海氷-海洋アルベドフィードバックが働くようになったかも

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1 海氷-海洋アルベドフィードバックが働くようになったかも
6. 海氷・海洋アルベドフィードバック:北極海氷激減のメカニズム? 気候変動に伴う北極海の海氷域の変化 ・夏季の海氷面積が2000年代以降激減 [e.g. Comiso et al., 2008] ・海氷厚の減少 [e.g. Rothrock et al., 2008] ・多年氷の減少(季節海氷域化) [Comiso, 2012] 近年の北極海の海氷激減には、様々な要因が関係してると考えられている (流出量の増加、融解期の長期化、熱流入の増加など) 2012 近年、北極海の海氷が激減しており、特に面積の減少はよく知られている 図は北極海の海氷面積の変化を示す 左図:海氷面積の時間的な変動 右図:9月の海氷面積の空間的変動。赤が1980年、ピンクが2005年、白が2007年の海氷域(海氷密接度15%以上)を示す。特に太平洋セクターでの減少が顕著である 面積の減少の他に海氷厚の減少や季節海氷域化も報告されている これら北極海の顕著な変化の背景にはice-ocean albedo feedbackと呼ばれる正のフィードバックが関連していると考えられている このフィードバックは季節海氷域での海氷融解に重要な役割を持つことが知られており、季節海氷域化しつつある最近の北極海でも効いていることが予想される しかし、北極海でこのフィードバック効果について定量的に研究した例はほとんどない 2000s 1980s 近年の季節海氷域化に関連して、 海氷-海洋アルベドフィードバックが働くようになったかも 9月の海氷域

2 Global warming Polar amplification 過去10年での気温の上昇

3 IPCCによる将来予測 CMIP5モデルの平均

4 →海氷の断熱効果減→海からの熱→大気を加熱
地球シミュレーターによる温暖化予測実験 (2071~2100平均気温)-(1971~2000平均気温) 北極域が特に昇温   正のフィードバック効果 北極の海氷が減少    →アルベド低下 → 日射の吸収大→融解促進    →海氷の断熱効果減→海からの熱→大気を加熱

5 北極海の海氷の現状:夏季の面積が激減している
第一期水循環変動観測衛星「しずく」(GCOM-W1) 1979年から2012年までの 9月の北極海の海氷面積[単位:百万km2] 2012年9月16日 349万km2 700万km2 50万km2/decade 150万km2/decade オレンジ: 2000年代の平均 紫:2012年9月の最小 白:2013年の9月 日々の海氷のモニターは 日本の人工衛星センサー AMSR2が担っている!

6 IPCCによる将来予測 CMIP5モデルの平均

7 北極海の海氷の現状: 予測より早い減少、厚さも減少
実際の海氷面積 数値モデルによる予測幅 NSIDCによる 北極海の夏(9月)の海氷の拡がり( ) 海氷の厚さ 潜水艦ソナーの観測 Rothrock (1999) 北極の海氷(衛星と潜水艦の観測) 面積・厚さとも減少(面積は特に夏) 面積は10年で約10%の減少 この10年での減少大 北極域研究センターが今年4月より 北大に設置される

8 潜水艦及びICESatによる北極海の海氷厚(3期間の比較)
Kwok and Rothrock (2009)

9 北極海の海氷の年齢の変化 (多年氷が減り一年氷が増加)
5+年氷 4年氷 3年氷 2年氷 1年氷 Stroeve et al. (2012)

10 5. 海氷・海洋アルベドフィードバック:北極海氷激減のメカニズム?
海氷の特性と気候 1)高アルベド(日射に対する反射率が大きい) 2)大気―海洋間の断熱材 3)熱と塩の再分配・輸送(中深層水の形成)

