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人間科学概論 第4回:心理学と教科教育の融合

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1 人間科学概論 第4回:心理学と教科教育の融合
2017/3/1 人間科学概論 第4回:心理学と教科教育の融合 寺尾 敦

2 今日の学習 認知心理学あるいは認知科学とは何かを理解する. 「知的な人間」とは何かを理解する.
認知心理学・認知科学は,学校教育において,どのような目標で,何を教えることを支持するのかを理解する. 参考資料:ブルーアー, J. T. (1997). 授業が変わる―認知心理学と教育実践が手を結ぶとき―.北大路書房.→ 「学習心理学」テキスト

3 認知心理学 認知心理学(cognitive psychology)とは?
人間の認知機能に関する心理学.認知機能とは,広い意味で「わかる」こと.感覚・知覚,記憶,思考,問題解決,意思決定,・・・ 情報処理アプローチを採用する.人間をコンピュータにたとえて理解する.環境からの情報の入力,内部での処理,出力(反応)という一連のプロセスを考える.

4 認知科学 認知科学(cognitive science)とは?
認知心理学を含む,学際的研究領域.他に,哲学,人類学,言語学,人工知能,神経科学,教育学を含む. 情報処理アプローチを採用する(認知心理学と同じ)

5 認知研究の歴史 認知心理学あるいは認知科学は,どのように(どうして)誕生したのか?
人間の認知機能,特に,内的な思考プロセスについての関心は,非常に古くからある. アリストテレスまでさかのぼる. 20世紀初頭の「意識心理学」は,「内観法」(introspection)を用いて,人間の思考を研究した.(Wurzburg [ヴュルツブルグ] 学派) 参考:実験心理学の誕生は1879年.ライプチヒ大学で Wundt [ヴント] による.

6 内観法による思考研究 被験者に問いを与え,反応を引き出したあと,どのようにしてその反応が出てきたのかを振り返って報告してもらう. 例
2017/3/1 内観法による思考研究 被験者に問いを与え,反応を引き出したあと,どのようにしてその反応が出てきたのかを振り返って報告してもらう. 質問:Bite. Cause? 内観:As soon as I had read the words the search was on. I had also had a picture of a leg with wound on it and saw nothing else. Then ‘dog’ came to me in the form of an idea, with the consciousness: dogs bite. 参考:Mayer, R. E. (1992). Thinking, problem solving, cognition (2nd ed.). Freeman.

7 内観法への批判 内観法は自己報告.これは本当に心的プロセスを正しく表しているのか,疑問である.
参考:現在の認知心理学は,内観法を洗練させた「発話思考」(thinking aloud)を用いる.課題遂行と同時に,意識内容を発話する.

8 行動主義 1920年ごろからの行動主義(behaviorism):内観法を非科学的方法として排除.外から観察可能な「刺激」(stimulus)と「反応」(response)の間の関係を研究. 内的なプロセスの存在は否定しないが,それは「ブラックボックス」として扱う.

9 古典的条件づけ 無条件刺激 (肉,えさ) 無条件反応 (唾液分泌) 条件刺激 (ベル音) 対呈示 条件反応 (唾液分泌)
無条件刺激と条件刺激の間に連合が形成される

10 行動主義への不満 行動主義は,確かに科学的であったかもしれない. しかし,内的プロセスをブラックボックスとしておくのは,やはりつまらない.
2017/3/1 行動主義への不満 行動主義は,確かに科学的であったかもしれない. 再現性,反証可能性 しかし,内的プロセスをブラックボックスとしておくのは,やはりつまらない. 内的プロセスに踏み込もうとする立場も出てきた.(新行動主義) 認知心理学誕生前夜の様子は,佐伯先生の著書『理解とは何か』を参照するとよい. 「反証可能性」(falsifiability)は,ポパー(Karl Popper)による主張.

11 認知心理学・認知科学の誕生 20世紀中ごろに,コンピュータが出現.新しい研究アプローチを手に入れた!
人間をコンピュータに例えることで,心的プロセスの研究をすることができる. 実際にコンピュータ上で動く思考プログラムも書かれた.こうしたプログラムは,人間の思考過程についての強力な仮説,あるいは精緻な説明となる.

12 教育への貢献 認知科学あるいは認知心理学は,どうして教育に貢献できるのか? 教育・学習の根本にかかわる重要な問題を研究しているから.
大きな問題の例:学習とは何か?理解するとは何か? 具体的問題の例:数学の問題を解くにはどのような知識が必要なのか?

13 「できる人」とは? 「知的な人間」とは何だろうか? この問いは,学校教育で,何を目標に,何を教えるかを考えさせる.
数学ができるようになるのは,頭の中で何が変わるのか? 数学ができる人は,論理的な思考のできる人なのか? 数学ができる人は,他の科目の成績も優秀なのか? この問いは,学校教育で,何を目標に,何を教えるかを考えさせる.

