宮部 真衣 † ,荒牧 英治 † ,三浦 麻子 ‡ † 東京大学知の構造化センター ‡ 関西学院大学文学部
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo 研究背景 2. 検証仮説 3. 対象データセット a. ツイートの種類 b. ツイートの発信地 c. 引用関係の定義 4. 分析結果 分析 1 :各地域において, Twitter はどのように利用された のか? 分析 2 :被災地から発信された情報は,他の地域で拡散さ れたのか? 5. まとめ
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. マイクロブログの普及 –Twitter 利用者数: 1491 万人( 2011 年 7 月) 東日本大震災( 2011 年 3 月 11 日) –Twitter などのマイクロブログが重要な情報イン フラの 1 つとして活用された 3 今回の震災において活用された Twitter の 利用傾向を分析し,今後のシステム開発 などのための知見を抽出
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 人々の感情変化の分析 –Cohn ら( 2004 ), Back(2010) 災害・事件:アメリカ同時多発テロ事件( 2001 年) 分析対象:ブログ デマの発信・拡散についての分類 –Mendoza ら( 2010 ) 災害・事件:チリ地震( 2010 年) 分析対象: Twitter 4
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. ツイート発信者の分類や,ツイートで引用さ れた URL の参照内容に関する分析 –Longueville ら (2009) 災害・事件:フランスにおける森林火災( 2009 年) 分析対象: Twitter 伝搬していった情報に関する分析 –Vieweg ら( 2010 ) 災害・事件:オクラホマの火事,レッドリバーでの洪水 ( 2009 年) 分析対象: Twitter –Qu ら( 2010 ) 災害・事件:青海地震( 2010 年) 分析対象:オンラインフォーラム( BBS ) 5
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 東日本大震災発生後に Twitter へと投稿された ツイートを分析 本研究のポイント – 比較的長期間( 20 日間)のデータを用いる – 地域性を考慮した分析を行う 6 震災発生時の Twitter 利用傾向などを 明らかにする
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo 研究背景 2. 検証仮説 3. 対象データセット a. ツイートの種類 b. ツイートの発信地 c. 引用関係の定義 4. 分析結果 分析 1 :各地域において, Twitter はどのように利用された のか? 分析 2 :被災地から発信された情報は,他の地域で拡散さ れたのか? 5. まとめ
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. マスメディア – 情報発信者:メディア運営者 8 一方通行 双方向 ソーシャルメディア – 情報発信者:各個人
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 東日本大震災 – 被害の範囲が広く,マスメディアでも全体を報 じきれない – 被害が深刻でないものの,支援が必要な地域を 対応しきれない [1] マスメディアで対応しきれない被災地の状 況を,ソーシャルメディアにより各個人が 発信できる可能性 9 [1] 小林啓倫:災害とソーシャルメディア~混乱、そして再生へと導く人々の「つながり」~,毎日コミュニケーションズ (2011).
