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胸水検査から考える胸水の鑑別診断 独立行政法人国立病院機構 刀根山病院 内科 枝廣龍哉 辻野和之 北田清悟

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1 胸水検査から考える胸水の鑑別診断 独立行政法人国立病院機構 刀根山病院 内科 枝廣龍哉 辻野和之 北田清悟
本日は、胸水検査から考える胸水の鑑別診断についてお話させていただきたいと存じます。 独立行政法人国立病院機構 刀根山病院 内科  枝廣龍哉 辻野和之 北田清悟 図:日本呼吸器学会ホームページより

2 日本呼吸器学会 CO I 開示 発表者名: 枝廣龍哉 辻野和之 北田清悟
日本呼吸器学会  CO I 開示 発表者名: 枝廣龍哉 辻野和之 北田清悟 演題発表に関連し、開示すべきCO I 関係にある 企業などはありません。

3 胸腔穿刺の必要性 ・胸水ドレナージによる治療 ・胸水検査による鑑別診断
はじめに胸腔穿刺の必要性ですが、胸水ドレナージによる治療の目的と胸水検査による原因疾患の鑑別の2つあります。本日は後者、胸水検査による鑑別診断についてお話させていただきたいと思います。

4 胸水を合併する疾患 悪性腫瘍 結核 リウマチ・SLE等の膠原病 膿胸 肺炎・胸膜炎 心不全 肺塞栓症 薬剤 肝硬変 膵炎
卵巣腫瘍(Meigs症候群) アスベスト暴露 外傷 食道穿孔 etc 胸水を合併する疾患ですが、悪性腫瘍、結核、膠原病、肺炎、心不全をはじめ、多岐にわたる疾患で胸水を合併することがあります。

5 胸水穿刺術 体位:坐位もしくは胸水が貯留し穿刺しやすい体位 穿刺部位:第4~6肋間中腋窩線上(エコーにて胸水の存在部位を確認)
22-23 G注射針で穿刺部位に局所麻酔を十分浸潤させる. 針先端が臓側胸膜を越えると液体が吸引できる. 局所麻酔後に胸壁表面から胸腔までの距離を確認し、本穿刺を行う.  胸水穿刺術ですが、坐位もしくは胸水が貯留し穿刺しやすい体位で、通常はエコーにて胸水の存在ならびに部位を確認します。穿刺部位としては第4~6 肋間中腋窩線上が用いられることが多いです。 22-23 G注射針で穿刺部位に局所麻酔を十分浸潤させ、穿陰圧を加えながら針先端が臓側胸膜を越えると液体が吸引できます。 局所麻酔時に胸壁表面から胸腔までの距離を確認し、16-18Gの静脈留置針にて本穿刺します。

6 胸水穿刺術ポイント 合併症 肋間動静脈や神経をさけるため、肋骨上縁に沿わす形で針を進入させる。
胸水の胸壁内注入を防ぐため、液体が引けたらそれ以降は局所麻酔薬の注入を行わない。 合併症  ポイントとしては、「肋間動静脈・神経は肋骨下縁を走行しているため、肋骨上縁に沿わす形で針を進入させること」、また「癌性胸水の場合、胸壁内に癌細胞をばらまくリスクがあるので、液体が引けたらそれ以降は局所麻酔薬の注入は行わない」ということです。  合併症としては、気胸、出血、喀血、感染、肝脾損傷等があります。 穿刺時にエアが引けた際はXpで気胸チェックが必要となります。通常の18~22Gy針ではこれらの合併症が起こることは稀です。 気胸、出血、喀血、感染、肝脾損傷 日本内科学会雑誌第102巻第5 号より

7 胸水検査項目:必須 WBC分画 LDH 蛋白 糖 ADA 細菌培養 病理学的検査(細胞診) 見た目も重要 ⇒ 漿液性、血性、混濁 …
胸水穿刺時の検査項目として必須なのは、LDH、TP、血糖、白血球分画、ADA、細菌培養、細胞診です。また、漿液性、血性、混濁等の見た目も大事です。 見た目も重要 ⇒ 漿液性、血性、混濁 …

