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プロペラのTip Vortex Cavitation Bursting と プロペラ非定常計算結果の相関に関する研究

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1 プロペラのTip Vortex Cavitation Bursting と プロペラ非定常計算結果の相関に関する研究
環境海洋工学専攻  若林 和明

2 研究の背景 プロペラキャビテーションの発生により、船体が変動圧を受けて振動する 船員の居住環境の悪化 船尾振動 構造部材の強度問題
軽減策の一つに Highly Skewed Propeller の採用 船尾振動の軽減(主に低周波数域) 条件によってはTip Vortex Cavitation (以後TVC) の Burstingが発生 船尾振動の増加(主に高周波数域)

3 TVC Burstingについて キャビテーションタンネルで 左舷前方よりCCDカメラにて撮影 最初は、バーストの発生しない映像
○不均一流において、プロペラから放出されたチップヴォ ルテックスキャビテーションが急激な膨張とリバウンド を起こす現象をいう ※ビデオの説明 キャビテーションタンネルで 左舷前方よりCCDカメラにて撮影 最初は、バーストの発生しない映像  次は、バーストの発生している映像

4 前年度の研究成果 一連の現象の間に2回の大きな圧力変動がある TVCのバーストは高周波変動圧をだす プロペラ流入流速の落ち込みが激しいと
バーストが激しい(高周波変動圧が高い) 翼端の渦強さがバースト現象に関係するのではないだろか

5 研究の流れ 実験 数値計算 前年度の研究成果から、ピッチ分布を変更し たプロペラを製作した バースト現象の軽減に効果があるか
前年度の研究成果から、ピッチ分布を変更し たプロペラを製作した 実験 バースト現象の軽減に効果があるか スラスト係数・伴流分布・キャビテーション数 を変化させて実験を行う TVCバーストにどのような影響を及ぼすか 数値計算 プロペラ設計段階でのバースト現象の予測が可能となれば設計に有効なツールとなる 非定常・非キャビテーション状態で計算 一翼当たりのスラスト・翼面の圧力係数 翼端放出渦強さ バースト現象との相関を調べる

6 2種類のプロペラについて 前年度のプロペラ 旧プロペラ ピッチ分布を変えたプロペラ 新プロペラ
前年度の研究成果より、翼端渦を弱めればバースト現象は 弱くなると考えた 新プロペラ 翼端側のピッチを下げる

7 ピッチ変更による循環分布の変化 翼端で放出渦強さが弱くなっている

8 模型プロペラの外形と主要目

9 実験装置 キャビテーションタンネル ベースメッシュとステーにより、伴流を作成 圧力センサーとハイドロフォンによって、変動圧を計測

10 プロペラ流入流速分布図

11 バーストしない伴流B バーストする伴流A バーストの発生しやすい順に 伴流A F E B

12 実験条件(3種類) 1. 伴流分布とキャビテーション数を一定:スラスト係数を変化
キャビテーション数:1.895 使用伴流:伴流A スラスト係数:0.13, 0.15, 0.175, 0.19, 0.21, 0.23 2. スラスト係数とキャビテーション数を一定:伴流分布を変化 キャビテーション数:1.895 使用伴流:伴流A, B, E, F スラスト係数:0.175 3. 伴流分布とスラスト係数を一定:キャビテーション数を変化 キャビテーション数:1.6, 1.7, 1.8, 1.895, 2.0, 2.1, 2.2 使用伴流:伴流A スラスト係数:0.175 各実験での回転数は30rps 変動圧力計測と同時にキャビテーションの様子を ハイスピードビデオカメラで撮影

13 変動圧の周波数解析 高次変動圧を問題にするのでハイドロフォンの結果 について述べる プロペラ基本周波数=プロペラ翼数*回転数
1次(150Hz) 〜 6次(900Hz)を低次とし 7次(1050Hz) 〜 16次(2400Hz)を高次とする 以下の式で変動圧の無次元化を行った プロペラ直径 変動圧 プロペラ回転数 水密度

14 新プロペラと旧プロペラの比較 低次では新プロペラの値が小さい

15 伴流別の比較(旧プロペラ) 高次成分 無次元変動圧振幅の高い順に 伴流A B E F 流速の落ち込みの激しい伴流分布と、同じ順となる
バーストは、伴流分布に大きく支配される

16 スラスト係数を変化させた条件(旧プロペラ)
高次成分 スラスト係数0.23において、高次変動圧が減少している スラスト係数0.13においても、若干の減少が見られる

17 実験結果のまとめ(1) 1. ピッチ分布の変更は、低次変動圧の軽減に効果が見られる ピッチ分布の変更が、翼面シートキャビテーション
の発生量を、減少させたからと考えられる 旧プロペラ 新プロペラ 2. バーストによる高次変動圧では、改善効果はほとんどない 新プロペラでは、バースト現象を抑制出来なかった

