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大気圧直流コロナ放電中のアセトン分解特性

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1 大気圧直流コロナ放電中のアセトン分解特性
平成19年 電気学会 基礎・材料・共通部門大会 平成19年8月28日(火)  大阪大学 コンベンションセンター   XIV. 放電3 大気圧直流コロナ放電中のアセトン分解特性 Decomposition characteristics of acetone in a DC corona discharge at atmospheric pressure 坂 本 孝 弘* 佐 藤 孝 紀 伊 藤 秀 範 (室蘭工業大学) Takahiro Sakamoto*, Kohki Satoh and Hidenori Itoh (Muroran Institute of Technology) 背景と目的 実験装置および実験条件 実験結果   ・ 赤外吸収スペクトル測定   ・ 注入エネルギーに対する濃度変化   ・ 炭素原子のマスバランス   ・ アセトンの分解反応過程 4. まとめ MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

2 従来まで未処理であった低濃度物質も含め, より効果的な処理方法が必要
背景 揮発性有機化合物(VOCs) 浮遊粒子状物質(SPM)や光化学オキシダントの生成原因となる前駆物質 土壌汚染や人体に対する健康被害 大気汚染防止法の改正[1] 法規制と自主的取組のベストミックスでVOC排出量を抑制 ほぼ全てのVOC(メタノール・アセトンetc)が規制対象 2010年度までに2000年度比で30%削減 従来まで未処理であった低濃度物質も含め, より効果的な処理方法が必要 大気圧コロナ放電を用いた処理法 既存の方法では処理が困難な数ppm程度の濃度に対しても適用可能[2] 放電体積が大きく, 大量のガス流量に対して適合性がある[3] [1] 環境省 : 大気汚染防止法の一部を改正する法律の施行について (2005) [2] Kuniko Urashima et al. : IEEE Trans. Dielec. Elec. Insula. 7 No.5(2000)602 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY [3] 吉岡芳夫 :電学論A Vol.122-A (2002)676

3 背景と目的 研究の目的 アセトン CH3COCH3 半導体の脱脂処理や有機溶剤として大量に使用される
 半導体の脱脂処理や有機溶剤として大量に使用される  気化ガスを長時間吸入すると血液機能低下や中枢神経障害    を誘因する  シックハウス症候群などの化学物質過敏症の原因物質の一   つである 研究の目的 窒素-酸素混合ガスに微量のアセトンを添加したガス中で,大気圧直流コロナ放電を発生させたときのアセトンの分解特性を明らかにする アセトンの分解生成物の詳細な調査 バックグラウンドガス中の酸素濃度変化がアセトン分解へ与える影響の調査 気相化学反応の反応速度定数を用いたアセトンの分解過程の考察 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

4 実験装置 マクセレック(株)製 LS40-10R1 Infrared Analysis, Inc., 10-PA O2純度 : 99.5%
平板電極(ステンレス製) 複数針電極 マクセレック(株)製 LS40-10R1 直径 : f80mm 厚さ : 10mm 針電極数 : 13本 針電極 : f4mm(ステンレス製) 針電極支持板 : f50mm(真鍮製) 針密度 : 0.66本/cm2 Vmax : ±40kV Imax : ±10mA 放電チェンバー (ステンレス製) 内径 : f197mm 高さ : 300mm Infrared Analysis, Inc., 10-PA 光路長 : 10m O2純度 : 99.5% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY N2純度 : 99.99% 純度 : 99.5%以上

5 放電チェンバー内に封入したガスの混合比と分圧
実験条件 共通条件   電極構成 : 針(13本)対平板電極  電極間隔 : 35mm  初期アセトン濃度 : 約230ppm  印加電圧    : +27kV(DC)  放電チェンバー内に封入したガスの混合比と分圧  窒素-酸素混合比 封入ガス圧 窒素分圧 酸素分圧 全圧 N2 : O2 (%) (hPa) 80 : 20 810 203 1013 90 : 10 912 101 95 : 5 962 51 98 : 2 993 20 99.8 : 1011 2 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

6 電圧, 電流および電力の時間変化 N2:O2 = 80:20% 放電によるガス組成の変化によって時間とともに放電電流および放電電力の値
input power discharge current applied voltage  放電によるガス組成の変化によって時間とともに放電電流および放電電力の値    が変化する 注入エネルギー(注入電力の時間積分)を用いて, アセトン分解を評価する MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

