Download presentation
Presentation is loading. Please wait.
1
高出力Nier型イオン源の開発 環境計測学研究室 清水森人 高出力Nier型イオン源開発の報告を始めます。
環境計測学研究室 清水森人 高出力Nier型イオン源開発の報告を始めます。 報告は環境計測の清水がさせて頂きます。
2
当研究室の研究概要 分子イオンの解離性反応の研究 静電型イオントラップ 分子の振動状態を基底状態に冷却 の開発を進めている
現在、当研究室では、分子イオンの解離性電離反応や、解離性電子捕獲反応を調べています。分子イオンの解離性反応の反応確率は分子イオンの振動状態に依存すると考えられるため、分子イオンを振動基底状態に冷却する静電型イオントラップなどの開発を当研究室では進めています。
3
イオントラップに必要なイオンビーム 出力 入射条件 5 nA以上の入射ビーム電流量 入射位置 当研究室のイオン源はこれを十分に満たせていない
イオントラップの中心軸より半径1 mm以内 イオントラップを実験に用いる場合、十分なイオンビームの量を確保するために、いくつかの条件が求められます。その中で特にイオンビームに求められる条件には次のようなものがあります。 まず、イオンビームの出力に関してですが、イオントラップでトラップ出来るイオンの量は入射されたイオンビーム全体の20%以下であるため、イオントラップでトラップしたイオンを実験に用いるには、5nA以上のビーム電流量が必要になります。 また、入射条件にも制約があり当研究室のイオントラップでは、入射位置は半径1mm以内という入射条件があります。 しかし、当研究室のイオン源はこれらの条件を十分に満たしておらず、そのためイオントラップに見合った性能のイオンビームを引き出すことが可能なイオン源を設計・開発しました。 当研究室のイオン源はこれを十分に満たせていない
4
Nier型イオン源の概略 Nier型イオン源 生成されるイオンのエネルギー幅が小さい 静電型であるため、小型化が可能
現在、研究室ではNier型と呼ばれる電子衝撃型のイオン源を使用しています。Nier型イオン源は、他のイオン源よりもエネルギー幅のそろったイオンを生成することが可能という特徴があります。また、静電型であるため、小型化も可能です。エネルギー状態のそろったイオンビームが必要という条件は変わらないため、今回もこのNier型を開発するイオン源の基本型として開発しました。 Nier型イオン源の概略を説明します。まず、Nier型イオン源には電子ビームを生成するためのフィラメントと、電子リペラーやレンズ電極からなる電子銃部分があります。 フィラメントで生成された電子ビームは、電子リペラーとイオン源本体の電位差によって引き出され、イオン源本体に側面から入射されます。 つぎに、イオン源本体にガスを導入するガス導入部分があります。、イオン源本体内に導入されたガスは、イオン源内部で電子ビームと衝突し、イオンとなります。 生成されたイオンは引き出し電極とイオン源本体の電位差によって生じる電場によってイオンビームとして引き出されます。 生成されるイオンビームの量は電子ビームと導入されたガスが衝突する衝突領域における電子ビームの状態と、ガスの密度分布によって大きく左右されます。
5
生成イオン数 単位時間に生成されるイオン数:S I : 電子ビーム数 L : 電子が通過する距離 n0 : 通過する領域の分子数密度
σ : 電子衝突イオン化断面積 ※単回衝突の場合を仮定 単回衝突を仮定した場合、電子ビームとガスが衝突する事によって生成されるイオンの数は、電子ビーム数、電子ビームが通過する距離、電子ビームが通過する領域の分子数密度、そして電子衝突イオン化断面積に比例します。 電子衝突イオン化断面積は、対象原子によって違い、電子の入射エネルギーによっても大きさが変化します。 グラフに、Heにたいする電子の衝突イオン化断面積を示します。 グラフの横軸が電子の入射エネルギーで、縦軸が電子衝突イオン化断面積です。 このグラフは過去に測定された電子衝突イオン化断面積をプロットしたもですが、電子のHeに対する衝突イオン化断面積はおおよそ電子の入射エネルギー100eV程度で最大となっています。 このような関係から、イオンを効率よく生成するには、なるべくイオン化断面積の大きい電子を、たくさんイオン源本体に入射する事が必要になります。
6
イオンを効率よく生成するには 電子ビーム 衝突領域を広く ビーム電流量を多く 電子ビームの形状 長方形の断面 ガスの分布領域
さて、電子ビームの数を多くするためには、電子を生成するフィラメントを大きくしなければなりません。 フィラメントを大きくすると、電子ビームはより発散した状態で生成されるので、それをイオン源本体内にある程度の範囲に収束した状態で入射させる必要があります。 そこで、今回は電子ビームをイオン源本体内に厚さと幅を持った長方形の断面をもたせて入射させる事にしました。 さらに、電子ビームの通過領域に対して、導入されたガスが効率よく、均一に分布していたほうがイオンが生成される効率がいいので、ガスの導入部分であるガス噴射口にも工夫が必要なこともわかりました。 今回はこのようなことに重点を置いて、設計を進めることにしました。
7
電子銃 厚さ 1mm 電子ビーム生成部分 軌道計算 フィラメントサイズを大きく(従来の2倍) 加速電圧が0~500 Vの範囲で調整可能
