Observations 2013 年 2 月下旬と 5 月下旬に野辺山 45m 鏡を利用 受信機: TZ1H & TZ1V 分光計: SAM45 観測周波数: 81 GHz–116 GHz 観測点: (l, b) = (0”,0”), (+46”,0”), (−40”,0”) の 3 点(右 図) ビームサイズ : 約 20” システム雑音温度 T sys 〜 250 K Image rejection ratio 〜 4 dB Sgr A * および Circumnuclear disk 方向の 3mm 帯ラインサーベイ観 測 Abstract 銀河系中心に位置する電波源 Sgr A * は 400 万太陽質量の超巨大ブラックホール (SMBH) であると考えられてい る。その Sgr A * を取り囲むように 1 pc から数 pc の距離 にわたって広がるトーラス状のガス雲は Circumnuclear disk (CND) と呼ばれ、様々な分子や電離ガスを多く含んでいる。 CND の化学組成や物理状態は中心核 SMBH に 起因する活動現象の影響を受けている可能性がある。複雑な銀河系中心の物理状態や化学組成を調べるには、様々な分子輝線の定量解析が重要である。さらに近年発 見さ れた Sgr A ∗ へ落ちつつあるガス雲 G2 (Gillessen et al. 2012) が中心 SMBH に質量降着すれば、激しい活動現象が引 き起こされ、 Sgr A * 周りの環境に変化が起こるかも しれない。それにもかかわらず、これまで Sgr A * および CND 方向の mm 波帯でのラインサーベイ観測は行われてこなかった。 そこで今回私たちは野辺山 45m 鏡を用いて Sgr A * および CND 方向の 3mm 帯 (81 GHz から 116 GHz) での ラインサーベイ観測を行った。観測点は Sgr A * 方向 (l, b) = (0”,0”) と CND 方向の 2 点 (l, b) = (+46”,0”), (−40”,0”) の計 3 点である。その結果、 CO 、 CS 、 HCN 、 CH 3 OH 、 HCCCN など様々な分子種の輝線スペクトルを得ることができ た。特に CH 3 OH や HCCCN については多数の 遷移放射が検出できた。また非常に大きな速度幅をもつ水素再結合線もいくつか検出することができた。 水素再結合線は、 G2 が 落下することにより Sgr A * が活発化すると、まず最初に強度や速度幅が増大することが期待されており重要である。さらに強度の比較的強い輝線については主成分 解析 (PCA) を行った。解析は現在進行中であるが、本ポスターでは観測で得られたスペクトル線と PCA の結果を紹介し、今後 Sgr A * が活動的になることを念頭に中心核周りの 現在の環境について議論したい。 竹川俊也、岡朋治、 田中邦彦、 松村真司、 三浦昂大 ( 慶應義塾大学 ) 、酒井大裕 ( 東京大学 ) No. rest freqency (GHz) SpeciesTransition HNO1(0,1)-0(0,0) CCSN,J=6,7-5, HCCCN HCCCN9-8 1v7 l=1e c-C3H22(0,2)-1(1,1) HNCS7(0,7)-6(0,6) CH2OHCHO8(0,7)-7(1,7) H53 Beta CH3OH5(-1,5)-4(0,4) E H60 Gamma OCS c-C3H22(1,2)-1(0,1) HCS H42 Alpha H13CN1-0 F= H13CN1-0 F= H13CN1-0 F= CH3OH7(2,6)-6(3,3) A H13CO SiO2-1 v= HN13C1-0 F= HN13C1-0 F= HN13C1-0 F= C2H1-0 3/2-1/2 F= C2H1-0 1/2-1/2 F= C2H1-0 1/2-1/2 F= C2H1-0 1/2-1/2 F= HNCO4(0,4)-3(0,3) HCN1-0 F= HCN1-0 F= HCN1-0 