7 赤外吸収スペクトル測定 N2:O2 = 99.8:0.2 % absorbance [a.u.] wavenumber [cm-1] 2.0
without discharge 1.5 1.0 absorbance [a.u.] 0.5 0.0 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 wavenumber [cm-1] アセトンの赤外吸収帯 ①CH3 d-str : 3019cm-1  ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 d-deform : 1435cm-1 ④CH3 s-deform : 1364cm-1 ⑤C-C str : 1216cm-1 ⑥CH3 rock : 891cm-1     

8 赤外吸収スペクトル測定 N2:O2 = 99.8:0.2 % absorbance [a.u.] wavenumber [cm-1] 2.0
with discharge at 15kJ(30min) without discharge 1.5 1.0 absorbance [a.u.] 0.5 0.0 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 wavenumber [cm-1] 2.0 アセトンの赤外吸収帯 1.5 ①CH3 d-str : 3019cm-1  ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 d-deform : 1435cm-1 ④CH3 s-deform : 1364cm-1 1.0 absorbance [a.u.] ⑤C-C str : 1216cm-1 ⑥CH3 rock : 891cm-1      0.5 0.0 800 700 600 500 wavenumber [cm-1]

9 赤外吸収スペクトル測定 N2:O2 = 99.8:0.2 % absorbance [a.u.] wavenumber [cm-1] 2.0
with discharge at 15kJ(30min) without discharge CH4 (deg deform : 1306cm-1) 1.5 HCOOH (C-O str : 1105cm-1) CO2 (anti str : 2349cm-1) HCN (CH str : 3240~3380cm-1) 1.0 CO (2050   ~2220cm-1) absorbance [a.u.] CH4 (deg str : 3019cm-1) 0.5 HCHO (CH2 a-str : 2843cm-1) 0.0 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 wavenumber [cm-1] 2.0 HCN (bend : 712cm-1) アセトンの赤外吸収帯 CO2 (bend : 667cm-1) 1.5 ①CH3 d-str : 3019cm-1  ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 d-deform : 1435cm-1 ④CH3 s-deform : 1364cm-1 1.0 absorbance [a.u.] ⑤C-C str : 1216cm-1 ⑥CH3 rock : 891cm-1      0.5 アセトンの分解生成物 : CO2, CO, CH4, HCOOH, HCHO, HCN 0.0 800 700 600 500 wavenumber [cm-1]

10 赤外吸収スペクトル測定 N2:O2 = 99.8:0.2 % absorbance [a.u.] wavenumber [cm-1] 2.0
with discharge at 15kJ(30min) without discharge CH4 (deg deform : 1306cm-1) NO2 (1700~1580cm-1) 1.5 HCOOH (C-O str : 1105cm-1) CO2 (anti str : 2349cm-1) HCN (CH str : 3240~3380cm-1) 1.0 N2O (2170~2260cm-1) CO (2050   ~2220cm-1) absorbance [a.u.] O3 (anti str : 1042cm-1) CH4 (deg str : 3019cm-1) 0.5 HCHO (CH2 a-str : 2843cm-1) 0.0 3500 3000 2500 2000 1500 1000 500 wavenumber [cm-1] 2.0 HCN (bend : 712cm-1) アセトンの赤外吸収帯 CO2 (bend : 667cm-1) 1.5 ①CH3 d-str : 3019cm-1  ②C=O str : 1731cm-1 ③CH3 d-deform : 1435cm-1 ④CH3 s-deform : 1364cm-1 1.0 absorbance [a.u.] ⑤C-C str : 1216cm-1 ⑥CH3 rock : 891cm-1      N2O (589cm-1) 0.5 アセトンの分解生成物 : CO2, CO, CH4, HCOOH, HCHO, HCN 0.0 800 700 600 500 バックグラウンドガスからの生成物 : N2O, NO2, O3 wavenumber [cm-1]

11 濃度算出 Lambert-Beerの法則 吸光度 A k : 吸光係数 I0 : 入射光強度 I : 透過光強度 c : 試料濃度
d : 試料の厚さ (ガスセルの光路長=10m) 吸光度 A 吸光度は試料濃度と比例関係  アセトンおよび分解生成物の濃度を算出  標準ガスあるいはガス検知管を用いて検量線を作成   CH3COCH3 CO2 HCOOH