8 胸水の外観 膿性 → 膿胸 (胸水中白血球分画で好中球優位、細菌培養) 乳び性 → 乳び胸
(胸水中TG>110mg/dlもしくは、TG mg/dlでかつリポタンパク分画でカイロミクロンが検出されること) 原因疾患:外傷、悪性腫瘍、リンパ増殖疾患、リンパ脈管筋腫症 等 胸水の外観ですが、膿性であれば文字通り膿胸を疑い、胸水中の白血球分画、細菌培養を行います。また、乳び性であれば乳び胸を疑い、胸水中のTG値を測定することで診断します。通常はTG値が110mg/dlを超えていることで診断しますが、それ以下であってもリポタンパク分画でカイロミクロンが検出されれば乳び胸と診断します。  乳び胸の原因としては、リンパ路が破綻しうる疾患、すなわち、外傷、悪性腫瘍、リンパ増殖疾患、結核、リンパ脈管筋腫症等があります。 血性胸水は胸水中のHt値が血清中の半分以上で定義され、悪性腫瘍、外傷等が主な原因となります。 血性(胸水中Htが血清中の半分以上) 原因疾患:悪性腫瘍、外傷 等

9 胸水の外観と原因疾患 715人の胸水患者の解析 漿液性 淡血性 血性 膿性 乳び性 混濁 腫瘍性 (n=253) 50% 34% 11%
74% 21% 2% 肺炎随伴性 (n=84) 41% 32% 7% 19% 膿胸 (n=9) 100% これは2004年のChestに掲載された論文からの引用ですが、715人の胸水患者における疾患ごとの胸水の外観を検討した研究です。血性胸水のうちの約半数は腫瘍性ですが、外傷後や両性石綿胸水を含む種々の疾患で血性を呈することがあります。また、腫瘍性胸水においても約50%は漿液性であり、10%のみが血性です。結核性の場合の多くは漿液性ですが、一部では淡血性~血性となることがあります。 Chest Jan;125(1):156-9 より改定

10 滲出性 vs 漏出性 Lightの基準 ① 胸水/血清総蛋白質>0.5 ② 胸水/血清LDH>0.6
① 胸水/血清総蛋白質>0.5 ② 胸水/血清LDH>0.6 ③ 胸水LDH>血清LDHの正常上限の2/3 ⇒以上のいずれか一つを満たせば滲出性 胸水はその性状より滲出性と漏出性の2つに分類され、この分類は胸水の鑑別診断において重要となります。この滲出性、漏出性の鑑別には古来よりLightの基準が用いられています。これは① 胸水/血清総蛋白質>0.5 、② 胸水/血清LDH>0.6 、③ 胸水LDH>血清LDHの正常上限の2/3 のうちいずれか一つを満たせば滲出性で、一つも満たさなければ漏出性となります。  このLightの基準による滲出性胸水の診断は感度は95%以上と高値でありますが、特異度はそれほど高くなく80%前後と報告されており、すなわちLightの基準で滲出性と判断されるものの中にも少なからず漏出性の症例も含まれていることに注意が必要です。 感度98% 特異度76% Chest Dec;116(6): PMID: Lightの基準で滲出性と判定されても実際には漏出性の胸水のこともある!

11 胸水貯留の鑑別:フローチャート 胸水穿刺 なし あり 漏出性 滲出性 あり なし 漏出性胸水を疑う所見あり臨床所見あり
(心不全、肝硬変、ネフローゼ等) 漏出性胸水を疑う所見あり臨床所見なし 胸水穿刺 必須項目の測定 原疾患の治療による胸水の減少 なし 胸水外観の確認 あり 経過観察 漏出性 滲出性 好中球優位 リンパ球優位 好酸球上昇 胸水貯留の鑑別をフローチャートにまとめています。 まずは心不全、肝硬変、ネフローゼなど漏出性胸水を疑う臨床所見があれば、まずは原疾患を治療し反応をみます。滲出性胸水が疑われる場合、胸水穿刺を行い鑑別を進めます。 まず胸水の外観をが膿性であれば膿胸を疑い細菌培養検査を、乳び性であればTGを測定しましょう。 またLightの基準等を参考に、漏出性胸水であれば、心不全、ネフローゼなどの原疾患の再検索を行います。 滲出性であれば、胸水細胞分画を確認し、 好中球優位であれば、肺炎随伴性胸水、膿胸、肺塞栓症などを疑います。 リンパ球優位であれば、胸水中ADAの値を確認し、高値であれば、結核性胸膜炎を疑い精査細菌学的、病理学的な検査をします。 ADAが正常範囲内であれば、悪性胸水、膠原病が鑑別が必要となります。 胸水中に好酸球の上昇が認められた場合、胸腔内の空気の混入による影響のことが多いですが、薬剤性、寄生虫感染なども鑑別に上がります。 ADA上昇 あり なし 肺炎随伴性胸水 膿胸 肺塞栓症 結核性胸膜炎の初期 など 結核性胸膜炎濃厚 胸水塗抹・培養 胸腔鏡検討 悪性腫瘍 膠原病関連 など 細胞診 必要なら胸腔鏡検討 薬剤性胸水 胸腔内の空気の混入 寄生虫感染 など

