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弓射への力学的アプローチ(その7) 赤門支部 鈴木千輝
弓射への力学的アプローチ(その7) 赤門支部 鈴木千輝 1.目的 (1)昨年に引き続き、押手の伸び、緩みは矢速をどれ だけ加速または減速させるのかを、弓・弦・矢・身体の相互作用を力学モデルに置き換えた弓射シミュレータの計算により考察する。 (2)そのため、力学モデルに弓の粘性抵抗を導入し、矢速の実測値とシミュレータの計算値を比較し、モデルの精度を高める。
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2.検討テーマ (1)「エネルギー転換率」を定義する。
(2)井出氏によるカーボン伸弓14Kgf(以降CB14と略記)についての発射台を用いた矢速実測データから、現実の「エネルギー転換率」を求める。 (3)実測に使った弓(CB14)を力学モデルに置き換える。 その際、モデルに弓の粘性抵抗を導入する。 (4)弓射シミュレータによる計算により、「エネルギー転換率」を変化させる要因を明らかにする。 (5)その上で、押手の伸び、緩みの矢速への影響を、弓射シミュレータの計算により求める。
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3.エネルギー転換率とは?
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4.現実のエネルギー転換率 課題:エネルギー転換率はどんな要因できまるのか?
弓になした仕事(J) 矢速(m/sec) 引きの大きさ(cm) 矢の運動エネルギー(J) エネルギー転換率100% 80% 60% 40% 20% 矢26g 矢35g カーボン伸弓14Kgf・押手不動(データは井出氏の測定による)
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5.力学モデル(1) 弓の静的特性の力学モデル計算値と測定値はほぼ一致
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6.力学モデル(2) ・次の式で力学モデルに弓の粘性抵抗を導入 ・記号の意味
Mi,j :弓の曲げモーメント Me i,j :弾性による曲げモーメント Mri,j :粘性による曲げモーメント Eb :弓のヤング率 Rb :弓の粘性抵抗率 Ii :弓の断面二次モーメント Crvi,j :弓の曲率 Coi :弦を張らない状態の弓の曲率 Δt :計算の時間間隔 添字i,j :弓のポイント i および 時刻 j を表す
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7.力学モデル(3) 竹弓並17Kgfの粘性抵抗測定例 (詳細は平成16年度生弓会報を参照のこと)
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8.力学モデル(4) ・次の式で力学モデルに弦の粘性抵抗を導入 ・記号の意味 τi,j :弦の張力
τei,j :弾性による弦張力 τri,j :粘性による弦張力 εi,j :弦の歪 Es :弦の弾性係数 Rs :弦の粘性係数 Δt :計算の時間間隔 添字i,j :弦のポイントi および 時刻jを表す
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9.力学モデル(5) 弦(飛翔弦伸寸1号)の粘性係数測定値 (弦に錘を吊るしてたたき、その振動減衰から測定)
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10.エネルギー転換率の変化要因
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11.エネルギー転換率の測定値と計算値の比較 Rs=150Ns、Rb=1.3*108Ns/㎡とすると測定値と計算値はよく一致する。
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12.弓になした仕事のエネルギー収支(計算値)
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13.エネルギー分配率(計算値再掲)
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14.押手の伸び・緩み効果(1) ・身体系計算モデル
井出氏の行射中の身体の振動測定によると、手首の振動が大きい。今回は手首の動きに着目する。
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15.押手の伸び・緩み効果(2) ・計算ケース(以下の4ケースを想定)
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16.押手の伸び・緩み効果(3) ・計算結果(エネルギー転換率)
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17.押手の伸び・緩み効果(4) ・計算結果(押手の伸び)
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18.押手の伸び・緩み効果(5) ・計算結果(押手が弓を押す力)
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19.押手の伸び・緩み効果(6) ・計算結果(離れ以降、押手が弓になした仕事)
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20.結果の考察 1.力学モデルに弓の粘性を導入。 エネルギー転換率の計算値は測定値によく一致。
エネルギー転換率の計算値は測定値によく一致。 2.押手が不動の場合、エネルギー転換率を変化させる要因を検討。 (1)矢の質量が大きいほど転換率は上昇。 (2)弓の粘性が大きいほど転換率は低下し、影響は大。 (3)弦の弾性エネルギーと粘性による損失の合計が弓になした仕事の8%前後。 弦の粘弾性特性の違いがエネルギー転換率に影響するものと予測。 3.弓射シミュレータの計算により、押手の伸び・緩みがエネルギー転換率をそれぞれ上昇・低下させることを確認。
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21.今後の課題 1.二次元モデルにおける矢速減少要素の導入 (1)勝手の緩み効果の導入 2.身体系モデルの構築
(1)勝手の緩み効果の導入 2.身体系モデルの構築 (2)体幹、腕、手首を含む総合的モデルの構築 (3)測定結果の観察、分析によるパラメータの推定 3.三次元モデルへの拡張 (1)押手による弓の捻り効果の検討 (2)弓返りメカニズムの検討 (3)弦音の解明
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