Institute for Global Environmental Strategies Towards sustainable development - policy oriented, practical and strategic research on global environmental.

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井手 鑑人 岡村 佳祐 中嶋 仁 橋本 佳奈.  生活水準の向上には、物価上昇しないことが関係  衣料費の場合 ファストファッションブランドが多数誕生  その背景には 安価 安価 良質 安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う.
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1 環境経済論環境経済論 第 13 回目 市場は地球環境を救えるか その 4 : 排出量取引. 2 Goods 課税による Bads 減税 (環境税の未来)
経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
環境税導入の是非 肯定派 篠崎、畑、村 杉. 主張点 ①大規模での環境対策が可能! ②大幅な CO 2削減が可能! ③経済効果から日本の経済成長に つながる! 以上の3点から私たちは 環境税を導入すべきであると主張す る!!
エネルギー変換技術の評価例:発電技術 立場 (ステークホルダー) 評価項目 評価細目 利用(適用)技術 放射性廃棄物処分費用?
生ごみからエネルギー ~バイオガス発電の効果を考える~
京都府地球温暖化防止活動推進員研修会 地球温暖化問題の 基礎知識 京都府地球温暖化防止活動推進センター  事務局長 木原浩貴.
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これまでの議論・府域の状況を踏まえた考え方の整理
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2014年モデルプラント試算結果 電源 原子力 石炭 火力 LNG 風力 (陸上) 地熱 一般 水力 小水力 バイオマス (専焼)
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環境省 再エネ加速化・最大化 促進プログラム 2018年版 概要
脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型 自然冷媒機器導入加速化事業(一部農林水産省、経済産業省、国土交通省連携事業)
持続可能社会実現にむけた現実的なシナリオ
物流分野におけるCO2削減対策促進事業 (国土交通省連携事業) 背景・目的 事業概要 期待される効果 事業スキーム
考えよう!地球温暖化エネルギー ~伝え、広げ、そして行動しよう~
パリ協定達成に向けた企業のバリューチェーン 全体での削減取組推進事業
地球温暖化防止に必要なものは何か E 石井 啓貴.
蓄電池 必要な 電気・熱 (温水を含む)を供給 再生可能 エネルギー 水電解装置 水素貯蔵タンク 燃料電池 給水タンク 水素を活用した
小山健太(総合政策学部4年) 松本健太郎(総合政策学部4年)
エネルギー問題 実施 解説用.
次世代エネルギー社会の超低炭素化に向けた課題とチャレンジ
ちょっとヘンだぞ・変化している自然環境(第4回)
日本の「公平」なカーボン・バジェット および温室効果ガス排出削減目標
地域低炭素投資促進ファンド事業 国 民間 資金 低炭素化プロジェクトの実現 (SPCによる実施) 平成25年度予算 ○○百万円 イメージ
環境省 再エネ加速化・最大化 促進プログラム 2018年版 概要
建築物の環境配慮のあり方について 資料2-2 1.国際的な動き 4.大阪府域の状況 2.国の動き 5.検討内容とスケジュール
一次エネルギー消費上位国 消費mote % 生産mote 自給率(%) 米国 中国
地球温暖化と京都議定書 E020303 豊川 拓生.
日本経済新聞朝刊 6/25(水)朝刊 石橋、馬場、春山、森、安田
10kwからの企業用太陽光発電 ソーラーパワージャパン (商標登録出願中).
新聞発表 2003年4月16日 大和田・鈴木・菅原・山中.
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2015年4月 .
背景・目的 事業内容 事業スキーム 事業概要 期待される効果 公共交通機関の低炭素化と利用促進に向けた設備整備事業 (国土交通省連携事業)
緑の気候基金(GCF)との連携に関する JICAの取組み方針
資料5-1 企業版2℃目標ネットワーク 公募概要.
仙台管区気象台 気象防災部 地球環境・海洋課 渕上 隆雄
物流分野におけるCO2削減対策促進事業 (国土交通省連携事業) 背景・目的 事業概要 期待される効果 事業スキーム
地域低炭素投資促進ファンド事業 国 民間 資金 低炭素化プロジェクトの実現 (SPCによる実施) 平成25年度予算 ○○百万円 イメージ
地域の多様な課題に応える低炭素な都市・地域 づくりモデル形成事業
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)について
▲ 80 80~95 75 米国 カナダ フランス 英国 ドイツ 削減目標 柔軟性の確保 主な戦略・スタンス 削減目標に向けた
 EUの電力由来CO2排出量の推移 1990年 2010年 2015年 需要 (発電量) 26,000 億kWh 33,000 億kWh
PowerPoint Viewer の使用方法は簡単です      ① この画面は、プレゼンテーション 今これから何をやりたいかの最初のスライドです。 ② 画面が小さかったら、画面の中で右クリックし、[全画面表示] をクリックします。 ② 画面をクリックするたびに、プレゼンテーションが1段ずつ進行します。
新エネルギー ~住みよい日本へ~ E 山下 潤.
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Institute for Global Environmental Strategies Towards sustainable development - policy oriented, practical and strategic research on global environmental issues 2 度目標達成に向けた研究動向 IGES-GISPRI COP シンポジウム 平成 27 年 2 月 3 日 地球環境戦略研究機関 (IGES) 気候変動とエネルギー領域 エリアリー ダー 小圷 一久