11 (海氷・海洋)アルベドフィードバック効果とは
●アルベドとは、日射に対する反射率。  ●海氷は、通常白い雪が載っているため、日射の6~7割を反射する。これに対して、    開水面は黒っぽいため日射の1割しか反射しない。 ●一旦何らかで海氷面積が減少すると、開水面は日射の反射率(アルベド)が低いため    多くの熱を海が吸収する。その海の熱によって海氷融解が加速され、ますます開水    面、日射の吸収が増え、さらに海氷が減少する、という正のフィードバック効果。 ●この効果によって北極海は温暖化の影響を最も受ける(加速する)と言われている。    ただし、その定量的な理解は十分になされてはいない。  海氷面積が減少(開水面の割合が増加)  海洋表層での日射の吸収が増加          暖まった海によって海氷融解を促進 高アルベド(~0.7) 低アルベド (~0.07) 季節海氷域での先行研究例 南極海:Nihashi and Cavalieri (2006) オホーツク海:Nihashi et al. (2011) 熱収支解析の結果、季節海氷域では海水面に入る熱(ほとんどが短波放射)が海氷の融解量と量的に良い対応を示す また、風によって海氷が発散(収束)する場合、その後の融解が有意に促進(抑制)されることから、季節海氷域では海氷融解の経年変動がice-ocean albedo feedbackによってコントロールされていることが示唆される 北極海でこのフィードバックがどのように海氷融解に影響するかを明らかにするため、 衛星マイクロ波放射計SMMR( 年)およびSSM/I( 年)による海氷密接度を使用して熱収支解析を行った 時間分解能は1日、空間分解能は25㎞×25㎞である 気象データにはERA-interimを使用した Sea ice 側面融解 底面融解 Ocean 11

12 ・フィードバックが働く前提条件が満たされているか? ・フィードバックを誘発するトリガーとして何があるか?
北極海では ・フィードバックが働く前提条件が満たされているか? ・フィードバックを誘発するトリガーとして何があるか? 海氷が激減している太平洋セクターに着目して解析を行う In this study, we focus on the Pacific Sector, where the ice retreat is the most prominent region in the Arctic. The definition of analytical area is shown in this figure. Haruhiko Kashiwase: D-thesis

13 海氷-海洋アルベドフィードバックが働く ための前提条件が満たされている
☆北極海海氷域(海氷密接度 ≥ 30%)での熱収支解析 Kashiwase et al. (revising) ・海氷域では開水面から吸収される熱(主に日射)が支配的である。 ・海氷後退は融解によるものがほとんどであり、流出の影響は小さい。 ・開水面から吸収される熱(日射)と海氷融解の季節変動/経年変動が良い対応を示す。 May 海氷融解量(潜熱換算) Jun Jul Aug 海氷-海洋アルベドフィードバックが働く ための前提条件が満たされている 開水面からの熱吸収 [MJ/m2] 開水面からの熱吸収 相関係数 = 0.92 海氷融解量(潜熱換算) メルトポンドからの熱吸収 ━━ 開水面に入る熱 海氷流出量 Then I compare the heat input qu with ice melting qm Definitions of qu and qm are shown here It is noted that, apparent melting caused by ice motion is removed, and ice thickness is assumed to be constant For both seasonal and interannual timescales, qu and qm corresponds well with each other Thus, it can be assumed that ice melting is mainly caused by heat input into the upper ocean in the Pacific Sector It is also remarkable that, the increase rate of qm is much larger than qu ━━ 海氷融解量 熱収支解析の結果 [MJ/m2] 年積算熱収支 [x102 MJ/m2]

14 海氷・海洋アルベドフィードバック効果 海氷場の発散 海氷場の収束 密接度 低 密接度 高 開水面での熱の吸収 大 開水面での熱の吸収 小
密接度 高 開水面での熱の吸収 小 海氷融解 抑制 密接度 低 開水面での熱の吸収 大 海氷融解 促進

