海岸工学 夜間主コース 4 年 木曜日3・4限 1 週目 緒論:海岸工学とは何か?、波の種類 2 週目 海岸の形状 3 週目 港湾施設 4 週目 波浪の予知:風波の発生、うねりの伝播 5 週目 不規則波の表現:有義波、スペクトル 6 週目 波の変形:浅水変形、屈折、砕波 7 週目 海浜流:沿岸流、潮汐流、吹送流、波による質量輸送.

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海岸工学 夜間主コース 4 年 木曜日3・4限 1 週目 緒論:海岸工学とは何か?、波の種類 2 週目 海岸の形状 3 週目 港湾施設 4 週目 波浪の予知:風波の発生、うねりの伝播 5 週目 不規則波の表現:有義波、スペクトル 6 週目 波の変形:浅水変形、屈折、砕波 7 週目 海浜流:沿岸流、潮汐流、吹送流、波による質量輸送 8 週目 漂砂:漂砂、海浜変形 9 週目 構造物による波の変形:回折、反射、波の打ち上げ、越波 10 週目 構造物に作用する力:波圧公式、防波堤の設計 11 週目 海岸環境 12 週目 海岸生態系:海での物質循環、流動・生態系モデル 13 週目 微小振幅波の理論1 14 週目 微小振幅波の理論2

緒論:海岸工学とは何か?、波の種類 文明は水の近くで発展 → 河川、湖沼、海 河川・湖沼は淡水 → 飲料水として重要 海 → 漁、交流、物流、軍事 海(外海)に囲まれた日本 太平洋、日本海、東シナ海など 外敵の進入を防ぎ日本独自の文化を形成 大陸との交流・物流は船舶 → 港湾の発達 陸域に囲まれた海域(閉鎖性内湾) 瀬戸内海、有明海、大阪湾、東京湾など 日本の内湾は高い生産性を有する。豊かな水産資源 日本は海からの恩恵を多大に享受している

海岸 → 海と陸地の接点 人間は海岸に様々な施設を構築してきた 海岸の利用例 工業(工業用地の確保、工業用水の確保、材料・製品の運搬) 農業(干拓) エネルギー(火力・原子力発電) 備蓄(石油や天然ガス) 漁業(採取漁業、栽培(養殖)漁業) 港湾(陸上交通と海上交通の接点) 航路(大型の船舶の海上交通路の確保・維持) 空港(海上空港、関西国際空港など) 都市開発(臨海都市開発、六甲アイランドや博多湾人工島など) 廃棄物処理 海浜レジャー(海水浴、潮干狩り、マリンスポーツ) 公園(海浜・海中公園)

海岸利用施設(港湾、防波堤など)の設計・維持管理 海岸利用施設の防災 台風(高潮)、地震(津波)、冬期季節風(高波浪) 海岸環境の環境保全 砂浜の喪失や海水の水質汚濁の防止・回復 技術者がすべきこと これらを支える学術的基礎が海岸工学

海岸工学( coastal engineering )の生い立ち 海岸工学は比較的新しい学問 1950 年 10 月米国カリフォルニア州ロングビーチで開催された 第 1 回国際海岸工学会議( International Conference on Coastal Engineering ) で「海岸工学」という言葉を初めて使用 それ以前は土木工学で海に関係する分野は港湾工学( harbor engineering ) 第二次世界大戦以前は経験的な色彩が強い. 現在は港湾をつくるために必要な波の理論,計画学,地盤工学,施工法 などを包含し港湾のための総合工学的な色彩が強い. 第二次世界大戦中に海洋物理学者によって波浪予測の方法が開発 第二次世界大戦後にこれらの成果が海岸・港湾構造物の計画・設計に活 用されるようになり、 1950 年に第 1 回国際海岸工学会議が開催される 日本では 1954 年に海岸工学研究発表会が開催 翌年、土木学会海岸工学委員会が発足

海岸に関する法律 ( 1 )海岸の利用・開発に関する主な法律 公有水面埋立法 この法律は、公有水面の適正かつ合理的な利用を図るため、自然環境の保全、 公害の防止、埋立地の権利移転又は利用の適正化等の見地から、その埋立に関す る規制を定めている。埋立をしようとしている者は、知事の免許を受けなければ ならない。 港湾法 港湾法は,港湾の秩序ある整備,運営や航路の保全等を目的としている。港湾 の管理は法に基づき設立された港湾局や地方公共団体であるが,管理する区域と して,運輸大臣又は都道府県知事の許可により港湾区域が定められる。 漁港法 この法律は、水産業の発達を図り、これにより国民生活の安定と国民経済の発 展とに寄与するために、漁港を整備し、及びその維持管理を適正にすることを目 的とする。 ( 2 )海岸の防護,保全に関連する主な法律 海岸法 この法律は、津波、高潮、波浪その他海水又は地盤の変動による被害から海岸 を防護するとともに、海岸環境の整備と保全及び公衆の海岸の適正な利用を図り、 もって国土の保全に資することを目的とする。昭和 31 年制定 平成 11 年改正