12 ③ 膠原病関連胸水 (関節リウマチ、SLE)
各論 ① 結核性胸膜炎 ② 悪性腫瘍随伴性胸水 ③ 膠原病関連胸水 (関節リウマチ、SLE) ④ 原因不明の胸水 次に、胸水の鑑別として臨床の場で比較的経験することの多い下記疾患について個別にみていきたいと思います。

13 各論①:結核性胸膜炎 疫学:結核患者の約17%、高齢者や男性に多い 臨床症状:比較的急性に発症、胸痛や乾性咳嗽、たいてい片側性
リンパ球優位の滲出性胸水(発症初期は、好中球優位)、多くは漿液性の外観 診断 → 確定診断には結核菌の証明が必要 放置すると5年間で約半分の症例で肺結核を発症したと報告されており、抗結核治療が  必要 胸水検査 感度 抗酸菌塗抹 10%以下 結核菌培養 20~30% 結核PCR 60%程度 なかなか確定診断できない まず結核性胸膜炎ですが、本邦では約17%の結核患者に生じ、肺外結核としては最多です。結核が蔓延していた時代は若年者に多い傾向でありましたが、現在は高齢者、そして男性に多いです。① 比較的急性に発症することが多く、主な症状は胸膜痛(75%)、乾性咳嗽(70%)です。② 胸水WBC分画はリンパ球優位が典型的ですが、発症初期においては、好中球有意になることがあります。また多くは漿液性の外観をしますが、まれに血性のこともあります。 結核性胸膜炎の確定診断には、喀痰、胸水、胸膜などから結核菌の証明が必要です。② ただし、胸水中の抗酸菌塗抹検査②、培養②、PCR③はともに感度が低く、結果がnegativeでも否定することができません。 また結核性胸膜炎が自然治癒した症例においても5年以内に約半数が肺結核を発症したとされており①、排菌が確認されていない結核性胸膜炎であっても肺結核に準ずる化学療法が必須です① よって、結核性胸膜炎の除外は慎重に行う必要があります。 ①呼吸器内科 2013;24: ②Chest 2007;131: ③BMC Infect Dis 2004;4:6 ④Thorax 2010;65:ii4-ii17 ⑤Ann Clin Biochem 2003; 40: ⑥Thorax 2003;58:ii8-ii17

14 ADA: cut off 40 (30-50)IU/L 白血球分画がリンパ球優位であり、かつ 上記を満たす場合の感度&特異度90%以上
Annals of the Reumatic Disease 1998; 47: 394-7 ADA: cut off 40 (30-50)IU/L 白血球分画がリンパ球優位であり、かつ 上記を満たす場合の感度&特異度90%以上  結核性胸膜炎のSupportive markerとして胸水中のADAがよく使用されます。④ 報告により多少のばらつきがありますが、ADAは30~50IU/Lをcut offとすると、感度・特異度ともに90%以上と報告されています。⑤ これは疾患ごとにおける胸水中のADA値を検討した論文のデータです。結核性胸水ではほぼ全例がADA高値をしめしますが、 結核以外にも、リウマチ随伴性胸水や肺炎随伴性胸水、膿胸でも上昇するため、注意が必要です。また、結核感染の有無をみる上で、QFT (クォンティフェロン)やT-Spot等のインターフェロン遊離試験も有用です。 結核 腫瘍 複合 肺炎 非特異的 リウマチ ADAはリウマチ随伴性胸水、肺炎随伴性胸水、膿胸でも上昇する 結核感染にはQFTやT-spot等のIGRA検査も有用

