日本再生の政策課題: 漁業の復興とクラスター化 法政大学大学院政策創造研究科 岡本義行
はじめに 東北の基幹産業は農林水産業 水産業の被害と復興 水産業の低収益と低生産性 水産業クラスターの事例:ノルウェー 地域イノベーション いくつかの事例
岩手県久慈港
岩手県久慈港市場
東北の基幹産業は農林水産業 農林水産業の多くは単なる復旧・復興で は存続できない。 新たな産業のあり方: → 特区の活用 事業形態 → クラスター化:知識集約産業化
漁業の就業者・船の長期減少傾 向 沿岸漁業 : 471,260 人( 1975 ) →214,480 人 ( 2001 ) 沖合・遠洋漁業 : 117,250 人( 1974 ) →32,930 人 ( 2001 ) 漁業船体: 317,512 隻( 1963 ) →204,289 隻( 2001 )
震災による漁業の被害 漁船の被害:山田港では90%の船が被 害 漁港の被害:岸壁や隣接市場の被害 漁具の被害:養殖 漁業者の被害 → 岩手県宮古市重茂(おもえ):800艘 → 14艘 → 80艘:漁業協同組合が船や漁 具を提供(3 / 4保証)、船のシェアー: 天然コンブの操業開始
従来からの漁業の課題 水揚げの減少、就業者の減少、後継者不 足 ← 沿岸漁業就業漁師(87%) 過剰な漁港建設 → 宮城県142(第1種1 15、第2種23、第3種5)、岩手県 111(第1種83、第2種23、第3 種4) → 被災漁港108 乱獲 ← 漁業可能割り当て制度( TAC ):鯖 の漁獲量の10%はノルウェーから輸入 ← 「オリンピック制」:マイワシ( 300 万ト ン →2 万 7000 トン) 漁業権と巻き網漁の摩擦:個別割り当 て?
復興を望む漁師? 震災後、宮城県漁協(正組合員は90日 以上)における漁師の3割は廃業予定 漁師の1割は検討中 全国2位:沿岸漁協と養殖 宮城県知事の特区提案 担い手?
若者を集める漁業 石川県七尾市佐々波港:(株)佐々波鰤 網 氷見鰤 定置網漁と設備投資、図書館 若者の採用試験はペーパーテスト:社の 方針は「学びながら稼ごう」 年収600万円 勝木省司社長は「漁師も魚を取るだけじ ゃだめ。直接消費者と接して、営業や販 売を勉強しなければ」
都道府県,漁業部門別漁獲量 (平成 19 年) (単位 1,000 ト ン) 海面漁業 海面養 殖業 北海道 長崎 宮城 静岡 茨城 197 x 三重 千葉 青森 岩手 島根
復興の方向性:クラスター化 乱獲:オリンピック方式から IQ ( Individual Quota ) → 資源管理 漁業権:漁場でのトラブル解消:沿岸と 沖合 漁港の集約や法人化 養殖漁業へ:イノベーション クラスター化:サプライチェーン
日本とノルウェーの水産業経営 比較 日本 ノルウェー 生産数量(千トン) 5,890 3,409 生産金額(億円) 17,189 2,660 就業人口 ( 万人) 漁港数 2, 漁業協同組合数 1,480 6 生産コスト(万円 / トン) 一人当たり生産金額 501 1,900
ノルウェー「持続可能な発展の ための」養殖漁業戦略 (1)安定雇用: 5 年で最大 1 万人を目標 (2)生産物の安全性:ダイオキシン許 容量低減、残留抗生物質管理、等を進め る。 (3)健全な環境の維持:排水の影響低 減、生物種の多様性確保、等を図る。 世界の養殖飼料分野のトップメーカー: オランダの Nutreco やフィンランドの Ewos→ 数倍の飼料効率を実現 → 頭脳・技術 集約型産業
ノルウェーにおける海を活用し た クラスター政策 12カ所の NCE (ノルウェー専門家センタ ー:クラスター):知識基盤の形成とイ ノベーション (1)食品クラスター (2)養殖クラスター (3)観光クラスター (4)海事クラスター( Maritime ) (5)海洋クラスター( Subsea )
ノルウェーの NCE
ノルウェーの水産養殖クラスタ ー 1970年代以来発展 → ノルウェー最大の 輸出産業:41億ユーロ( 5600 億円) ( 2010 ) 専門家と企業の協業によるクラスター形 成 → マーケティング、人材 → 国際市場での 競争力 5つの優先的な活動:イノベーションの ための企業や産業を越えた協力 → 1.市場 と評価、2. 生産、魚の幸福、環境、そし て技術、3. 職能とリクルート、4. 外部条 件、5. ネットワーキングと企業間の情報 共有
