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CsI結晶を用いた検出器の基礎特性に関する研究
奈良女子大学 理学部 物理科学科 高エネルギー研究室 首藤 加奈子・堀川 瑶子
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★本日の進行手順 1.研究の背景 2.測定の原理 3.測定 4.まとめ
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1.研究の背景 Bファクトリー実験に代表される電子・陽電子実験において光子や電子のエネルギーを測るカロリーメーターとしてCsI結晶は最適な解である。Belle実験やBaBar実験で高いエネルギー分解の達成のためCsI(Tl)を使用しているが、現在よりも1~2桁高いビーム強度での実験(スーパーBファクトリー実験)ではビームバックグラウンドも高くなりパルアップのためエネルギー分解能が悪化する。 この問題の解決法として発光時間の短い純CsI結晶を用いることがあげられているので、 この背景の元、純CsI結晶とタリウムドープCsIを 比較しながらこれらの基礎特性を調べることを 目的に研究を行った。 そこで
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2.測定の原理 ★シンチレーターとは? 光 結晶に入射してきた荷電粒子は結晶の中でエネルギを失う。 電子を増やす
★シンチレーターとは? 結晶に入射してきた荷電粒子は結晶の中でエネルギを失う。 そのエネルギー損失を光に変換するものをシンチレーターという。 エネルギー損失 電子を増やす 光
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★光電子増倍管(P.M.T)とは? シンチレーターが発した光を大きな電気信号に変換する。受光窓の裏側の光電陰に達し、光は光電効果を起こし電子が放出される。この電子を電極間に印加した高電圧によってその数を増やし、それを陽極から読み出すものを光電子増倍管という。 ■この2つを組み合わせたものを、シンチレーション カウンターという。 ■これらを用い、入射してくる粒子のエネルギーを測定する。 ■宇宙線とγ線を入射粒子として使用するので、次に それらについての物質(結晶)との相互作用について 説明する。
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★宇宙線とは? 宇宙から直接飛来するエネルギーの高い 放射線のことを宇宙線とよぶ。この宇宙線 は地上へたどり着く間に空気中の原子核 と相互作用し、新たな粒子となる。これを カスケードシャワー(右図)とよぶ。 多くの粒子は空気中で吸収されるのだが、 透過力の強いμ粒子は運動エネルギーの 高い状態で地上に飛来する。 地上で測定される宇宙線の 約70%がμ粒子!! であり残りの30%は電子とνである。 本研究で観測された宇宙線はほとんどμ粒子であると考え研究をすすめた カスケード シャワー
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★粒子が入射したときの物質との相互作用 荷電粒子の場合 本実験では荷電粒子はμ粒子しか扱っていないため、 電離損失だけを考える。
荷電粒子が物質中を通過するときに起こる相互作用には電離損失と制動放射があげられる。 ☆電離損失とは・・・ 荷電粒子が物質中を通過するとき、電磁相互作用により物質中の原子が電離されたり励起されたりする。このとき、入射荷電粒子はエネルギーの一部を失う。このことを電離損失という。 ☆制動放射とは・・・ 荷電粒子が物質中を通過するとき、その原子核の作るCoulomb場によって荷電粒子が加速され光子を放出する。このことを制動放射という。 しかし、制動放射は荷電粒子の質量が小さいときに効いてくる。 本実験では荷電粒子はμ粒子しか扱っていないため、 電離損失だけを考える。
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光子(γ線)の場合 ※それぞれの相互作用は吸収体(本実験ではCsI)と入射する光子 のエネルギーによって変化する。(右図)
光子(γ線)が物質中を通過するときに起こる相互作用には光電効果とコンプトン効果 と電子対生成あげられる。 ☆光電効果とは・・・ 原子の軌道電子が光子と衝突した際に光子のエネルギー を吸収して光電子となって飛び出していく現象のこと。 ☆コンプトン効果とは・・・ 原子の軌道電子が光子と衝突した際に、光子が 軌道電子を弾き飛ばして、一部のエネルギー を失い散乱する現象のこと。 ☆電子対生成とは・・・ 光子のエネルギーが1.02MeV以上のとき、 原子核に接近した光子が電子と陽電子の対 に転換する現象のこと。 ※それぞれの相互作用は吸収体(本実験ではCsI)と入射する光子 のエネルギーによって変化する。(右図)
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3.測定 1.実験準備 ①Pure CsIとCsI(Tl)の比較 ★比較の観点
