奈良県のスギ、ヒノキにおけ る ALOS/PRISM データを用い た 樹高推定に関する考察 ○ 新納望 、村松加奈子 、醍醐元正 1)奈良女子大学大学院 情報科 学専攻 2)奈良女子大学 共生科学研究 センター 3)同志社大学 経済学部 日本リモートセンシング学会
研究の背景と目的 材積の算出 – 山の利用価値や炭素量を把握可能 正確な材積算出 – 莫大な労力とコストが必要 奈良県の材積算出方法 – 推定表(齢級や面積など)を用いた算出 – 概算値 奈良県のスギとヒノキの材積をもとめる 前段階として、樹高の推定を行う
使用した衛星とセンサ ・ 2006 年 1 月に打ち上げられた ALOS 衛星を使用 軌道 : 太陽同期 準回帰軌道 回帰日数: 46 日 高度: km ・ ALOS 衛星には 3 つのセンサが搭載 ( AVNIR-2,PRISM,PALSAR ) ・立体視可能な PRISM 使用 分解能: 2.5m 波長域: 0.52 ~ 0.77μm 観測幅: 35km ( 3 方向視モード) ビット数: 8bit バンド数:1 ( μm ) PRISM
解析の流れ 1、地上検証データの作成 ①樹幹解析 ②回帰式による樹高推定式作成 2、衛星データによる樹高推定 0.5m 切り倒した(伐採)木の幹をいくつかの位置で円盤を取り、そ れらの年輪を調べて、幹の成長経過を明らかにする方法
樹幹解析に用いたデータ サンプリング日 –2006 年 7 月 29 日 サンプリング場所 – 奈良県吉野郡川上村にある井光経営区のスギ、 ヒノキ林 ( 北緯 34°20‘33.8“ 東経 136°01‘33.8“) –40×40(m) サイト:標高 約 1140 ~ 1110m –80×80(m) サイト:標高 約 1240 ~ 1280m – 二つのサイトの直線距離: 約 250m 円盤を取る位置 – 胸高直径の位置( 1.2m )とその上下 0.5m 毎
樹幹解析に用いたデータ Sample 名樹種サイト樹高 (m) 胸高直径 (mm) 樹齢 A スギ 40× 4014.55188.0233 A206 スギ 80× 8015.17217.1435 A306 スギ 80× 8011.06129.5236 AE3 スギ 80× 8013.00182.3238 B ヒノキ 40×40 14.83189.2036 D ヒノキ 40× 4012.65175.2435 AE8 ヒノキ 80× 809.76232.1834 AE9 ヒノキ 80× 8012.70214.8832 ※スギ 4 本、ヒノキ 4 本の計 8 本
樹幹解析の結果 年毎の成長把握 0m と 0.2m は 0.7m と 1.2m の延長により決定 梢端は梢端に最も近い場所とその 0.5m 低い位置の 延長により決定
樹幹解析の結果 ヒノ キ スギ 材積胸高直径樹高
樹幹解析の結果(樹高推定式作 成) h: 樹高( m ) d: 胸高直径( cm ) スギヒノキ 胸高直径(横軸) と 樹高(縦軸) の 関係図 樹高推定式 樹高の平均差 0.740m0.440m 材積の平均差 ㎥ 参考論文:高橋絵里奈・竹内典之 (2001) 「奈良県川上村上多古及び高 原における高齢スギ人工林の現状と今後の施業指針
地上検証データ 木の本数は 221 本( 2007 年 11 月 1 日) 40× 40のサイトのデータを作成 密度 約 0.14( 本 / ㎡ ) ※サイトの材積は ㎥ 胸高直径の平均樹高の平均材積 スギ( 192 本) 19.6 ㎝ 13.7m 0.025( ㎥ / ㎡ ) ヒノキ( 29 本) 19.4 ㎝ 14.9m 0.030( ㎥ / ㎡ ) サイト全体 19.6 ㎝ 13.9m 0.030( ㎥ / ㎡ )
解析の流れ 1、地上検証データ作成 2、衛星データによる樹高推定 ① Remote10 による樹幹頂点の算出 ②地図データとの比較
使用データ 日付 –2007 年 6 月 11 日 画像の種類 – 上:直下視画像( N E ) – 下:後方視画像( N E ) 領域 – 奈良県吉野郡川上村井光経営区を中心 に 640×500pix に切り取ったもの(雲が かかっているところを省く) 尚、前方視画像は対象地域に濃い雲がかかっている ため使用不可
使用ソフト Remote10 – リモートセンシング教育ソフトウェア –RESTEC 杉村俊郎氏らにより作成 –2006 年に ALOS データを扱えるように改良 – データの特徴を検出、 DEM データの取得などが可能 – ネット上に公開 –GCP を入力することで affine 変換を使用した画像の位 置あわせが可能
Remote10 により得られた 樹幹頂点高度 2006 年 11 月 10 日 鳥見山(奈良 県) 刻み幅:10m 2007 年 2 月 27 日 加太(和歌山 県) 刻み幅: 11m
樹冠頂点高度の計算 視差差による樹冠頂点高度の計算 – カラーバーの刻み幅は8m – 白くなっていたり砂嵐のようになるのは、エラー値やカラー バーに入らなかったのが原因である – 推定樹高は約 2 1~ 28m (検証データ: 13.9m ) – 1 /5000 地図との目視により標高のわかる 2 点を決め、その 2 点 の標高差と視差差から画像の樹高を求める – 対象領域は雲が多く見られるため観測要求を出し、クリアな 画像を使用したい 1210( m) 1 050 ( m)
まとめ 奈良県吉野郡川上村井光経営区でのスギとヒノ キの樹幹解析を行った 40× 40サイトの平均樹高は 13.9m Remote10 により樹冠頂点高度の値を推定した 衛星から得られた推定樹高は約 21 ~ 28m 検証データと推定樹高の差は約 7 ~ 14m ~今後の課題~ 樹幹頂点高度の凹凸を考慮した樹高の算出を行 う 雲のない衛星データから精度よい樹高を求める
参考文献 高橋絵里奈・竹内典之 (2001) 「奈良県川 上村上多古及び高原における高齢スギ人 工林の現状と今後の施業指針」 林野庁計画課( 2006 ) 第 13 刷 「立木 幹材積表 西日本編」 Remote10