ノルウェーの水産養殖クラスタ ー NCE Aquaculture の目標 ノルウェーの養殖と関連産業牽引力 → ( 2017 までに)50億クローネ( 734 億 円)増加と600人の雇用増 国全体の共通な R&D 戦略:より効率的な資 源の利用、より速い問題解決、より市場 化までの短期間の開発 ネットワークの形成と流通 → 水産養殖産業: CREATE (研究型イノベー ションセンター)
一人当たり GDP(2010) (2)ノルウェー 84,443 (6)デンマーク 56,147 (8)スウェーデン 48,874 ( 10 )オランダ 47,172 ( 14 )フィンランド 44,488 ( 16 )日本 42,820
クラスターと産業システム 従業員の職業教育 国内市場、国外市場に関する情報 新規市場に関する情報、契約、入札、規 格に関する専門知識 マーケッティングの実施と外国市場のた めの販 売ネットワーク構築 技術革新、生産方法、生産の組織化に関 する情報 研究機関や大学
おわりに グローバルな競争力のある農林水産業へ の転換 そのためにはクラスター形成によるイノ ベーションの促進:製造業やサービス業、 そして大学や研究機関との連携 多様な人材育成プログラム 地方の地域における産業基盤 → 東京周辺な どで想定される「最大の地震対策」
事例:海洋開発 岩手県立種市高等学校海洋開発科 南部潜り(潜水夫) 潜水の仕事:港湾土木、橋りょう建設、 海底調査、海難救助 潜水夫の60% クラスター化
有用濾過食者 生産 農林産物 生産 食肉生産 栽培海藻生態系 アマモ場 有用堆積物食者 生産場 廃棄・排泄物・ 海藻バイオ燃料 生産 海藻土壌 改良剤 海藻肥料 海藻飼料 貝殻土壌 改良剤 水質浄化 魚介類生産 栄養塩供給 人工流れ 藻 生産 魚介類排泄 物 二酸化炭素吸収 陸域 有用堆積物 食者生産 藻場 造成 排泄物肥料 魚介類資源保全産 卵・棲息・餌場 貝殻漁礁 カーボン・ニュートラル 貝類排泄 物 海藻,有用 物生産 底質浄化 海域 沿岸地域の経済・文化・教育 海士町の藻場生態系サービスの 有効活用と循環型生産システム
農産 物 生産 隠岐 牛生 産 CO 2 排出 CO 2 吸収 海藻栽培 海藻新商品開発 「~環境型新漁業創造に向けた離島発!産地 6 次産業化事業の展開~」 -島根県隠岐郡 海士町 - サプリメン ト 都市 (川崎市) 離島 (海士町) 環境交流 【カーボンオフセット 】 〔海藻種苗の資金調達〕 魚介 類 住処 産卵・餌場 岩牡 蠣生 産 水質浄化 底質浄化 なま こ放 流 食用加工 土壌剤 肥料・飼料 バイオマス 水素電池 四季を通じて 安定供給 飼料飼料 肥料肥料 堆肥堆肥 漁船電源 集魚灯 アラメ、アカモク、アマモ、イワノリ、モズク等(ナマコ) 排泄物吸収排泄物吸収 低負荷循環 (医薬品原料他) (乾物類) 水産資源保全 地球環境保全 CA S商 品化 栄養塩 供給 自然の循環力を 活用した、豊かで 安全な商品を提供 産学官連携 海藻養殖業 新商品販売促進 海藻加工生産 海藻種苗生産 新会社設立 3 社 離島版・雇用創造の実現離島版・雇用創造の実現 副産物牡蠣殻敷設副産物牡蠣殻敷設
海藻種苗 生産販売 機 能 海藻研究 教育交流 機 能 新技術のノウハウ集積 磯焼け対策 藻場造成 (資源管理) 海藻による CO2 吸収 (環境保全) 希少海藻 養殖生産 (付加価値型漁業) 【神馬、ヒジキ、岩ノリ、 ハバ、天草、海ゾーメン、 昆布等】 海藻サプリ 養殖生産 (付加価値型漁業) 【アカ モク等 からフ コイダ ン、ア ルギン 酸など 、エキ スを抽 出】 海藻飼料・肥料 養殖生産 (付加価値型漁業) 離島発! 海藻バイオ燃料 養殖生産 (環境漁業) カジメ類カジメ類 都市住民 との環境交流 促 進 (自然学校) 学術的 交流の促進 (情報発信) 海藻研究者・ ポスドク誘致 (人材育成) 島前高校 海藻専攻科 新設 (地域産業育成) 【都市と離島のカーボンオフセ ット】(排出権取引) 【国際海藻学会等】【国際海藻学会等】 【海藻種苗の生産・植付体験】 【水素エネルギー供給、集魚灯電池 】 【研 究の ため の沿 岸と 調査 研究 室を 提供 】 【後継者育成】 【ツルアラメ、アマモ場等造 成】 文化・教育 の振興 地域経済 の振興 指定管理者 (財)海士町産業資源開発研究所 20 名新規雇用 年間 1,000 名の 環境教育交流 底質浄化 水質浄化排泄物浄化 CO 2 吸収栄養塩供給 産卵・餌場 ハード事業:約 3 億円 新産業 創出 特産品 販売増 視察団体 増加 雇用機会 増大 持続可能 社会 大学との連携 東京海洋大 横浜国大 企業との連携 岡部㈱ バイオ水素 岩谷産業㈱ 環境型新漁業創造に向けた離島発! 6 次産業化の展開