★比較の観点 Pure CsIとCsI(Tl)では立ち上がり・減衰時間にどのような違いがあるかを調べ、どちらが本実験に適しているかを考える参考資料とした。 ★測定方法 Pure CsIとCsI(Tl)をそれぞれについてセットアップする。 結晶とP.M.Tを暗幕で覆いHV(高電圧電源)をかける。 オシロスコープで波形を見る。
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★測定結果 ★考察 発光量がPure CsI<CsI(Tl)のため 立ち上がり・減衰時間がCsI(Tl)のほうが長い。
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②ADCのPedesutalを調べる ★セットアップ ★測定方法
ⅰ.Clock Generatorから出た一定のパルスをGateパルスとする。 ⅱ.もう一方のClock Generatorから出たパルスの深さをAttenutorで変化させる。 ⅲ.そのときのADC countの変化をグラフにする。 そのグラフの切片(つまり、無信号のとき)の値がPedestalである。
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Pedesutalは-25.398であることがわかった。
★測定結果 Pedesutalは であることがわかった。
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2.宇宙線(宇宙線トリガー) ★目的 ★測定方法 検出器のエネルギー分解能をテスト するために、既知のエネルギーをも
つ宇宙線とADCcountがどのように 対応するかを調べる。 ★測定方法 ⅰCsI結晶の上下にプラスチックシンチレーターを置く。 → CsI結晶に飛び込んでくる 宇宙線の中を貫通してい るものだけを測定するため ⅱ上下のシンチレーションカウンターに宇宙線が同時に飛び込んできたときだけCsI結晶からパルスを読む。
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★セットアップ ※Gate幅の決め方 Pure CsIの波形を見た際に、減衰時間がおおよそ100nSだったことから、この波形が十分入る幅として、300nSと決定した。
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★測定結果 ★考察 ADCcount=501.5と33.6(MeV) ヒストグラムより ADCcount=501.5
★考察 ヒストグラムより ADCcount=501.5 のところに鋭いピークが得られた。 電離損失によりμ粒子がCsI結中を 1cm進むと失うエネルギーは dE/dx=5.6[MeV/cm] また、Pure CsI結晶の高さは 6.0[cm] よって、Pure CsIを通過したμ粒子 が失うエネルギーは 5.6(MeV/cm)×6.0(cm)=33.6(MeV) ADCcount=501.5と33.6(MeV) が対応している。 統計誤差: ★測定結果
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3.放射線源(セルフトリガー) ★γ線について ★目的 検出器の分解能をテストするために、 既知のエネルギーをもつγ線と
本実験で用いたγ線は から生成されたものである。 右図のように はβ線 (電子)をだして の第2励 起状態へ崩壊する。 この原子核の90%は0.662MeVの γ線を放出して基底状態へ遷移する。 ★目的 検出器の分解能をテストするために、 既知のエネルギーをもつγ線と ADCcount がそれとどのように 対応しているかを調べる。 137
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★セットアップ ★測定方法 Ⅰ. を設置し、2000個のデータをとり、プロットする。 (グラフ1)
★測定方法 Ⅰ. を設置し、2000個のデータをとり、プロットする。 (グラフ1) Ⅱ. を取り除き、CsIとP.M.Tの両方からのバックグラウンドのデー タをとる。 (グラフ2) Ⅲ. ⅡからⅢのデータを引いてシグナルだけをプロットする。 (グラフ3) Ⅳ.CsIも取り除き P.M.Tのみの バックグラウンドのデータをとる。 (グラフ4) Ⅵ.ⅡからⅣのデータを引いてバックグラウンドを解析する。 (グラフ5)
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★測定結果 (グラフ1) (グラフ3) (グラフ2) 統計誤差
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★考察 グラフ3より、ピークはADCcount=336.7のところに得られた。 ADCcount=336.7と0.662(MeV)が対応