12 注入エネルギーに対するアセトンの濃度変化
CH3COCH3  注入エネルギーの増加とともに濃度が減少し, 約40kJで0ppmとなる 酸素濃度が20%の場合に, 他の酸素濃度よりも僅かに減少し易い  0.2~20%の範囲の酸素濃度変化では, アセトンの分解にほとんど影響    がない MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

13 注入エネルギーに対する分解生成物の濃度変化
CO CH4 HCHO 249ppm 47ppm 123ppm 84ppm 高酸素濃度時に生成量 が多くなる 酸素濃度の依存性が強い 中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 酸素濃度変化の依存性が強い 中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 HCOOH HCN CO2 44ppm 39ppm 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 低酸素濃度時に生成量が多くなる 微量な中間生成物 酸素濃度の依存性は弱い 気相中の最終分解生成物

14 注入エネルギーに対して積み上げグラフで表現する
炭素原子のマスバランス 原子数の見積り方  アセトン : CH3COCH3 1分子中に含まれる炭素原子の個数 = 3 アセトン濃度 [ppm] × 3 = アセトン中の炭素原子数 [ppm] 分解生成物 : HCN   HCOOH HCHO CH4 CO CO2 1分子中に含まれる炭素原子の個数 = 1 各分解生成物の濃度 [ppm] × 1 = 各分解生成物中の炭素原子数 [ppm] 注入エネルギーに対して積み上げグラフで表現する 炭素原子のマスバランス 690 N2:O2 = 80:20% MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

15 炭素原子のマスバランス ~分解生成物中の炭素原子数の変化~
炭素原子のマスバランス ~分解生成物中の炭素原子数の変化~ N2:O2 = 99.8:0.2% N2:O2 = 98:2% N2:O2 = 80:20% 690 690 690  アセトン中の炭素原子数は, 酸素濃度に依らず約40kJで分解される CO中の炭素原子数が増加  酸素濃度の増加とともに                        する CH4中の炭素原子数が減少  CO2中の炭素原子数は, 酸素濃度に依らず一定となる CO 高酸素濃度時 CH3COCH3 CO2 CH4 CO 低酸素濃度時

16 炭素原子のマスバランス ~堆積物の変化~ N2:O2 = 99.8:0.2% N2:O2 = 98:2% N2:O2 = 80:20%
炭素原子のマスバランス ~堆積物の変化~ N2:O2 = 99.8:0.2% N2:O2 = 98:2% N2:O2 = 80:20% 690 690 690  注入エネルギーの増加とともに, 気相中の炭素原子数   が減少し, 約10kJから飽和する input energy : 60kJ 飽和傾向 減少した分の炭素原子は,電極や放電チェンバーの内壁等への堆積物となった  酸素濃度の増加とともに, 堆積物となる炭素原子数の   割合が増加する 酸素濃度が10%付近から飽和する傾向を示す MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

17 アセトンの分解反応過程 ~反応速度定数~ XY + e → X + Y + e A + BC → AB + C A + B → AB
アセトンの分解反応過程 ~反応速度定数~ 気相化学反応の反応速度定数を用いて, アセトンを含む窒素-酸素混合ガス中での素反応を考え, それらの組み合わせによってアセトンの分解反応経路を考察する XY + e → X + Y + e (電子衝突による中性解離反応) A + BC → AB + C (置換反応) A + B → AB (付加反応) (ラジカル-原子(分子) or ラジカル反応) ※ X, Y, A, B, C : 原子 or 中性ラジカル ガス温度 : 293K 電子温度 : 5eV

18 アセトンの分解反応過程 ~CH3COCH3 & CO~
e (1) CH3CO CH3  バックグラウンドガスの混合割合の   変化の影響をほとんど受けない MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

19 アセトンの分解反応過程 ~CH3COCH3 & CO~
e (1) CH3CO (2) CH3 e  バックグラウンドガスの混合割合の   変化の影響をほとんど受けない (3) e H CO CH2 (4) e H O (5) CO CH 高酸素濃度時に多く生成される H MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY  酸素濃度の増加とともに濃度が増加する