15 海氷海洋アルベドフィードバックが効きやすくなる → 近年の海氷激減
☆海氷発散 ( 5月中旬-6月上旬 ) vs. 海氷融解 ( 6月中旬-8月上旬 ) ・融解初期の海氷発散は、1-2ヶ月後の海氷融解と(北極海全体とも)良い対応関係を示す 海氷海洋アルベドフィードバックが効きやすくなる → 近年の海氷激減 相関係数=0.79 初夏の海氷発散(% day-1) 1-2ヶ月後の海氷融解量(MJ m-3) Here I show only the most important result Black line in this figure indicates the monthly mean ice divergence in May Red line is ice melting in the following 2months Time series of them are positively correlate in the entire period Moreover, if we focus on after 2000, relationship between them is especiall prominent This suggest that the sensitivity of ice-ocean albedo feedback becomes higher during the last decades 海氷発散の計算方法→ Kashiwase et al. (revising)

16 2000年以前 2000年以降 北極海の夏の海氷の激減 Div:海氷の発散成分 2000年以降 発散が2倍 Adv:流出する成分
Qw:開水面に入る熱 Qm:海氷融解量 2000年以降 開水面の入る 熱が6割アップ 2000年以前 2000年以降 北極海の夏の海氷の激減 Kashiwase et al. (revising)

17 アイスアルベドフィードバック 密接度:C 1-C hi 海氷 海洋混合層 T 日射等が開水面を通して 海洋混合層を暖める
アルベド: 開水面:0.07 海氷:0.7 日射等が開水面を通して 海洋混合層を暖める その熱によって海氷が融解 アイスアルベドフィードバック

18 Horizontal diffusion of ice
簡略化モデル によるフィードバック効果の定量化 ・簡略化モデルを使用して海氷後退の2次元的(Y軸-時間方向)な変化を再現し、海氷-海洋アルベドフィードバックがどの程度影響しているかを明らかにする。 𝒅𝑪 𝒅𝒕 =−𝒂𝟎 𝑪𝒇𝒚 𝑻―𝑻𝒇 𝒉 𝒊 −𝑼 𝝏𝑪 𝝏𝒚 +𝑨𝑯 𝝏𝟐𝑪 𝝏𝒚𝟐 +𝝍𝑪 Ice resistance (internal stress) Melting of ice Advection of ice Horizontal diffusion of ice Y X Ice motion in May

19 気候値(2000-2012年)におけるモデル実験 ・簡略化モデルに熱フラックス、漂流速度を与えることにより、海氷後退を再現。
→海氷-海洋アルベドフィードバックが北極海の海氷後退の季節変動に影響している Observation Model Basic run Model No ice-motion run Kashiwase et al. (revising)

20 2004年および2012年の再現実験 Kashiwase et al. (revising)
・漂流速度のみの変更によって、極端な年の海氷後退を再現することができた。 →海氷-海洋アルベドフィードバックが北極海における海氷後退の経年変動もコントロールしていることが示唆される Observation 2004 Model 2004 run Observation 2012 SSM/I  2012年 Model 2012 run

21 北極・夏の海氷の激減のメカニズム 熱力学的:アルベドフィードバック効果 多くが定性的な議論が→定量的な議論へ
  多くが定性的な議論が→定量的な議論へ   海氷・海洋結合システムとしての理解

22 まとめ ○北極海の海氷激減の要因の一つとして海氷-海洋アルベドフィードバックに着目。 ○海氷が激減している北極海太平洋セクターでは、開水面から入る熱(主に日射)が 海氷融解の主要な熱源であることが熱収支解析によって示された。 →北極海でも海氷-海洋アルベドフィードバックが働きうることを意味する。 ○融解初期の海氷発散は1-2ヶ月のラグで海氷融解量と有意な相関を示す。 また初夏の海氷発散、開水面から入る熱量、および海氷融解量には2000年以降 に顕著な増加トレンドが見られる。 →海氷発散が強まったことによる、アルベドフィードバックを通じた海氷融解の促進が近年の海氷激減の一因であることが示唆される。 ○簡略化モデルを使用して北極海の海氷後退を再現した。モデル実験の結果からも 海氷漂流速度が海氷後退の季節・経年変動に重要な役割を持つことが示された。


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