主な発表内容 IPCC AR5のメッセージ UNEPGAP(ギャップ)レポート 中長期排出経路(パスウェー) 脱炭素シナリオプロジェクト、新たな気候 経済研究 今後の研究方向性 2

IPCC AR5 のメッセージ ( 1 ) 炭素予 算  CO 2 の累積総排出量と世界平均地上気温は線形の関係になる。  温暖化を産業革命以前と比べて、平均 2 度未満に抑えるためには、 CO 2 累 積排出量を約 800 ギガトン(ギガ= 10 億)に制限する必要がある。 3 出典 : IPCC AR5 WGI 政策決定者 向け要約 Figure SPM 年からの人為起源 CO 2 の累積総排出量( 10 億 CO2 換算トン) 1861 ‐ 1880 年に対する気温の平年差(℃) 1870 年からの人為起源 CO 2 の累積総排出量( 10 億炭素換算トン) 線形の関係

IPCC AR5 のメッセージ (2) 中長期排出パス  2 ℃シナリオでは、温室効果ガス排出量は 2010 年と比べて 2050 年に 40~70% 低く、 2100 年にほぼゼロ又はマイナスになる。  長期的にはゼロ・エミッション社会という方向性 4 出典 : IPCC AR5 WGIII 政策決定者向け要約 Figure SPM.4 ベースラインの幅( 2100 年、全範囲) 様々な長期の濃度水準に応じたシナリオ別の温室効果ガス排出量の変化 2 ℃シナリオの排出パス 温室効果ガス排出量( Gt-CO 2 換算)

UNEP 「ギャップレポート」  地球全体で 2055 年~ 2070 年までに CO 2 排出ゼロ(カーボンニュートラル )を達成しなければならない。  各国の削減目標を考慮してもカーボンニュートラルを達成する経路と比 べて 2025 年において GHG 削減量が 7-10GtCO 2 足りず、 2030 年おいて、 14-17GtCO 2 足りない。( 1Gt = 10 億トン) 5 出典 : 国連環境計画( UNEP ) (2014)The Emission Gap Report 年における ギャップ : 14 ~ 17 Gt CO 2

米国の中長期排出パス ( 出典) IGES ワーキングペーパー 「 2020 年以降の気候変動対策に関する米中合意目標の評価」  2020 年目標: 05 年比 17% 削減( =90 年比 3% 削減)  2025 年目標 : 05 年比 26-28% 削減( =90 年比 14-17% 削減)  2 ℃パスに乗っている(下図)  達成可能性:現時点で実施中および計画中の施策のみでは厳しい 2005 年比 -26 % ベンチマーク 450ppm シナリオ

中国の中長期排出パス  2020 年目標:単位 GDP 当たりの CO2 排出を 05 年比 40-45% 削減  2030 年目標 : 30 年以前のなるべく早い時期に CO 2 排出量を頭打ち(ピー クアウト) ( 出典) IGES ワーキングペーパー 「 2020 年以降の気候変動対策に関する米中合意目標の評価」 野心度: 2 ℃目標達成には不十分 達成可能性:現行の施策では不十分