14 教育内容・目標の4つの考え方 形式陶冶:難しい教科を通して,一般的な知性を鍛える.
弱い方法:一般的な問題解決方略を教える.さまざまな領域でこの方略を使うことができる. 領域固有の知識:特定領域で有効な知識や問題解決方略を教える.特定領域での熟達化を目指す. メタ認知・学習方略:メタ認知技能と,学習方略を教える.「知的な初心者」を育成する.

15 1.形式陶冶 形式陶冶(けいしきとうや・formal discipline):一般的な知的能力を重視する立場.ラテン語や数学など,難しい科目の訓練によって知性が鍛えられるとする.古代ギリシアに始まる. 実質陶冶(material discipline):実学的な教養,知識を重視する立場.

16 学習の転移 学習の転移(transfer):先行する学習が,後の学習に影響を及ぼすこと. 何が「転移」するのか?
形式陶冶の立場では,一般的な知性や能力.特定の科目で鍛えられた知性が,他の科目の学習でも役立つと考える. 実質陶冶の立場では,転移は限定的.特定の科目での知識は,適用できる範囲が狭い.

17 形式陶冶の否定 20世紀初頭には,形式陶冶の立場が広がっていた.
いまでも,「数学を学習して論理的思考力を高める」とか,「脳を鍛える」というのは,形式陶冶の考えを受け継いでいる. エドワード・ソーンダイク(Edward Thorndike)は,形式陶冶が主張する転移が本当に生じるのか研究した.結果は否定的で,形式陶冶の考え方は否定された.

18 ソーンダイクの研究 20世紀初頭に,ソーンダイクによって,転移の範囲は形式陶冶が主張するように広くないことが示された.
図形弁別能力の訓練は,訓練に用いた図形とは異なる形の図形に転移しない. 数学の問題形式を変えるとパフォーマンスが落ちる.

19 形式陶冶の否定 一般的知性というものの存在は,心理学者の間で,いまでも信じられている.
「知能検査」で測定している 「知能」とは何か,まだ明らかではない. しかし,特定の教科の訓練によって一般的知性を鍛えられるという考えは,否定されている. 数学の学習で身につくのは,どんなときにも役立つ一般的な論理的思考力ではない.

20 2.弱い方法 弱い方法(weak method):領域一般の問題解決方略. 強い方法(strong method):領域固有の問題解決方略.
初期の人工知能研究は,弱い方法によって成功を収めた. 論理学の問題を解く,思考する初めてのプログラム Logic Theorist は,手段―目標分析(means-ends analysis)を用いた.

21 問題解決とは何か 問題:現在の状態(初期状態)と目標状態の間にギャップのある状況.
操作子(operator):特定の問題状況に適用し,その状況を変化させることのできる手段. 問題空間:初期状態から目標状態まで,操作子を適用することで作られる,可能な状態すべて. 問題解決:問題空間の中で,目標状態に至るパスを見つけること.

22 手段―目標分析 目標状態と現在の状態を差異を解消する操作子があり,ただちに適用可能であれば,それを実行する.
操作子をただちに適用できないのならば,それが適用できる状況を得ることを下位目標とする. 下位目標をただちに達成する手段があれば,それを実行する. 下位目標をただちに達成する手段がなければ,さらに下位目標を設定する. 下位目標の設定と解決を繰り返すことで,最終目標が達成される.

23 例題:ハノイの塔

24 目標状態は,上から円盤A,B,Cの順で,すべての円盤がペグ3に刺さっている状態である.目標状態を達成するために,まず,円盤Cをペグ3に移動したい.この手段を実行できればよいのだが,円盤AとBがCの上にのっているので,この移動は実行できない.そこで,円盤BがCの上から取り除かれた状態を下位目標(下位目標1)にする.この下位目標を達成するために,円盤Bをペグ2に移動したい.この手段を実行できればよいのだが,円盤AがBの上にのっているので,この手段を実行できない.

25 そこで,円盤Aが円盤Bの上から取り除かれた状態を下位目標(下位目標2)とする.この下位目標を達成するため,円盤Aをペグ3に移動したい.この手段はただちに適用可能なので,実行する.すると,下位目標2が達成される.この下位目標が達成されたので,円盤Bをペグ2に動かすという手段が適用可能になった.そこで,この手段を適用する.これで,下位目標1が達成された.円盤Cをペグ3に移動したいが,ペグ3には円盤Aがある.そこで,円盤Aがペグ3から除かれた状態を下位目標にする.・・・・・

26 手段―目標分析の挫折 手段―目標分析による問題解決は,目標からさかのぼって問題を解決するので,「後ろ向き推論」と呼ばれる.
手段―目標分析に頼った研究は,まもなく挫折した.数学や物理の問題を解くには,その領域に固有な,様々な知識や問題解決方略が必要であることがわかった. 弱い方法をさまざまな領域で活用するという形での,学習の転移は期待できない.