F= HCO HNC1-0 F= HNC HNC1-0 F= HNC1-0 F= CCSN,J=7,7-6, H41 Alpha CCCS CS N2H+1-0 F1=1-1 F= N2H+1-0 F1=1-1 F= N2H+1-0 F1=1-1 F= N2H+1-0 F1=2-1 F= N2H+1-0 F1=2-1 F= N2H+1-0 F1=2-1 F= N2H+1-0 F1=0-1 F= CH3OH1(0,1)-2(1,2) E vt= H51 Beta C4H2P1/2 J=19/2-17/2 1v7f CCSN,J=7,8-6, CH3OH2(-1,2)-1(-1,1) E CH3OH2(0,2)-1(0,1) A CH3OH2(0,2)-1(0,1) E C36S CH3OH8(0,8)-7(1,7) A CH3OH2(1,2)-1(1,1) A CH3CHO5(0,5)-4(0,4) E CH3CHO5(0,5)-4(0,4) A CH3OH2(1,2)-1(1,1) A++ vt= C34S CH3CHO5(-2,4)-4(-2,3) E CH3OH2(-1,2)-1(-1,1) E CH3OH2(0,2)_1(0,1) A CH3OH2(0,2)-1(0,1) E CH3OH2(1,1)-1(1,0) E C33S2-1 3/2-3/ C33S2-1 1/2-1/ C33S2-1 7/2-5/2 + 5/2-3/ C33S2-1 5/2-5/ C33S2-1 3/2-1/ OCS CH3OH2(1,1)-1(1,0) A CS H40 Alpha H50 Beta SON,J=2,3-1, HCCCN HCCCN v7 l= HCCCN v7 l=2 e HCCCN v7 l=2 f CH3OH8(-2,7)-8(1,7) E H2CS3(1,3)-2(1,2) CH3CCH6(1)-5(1) CH3CCH6(0)-5(0) (CH3)2CO10(0,10)-9(1,9) EE (CH3)2CO10(0,10)-9(1,9) AA H2CS3(0,3)-2(0,2) H2CS3(2,1)-2(2,0) H2CS3(1,2)-2(1,1) H13CCCN H39 Alpha CNF1=0,F2=1-0,F= CNF1=0,F2=1-0,F= CNF1=1,F2=1-1,F= CNF1=1,F2=1-1,F= CNF1=1,F2=1-1,F= CNF1=1,F2=1-1,F= CNJ=1/2-1/2 F=2-1,F1=0,F2= CNJ=1/2-1/2 F=2-2,F1=1,F2= CNJ=1/2-1/2 F=1-2,F1=1,F2= CNJ=3/2-1/2 F=3-2,F1=1,F2= CNJ=3/2-1/2 F=2-1,F1=1,F2= CNJ=3/2-1/2 F=1-0,F1=1,F2= CNJ=3/2-1/2 F= CNJ=3/2-1/2 F= CH3OH0(0,0)-1(-1,1) E HCCCN HCCCN v5 l=1e HCCCN v5 l=1f SON,J=3,2-2, OCS HCCCN v4 1v7 l=1f HCCNN,J=5,6-4, C18O HNCO5(0,5)-4(0,4) CO CH3CN6(2)-5(2) F= CH3CN6(1)-5(1) F= CH3CN6(0)-5(0) F= C17O1-0 F=3/2-5/ C17O1-0 F=7/2-5/ C17O1-0 F=5/2-5/ CH3CH2CN13(1,13)-12(1,12) NH2CHO8(3,6)-9(2,7) CN1-0 J=1/2-1/2 F=1/2-1/ CN1-0 J=1/2-1/2 F=1/2-3/ CN1-0 J=1/2-1/2 F=3/2-1/ CN1-0 J=1/2-1/2 F=3/2-3/ CN1-0 J=3/2-1/2 F=3/2-1/ CN1-0 J=3/2-1/2 F=5/2-3/ CN1-0 J=3/2-1/2 F=1/2-1/ CN1-0 J=3/2-1/2 F=3/2-3/ CN1-0 J=3/2-1/2 F=1/2-3/ CO1-0 Result & Analysis Background 活動銀河核 (AGN): 銀河全体に匹敵するほどの莫大なエネルギーを放出 中心核に潜む 10 6 – 10 9 M ☉ の超巨大ブラックホール( SMBH ) がエネルギー源 赤い十字がターゲットポジション。