あいち健康の森健康科学総合センター 保健師 原田有希子 / 山下 恵 実践者育成 研修プログラム 技術編 たばこに関する保健指導の実際 厚生労働科学研究「標準的な健診・保健指導プログラム【改訂版】及び健康づくりのための身体活動基準 2013 に基づく保健事業の研修手法と評価に関する研究」津下班
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 たばこについての専門知識 ☑ 喫煙は動脈硬化の独立した危険因子である。 ☑ 喫煙すると、血糖の増加、血中の中性脂肪や LDL コレステロールの増加、 HDL コレステロールの 減少等の検査異常が起こりやすい。 ☑ 喫煙とメタボリックシンドロームが重なると動脈硬 化が さらに進んで、該当しない人と比べて約 4 ~ 5 倍、 脳梗塞や心筋梗塞にかかりやすくなる。
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 メタボリックシンドロームになるリスクは喫煙本 数が多いほど高まり、禁煙継続年数が長いほど低 下 ● メタボリックシンドロームになるリスク 出典: Ishizaka, N. et al. : Atherosclerosis 181(2) : 381, 2005 [ L ]より作図 ※日本人男女 5,033 人におけるメタボリックシンドロームのリスク 現喫煙者:喫煙本数(本 / 日)過去喫煙者:禁煙後の年数(年) 非喫煙者< 1010 ~ 1920 ~ 39 ≧ 40 <1<11~41~4 ≧5≧5 本数が多いほど増加 禁煙継続年数が長いほど低下
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 喫煙者が長期病欠 ※ 1 するリスクは、非喫煙者の約 2 倍 出典: Christensen, K. B. et al. : Ind Health 45 ( 2 ): 348, 2007 [ L ] ● 長期病欠 ※ 1 リスク <アルコール> ※ 1 :デンマーク人女性労働者( 18 ~ 69 歳) 2,440 人における 18 ヵ月間の長期(連続 8 週間以上)病欠 非喫煙者、アルコール通常 / 非飲酒者、標準 BMI ※ 2 の人のリスクを 1 とした場合 ※ 2 : Body Mass Index ( BMI ): 18.5 ~ 24.9 (標準)、 25 ~ 29.9 (肥満) <体格指数: BMI > 大量飲酒者の 長期病欠リスクは 肥満の人 ※ 2 の 長期病欠リスクは <喫煙> 喫煙者の長期病欠リスクは 通常 / 非飲酒者の 倍 1.15 非喫煙者の 2.05 倍 標準体格 ※ 2 の人の 1.38 倍
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 喫煙や職場の受動喫煙は、 「うつ」のリスクを高める 出典: Nakata, A. et al. : Prev Med 46 ( 5 ): 451, 2008 [ L ] ※東京近郊労働者 2,770 人におけるうつのリスク、受動喫煙のない非喫煙者のリスクを 1 とした場合 ● 「うつ」のリスク 職場の受動喫煙によって 非喫煙者が「うつ」になるリスクは 喫煙者が「うつ」になるリスクは 受動喫煙のない 非喫煙者の 1.92 倍 受動喫煙のない 非喫煙者の 2.25 倍
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 出典: Song, M.I. and Cho, H.J. Stroke. 35:2432, くも膜下出血 虚血性脳卒中 % 心筋梗塞 % 42% 禁煙をした人 ヘビースモーカー 喫煙と冠動脈疾患発症率の関係 禁煙をすると心筋梗塞などを発症す る 危険性が低くなる
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 健診・保健指導での 禁煙支援の取り組み方 (出典 : 禁煙支援マニュアル第2版)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 喫煙状態の把握( Ask ) 1 Q 1 ~Q 4 :喫煙者の把握 Q 5 ~ 8 :健康保険による 禁煙治療の受診条件の確認 Q 9 :禁煙経験の把握 Q 10 :禁煙に対する自信 A
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 喫煙状態の把握( Ask ) 2 A 【喫煙者の把握】 Q1. 現在、たばこを吸っていますか? Q2. 吸い始めてから現在までの総本数は 100 本以上ですか? Q3. これまで 6 ヵ月以上吸っていますか? Q4. 最近 1 ヵ月間、たばこを吸っていますか?
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 【健康保険による禁煙治療の受診条件の確認】 Q5.1 日に平均して何本たばこを吸いますか? Q6. 習慣的にたばこを吸うようになってから 何年間たばこを吸っていますか? Q7. あなたは禁煙することにどのくらい関心が ありますか? Q8. たばこスクリーニングテスト 喫煙状態の把握( Ask ) 3 A
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 【禁煙経験の把握】 Q9. 今までにたばこをやめたことはあります か? 【禁煙に対する自信】 Q10. たばこをやめることについてどの程度自 信 をもっていますか? 喫煙状態の把握( Ask ) 4 A
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 短時間の禁煙アドバイス (Brief advice) B 病歴や検査値、自覚症状、本人の関心事 などを切り口に禁煙が重要であること (禁煙の重要性を高めるアドバイス) 禁煙には効果的な禁煙方法があること (禁煙のための解決策の提案)
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 ( 1 )禁煙の重要性を高めるアドバイス 病歴・検査値の異常、自覚症状がある場合・・・ それらと関連付けて喫煙の影響や禁煙の効果を説明す る。 短時間の禁煙アドバイス (Brief advice) B
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 ■ 喫煙関連疾患 がん、虚血性心疾患(異型狭心症を含む)、 脳血管障害(脳梗塞、くも膜下出血)、糖尿病、 COPD 、 消化性潰 瘍など ■ 喫煙に関連した検査値の異常 脂質異常( HDL↓ 、 LDL↑ 、 TG↑ ) 糖代謝異常(血糖 ↑ 、 HbA1c↑ 、インスリン感受性 ↓ ) 血球異常(多血症、白血球増多) ■ 自覚症状 呼吸器系(咳、痰、息切れなど) 短時間の禁煙アドバイス (Brief advice) B ( 1 )禁煙の重要性を高めるアドバイス
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙のための解決策の提案ですが、 さきほどお伝えした通り、喫煙はニコチン依存症と いう病気と考えられていますので、禁煙外来での治 療が 1 つの方法です。 処方される禁煙補助剤を使用することにより楽に禁 煙をしていただくことができます。 ( 2 )禁煙のための解決策の提案 短時間の禁煙アドバイス (Brief advice) B
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙治療のための医療機関等の紹介 (Refer) R 健康保険で禁煙治療が受けられ る 医療機関の検索サイト ・日本禁煙学会 ・愛知県公式サイト「禁煙サポーター ズ」
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙実行・継続の支援 ( Cessation support ) C 【構成】 初回の個別面接 電話によるフォローアップ 【対象者】 ただちに( 1 ヶ月以内に)禁煙しようとしている喫 煙者 短時間の禁煙アドバイスの結果、禁煙の動機が 高まった喫煙者
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙実行・継続の支援 ( Cessation support ) C (1)初回の個別面接 1. 禁煙開始日の設定 2. 禁煙実行のための問題解決カウンセリン グ 3. 禁煙治療が受けられる医療機関等の紹介
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙実行・継続の支援 ( Cessation support ) C (2)電話によるフォローアップ 1. 喫煙状況とその後の経過の確認 2. 禁煙継続のための問題解決カウンセリン グ
実践者育成 研修プログラム ▸ 技術編 禁煙治療を終了すると禁煙成功率は高く なる ニコチン依存症管理料算定保健医療機関における禁煙成功率の実態調査 ( 平成 21 年度調査) 算定回数別指導終了 9 ヶ月後