27 熟達者と初心者の比較 物理の初心者は,手段―目標分析のように,後ろ向きに問題を解く.熟達者は,問題に与えられた条件から,前向きに問題を解く.
熟達者は,特定の問題に関する知識である,問題スキーマを持っている. チェスの熟達者は,チェスで現れる駒の配置の記憶は優れているが,他の記憶課題ではそうではない.でたらめな駒配置でもダメ. 意味のある配置を知っており,いくつかの駒の組み合わせが一つの記憶単位(チャンク)となっている.

28 物理の初心者と熟達者 例題:長さ l の斜面を,質量 m の物質が滑り落ちるときの,斜面下での速度 v を求める.
初心者は,求めたい速度 v を含んだ公式を思い出す.その公式の中に v 以外の未知数があれば,それを求めるための公式をさらに思い出す. 熟達者は問題状況の力学的記述から解決を始める.

29 3.領域固有の知識 人間の知的ふるまいは,特定領域に固有の知識に支えられている. 熟達化は狭い範囲で生じる.
認知心理学・認知科学の基本的主張 熟達化は狭い範囲で生じる. 学習の転移は,ある課題で学習した手続きが,別の課題にも適用可能な場合に生じる. ただし,学習者はこの適用可能性になかなか気がつかない.

30 問題解決に必要な知識 宣言的知識(declarative knowledge) :事実的な知識.辞書的.
手続き的知識(procedural knowledge) :問題の解き方に関する知識.If-Then形式のプロダクション・ルールで記述可能. 熟達化は,手続き的知識の獲得と,その洗練のたまもの. 学習の転移は,ある課題で学習したプロダクション・ルールが,別の課題にも適用可能な場合に生じる.これは認知的スキルの転移である.

31 4.メタ認知・学習方略 同じ初心者でも,学習のはやい「知的な初心者」がいる.これはなぜか?
初心者なのだから,その領域の知識は関係ない メタ認知:認知過程をモニタリングし,必要に応じて行動をコントロールする働き.自分自身の知識状態や認知的特性に関する理解もメタ認知である. 学習方略:学習のやり方に関する知識.

32 知的な初心者 学習内容が自分にとってどれくらい難しいか把握する(メタ認知).難しさに応じた学習方略をとる.
自分がどれくらい学習内容を理解できたのか自己診断する.そのための方法を知っている. テキストや教師といった学習リソースを,いつどのように活用したらよいか知っている. 適切な学習目標を設定し,必要な学習時間をマネジメントできる.

33 メタ認知・学習方略の教育 メタ認知や学習方略は教育可能である. ただし,単に教えるだけではうまくいかない.
それらがいつ役に立つのか,なぜ役に立つのかを同時に教える,「インフォームド」な教授が必要. 有効性が実感できなければ,わざわざ負荷の高い方略を使うことをしない.

34 教育内容・目標の4つの考え方 形式陶冶:難しい教科を通して,一般的な知性を鍛える.
弱い方法:一般的な問題解決方略を教える.さまざまな領域でこの方略を使うことができる. 領域固有の知識:特定領域で有効な知識や問題解決方略を教える.特定領域での熟達化を目指す. メタ認知・学習方略:メタ認知技能と,学習方略を教える.「知的な初心者」を育成する.

35 認知心理学・認知科学が支持する 教育内容・目標
領域固有の知識:特定領域で有効な知識や問題解決方略を教える.特定領域での熟達化を目指す. メタ認知・学習方略:メタ認知技能と,学習方略を教える.「知的な初心者」を育成する.

36 社会情報学部で 認知科学に基づいて教育の問題を考えることは,分野融合(リエゾン)のよい例.
人間の学習についての理解に基づき,教育をデザインする.他者や道具との相互作用を重視する立場からの研究もある.(社会・人間コース) 認知科学では,認知過程を説明するコンピュータ・シミュレーションやモデリングも有力な研究手法.情報系科目が好きな学生にも参加してほしい.(人間・情報コース)

37 小テスト 「脳を鍛える」とか「脳トレ」といった言葉が使われている.認知心理学・認知科学から見て,この表現はおかしい.それはなぜかを述べよ.以下のことに言及すること. 認知心理学・認知科学の一般的結論として,何は鍛える(トレーニングする)ことができて,何は鍛えられないのか 「脳トレ」(計算とか音読)が鍛えているものがあるとすれば,それは何か


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