大阪府港湾局の HP より

海岸法改正の背景 日本の海岸線の総延長 約 35,000km 内訳 砂浜・礫浜・泥浜 約 13,000km 岩礁・崖 約 10,000km 構造部のある人工的な海岸 約 12,000km 海岸保全区域(防災上の対策が必要な区域)約 14,000km それ以外の区域は国有海浜地として財産管理が行われているだけ (つまり 21,000km は積極的な対策がとられていない 被害が発生すれば復旧する程度)

・海岸浸食の進行 砂浜は、遠浅の海岸線を形成し波浪を減衰させ、陸域の波の進入を防ぐ 役割を持っている。また各種動植物の生息・生育や人々の利用の場とし て重要である。 全国に約 19,000ha ある砂浜はこの 15 年間で 13% にあたる 2,400ha が失われ ている。 戦後工業化にともなう埋め立て等の臨海開発による干潟や砂浜の減少 治山・治水事業(ダム、砂防ダムなどの建設)による河川を通しての土砂 供給の減少 沿岸域に設置された構造物による土砂の流れの遮断 海砂利採取(現在は行われていない) 土砂の供給と流出のバランスが崩れ砂浜の減少が生じた

・海岸環境への認識の高まり 持続可能な発展( sustainable development ) 自然との共生( living with nature ) ・海洋レジャー需要の増大 アメニティ空間としての海岸(安らぎや楽しみを享受できる 空間) 高齢化・小子化・価値観の多様化に伴うライフスタイルの変化を背景 として、海岸に期待される役割も多様化しかつ重要性を増す。 ・地方分権化の推進 海岸が地域の特性を形成し地域固有の文化を育んできた。 地域特性を活かした文化的・風土的にも良好な海岸空間の保全・創造。

目的:「被害からの海岸防護」 → 「海岸環境の整備と保全および 公衆 の海岸の適正利用 を追加」 管理内容:「防護工事が主体」 → 「防護,環境,利用」 対象範囲:「海岸保全区域内の海岸(防護工事の必要な海岸)」 → 「すべての国有海浜地を法の 対象に追加」 計画制度:「海岸保全施設(防波堤など)の整備基本計画(都道 府県)」 → 「海岸保全基 本方針(主務大臣)、 海岸保全基 本計画(都道府県)」 管理の主体:「原則都道府県知事」 → 「同左に加えて、沖ノ鳥島 (国)、 一部市町村長」

波峰( wave crest ):波形の最高水位 波谷( wave trough ):波形の最低水位 波高( wave height ) H :波峰と波谷間の鉛直距離 波長( wave length ) L :相続く波峰間(波谷間の)水平距離 周期( wave period ) T: 海面上のある固定点を相続く波峰(波谷)が 通過 に要する時間 波速( celerity ) C :波形の進行速度(位相速度)、 C=L/T 水深( wave depth ) h: 水底面と平均水面間の鉛直距離 水深 h 波高 H 波峰 波谷 波長 L 平均水面 z=0 0 z x 波の進行方向 水底面 z= - h

波形勾配( wave steepness ):波高と波長の比 H/L 波の尖り度を表す。 H/L が大 → 波がとんがっている。 H/L が小 → 波はなめらか。 相対水深( relative depth ):水深と波長の比 h/L 波が底面の影響をどのように受けているかを示す変数 h/L > 1/2 :深海波( deep water waves );底面の影響を受けない 1/2 ≧ h/L > 1/25 :浅海波( shallow water waves ) 1/25 ≧ h/L :長波( long waves ) 水深約 1m の場所で波長が 5m の波はどの波に分類されるか? 相対水深は h/L=1/5 となり浅海波に分類される。

波の分類 相対水深:深海波、浅海波、長波 波形勾配:微小振幅波、有限振幅波 復元力:潮汐波(コリオリ力)、重力波、表面張力波 進行性:進行波、定在波・重複波(進行しない波) 波の発生場所:水面波(水表面)、内部波(水中) 規則性:規則波(波高・周期が一定の波)、 不規則波(海の沖で発生する波高・周期が不規則な波) 発生原因:潮汐波(月などの万有引力)、高潮(台風)、 津波(地震)、風波(風)

参考文献 最新海岸工学:岩垣雄一著、森北出版 ISBN 新編海岸工学:椹木亨・出口一郎、共立出版 ISBN X 海岸海洋工学:水村和正、共立出版 ISBN