軌道シミュレーターSIMION 電子ビームを衝突領域に入射させるための電極形状を計算 1 mm × 3 mm程度の長方形の断面で入射するように設定 それでは、実際の電子銃部分の設計から説明します。 まず、電子ビーム自体の電流量を多くするために電子ビームを生成するフィラメントのサイズを大きくしました。 さらに、イオン化断面積に影響する電子ビームの加速電圧を自由に調整できるよう、500Vまでの範囲で調整できる、加速用の電源を用意しました。 また、フィラメントサイズを大きくしても、生成された電子が電子ビームとしてイオン源本体内に入射するように、電子銃部の電極形状を軌道計算シミュレーターのSIMIONを用いて、求めました。 今回は、フィラメントで生成された電子がイオン源本体内に、厚さ1mm、幅3mmの長方形の断面もった電子ビームとして入射するように設定しました。 厚さ 1mm
8
密度分布計算 噴射口のパターンを変えて比較 密度分布を計算 1のパターン 2のパターン 電子ビーム 現在のイオン源の噴射口(φ3.2 mm)
近似式、経験式によって密度分布を計算 1のパターン 2のパターン つづいて、ガス導入部です。 ガス導入部では、電子ビームが通過する領域に対してガスが最も均一に噴射されると考えられるガス噴射口の形状を考え、現在のイオン源の噴射口の形状と比較することにしました。 比較の方法として、ガス噴射口周辺のガス分子の数密度を計算しました。計算においては、数密度を求めるのに必要なパラメーターを経験式や近似式から得ました。 計算をしたパターンは、現在研究室で使用しているイオン源の直径3.2mmのガス噴射口の場合と、電子ビームが通過する領域に沿って幅3mm、横10mmの領域に直径0.5mmの噴射口を等間隔に配置したパターンです。 計算条件は、ガスを導入す側のガスの押し出し圧と、導入される側の残留気体圧力を同じにして計算を行いました。 比較条件としては、電子ビームの軸が通る、噴射口の下流1.5mmの位置での分子数密度で比較しました。 それでは、結果を示します。 電子ビーム
9
計算結果1 特徴 一点集中型 ガスが分布する領域が小さい まず、現在のイオン源の場合から、結果を紹介します。
グラフでは、縦軸方向が分子の数密度を表しています。下の方にも数密度の分布を色で表示させています。 このグラフで、横軸方向に電子ビームが通過していきます。 現在のイオン源の場合、ガス密度の最大値は非常に大きいのですが、ガスが分布するのはかなり限定された範囲になります。 特徴 一点集中型 ガスが分布する領域が小さい
10
計算結果2 特徴 平均分布型 ガスが分布する領域が大きい つづいて、噴射口を電子ビームが通過する領域に対して、等間隔に配列したパターンです。
この場合では、先ほどの場合よりも、密度の最大値は10分の1ほどになりますが、導入されたガスが噴射口のある領域内で、均一に分布していることがわかります。 特徴 平均分布型 ガスが分布する領域が大きい
11
計算結果まとめ 2のパターンに決定 平均的に分布 電子ビームと導入されたガスが衝突する領域が広くなる
電子ビームと導入されたガスが衝突する領域が広くなる 以上の結果から、2の電子ビームが通過する領域に噴射口を配列するパターンの方が、ガスと電子が衝突する領域広くとることが出来ることがわかりました。 このパターンは現在のイオン源と比べて、分子数密度の最大値は小さくなりますが、電子ビームと衝突する領域が広くとることができ、最終的に生成すると見積もられるイオンの量はこちらのパターンの方が、現在のイオン源のパターンで見積もった値よりも、10倍程度大きくなります。
12
イオン源 写真1 : イオン源 最大ビーム電流:155 nA 実験条件 ガス : He 電子加速電圧:450 V
真空度:1.5×10-5 Torr バックグラウンド真空度:1.0x10-6Torr 最大ビーム電流:155 nA 以上のようなことをもとに、実際にイオン源を設計・制作しました。 図に今回制作したイオン源の写真を示します。 写真中央に、イオン源があります。 手前にみえる部分が電子リペラーです。 イオン源から引き出されたイオンビームは発散した状態ですので、それを収束させるレンズと、ビームの軌道修正するためのデフレクターをそれぞれイオン源に取り付けました。 ファラデーカップを用いて、Heガスでイオンビームの電流量を測定したところ、フィラメント電流3A、電子加速電圧450 V、レンズ電圧770V、動作時真空度1.5×10の-5乗Torr、バックグラウンド真空度1.0×10の-6乗Torrで、155nAのビーム電流量を得ました。 写真1 : イオン源
13
ビーム形状 ビーム径 : 1 mm レンズ電圧 : 900V MCPを用いて、ビームの径を測定 写真2 : ビーム断面像
続いて、ビーム形状の確認を行いました。 確認の方法として、レンズより30cmほど下流にMCPを設置し、ビームの断面を投影しました。 実際にMCPにうつったをビームの像を示しました。 この画像から、イオン源から引き出されたイオンビームはほぼ正円のビーム形状をしていることがわかりました。 また、ビーム径をはかったところ、レンズ電圧900V付近で1mm程度になっていることが確認できました。 写真2 : ビーム断面像
14
まとめ 目標を満たしたイオン源を制作できた 最大ビーム電流量 : 155 nA ビーム径 : 1 mm
以上の結果から、今回開発したイオン源はイオントラップを用いた実験に必要な要件をすべて満たしていることが確認できました。
15
目次 補足 現在のイオン源 開発目標 イオン化断面積 分子線理論解析 分子線理論解析(2) マッハ数 角度分布 当研究室の研究概要
イオントラップに必要なイオンビーム Nier型イオン源の概略 生成イオン数 イオンを効率よく生成するには 電子銃 密度分布計算 計算結果1 計算結果2 計算結果まとめ イオン源 ビーム形状 まとめ 現在のイオン源 開発目標 イオン化断面積 分子線理論解析 分子線理論解析(2) マッハ数 角度分布
Similar presentations
© 2024 slidesplayer.net Inc.
All rights reserved.