偏光ライダーとラジオゾンデに よる大気境界層に関する研究 交通電子機械工学専攻 99317 中島 大輔 平成12年度 修士論文発表会
発表内容 1.研究の背景と目的 2.ライダーの観測と解析 3.ラジオゾンデの観測と解析 4.解析例 事例1:1999年8月2 日 事例2:1999年1 2月10日 事例3:2000年8 月3日 5. 規格化した濃度勾配と温位微分による エアロゾル層高度の比較 6. まとめ
研究の背景と目的 大気中を浮遊するエアロゾルは、地上の車や工場の 排 煙、土壌粒子や海塩粒子などから構成されている。エア ロ ゾルは、大気境界層中の主に混合層内で拡散・対流する ので、大気境界層の構造を調べることは、大気汚染現象 を 解明する上で、重要になってくる。 東京商船大学は、大都市特有の大気汚染現象や海陸 風の影響についての研究を行うのに適している。 本研究では、ライダーから得られたデータを解析し て、 エアロゾルの鉛直分布を求め、その空間分布を把握する と同時にラジオゾンデ観測や他の地上観測との比較・研 究 を行った。
大気境界層とは 地上から高度約 0.5-3km までの地表との 摩擦や熱対流の影響の及ぶ大気の総称。 大気境界層では、気温や風速の高度分 布が大きく変化し、乱流が発生してい る。 昼間では、一般に大気境界層高度と混 合層高度が一致している。 混合層とは、日射の加熱で不安定化し た、上下の対流混合が盛んな層のこと である。
混合層の発達過程
ライダーについて ライダー観測の模式図 東京商船大学の
ライダーのデータ解析 (1) 距離2乗補正値 ライダー方程式 C : 装置定数 :幾何学的効率 :大気の透過率 :背景光強度 ミー散乱ライダーの受信光強度 :エアロゾル濃度に関係した体積後方散乱係数 ⇒エアロゾル濃度を調べるために、距離2乗補正値を用いる
偏光解消度 ← 出射レーザー光の偏光面と平行な成分の後方散乱光強度 ← 出射レーザー光の偏光面と垂直な成分の後方散乱光強度 通常のエアロゾル : 5%以下 土壌粒子 : 10~ 30% ライダーのデータ解析 (2) 直線偏光したレーザー光の後方散乱光が、散乱によって どの程度出射時の直線偏光からずれたか、その度合いを 示す量 非球形粒子に対して偏光解消度は大きくなる ⇒エアロゾルの球形・非球形性を調べるために偏光解消度を用い る
ラジオゾンデ観測 ラジオゾンデ 上空の気温、気圧、湿度、風向、風速を測定する装置 ラジオゾンデ観測 千代田区九段下で行った。(本学より北西方向に約 4.5 km) 観測データは高度50m間隔で、3時間毎に連続し て 行われた( JCAP 集中観測時)。 東京都 トヨタ九段ビル ( 九段) 東京商船大学
温位 ラジオゾンデのデータ解析 混合比 R :空気に対する気体常数 (287m 2 / s 2 K) C p :空気の定圧比熱 (1004m 2 / s 2 K) 水蒸気密度と乾燥空気の密度の比 → 混合比の値が小さいと、空気は乾燥している 水蒸気を含んでいない空気が断熱変化によって標準気圧 (1000 hPa) のところに持ってこられたと仮定したときの温度 ⇒ 混合層内では温位は鉛直方向に一様。その上に逆転層が形成され る。 ⇒ 周囲の空気塊と混合せず、水蒸気の相変化がなければ、混合比は一定。 v:水蒸気 d:乾燥
事例1:距離2乗補正値と偏光解消度 (1999年8月2日) 距離2乗補正 値 偏光解消度
事例1:温位と混合比 (1999年8月2日) 温位の時系列変化混合比の時系列変化 :温位から求めた混合層高度 9時 12時 15 時 18 時 21 時 6時 9時 12時 15時 18時 21時 2km 1km 2km 1km
事例1:ライダーとラジオゾンデに よる 混合層高度の比較 ( 1999年8月2 日 ) 9時 12時 15時 18時 21時 9時 12時 15 時 18 時 21 時 6時 1km 温位の時系列変化 :温位から求めた混合層高度 2km
距離2乗補正 値 偏光解消度 事例2:距離2乗補正値と偏光解消度 (1999年12月10日)
事例2:温位と距離2乗補正値 (1999年12月10日) 温位の時系列変化 1km 2km 3km 4km :温位から求めた混合層高度 :温位から求めた逆転層上端高度 9時 3時 6時 12 時 15 時 18時 21 時 3時3時 6時6時 9時 12時 15時 18時 21時
事例2:混合比と距離2乗補正値 (1999年12月10日 ) 1km 2km 3km 4km 混合比の時系列変化 9時 3時 6時 12 時 15 時 18時 21 時 :温位から求めた混合層高度 :温位から求めた逆転層高 度 3時6時 9時 12時 15時 18時 21時
事例3:距離2乗補正値と偏光解消 度 (2000年8月3日) 距離2乗補正 値 偏光解消度
事例3:ライダーとラジオゾンデによ る 混合層高度の比較(2000年8月3 日) 温位の時系列変化 12時 15時 18時 21時 9時 12 時 9時 6時 3時 15時 18時 21 時 1k m 2k m 3k m :温位から求めた混合層高度
混合比の時系列変化 事例3:混合比と距離2乗補正値 (2000年8月3日) 12時 15時 18時 21時 9時 1km 2km 3km :温位から求めた混合層高度 9時 3時 6時6時 12時 15時 18時21 時
規格化した濃度勾配(NCG)と温位微分 によるエアロゾル層 ( 逆転層)高度の比較 規格化した濃度勾配(NCG)(ライダー) 40m以上に渡ってNCGの値が20%/100mを越えている か、 それに準じている場合で、NCG値が極大を与える高度 エアロゾル層高度を求める基準(ライダー) 温位微分(ラジオゾンデ) 温位の微分の値が0.6K/50mを越える高度 エアロゾル層高度を求める基準(ラジオゾンデ)
夏期のライダーとラジオゾンデによる エアロゾル層高度比較 1999年8月2日2000年8月3日 ライダー ラジオゾンデ ライダーから求めたエアロゾル層高度 (= 境界層構造の数) 方が、ラジオゾンデのものに比べ多く出る傾向がある。 ⇒海風の影響か?
冬期のライダーとラジオゾンデによ る エアロゾル層高度比較 特に高度1.5km以下では高度の対応が良い。 1999年12月9日1999年12月10日 ライダー ラジオゾンデ ⇒ 大気がより安定している ( 自由大気が成層に近い)?
まとめ ライダーによる距離2乗補正値と偏光解消度 によって、上空の大気の構造が視覚的に分 かった。 ライダーとラジオゾンデの観測データにより、 大気境界層の鉛直構造を調べた。 その結果、距離2乗補正値と温位から求めた 混合層高度に対応が見られた。 エアロゾル層の高度を客観的に求めるため、 規格化した濃度勾配と温位微分を用いたが、 冬の低層ではよい対応が見られた。 謝辞 ラジオゾンデデータを提供していただいた(財)石油産業活性化センターに 感謝いたします。