TAO で紐解くダスト形成過程 2016/03/16 Targets in this talk: 1. Core-collapse supernovae in MW/LMC/SMC 2. Type IIn supernovae in nearby galaxies 3. Galactic luminous.

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TAO で紐解くダスト形成過程 2016/03/16 Targets in this talk: 1. Core-collapse supernovae in MW/LMC/SMC 2. Type IIn supernovae in nearby galaxies 3. Galactic luminous blue variables (candidates) 野沢 貴也( Takaya Nozawa ) 国立天文台 理論研究部 (National Astronomical Observatory of Japan)

○ 星の進化と宇宙の物質循環 0-1. Introduction: origin and evolution of dust credit: 植田稔也氏@ University of Denver 講演 Z113a Z119b Z120b を参照

0-2. Formation and processing of dust in SNe 野沢 貴也 2014, 天文月報 Destruction efficiency of dust grains by sputtering in the reverse shocks depends on their initial size The size of newly formed dust is determined by physical condition (gas density and temperature) of SN ejecta ~1-3 yrs~1000 yrs

0-3. Summary of observed dust mass in CCSNe missing cold dust? Far-IR to sub-mm observations are essential for revealing the mass of dust grains produced in the ejecta of SNe Type II-P SNe young SNRs swept-up IS dust? Balow+2010 Gomez+2012 Matsuura+2011

0-3. Summary of observed dust mass in CCSNe missing cold dust? There are increasing pieces of evidence that massive dust in excess of 0.1 M sun is formed in the ejecta of SNe Type II-P SNe young SNRs swept-up IS dust?

0-4. Evolution of dust mass in SN 1987A 時間とともにダスト形成が効率的 に 起こるのは不自然 ➜ clumpy な構造をしていれば、 0.4 M sun のダストが 600 日後に 形成されていても赤外線 SED を 説明できる OI 6300 Bevan & Barlow 2016 可視減光からのダスト質量 ➜ ダスト量は時間とともに 増加 ‐ ~10 -3 M 600 days ‐ ~0.1 M 4000 days Dwek & Arendt 2015

0-5. Achievement and issues on SN dust 〇 これまでの研究でわかったこと (重力崩壊型)超新星は、放出ガス中で大量( 0.1 M sun 以 上)の ダストを形成することができる 〇 超新星ダスト研究における現在の二つの課題 1) 観測された大量のダストはいつ形成されたのか? ➜ 中間赤外線と遠赤外線でのダスト量の違いを説明した い 2) 形成されるダストのサイズはどれくらいか? ➜ 超新星による最終的なダスト放出量を明らかにしたい

1. Observations of dust formation in nearby core-collapse SNe

1-1. Detectability of dust emission from SNe silicate carbon Kotak+09 MIMIZUKU imaging 4 hours, 5σ Type II-P SN 2004et (d=5.6 Mpc) M d ~ M sun, T d ~ 464 day TAO/MIMIZUKU では、系外銀河の 超新星内で形成されたダストからの 熱放射を捉えることはかなり難しそう

1-2. Mass and temperature of dust grains Tanaka, TN, et al. (2012) ○ Thermal radiation from dust grains L IR = N dust 4πa 2 ∫ Q emis (a,λ) πB λ (T dust ) dλ = 4 M dust ∫ κ emis (λ) πB λ (T dust ) dλ where κ emis (λ) = 4 Q(a, λ) / 3 ρ dust a

MW or LMC/SMC でぜひ超新星を! 1-3. Detectability of dust in SNe in LMC/SMC LMC/SMC(d=50 kpc) での超新星 でのダスト熱放射の SED - dust species: silicate - L IR = erg/s (up to ~10 yr) MIMIZUKU による high cadence の 観測が決定的!! MIMIZUKU imaging 4 hours, 5σ

1-4. Observations of SN dust with TAO ○ TAO/MIMIZUKU による超新星ダスト観測 ‐ 系外銀河の II 型超新星で形成された ダスト熱放射は検出できそうにない ‐ MW または LMC/SMC で超新星が 起こることを期待 ➜ TAO による high cadence の赤外線 観測は、ダスト形成時期(ダスト量の 時間進化)について革新的な成果を もたらすことができる ## 超新星残骸ダストの観測は? - 南天に若い( < ~300 yr )超新星残骸が存在しない - LMC/SMC の超新星残骸を観測するには感度が足りない ??

2. Dust formation in cool dense shells of Type IIn supernovae

○ IIn 型超新星 ‐ 水素の narrow emission line を示す ‐ 厚い星周ガスと超新星イジェクタとの 衝突(相互作用)により光輝く ➜ 通常の超新星よりも 10 倍以上明る い 2-1. Type IIn supernovae © Swinburne Univ. of Tech. IIn 型超新星の可視スペクトル Smith+11 Zhang+2012 普通の II 型超新星

2-2. Dust formation in cool dense shells Dust formation in the ejectaDust formation in dense shell 普通の II 型超新星 IIn 型超新星 ○ Cool dense shells でのダスト形成 ‐ 形成されたダストの温度が高い ➜ ダスト熱放射は近赤外線で見える ‐ ダスト形成時期が比較的早い( ~100 day くらいから)傾向にある ‐ このダスト形成過程については、理論的にほとんどわかっていない