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 1. 情報発信者の状況によって利用方法に違い があるのではないか? 2. 被災地から発信された情報は,全国的に広 まるのではないか? 10 各地域において, Twitter はど のように利用されたのか? 被災地から発信された情報は, 他の地域で拡散されたのか?RQ1 RQ2
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo 研究背景 2. 検証仮説 3. 対象データセット a. ツイートの種類 b. ツイートの発信地 c. 引用関係の定義 4. 分析結果 分析 1 :各地域において, Twitter はどのように利用された のか? 分析 2 :被災地から発信された情報は,他の地域で拡散さ れたのか? 5. まとめ
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 本研究では,以下の 5 種類のデータを利用 – 震災時 2011 年 3 月 11 日から 30 日までのツイート – 「地震」というキーワードを含むツイートを収集 – 平常時 A 震災以前( 2010 年 3 月)のツイート – 平常時 B 震災発生から約 4 か月後( 2011 年 7 月)の,地震以外のトピックに関して 収集したツイート – 「風邪」および関連キーワードを含むツイートを収集 – 平常時 C 震災発生から約 4 か月後( 2011 年 7 月)の,地震以外のトピックに関して 収集したツイート – 「見える」および「聞こえる」を含むツイートを収集 – 平常時 D 震災発生から約 4 か月後( 2011 年 7 月)の,地震以外のトピックに関して 収集したツイート – 症例キーワード(「頭痛」など)を含むツイートを収集 12
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. データ セット 取得期間ツイート数収集キーワード位置情報 震災時 2011 年 3 月 1,612,074 「地震」あり 平常時 A2010 年 3 月 99,765,808 なし 平常時 B 2011 年 7 月 493,597 「風邪」など あり 平常時 C 1,278,581 「見える」 「聞こえる」 平常時 D 4,238,627 症例 (「頭痛」など) 13
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 本研究では,以下のツイート を扱う – リツイート( RT ) 他ユーザのツイートを自分のフォ ロワーに転送する行為 ユーザ名 ” が含まれる (非公式 RT ) ※公式 RT は全体の 2.6% であったため, 今回は非公式 RT のみを用いる – リプライ 特定のユーザ宛のツイート ユーザ名 ” から始まる 14情報拡散行動 対話行動
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 以下の 4 つの地域に分類 –AREA1 :大災害地域 宮城県,岩手県,福島県 –AREA2 :災害地域 AREA1 に隣接した都道府県 青森県,秋田県,山形県, 新潟県,栃木県,茨城県, 群馬県 –AREA3 :間接的災害地域 AREA2 を除いた東京電力管 内の都道府県 東京都,千葉県,埼玉県, 山梨県,神奈川県,静岡県 –AREA4 :非災害地域 AREA1 ~ 3 以外の都道府県 15 大 大 小 小 被害
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 16 発信地の特定手順 – 位置情報が付与されている場合 逆ジオエンコーディングにより都道府 県を特定 – 位置情報が付与されていない場合 ユーザのプロフィールから文字列マッ チングにより都道府県を抽出 ユーザ数ユーザ比率ツイート数 1 人当たりの ツイート数 AREA 1 18,964 人 5.3%51, AREA 2 24,693 人 6.9%60, AREA 3 216,741 人 60.8%497, AREA 4 96,087 人 27.0%221,
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. RT 投稿者と RT されたツイートの投稿者(被 RT 者)の扱い 17 本研究では,ツイート内容から取得可能な 最古のツイート投稿者を被 RT 者とする 本研究では,ツイート内容から取得可能な 最古のツイート投稿者を被 RT 者とする 時間 A ○○ らしい B ユーザ A ○○ らしい C ユーザ B ユーザ A ○○ らしい D ユーザ C ユーザ B ユーザ A ○○ らしい E A B C DE A の RT と見なす
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo 研究背景 2. 検証仮説 3. 対象データセット a. ツイートの種類 b. ツイートの発信地 c. 引用関係の定義 4. 分析結果 分析 1 :各地域において, Twitter はどのように利用された のか? 分析 2 :被災地から発信された情報は,他の地域で拡散さ れたのか? 5. まとめ
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 本発表では,以下の 2 つの調査結果について 報告 19 各地域において, Twitter は どのように利用されたのか?( RQ1 ) 分析 1 被災地から発信された情報は, 他の地域で拡散されたのか?( RQ2 ) 分析 2
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 20 RT 率(情報拡散行動) リプライ率(対話行動) 震災時の各地域における利用傾向を RT 率(情報拡散行動) と リプライ率(対話行動) から分析 災害時の特徴の確認 平常時との違いはあるか? 時間経過に伴い,どのような変化をしているか? 被害の大きさによる違いの確認 各地域での違いはあるか?