15 結核性胸膜炎の診断に胸膜生検は有用 コープ針 セミフレキシブルな胸腔鏡 壁側胸膜写真 HE染色(矢印:肉芽腫)
Olympusホームページより 壁側胸膜写真 HE染色(矢印:肉芽腫) 少し侵襲を伴う検査ですが胸膜生検により、結核特異的な乾酪性肉芽腫を病理学的に証明することは結核性胸膜炎の診断に有用です。具体的にはコープ針等による盲目的な胸膜針生検や、最近ではセミフレキシブルな局所麻酔下胸腔鏡で直視下に病変を確認し生検することで診断率は上がります。

16 各論②:悪性腫瘍随伴性胸水(臨床的特徴)
胸水貯留の原因となる悪性腫瘍 臨床的特徴 片側の大量の胸水貯留 息切れ、咳嗽、体重減少、胸痛(鈍い胸痛) 原発巣 % 肺癌 37.5% 乳癌 16.8% リンパ腫 11.5% 消化器癌 6.9% 泌尿生殖器癌 9.4% その他 7.3% 原発巣不明 10.7% 悪性(N=108) 良性(N=63) P値 発熱 37% 73% <0.01 胸膜痛 24% 51% 鈍い胸痛 34% 11% 息切れ 45% 17% 症状が7日以内 30% 50% 次に悪性腫瘍随伴性胸水についてです。 (胸水のetiologyが悪性疾患によるものなのか、良性疾患によるものかを判別することは非常に重要です。悪性腫瘍随伴性胸水であれば、病気は進行しているので基本的に予後が長くないことが予想されます。) 悪性腫瘍随伴性胸水の原発巣は表(①のTable1を参考)に記しているように、肺癌が最も多く次に乳がんがそれに続きます①。男性では肺癌、女性では乳がんが最も多いです①。肺癌と乳がんのみで約50-65%前後を占め①、その後に、リンパ腫、消化器癌、尿生殖器癌が続きます。 臨床的特徴ですが、片側の大量胸水が貯留している場合は悪性腫瘍を第一に疑います①。 また多くの症例で息切れ、咳嗽、体重減少、胸痛等の自覚症状を伴います②。悪性と良性の胸水貯留の臨床症状の比較検討した研究では(③)、胸膜痛や発熱はむしろ良性疾患に多く、鈍い胸痛や平熱や息切れが悪性疾患に多い症状のようです。 ①Thorax 2003;58:ii29-ii38 ②Am J Med 1977;63: ③Chest 1995;107:1598

17 各論②:悪性腫瘍随伴性胸水(胸水検査) 胸水の性状 顕血性、滲出性、リンパ球優位… 胸水cytology 胸水細胞診:感度60%
セルブロックの提出 1回目の検査が陰性なら2回目を!!   (1回目:65%、2回目:27%、3回目:5%、.....) 胸水中の腫瘍マーカー:あくまでsupportive CEA、CYFRA、NSE、CA15-3、CA125... 細胞診陰性+腫瘍マーカー高値      胸膜生検など侵襲的な検査を考慮 悪性腫瘍による胸水の性状は、顕血性、滲出性、Ly有意であることが多いですが、確定診断には、病理検査が必須です!! 胸水細胞診の感度は平均で60%程度であり、細胞診でnegativeであっても悪性腫瘍は否定できません。Smearと一緒にセルブロックも提出したり、胸水細胞診を繰り返し行うことも重要で、診断率が向上します。 また、CEA、CYFRA、NSE、CA15-3、CA125などの腫瘍マーカーは悪性胸水で上昇していることがあり、良性胸水の鑑別に有用と報告されています⑥。 胸水細胞診が陰性でも胸水中の腫瘍マーカーが上昇してる場合(⑤では42/114、⑥では50-70%?)、胸膜生検など侵襲的な検査も考慮する必要があるでしょう⑤。 ①Thorax 2003;58:ii8-ii17 ②Am J Clin Pathol 1978;70:855-60 ③Mod Pathol 1994;7:665-8(論文downloadできませんでした。Abstractのみです。) ④Chest 2010;137:68-73 ⑤Chest 2004;126: ⑥Br J Cancer 1999;81: ⑦Thorax 2010;65:ii4-ii17

