科発達支援外来から7名) 当科でも発達障害の診断がされた者:10名 当科で発達障害が否定された者:12名 発達障害の診断がされた者:20名 発達障害自体が不登校の原因と考えられた者:3名

48 滋賀県の福祉機関が精神医療受診を勧める割合 稲垣貴彦 滋賀県における試み 精神科、28(4):332-337, 2016
滋賀県の福祉機関が精神医療受診を勧める割合 稲垣貴彦 滋賀県における試み 精神科、28(4): , 2016 回答機関の利用者のうち、 受診をしていない者が93% 未受診の利用者の98%に対しては受診を勧めない 78機関から回答を得た。 回答を得た相談機関の利用者数4,701人であった。 そのうち精神医療機関を受診していた者が435人 うち103人は相談機関が受診を勧めた者 既に受診しているのが7% そのうち、回答機関が受診を勧めるのはたったの2%

49 発達障害の子どもだって精神病になる

50 DSM-5では抑うつ障害群として 重篤気分調節症 という病名が新たに加わりました
言語的(例:激しい暴言)および/または行動的に(例:人物や器 物に対する物理的攻撃)表出される、激しい繰り返しのかんしゃく発 作があり、状況やきっかけに比べて、強さまたは持続時間が著しく逸脱 している かんしゃく発作は発達の水準にそぐわない かんしゃく発作は、平均して、週に3回以上起こる かんしゃく発作の間欠期の気分は、ほとんど一日中、ほとんど毎日にわ たる、持続的な易怒性、または怒りであり、それは他者から観察可能で ある。(例:両親、教師、友人) Etc.


Download ppt "”生まれつき”なのか ”病気”なのか ~そしてどう治すのか~"

Similar presentations


Ads by Google