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 21 震災時は,情報拡散行動が活発化し, 対話行動が抑制される
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 22 地震発生直後は,情報拡散行動( RT )が最も 活性化し,対話行動(リプライ)が最も抑制
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 23 (a)RT 率(情報拡散行動) (b) リプライ率(対話行動)
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 平常時と比較して,震災時は情報拡散行動( RT )が活発化 RT 率とリプライ率には負の相関あり(相関係数: ) 24 各地域において, Twitter は どのように利用されたのか? RQ1 RT 率(情報拡散)リプライ率(対話) AREA1 25.0%20.0% AREA2 28.8%18.7% AREA3 33.4%17.2% AREA4 42.0%15.8% 大 大 小 小 被害 被害の大きかった地域では対話行動が, 被害の小さかった地域では情報拡散行動がなされた 被害の大きかった地域では対話行動が, 被害の小さかった地域では情報拡散行動がなされた
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 25 RT ・被 RT の位置関係 被災地から発信された情報の拡散傾向 を, RT ・被 RT の位置関係 から分析 RT における位置関係の確認 各地域のツイートは,各地域でどれだけ RT された か? – 他地域で RT された割合の確認 各地域の情報は,どれだけ他地域で RT されたか?
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 26 A ○○ らしい B ユーザ A ○○ らしい AREA 1 AREA 3 被 RT 者と RT 投稿者の位置関係から, 各地域のツイートがどの地域で RT されたかを調査 この場合, 被 RT 者の地域: AREA1 (ユーザ A ) RT 投稿者の地域: AREA3 (ユーザ B )
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 本研究では,ツイート移動率( TTR )を定義 – 各地域の発言が,他地域でどれだけ RT されたか? 27 RT 投稿者 AREA1AREA2AREA3AREA4 計 被 RT 者 AREA112,4703,13626,32314,98956,918 AREA21,43010,51719,52713,16044,634 AREA326,23945,042527,516280,054878,851 AREA46,04710,77899,789110,062226,676 計 48,18669,473673,155418,2651,207,079 例: AREA1 の場合 AREA1 の被 RT 数 –56918 他地域での RT 数 – = 44448
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. TTR は地域の大きさの影響を受ける 28 被引用者の地域 AREA1AREA2AREA3AREA4 TTR 変化率 116.5%88.9%94.0%95.6% 地域ごとに,平常時の TTR との違い ( TTR 変化率)を検証 ※比較対象として,平常時 D のデータを用いた AREA1 (大災害地域)は, 他地域と比較して TTR 変化率が高い
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 29 震災発生から数日間は, AREA1 , AREA2 , AREA3 における TTR 変化率が高い
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 大災害地域( AREA1 )は,平常時と比較し てツイート移動率が高い 震災発生後数日間は,非災害地域 ( AREA4 )を除いた地域におけるツイート 移動率が高い 30 被災地から発信された情報は, 他の地域で拡散されたのか? RQ2 特に被害の大きい地域のツイートについては, 他地域で拡散される割合が多い 特に被害の大きい地域のツイートについては, 他地域で拡散される割合が多い
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo 研究背景 2. 検証仮説 3. 対象データセット a. ツイートの種類 b. ツイートの発信地 c. 引用関係の定義 4. 分析結果 分析 1 :各地域において, Twitter はどのように利用された のか? 分析 2 :被災地から発信された情報は,他の地域で拡散さ れたのか? 5. まとめ
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 概要 – 東日本大震災後のツイート( 2011 年 3 月 11 日~ 30 日)の傾向について調査 分析結果 – 地域によって, Twitter での行動傾向が異なる – 特に被害の大きい地域で発信された情報は,他地域 へと移動し,拡散される傾向がある 今後の課題 – 災害時の利用における問題点への対応の検討 –3 月以降の傾向の分析 現在,継続してツイートを収集中 – ツイート内容を含めた分析 重要な情報が拡散されていたか? 32
Center for Knowledge Structuring, The University of Tokyo. 33 ご清聴ありがとうございました 連絡先: 本研究で用いた地震に関するツイートデータは,以下の URL から取得・利用できます.