18 各論②:悪性腫瘍随伴性胸水 悪性胸膜中皮腫
各論②:悪性腫瘍随伴性胸水  悪性胸膜中皮腫 悪性胸膜中皮腫は診断が難しい 良性石綿胸水、転移性腺癌との鑑別は困難 細胞診だけで診断することは推奨されない  ⇒ 胸腔鏡検査が望ましい(診断率は90%以上) 次に、悪性胸膜中皮腫について説明します。 悪性胸膜中皮腫の多くは胸水貯留を認めますが、胸水細胞診での陽性率は低く、また、良性石綿胸水や転移性腫瘍の鑑別が困難な場合があります④。 2010年のERS statementでは悪性胸膜中皮腫を疑う場合には外科的胸腔鏡検査が推奨されています。慎重な内腔観察の上、筋層もしくは脂肪層を含んだ深度かつ広がりのある壁側胸膜の組織を複数個所採取することにより、その診断率は90%以上と報告されています①。 ①Eur Respir J 2010;35: ②Chest 2001;119: ③Resp Investig 2013;51:92-97 ④Thorax 2007;62: ⑤Am J Respir Crit Care Med 2006;173:

19 各論②:悪性腫瘍随伴性胸水 悪性胸膜中皮腫
各論②:悪性腫瘍随伴性胸水  悪性胸膜中皮腫 バイオマーカー 胸水中CYFRA↑+胸水中CEA↓ 胸水中ヒアルロン酸↑ 血清/胸水中 可溶性メソテリン関連蛋白   ⇒ 特異度が高い ヒアルロン酸 (ng/ml) 悪性胸膜中皮腫 良性石綿胸水 肺癌 他の悪性疾患 感染性胸膜炎 膠原病 その他 胸水マーカー  (ng/ml) 悪性中皮腫 肺癌 胸膜播種 良性疾患 CEA 0.8 (0.2-7) 6.3 ( ) 6.0 ( ) 1.2 ( ) CYFRA 265.2 ( ) 75.0 ( ) 94.2 ( ) 21.7 ( ) 悪性胸膜中皮腫の胸水補助診断として、いくつかのバイオマーカーが用いられます。 これは2001年Chestの論文ですが、中皮腫32名を含む106名の胸水患者の胸水中のCEAとCYFRAの値を疾患ごとに比較したものです。肺癌と比べますと、胸水中のCEAが相対的に低値、CYFRAが高値を示しています。このように胸水中のCEAの上昇が軽微にもかかわらずCYFRAが高値の場合は、悪性胸膜中皮腫の可能性が高くなります②。 また、胸水中のヒアルロン酸が100,000ng/ml以上であると、悪性胸膜中皮腫である可能性が高くなります③。 また、可溶性メソテリン関連蛋白(SMRP)は悪性胸膜中皮腫では他の悪性腫瘍、石綿関連良性胸膜疾患よりも血清、胸水中ともに高値であります④⑤。 ①Eur Respir J 2010;35: ②Chest 2001;119: ③Resp Investig 2013;51:92-97 ④Thorax 2007;62: ⑤Am J Respir Crit Care Med 2006;173: 中央値 (最小値-最大値) Chest 2001; 119: 1138改 Resp Investig 2013;51:92 改

20 各論③:膠原病関連胸水:RA 疫学 RA患者の5%、男性に多い 特異的な所見 Glucose↓(慢性経過であれば、たいてい30mg/dl)
pH↓ リウマチ因子↑(320倍以上) 治療  関節リウマチに対する治療  症状が軽微であれば経過観察 膿胸でも同様の結果 になる可能性あり 膠原病関連胸水の原因となる代表的な膠原病として、RAとSLEがあります。① まずはRAから説明していきます。 RAによる胸水貯留は約5%に生じます。RAなどの膠原病は女性に多い疾患ですが、RAによる胸水貯留は男性に多いようです①. RA性胸水の生化学では、Glucoseの低下、pH低下、RFの上昇、補体低下などがあげられます。特にGlucoseが著しく低下するので鑑別に有用です。胸水中のGlucose、pHが著しく低下する疾患として膿胸がありますが②、WBC分画、臨床所見から鑑別は容易です。 胸水中RFに関しては320倍以上まで上昇していることが多いですが、血清RFも上昇しているため、胸水中RFはそこまで診断的意義はないかもしれません②。 また、RA性胸水においては、ADAが上昇するので、結核性胸膜炎との鑑別を考慮しなければなりません。ADAにはADA1、ADA2という2つの型があり、ADA1はRA性胸膜炎、ADA2はTB胸膜炎で上昇しますが、実臨床での使用は困難です。ADA、Glucose、RFなどと問診、身体所見などを総合的に考えて鑑別を行います。 ①Thorax 2010;65:ii4-ii17 ②Thorax 1982; 37: ③呼吸器内科 2013;24: ④ERJ 2000;15: ⑤Lupus 2007;16:25-7(Abstractしか読めていません、本文のdownloadできておりません。) ⑥Up To Date → Respiration 2008;75: (Pleural involvement in systemic autoimmune disorders)