20 アセトンの分解反応過程 ~CH4~ e CH4 CH4 NO + H → HNO HNO NO H CH3 低酸素濃度時に生成され易い
N2O + N(2D) → NO + N2 NO2 + H → NO + OH NO + H → HNO  酸素濃度の減少とともに濃度が増加する HNO (7) (3) CH3 + e → CH2 + H + e NO (4) CH2 + e → CH + H + e (6) H CH3 CH4 e (8) MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY H

21 アセトンの分解反応過程 ~HCHO & HCOOH & HCN~
 酸素濃度の減少とともに濃度が増加する N2O + N(2D) → NO + N2 NO2 + H → NO + OH OH OH (9) (10) CH2 HCHO HCOOH (4) H H 低酸素濃度時に生成され易い (15) H (13) H (14) NO CH C CN HCN (17) (16) H2 O H2O C, N MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

22 アセトンの分解反応過程 ~CO2~ CO CH4 HCOOH CO2 CO2 O(1D) OH CH NO HCO COOH NO2 OH
(20) (11) CH H2O (18) NO N HCO COOH (19) NO2 (12) OH H, NO  酸素濃度の依存性は弱い CO2 H2O  CO, CH4およびHCOOHからのCO2生成過程は, 酸素濃度    変化に強く依存する アセトンからの直接生成 アセトンのフラグメントからの生成 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

23 まとめ 大気圧直流コロナ放電を用いて, 窒素-酸素混合ガス中の微量のアセトンを分解するとともに,分解生成物を詳細に調査し, 気相化学反応の反応速度定数を用いてアセトンの分解過程を考察した  アセトンの分解生成物は, CO2 , CO, CH4, HCOOH, HCHOおよびHCNである  CO2       主な分解生成物および気相中に最終的に残る分解生成物  COおよびCH4           酸素濃度変化によって濃度が大きく変化する中間生成物  HCOOH, HCHOおよび HCN      低酸素濃度時に生成される微量な中間生成物   アセトンの分解は, 酸素濃度変化の影響をほとんど受 けない   アセトンは, 直接CO2に転化されるとともに, 高酸素濃度時にはCOを経てCO2へ    転化され, 低酸素濃度時にはCOおよびCH4を経てCO2に転化される   アセトンの分解では, 炭素原子を含んだ堆積物が生成され, その生成量は酸素    濃度に依存し, 酸素濃度が10%付近から飽和する傾向を示す   CH4, HCOOH, HCHOおよびHCNの生成過程には, NOXによる反応が影響して    いると考えられる MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

24 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY

25 反応速度定数 電子衝突による中性解離反応 No. reaction formula rate constant : k unit 2eV
(1) CH3COCH3 + e      → CH3CO + CH3 + e 4.59×1015 1.33×1016 1.73×1016 1/s (2) CH3CO + e → CH3 + CO + e 7.42×1011 (1.62×10-4) 9.42×1011 (7.08×10-5) 9.76×1011 (5.64×10-5) (3) CH3 + e → CH2 + H + e 2.60×1015 (5.66×10-1) 1.18×1016 (8.87×10-1) 1.76×1016 (1.02×100) (4) CH2 + e → CH + H + e 1.34×10-9 (2.92×10-25) 4.29×10-9 (3.23×10-25) 5.74×10-9 (3.32×10-25) cm3/s (8) CH4 + e → CH3 + H + e 4.51×10-16 (9.83×10-32) 2.45×10-16 (1.84×10-32) 7.62×10-18 (4.40×10-34) (17) CN + e → C + N + e 2.30×10-9 (5.01×10-25) 5.72×10-8 (4.30×10-24) 9.12×10-8 (5.27×10-24) (1) M. Szwarc et al. : J. Chem. Phys. 80 No.12(1955)2310 (2) Juan P. Senosiain et al. : J. Phys. Chem. A 110 No.17(2006)5772 (3) J. Z. Su et al. : Int. J. Chem. Kinet. 26 No.1(1994)159 (4) BAUERLE S. et al. : Ber. Bunsen-Ges. 99 No.6(1995)870 (8) D. L. Baulch et al. : J. Phys. Chem. Ref. Data 23 No.6(1994)847 MURORAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY (17) Wing Tsang : J. Phys. Chem. Ref. Data 21 No.4(1992)753


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