18 実験結果のまとめ(2) 3. スラスト係数が0.23時、高次変動圧が減少している また、TVCのバーストも観察されなかった 翼端放出渦が強い
高スラスト係数 TVCが安定する バーストしない 4. スラスト係数が、0.13の時にも高次変動圧は、幾分抑えられ ている キャビテーションの発生量が減少 バーストは発生している

19 数値計算 非定常・非キャビテーション状態の計算を行い、バースト現象との 相関を考えて設計段階でバーストの有無が判定できないか調べる
三井造船昭島研究所で、開発されたプロペラ非定常計算 プログラムをお借りした 計算手法は、渦格子法を用いている 利点 プロペラ幾何形状の忠実なモデル化 プロペラ後流渦形状の自由なモデル化

20 渦格子法について プロペラの翼は、揚力をあらわす渦と翼厚をあらわす吹き出し によって、モデル化できる
・翼面を四角形要素に分割し、各要素に馬蹄渦、  線吹き出し、境界条件を満たす標点を配置 ・馬蹄渦は、束縛渦と後流へ放出される後ひき渦からなる ・線吹き出しは翼厚から既知であるが、馬蹄渦については、渦糸 と線吹き出しからの誘導速度と各翼面の境界条件を解き求める

21 プロペラ後流渦について プロペラ後流渦 後流自由渦の形状は、局所的な流速ベクトルの方向に一致する
と仮定して、繰り返し計算にて後流自由渦の形状を決定する 初期形状 プロペラ後流渦 最終形状

22 1. 翼端放出渦強さの比較 R:プロペラ半径 W:0.7R位置への流入流速
縦軸に以下の式で表される無次元化した渦強さを 横軸にプロペラ翼角を取っている 無次元渦強さ R:プロペラ半径 W:0.7R位置への流入流速

23 伴流別の比較(旧プロペラ) 翼端からの放出渦強さの順は 伴流A B E F バーストの激しい伴流分布と、同じである
翼端からの放出渦強さが強いとバーストは激しい

24 伴流別の比較(新プロペラ)

25 スラスト係数別の比較(旧プロペラ) スラスト係数が0.23はバーストしていないので矛盾する 放出渦強さではバーストの有無を議論出来ない

26 スラスト係数別の比較(新プロペラ)

27 2. 翼端放出渦強さの変化率の比較 無次元渦強さ プロペラ翼角(rad.) dθは時間の変化に等しい
放出渦強さではバーストの有無は議論できない 渦強さの変化率を比較した 渦強さの変化率 無次元渦強さ プロペラ翼角(rad.) dθは時間の変化に等しい

28 伴流別の比較(旧プロペラ) 放出渦強さの変化率を使って、バーストのない伴流とある伴流に分けられることが解った バーストが発生する
変化率 > 0.24 バーストが発生しない 変化率 < 0.24

29 伴流別の比較(新プロペラ)

30 スラスト係数別の比較(旧プロペラ) 伴流別の比較と同様に、放出渦強さの変化率によって、バーストの発生するものとしないものに分けられる

31 スラスト係数別の比較(新プロペラ)

32 数値計算についてのまとめ 伴流分布の違いやスラスト係数の違いに関わらず 放出渦強さの変化率でバーストの発生の有無を分 ける事ができた
バーストが発生する 変化率 > 0.24 バーストが発生しない 変化率 < 0.24 放出渦強さの変化率が支配パラメータとなるのは 変化率が大きいほど、渦が不安定になりやすいか らだと考えられる

33 結論1 新プロペラと旧プロペラの比較によると、逓減ピッチ分布への変更は、翼面シートキャビテー ションを抑制し、低次変動圧の軽減に効果が見られた。しかし、高次変動圧の軽減はほとんどなく、TVCのバーストも抑えられていない スラスト係数が、0.23と最も大きいものは、他のものに比べて、高次の変動圧が抑えられている。また、TVCのバーストも発生しない

34 結論2 伴流中の非キャビテーションプロペラ計算の結果によるとバーストの発生は放出渦強さの変化率によってほぼ決まる バーストが発生する
バーストが発生しない 変化率 > 0.24 変化率 < 0.24 放出渦強さの変化率が、支配パラメータとなるのは変化率が大きいほど、渦が不安定になりやすいからだと考えられる

35 TVCのバースト現象 1度目のバースト(6次以上) 2度目のバースト (数10次以上) 翼端から放出される瞬間 翼端に向かって瞬間的に
収縮・崩壊する 気泡群がランダムに崩壊する シートキャビテーションの発生


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