21 各論③:膠原病関連胸水:SLE 疫学 5-10%が胸膜炎が最初の症状、少量で両側性のことが多い 特異的な所見 ⇒ ない!!
抗核抗体↑→ あくまで除外目的(原因不明ならば悪性腫瘍の可能性も考慮) LE細胞  → 診断的有用性は低い 次にSLEについてです。 5-10%のSLE患者の最初の症状が胸膜炎で、胸水量は少量で両側性のことが多いです①。 滲出性胸水の成因がSLE胸膜炎と診断できる特異的な検査はありません①。胸水中の抗核抗体上昇はSLE胸膜炎の可能性を示唆しますが、その他の疾患でも上昇します④。逆に抗核抗体の上昇がなければSLE胸膜炎の可能性はかなり下がります④。そして原因不明の胸水中の抗核抗体上昇は、悪性腫瘍の可能性を考慮しておく必要があります④。また胸水中抗核抗体は血清抗核抗体と大体同じなので、routinelyに測定する意義は不明です⑤。病理所見でのLE細胞も診断的有用性は低いです。SLE胸膜炎以外にも、悪性腫瘍やRAで見られるからです⑥。 以上説明した通り、SLE胸膜炎の特異的な検査はありません。SLE胸膜炎を疑う場合は、問診、身体診察を丁寧しながら鑑別をすすめていきましょう。 ①Thorax 2010;65:ii4-ii17 ②Thorax 1982; 37: ③呼吸器内科 2013;24: ④ERJ 2000;15: ⑤Lupus 2007;16:25-7(Abstractしか読めていません、本文のdownloadできておりません。) ⑥Up To Date → Respiration 2008;75: (Pleural involvement in systemic autoimmune disorders)

22 各論おまけ:黄色爪症候群(Yellow Nail Syndrome)
3主徴 黄色爪 リンパ浮腫 呼吸器病変(胸水、気管支拡張、慢性副鼻腔炎…) 胸水の所見 両側性が多い リンパ球優位の滲出性 治療 胸水:症状に応じて対処療法(経過観察、胸水穿刺、胸膜癒着術) 黄色爪:ビタミンE、ステロイド局注…ただし、確立されていない 2つ以上症状があれば診断 最後にpit fallな疾患として、黄色爪症候群 (Yellow nail syndrome)を取り上げます。稀な疾患ではありますが、胸水貯留の鑑別にあげないと診断が難しい疾患です。 黄色爪症候群において、黄色爪、リンパ浮腫、呼吸器病変が3主徴とされています。診断は基本的に臨床診断となり①、他の疾患が除外できていれば、少なくとも2つ以上の症状があれば黄色爪症候群を強く示唆すると一般的に考えられています①。呼吸器病変には胸水、気管支拡張、慢性副鼻腔炎などがあり、特に胸水は約半数で合併すると言われています①②。胸水はだいてい両側性ですが、片側のこともあります②。胸水の性状としては、リンパ球優位で滲出性です。  治療法ですが、胸水に対しては胸水量、症状に応じて胸水穿刺、胸膜癒着術などの対処療法を行います①②。黄色爪に対しては、ビタミンE、ステロイド局注などが行われますが、確立された治療法はありません①②し、自然軽快することもあります①。 ①Curr Opin Pulm Med 2009;15: ②Chest2008;134: 爪の写真