日本の中長期排出パス( LIMITS プロジェクトの 例) 出典 : EU AMPERE Project  BAU だと 2050 年までに 16~17 %の削減( 2005 年比)  2 度シナリオ( 450ppm ): 2030 年までに 20 %の削減、 2050 年までに 70 %の削減(全球的に等しい炭素価格の導入= Equal MAC シナリオでの比 較)。 2005 年比の相対的排出量 2005 年比 -20 % 2005 年比 -70 %

Deep Decarbonization Pathways Project (脱炭素経路プロジェクト)  2 ℃目標達成へ向けて、主要排出国の大規模な脱炭素化実現への道筋を示すため、 コロンビア大 J. Sachs 教授を中心に主要排出 15 カ国の研究チームが参加。  IPCC AR5 では 2 ℃目標達成の目安として、世界全体の GHG を 2050 年までに 2010 年比で 40 ~ 70 %削減させることが示唆されているが、 DDPP では各国の経済的・ 地理的事情を考慮しつつ、 GHG を 2050 年までに 47% 削減できることが示された。 9 出典: IDDRI and SDSN, Pathways to deep decarbonization report. * 日本からは国立環境研究所・みずほ情報総研が参画

脱炭素経路:日本の例 10  2 度目標達成に向けて、 2050 年時点で一人当たりのエネルギー起源 CO 2 排出量 (現在日本は約 9.3 トン)を 1.6tCO 2 まで減らす必要がある。  目標達成に向けてエネルギー起源 CO 2 排出量は、 2050 年に 2010 年比 84% 削減 し、 2050 年における CO 2 排出量総量は 1.8 億トン。  エネルギー部門においては、 CCS を伴わない火力発電所の使用は段階的に減 少、太陽光発電、風力発電からの電力供給が大幅に増加。 出典 :IDDRI(2014)Pathway to deep decarbonization –Japan Chapter- 図 1 .エネルギー起源 CO 2 排出パスウェイ( 2010, 2050 ) 図 2 .電力供給部門における排出パスウェイ 建物 運輸 産業 電力 風力 太陽光 水力 その他 原子力 天然ガス ( CCS ) 天然ガス 石炭 ( CCS ) 石炭

New Climate Economy  New Climate Economy (NCE) とは 気候対策の経済費用効果を分析する報告書。第 2 のスターンレビューとも呼ばれる 3 つの経済システム(エネルギー、都市、土地利用)と 3 つの牽引要素(資源生産性、インフラ投資、イノベーション)に注目 委託元:経済と気候に関するグローバル委員会(メキシコ元大統領、 Bloomberg やユニリーバの CEO 、バンカメ、中国投資銀行、 ADB 各銀行の総裁など 24 名) 経済顧問パネル: N. スターン卿、 D ・カーネマン(ノーベル経済学者)、 M ・スペンス(同)、 F ガン中国国立経済研究所所長など プロジェクトチーム:ロンドン大学等7つの研究機関が参加  報告書の意図 「気候変動リスクに対処しながらの経済成長の維持は可能か」を検証 官民の意思決定者に届ける。 世界の国や都市、企業の経験から、その根拠や分析結果を集約する。  メッセージ:「(質の高い)経済成長には、意欲的な気候政策が不可欠」 現在、どの所得水準の国でも、気候変動の甚大リスクを減らし同時に経済成長を維持させるチャンスがある 。 必要な投資のための資本は存在し、イノベーションのポテンシャルは大きい。必要なのは強い政治的リーダーシップと一貫した政策。 世界経済が大きな構造変化を迎える次の 15 年が重要。 「 BAU 」にはならない。世界経済は半分以上の規模で成長し、さらに 10 億人が都市に住み、早い技術進化がビジネスや生活を変化させる。 約 90 兆ドルがインフラ投資に費やされる。これらをどう管理するかで将来の成長パターンが決まる。 次の 15 年の投資は同時に、世界の気候システムの将来を決める。 11

議論のポイント 脱炭素社会に向けた研究や政策づくり。 中期的( 2020 年~ 2030 年~)な排出量のピ ークアウトを実現する政策やエネルギーシ ステムの研究。 炭素予算( Carbon Budget )と国際枠組 次の 15 年の温暖化対策 12