○ Type IIn SN 2010jl のすばる /IRCS 観測 ‐ 近赤外線超過が見られる(爆発の約 570 日後) ➜ M sun の炭素質ダストの形成 ‐ 400 日くらいから(ダストによる)可視光の減光 2-3. Dust formation in Type IIn SN 2010jl carbon T = 1300 K Maeda, TN, et al. (2013) UGC ~50 Mpc

2-4. Size of dust formed in Type IIn SN 2010jl 水素輝線の blueshift ダストのサイズは大きい a~3-4 µm Maeda, TN, et al. (2013) 可視-近赤外線の減光曲線 Gall+2014 ダストのサイズは 小さい : a < 0.1 µm

2-5. Observations of Type IIn SNe with TAO ○ TAO/SWIMS による IIn 型超新星のダスト観測 ‐ 近傍の系外銀河であれば、明るい IIn 型超新星で形成された ダストからの熱放射を近赤外線で検出することができ る ‐ 理論的によくわかっていない cool dense shells でのダスト 形成過程の理解に重要な示唆 ‐ 水素輝線の減光から形成された ダスト半径を見積もることが可能 星周ガス密度(親星の質量放出率) に強い制限を与えることができる Nozawa & Kozasa (2013 ) C SN 2010jl Λ on = τ sat /τ coll ∝ τ cool n gas

3. Infrared mapping observations of luminous blue variables

3-1. LBVs: Luminous Blue Variables ○ LBVs (高光度青色変光星) ‐ log 10 (L / L sun ) = ‐ log 10 (T eff / K) = ➜ M star = M sun 17 LBVs in our Galaxy (2016 年 3 月現在) Wikipedia より Gal-Yam & Leonard 2007, 2009 イータ・カリーナ星 〇 IIn 型超新星 SN 2005gl は LBV から爆発した ? ➜ 恒星進化理論に重大な 問題提起

3-2. Dusty envelopes around LBVs Eta Carina TIMMI 17 µm Morris+1999 AG Car Herschel 70 µm Vamvatira-Nakou+2015 HR Car Spitzer 8 µm Umana+2009 Wray Herschel 70 µm Vamvatira-Nakou+2013 AFGL2298 VISIR µm Buemi+2010 G24.73 MSX 7-25 µm Clark+2003 MN44 Spitzer 24 µm Gvaramadze+2015 WS1 WISE 22 µm Gvaramadze+2012 Wray Spitzer 24 µm Gvaramadze+2014 MWC 930 WISE 22 µm Cerrigone+2014 LBVs の 70% は、厚い星周ダストに覆われている ➜ 大規模な質量放出ガス中におけるダスト形成

○ どうやってダストは形成したのか? ‐ dense clumps 中でのダストの形成?? ➜ 高いガス密度、 UV 輻射の遮蔽 星周ダストの空間分布を知りたい! ➜ TAO による高空間分解の近・中間赤外線マッピング観 測 3-3. Dust formation in mass-loss winds of LBVs ○ LBVs におけるダスト形成の二つの障害 ① 速い wind velocity (~ km/s) ➜ 低い質量放出ガス密度 ρ gas = M dot / ( 4 π r 2 v wind ) cf. v wind = km/s for AGB stars ② 中心星の高い有効温度 ➜ UV 輻射によるダストの蒸発が効率的 LBVs でのダスト形成過程の研究は極めて challenging ! Wray Vamvatira-Nakou+2013

3-4. Example of IR mapping of dusty nebulae - glassy carbon - FeO, Al2O3 Rho MgSiO3 - Fe, FeS, Si - Mg-silicate - FeO, SiO2 Ueta+2001 LBV AFGL 2298 observationsimulation Cas A SNR

3-5. Why are LBVs? ○ LBVs は南天に多い! ‐ 17 天体中、 16 天体は南半球からのみ観測可能 ➜ TAO で観測する絶好のターゲッ ト!! AKARI 遠赤外線全天画像、 Credit: JAXA/ISAS P Cygni Eta Carina

3-6. Significance of studying LBVs ○ LBVs に関連した重要なサイエンス ‐ 極限的な環境下でのダスト形成過程 ➜ 宇宙でのダスト凝縮を探る最適な実験場 ‐ (突発的)質量放出メカニズム ➜ 質量放出率、放出ガスの対称性 ‐ IIn 型超新星との関連性 ➜ LBVs は IIn 型超新星の親星か? ‐ 大質量星連星系の理解 ➜ LBVs の多くは連星系 への重要な知見 TAO による LBVs 観測 ➜ ダスト形成理論 恒星進化理論

Summary : Dust formation science with TAO (1) MW/LMC/SMC で起こった超新星の high cadence 観測 ➜ イジェクタでのダスト形成史の解明 ➜ 超新星ダスト形成の大問題の一つを完全解決 (2) 近傍の銀河で起こった IIn 型超新星の近赤外線観測 ➜ cool dense shell でのダスト形成メカニズム ➜ ダストサイズの見積もり ➜ 星周ガス密度に制限 (3) Galactic LBVs (candidates) の赤外線マッピング観測 ➜ LBVs の多くは南天に存在 ➜ TAO の独占市場 ➜ 過酷な環境下でのダスト形成過程 ➜ 質量放出、恒星進化理論、連星系進化への洞察