(グラフ4) (グラフ5) ★考察 グラフ3より、ピークはADCcount=336.7のところに得られた。 ADCcount=336.7と0.662(MeV)が対応
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4.宇宙線とγ線の比較 ① (ADCcountPedestal) = -25.398 ②(宇宙線のATT) =31dB この2点を考慮し、
の対応関係をグラフにする。
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5.ペレトロン加速器ビームラインでの測定 P+LiF→Ne→α+O* ↓ O+γ ★目的
先に求めたキャリブレーションを用い、以下の反応によって 放出されるγ線のエネルギーが既知であることから、検出器 のエネルギー分解能をテストする。 P+LiF→Ne→α+O* ↓ O+γ 6.13(MeV) 6.92(MeV) 7.12(MeV) ペレトロン加速器ビームラインで、LiFをターゲットとし 約872KeVに設定したPのビームをあて、γ線を放出させる。
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★ペレトロン加速器ビームラインについて ① ② ③ ①イオン源からH‐が作られる。
③磁力によってビームのエネルギーをふるいにかける。(872KeV) ④ターゲットを通過後、FC(ファラデーカップ)で止まる。 ④
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左図より、Pのエネルギーを ★測定方法 -17KeVずらしたとき、本実験 で希望するγ線のエネルギー は放出されないことがわかる。
Ⅰ.ビームのエネルギーを 約872KeVに設定し測定。 (グラフ6) Ⅱ.ビームのエネルギーを -17KeVずらして測定。 (グラフ7) Ⅲ.ⅠからⅡをひいてプロット する。 (グラフ8) ★測定方法 -17KeVずらした
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★セットアップ
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★測定結果 P: 約872KeV (グラフ6) P: -17KeVずらした (B.G.) シグナル-B.G. (グラフ7) (グラフ8)
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本実験前と後ではPedestalが少なくとも 変動することがわかっている。 基準値 (原点と宇宙線での測定値を結んだ直線の傾き)
★考察 ●系統誤差の見積もり 本実験前と後ではPedestalが少なくとも 変動することがわかっている。 基準値 (原点と宇宙線での測定値を結んだ直線の傾き) (原点とCsでの測定値を結んだ直線の傾き) 宇宙線 Cs Pedestal のときの傾き Pedestal のときの傾き 誤差として考慮する
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グラフ化 それぞれの値が妥当 このグラフより宇宙線での測定値を 用いた場合に対して、 Csでの測定 値を用いたものは誤差の範囲内で
あることがわかる それぞれの値が妥当 ペレトロン加速器ビームラインでの 測定に用いることにする γ線のエネルギーが6.13MeV、 6.92MeV、7.12MeVに対応する ADCカウントを矢印で示した。 グラフ化 ↑ 宇宙線での測定 ↑ Csでの測定
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6.13MeV 6.92MeV 7.12MeV
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●ピーク値のずれ 左図より、6~7MeVのγ線の場合、 光電効果に加えてコンプトン効果も 大きく寄与することがわかる。
コンプトン効果によって失われるエ ネルギーの最大値は で与えられ、光電効果で与えられた 値Eと比較すると、 となった。よって、ピーク値のずれは ここから生じていると考えることがで きる。
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4.まとめ ①宇宙線を利用したPureCsI結晶とCsI(TI)結晶を比較した測定より、PureCsI結晶の方が時間分解能に優れていることを確認した。 ② と宇宙線を用いて、検出したエネルギーの較正が正しく行われていることを確認した。 ③P+LiF→Ne→α+O*→O+γ でのγ線の検出を試みた実験では、ほぼ期待される位置にピーク が見られた。 ●データ集積のプログラムを改良し、集積の途中で止まらないようにする。 ●ビームの量(電流の量)のデータとイベント数を数えるデータを結び付けられるようなプログラムを組む。 今後の課題
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