円はビームサイズを表している。左は HCN J=1-0 の積分強度図に、右は 6cm の電波連続波に重ねて表示してある。 検出された分子輝線 各観測点で得られたスペクトル線図 右の表は検出された分子輝 線のリストである。 ( ただし、 混在しているもの判断のつ かないものも含め、検出さ れた可能性のあるもの全て をリストアップしてある。 ) CH 3 OH や HCCCN などは複数検 出できている。 代表的なスペクトル 検出された分子種および原子は 44 種、輝線は 135 本である。 このうちで比較的強度が強い分子輝線と水素再結合線 (Hα 線 ) を 左図に示してある。なお横軸は視線速度に変換してある。多く の輝線は大きな速度幅を持ち、 Hα 線は非常に大きな速度幅を持 つことが見て取れる。 CND の回転 ( 〜 ±100 km/s) を反映したドッ プラーシフトも確認できる。ベースラインの歪みも除去しきれ ていないものもある。 foregrond もしくは background を見てし まっている場合も多く、今後定量的な解析を行っていく際には 注意が必要である。 またこれら代表的な分子輝線に対して主成分解析 (PCA) を行っ た。 ( 速度を変数とした。 ) 下図が PCA の結果を示したものであ る。なお各主成分の寄与率は PC1: 〜 70% PC2: 〜 15% PC3: 〜 10% である。 PCA とは、相関関係 を持つ観測値のデー タから互いに無関係 の因子(主成分)を 選び出し、観測値を その因子の線形結合 で表す手法である。 PCA を行うことで、 各分子輝線の共通点 を探し出し分類でき る可能性がある。 主成分解析 (PCA) の結果 Prospects 現在解析は進行中であり、 Sgr A * や CND について新しく具体的に言及できることはまだない。今後は、入念にベースラインをひ き直した上で、 CND の速度の決定、 CH 3 OH や HCCCN についてボルツマンダイヤグラムを描くことによる温度評価、 CN/HCN 強度比 や HCO + /HCN 強度比を調べることによる XDR モデルの検討などを行いたい。さらに PCA を進めることで新しい発見ができることを期 待している。また、 ASTE 望遠鏡による 300GHz 帯での同様の観測も予定されている。 ASTE 観測で得られデータを合わせることで、 Sgr A * や CND についてより具体的なことが言えるようになるであろう。今後 G2 が Sgr A * に落ちることを楽しみにしつつ、解析を進 めていきたい。 我々の住む銀河系にも 4×10 6 M ☉ の SMBH = 電波源 Sgr A * 暗くて おとなしい Sgr A * の周り 1 pc から数 pc の距離にわたって 高温高密度なトーラス状のガス雲が広がっている 過去数百年前までは格段に活動的であった可能性 が by X 線観測 (Ryu et al など ) Circumnuclear disk (CND) ( 下図左参照 ) Sgr A * へ落ちつつあるガス雲 G2 の発見が報告された! (Gillessen et al. 2012) 中心核に質量降着 → 活動現象を引き起こすことが期待! G2 の最接近時期は 2013 年 9 月もしくは 2014 年の 3 月 (Gillessen et al 2013) Sgr A * の活動性が CND を含む周囲の環境に どのような影響を及ぼすのかは謎 銀河系中心核領域の現在の状態を知っておくことは非常に重要 なのに これまで Sgr A * および CND 方向の mm 波帯 での ラインサーベイ観測は行われてこなかった! 解明に つながる ?!