X線で宇宙を見よう 1. X線て何だ? 2. ダークマターやブラックホールが 見える 3. 「すざく」衛星について 首都大学東京 ( 東京都立大学 ) 大橋隆哉.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
宇宙の「気温」 1 億度から –270 度まで 平下 博之 ( 名古屋大学・理・物理 U 研 ).
Advertisements

硬 X 線で探るブラックホールと銀河の進化 深沢泰司(広大理) 最近の観測により、ブラックホールの形成と 銀河の進化(星生成)が密接に関係することが わかってきた。 ブラックホール観測の最も効率の良い硬 X 線で 銀河の進化を探ることを考える。 宇宙を構成する基本要素である銀河が、いつ どのように形成され、進化してきたか、は、宇宙の.
太陽系 地球 太陽 X線天文衛星 ©JAXA ©NASA ©JAXA 銀河~恒星の ~10 15 m ~10 21 m ~10 7 m ~10 9 m ー X線X線 電子 熱制動放射 特性X線(輝 線) + イオン 遷移 エネルギー準位 高 低 ー X線X線 etc.. 電磁波の波長 長 短 電磁波のエネルギー.
2013 年度課題研究 P6 Suzaku によるガンマ線連星 LS I の観測データの解析 2014 年 02 月 24 日 種村剛.
X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
「すざく」衛星が見たブラックホールの姿 〜速報〜 ① ケンタウルス座Aの場合 ② 白鳥座X-1ブラックホールの場合
2000年1月17日版 アストロ E 衛星 文部省宇宙科学研究所
神岡宇宙素粒子研究施設の将来 Future of the Kamioka Observatory
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
GRS 等におけるジェット噴出と X 線強度変動の相関
宇宙大規模プラズマと太陽コロナの比較研究
--X線天文衛星「すざく」の成果を中心に--
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
次期X線国際天文衛星 NeXT High-precision X-ray Spectroscopy
M1M2セミナー すざく衛星による狭輝線1型セイファート銀河TonS180のワイドバンド観測
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
愛媛大学 理学部物理学科 & 宇宙進化研究センター
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
内山 泰伸 (Yale University)
太陽を見る 可視光 X線(ようこう衛星) 太陽フレア.
SAX J1748.2−2808 からの 3 つの鉄輝線と593 秒周期の発見
高感度全天X線監視による 巨大バイナリーブラックホールの探査
基礎宇宙物理学 II 電磁流体力学入門 第1回 天体活動現象入門 2011年4月8日.
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
「すざく」衛星と日本のX線天文学 July 10, 2005
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
X線天文衛星「すざく」による HESS未同定天体の観測
パルサーって何? 2019/4/10.
XMM-Newton 衛星による電波銀河 Fornax A の東ローブの観測
電波銀河 Fornax A の東ローブのEnergetics の XMM-Newton による調査
暗黒加速器とパルサー風星雲 --HESSJ とPSR
X-ray Group Suzaku NeXT 教授 小山 勝二 准教授 鶴 剛 助教 松本 浩典 NeXT
すばる望遠鏡による10GeV領域ガンマ線天体の観測
XMM-Newton 衛星による電波銀河3C 98の観測
京大他、東大やアデレード大学など日豪の16機関が共同で、オーストラリアの砂漠地帯に望遠鏡4台を建設しTeVγ線を観測している。
宇宙線研究室 X線グループ 今こそ、宇宙線研究室へ! NeXT
「すざく」であばく超光度X線源 (P4-7) rikne
新潟大学集中講義 ープラズマ物理学特論ー (天体電磁流体力学入門) 2004年1月19日ー1月21日
平成 31 年度 P6 高エネルギー宇宙実験 担当: 物理学第二教室 宇宙線研究室の教員 谷森達 教授、鶴剛 教授、 窪秀利 准教授、
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
MAXI による高感度全天X線モニターとサーベイ 磯部 riken
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション
ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
「すざく」でみた天の川銀河系の中心 多数の輝線を過去最高のエネルギー精度 、統計、S/Nで検出、発見した。 Energy 6 7 8
第12回 銀河とその活動現象 東京大学教養学部前期課程 2017年度Aセメスター 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
Introduction to the X-ray Universe
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ようこそ Hot Universe へ Fes. 馬場 彩 Contents X線天文学とは?
2011年8月金沢大学集中講義 「X線天文学」 第2回 相対性理論とブラックホール
CHANDRA衛星の観測結果による、 球状星団M4(NGC6121)のスペクトル解析
超高角度分解能X線望遠鏡 Xmas Project
国際宇宙ステーション搭載 全天X線監視装置搭載用CCDカメラ開発の現状
XMM-Newton衛星による 電波銀河 3C 98 の観測
研究紹介:山形大学物理学科 宇宙物理研究グループ 柴田研究室
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
X線天文衛星『すざく』の成果 1.5年経過 “すざく” (朱雀) 査読付専門雑誌 32 編 (日本の衛星、大型プロジェクトでは最多)
「すざく」(HXD, XIS)と銀河のエックス線写真
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
原始星からのX線発見と課題 (r-Ophの)T-Tauri星からX線放射とフレアーの発見
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
ローブからのX線 ~ジェットのエネルギーを測る~
どんな天体がX線を出すか? MAXIのデータを1年半に わたり集積した全天X線画像
Presentation transcript:

X線で宇宙を見よう 1. X線て何だ? 2. ダークマターやブラックホールが 見える 3. 「すざく」衛星について 首都大学東京 ( 東京都立大学 ) 大橋隆哉

X線って何だ? X線は波長の短い電磁波 光子のエネルギー ( h = hc / ) が大きい 高温の物質がX線で輝く 太陽のコロナ ブラックホールへ落ち 込むガス 銀河団を満たす高温ガス 電磁波のスペクトル

X線で見る太陽 可視光 X線 ( 「ようこう」衛星 ) :太陽 黒点は高温プラズマの噴出口 X線で見える天体の姿は可視光とは大きく異なる 可視光では見えないものがX線で見える

地球の大気はX線を通さない 小田 稔「宇宙線」 裳華房 1974

X 線天文衛星 「あすか」 ( 日 ) ローサット ( 独 ) チャンドラ ( 米 ) XMM ニュートン (ESA) 1999-

高解像度撮像:チャンドラ衛星 かに星雲中心のパルサー ( 中性子星 ) 角分解能 0.5 秒角 ⇔ 光のハッブル宇宙望遠鏡に匹敵 電波銀河ケンタウルス座 A の ジェット 3 光年 (1.6 分角 ) 光年

活動銀河の 鉄ライン X線のエネル ギー X線強度X線強度 相対論的速度で回転する降 着円盤を中心核のX線が照 射 重力による赤方偏移と、近 づくガスの青方偏移が合成 され、 広がった輝線スペクトルの 構造が期待される 「あすか」の観測結果は理 論的予想に合う 「あすか」による活動銀河 MCG からの鉄の輝線

宇宙を構成するもの 可視光X線 軟X線 ( 未解明 ) 我々が直接観測できている物質は宇宙全体の 1  2% に過ぎない

銀河団 約 1 千万光年の中に銀河が数 100 個集まった巨大な集団 宇宙の大構造の中でも特に濃い 領域が銀河団になる 宇宙年齢をかけて作られてきた 重力はダークマターが支配して いる 我々の観測できる物質はほとん どがX線で光る高温ガス ダークマター:高温ガス:銀河 ≒ 75:20:5 かみのけ座銀河団 銀河分布が示す 宇宙の大構造

銀河団の X 線放射 可視光 ( 中心領域の銀河 ) ペルセウス座銀河団 X 線の画像 (500 万光年 ) 鉄の輝線 X線のエネルギー Chandra の見た 中心 30 万光年 (Fabian et al. 2003) 約 6 千万度 の高温ガ スが充満

なぜダークマターがあると 言えるのか? 銀河団の中には高温ガスが閉じ込められ ている ( 観測事実 ) 重力が弱いと熱いガスは蒸発して逃げて しまう ( お湯を沸かすと熱い湯気は逃げて いく ) 銀河や高温ガスの質量を合計しても、ガ スを閉じ込める重力に足りない ( ガスが熱 すぎる。銀河の運動も活発すぎる。 ) ゆえに、見えない物質が重力の源になっ ていると考えざるを得ない。

質量分布 A1060 ケンタウルス座銀河団 重力質量 高温ガス 重力質量 高温ガス 銀河 銀河団の重力質量: ~ M ☉ ( 太陽質量 ) 高温ガスは銀河の合計より 4-5 倍重い 重力質量は銀河と高温ガスの合計より 4-5 倍重い ⇒ダークマター 半径

「すざく」衛星 2005 年 7 月 10 日 JAXA 宇宙科 学研究本部から打ち上げ 2000 年打ち上げ失敗の再挑戦 重量 1700 kg 観測装置 X 線反射望遠鏡 4 台 [ マイクロカロリメータ 1 台 ] CCD 検出器 4 台 硬 X 線検出器 1 台

「すざく」総合試験 熱真空槽へ 太陽電池発 電能力試験 重心測定 振動試験振動試験

X線天文衛星の性能比較 XMM-Newton ニュートン Chandra チャンドラ Astro-E2 すざく 良いエネル ギー分解能 大きな面積 高エネルギ ーの感度 解像度

「すざく」の観測装置 XRT HXD: シンチレー タ + Si 検出器 プリコリメータ keV keV 視野 : 度

「すざく」の観測装置 XRS: マイク ロ カロリメータ XIS: X 線 CCD  E = 120 eV 視野 : 19 分 x 19 分 4 セット, 日米協力  E = 6 eV 視野 : 2.6 分 x 2.6 分 日米協力 首都大も参加

「すざく」の有効面積 XRT+FPD Non-imaging Detector 0.5 keV ~ 700 keV までをほぼ連続的に観測可能

Suzaku image of the Fornax cluster Raw spectra (XIS1) O line Hard excess 「すざく」の見たろ座銀河団