23 各論④:原因不明の胸水 侵襲的な検査(胸腔鏡や胸膜生検)をしても約15%は原因不明...
原因不明の胸水をfollow upしたretrospective cohort studyでは 約90%(69/75)が良性の経過であり、約80%で自然に胸水は消失 一方で、約10%(6/75)が悪性と経過中に判明 胸水の再発は16.7%(10/60) 原因不明の胸水はある一定の割合で存在します。胸腔鏡や胸膜生検などの侵襲的な検査まで施行しても、約15%は原因不明といわれています①。 過去の原因不明の胸水をfollow upしたRetrospective studyでは、約90%が良性の経過をたどり、約80%で自然と胸水は消失しました。一方で約10%の患者で悪性腫瘍が経過中に判明しています。 あくまで一つのcohort studyの結果ですが、原因不明の胸水の大部分は良性疾患であり多くの症例で胸水が消失していることより、経過観察で胸水が消失しない症例においては、悪性腫瘍を念頭に置いた再検索も考慮すべきと思われます。 ①NEJM 2002;346: ②Respiration 2005;72:74-8(Abstractだけです、論文が落とせませんでした) ・大部分の胸水は良性疾患なので、たいていは経過観察 ・自然経過で消失しない原因不明の胸水においては悪性腫瘍の可能性を考慮

24 まとめ 胸水貯留は呼吸器疾患や悪性腫瘍、膠原病、感染症他、種々の疾患が原因になりうる。胸水検査はこれらの疾患の鑑別に役立つ有効な検査である。
胸水貯留は呼吸器疾患他、様々な疾患が原因になりうる。 胸水解析はこれらの疾患の鑑別に役立つ有効な検査である。

25 専門医研修カリキュラム このe-ラーニングコースは以下の専門医研修カリキュラムの項目に 準拠しています。
 専門医研修カリキュラム   このe-ラーニングコースは以下の専門医研修カリキュラムの項目に 準拠しています。 総論Ⅳ.11.1)   超音波ガイドを用いない胸腔穿刺 総論Ⅳ.11.2)   胸部超音波ガイド下胸腔穿刺

26 参考文献① 外観 Villena V, López-Encuentra A, García-Luján R, et al. Clinical implications of appearance of pleural fluid at thoracentesis. Chest. 2004;125:156-9. Lightの基準 Porcel JM, Vives M. Classic, abbreviated, and modified Light's criteria: the end of the story? Chest. 1999;116: 結核性胸膜炎 益田公彦, 赤川志のぶ. 結核性胸膜炎. 呼吸器内科. 2013;24: Gopi A, Madhavan SM, Sharma SK, et al. Diagnosis and treatment of tuberculous pleural effusion in Chest. 2007;131: Pai M, Flores LL, Hubbard A, et al. Nucleic acid amplification tests in the diagnosis of tuberculous pleuritis: a systematic review and meta-analysis. BMC Infect Dis. 2004;4:6.  Hooper C, Lee YC, Maskell N; BTS Pleural Guideline Group. Investigation of a unilateral pleural effusion in adults: British Thoracic Society Pleural Disease Guideline Thorax. 2010;65 Suppl 2:ii4-17.  Goto M, Noguchi Y, Koyama H, et al. Diagnostic value of adenosine deaminase in tuberculous pleural effusion: a meta-analysis. Ann Clin Biochem. 2003;40: Maskell NA, Butland RJ; Pleural Diseases Group, Standards of Care Committee, British Thoracic Society. BTS guidelines for the investigation of a unilateral pleural effusion in adults. Thorax. 2003;58 Suppl 2:ii8-17. Roper WH, Waring JJ. Primary serofibrinous pleural effusion in military personnel. Am Rev Tuberc. 1955;71: Ocaña I, Ribera E, Martinez-Vázquez JM, et al. Adenosine deaminase activity in rheumatoid pleural effusion. Ann Rheum Dis. 1988;47:394-7.

27 参考文献② 悪性胸水 Antunes G, Neville E, Duffy J, et al. BTS guidelines for the management of malignant pleural effusions. Thorax. 2003;58 Suppl 2:ii29-38. Chernow B, Sahn SA. Carcinomatous involvement of the pleura: an analysis of 96 patients. Am J Med. 1977;63:   Marel M, Stastny B, Melínová L, et al. Diagnosis of pleural effusions. Experience with clinical studies, 1986 to Chest. 1995;107: Dekker A, Bupp PA. Cytology of serous effusions. An investigation into the usefulness of cell blocks versus smears. Am J Clin Pathol. 1978;70: Garcia LW, Ducatman BS, Wang HH. The value of multiple fluid specimens in the cytological diagnosis of malignancy. Mod Pathol. 1994;7:665-8. Swiderek J, Morcos S, Donthireddy V, et al. Prospective study to determine the volume of pleural fluid required to diagnose malignancy. Chest. 2010;137:68-73. Porcel JM, Vives M, Esquerda A, et al. Use of a panel of tumor markers (carcinoembryonic antigen, cancer antigen 125, carbohydrate antigen 15-3, and cytokeratin 19 fragments) in pleural fluid for the differential diagnosis of benign and malignant effusions. Chest. 2004;126: Miédougé M, Rouzaud P, Salama G, et al. Evaluation of seven tumour markers in pleural fluid for the diagnosis of malignant effusions. Br J Cancer. 1999;81: Scherpereel A, Astoul P, Baas P, et al. Guidelines of the European Respiratory Society and the European Society of Thoracic Surgeons for the management of malignant pleural mesothelioma. Eur Respir J. 2010;35: Paganuzzi M, Onetto M, Marroni P, et al. Diagnostic value of CYFRA 21-1 tumor marker and CEA in pleural effusion due to mesothelioma. Chest. 2001;119: Fujimoto N, Gemba K, Asano M, et al. Hyaluronic acid in the pleural fluid of patients with malignant pleural mesothelioma. Respir Investig. 2013;51:92-7.  Creaney J, Yeoman D, Naumoff LK, et al. Soluble mesothelin in effusions: a useful tool for the diagnosis of malignant mesothelioma. Thorax. 2007;62:   Scherpereel A, Grigoriu B, Conti M, et al. Soluble mesothelin-related peptides in the diagnosis of malignant pleural mesothelioma. Am J Respir Crit Care Med. 2006;173:  

28 参考文献③ 膠原病関連 Pettersson T, Klockars M, Hellström PE. Chemical and immunological features of pleural effusions: comparison between rheumatoid arthritis and other diseases. Thorax. 1982;37: 山田嘉仁. 全身疾患に伴う胸膜炎. 呼吸器内科. 2013;24: Wang DY, Yang PC, Yu WL, et al. Serial antinuclear antibodies titre in pleural and pericardial fluid. Eur Respir J. 2000;15: Porcel JM, Ordi-Ros J, Esquerda A, et al. Antinuclear antibody testing in pleural fluid for the diagnosis of lupus pleuritis. Lupus. 2007;16:25-7. Bouros D, Pneumatikos I, Tzouvelekis A. Pleural involvement in systemic autoimmune disorders. Respiration. 2008;75:   黄色爪症候群 Maldonado F, Ryu JH. Yellow nail syndrome. Curr Opin Pulm Med. 2009;15:371-5. Maldonado F, Tazelaar HD, Wang CW, et al. Yellow nail syndrome: analysis of 41 consecutive patients. Chest. 2008;134: 原因不明の胸水 Light RW. Clinical practice. Pleural effusion. N Engl J Med. 2002;346:   Venekamp LN, Velkeniers B, Noppen M. Does 'idiopathic pleuritis' exist? Natural history of non-specific pleuritis diagnosed after thoracoscopy. Respiration. 2005;72:74-8.

29 設問 胸水検査において、誤っているものはどれか、一つ選べ。 a. Lightの基準では滲出性の判定でも、漏出性胸水のことがある。 b. 胸水ADAは結核以外の疾患でも上昇することがある。 c. 悪性胸膜中皮腫の胸水中のCYFRAは肺癌のそれと比較して高値となりやすい。 d. 悪性胸水を疑う場合、胸水細胞診検査は20mlあれば十分である。 e. 悪性胸水の原因として乳癌は2番目に多い。 f. リウマチ関連胸水では、胸水中glucoseが低下していることが多い。

30 設問の正解 正解:d ヒントスライド a, 10枚目 b, 14枚目 c, 19枚目 d, 17枚目 e, 16枚目 f, 20枚目

31 解説 胸水検査において、誤っているものはどれか。一つ選べ。 a. 正しい →Lightの基準の感度は90%以上と高値だが、特異度は70-80%程度。 b. 正しい →胸水ADAはリウマチや膿胸でも上昇する。 c. 正しい →悪性胸膜中皮腫において胸水CYFRAの上昇は特徴所見の一つ。 d. 誤り →胸水穿刺を繰り返すことで、また胸水を用いてcell blockを作成する ことで、細胞診の感度を上げることができる。 e. 正しい f. 正しい


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