Q1 : とかく複雑で難しいとい う印象がある年金制度ですが、 私のような全くの「シロウト」 でも理解できるでしょうか? 経済学科1年 ○○ ××
A: シロウトでも十分理解でき ます 年金制度の本質や問題点を理解すること 自体は、小中学生でも十分に可能。 しかし、ほとんどの国民が、年金制度は とても複雑で難しい、とても自分には理 解できる代物ではないと感じている。 将来の年金に大きな不安を感じつつも、 結局は官僚や専門家といった「クロウ ト」に任せるしかないと思いこんでいる 人が多いのは、なぜか?。
年金制度が難しく 複雑に感じられる理由 まず第一に、わが国の年金制度は、職業 別に分かれており、運営方法や仕組みも バラバラ。 第二に、制度がコロコロと短期間に変わ り過ぎる。 第三に、わが国の年金制度には専門用語 が多く、また言葉が難しすぎる。 第四に、マスコミによって、年金問題・ 年金改革に対する意見が異なる。
制度がコロコロ変わる背景は何 か わが国の年金制度がコロコロ変わるのは、 頻繁に改革が必要になるから。 頻繁に改革が必要となるかといえば、わ が国の年金財政が近年、予想を上回る ペースで悪化の一途を辿っているから。 経済情勢が予想外に悪化したり、少子高 齢化が予想以上に進展する中、少子高齢 化も厚生労働省の甘い見通しを裏切って 進展し続けた。
近年の改革では、年金の支給開始年齢(年 金を受け取り始める年齢)を 60 歳から 65 歳に引上げていったり( 1994 年、 1999 年 の年金改正)、 年金の給付額をカットしたり( 1999 年、 2004 年の年金改正)、 保険料の代わりに国庫負担(つまり将来の 税金のこと)を引上げたり (2004 年の年金 改正 ) 、 今ある積立金を早期に取り崩したり ( 2004 年の年金改正)と、改革手段の種 類を増やしてきた。
これらはすべて国民にこれまで以上に負担 を強いる改革で、改革手段の種類は多いも のの、本質的には皆同じこと。 実は、これだけ多くの改革手段がとられた 背景には、その必要性もさることながら、 国民の批判を和らげるために、様々な変化 球で国民の目先を変えるという意図が大き かった。 まさに厚生労働省の官僚たちの意図通り、 国民の多くはその複雑さに思考停止となり、 あまり大きな反対をしなかった。
また、もう一つ複雑な印象を与えるのは、 改革が行なわれると、制度変更が適用され る人とそうでない人が分かれること。 補償措置や激変緩和措置という。 生まれ年によって適用されている制度が異 なったり、例外措置が生じることになり、 例外だらけで大変複雑な印象となる。 あなたが社会保険労務士や社会福祉士の国 家資格でも取ろうと思わない限り、こんな 複雑な例外規定をいちいち覚える必要はな い。
難解な専門用語が乱発される背景 高度で難解な専門用語が乱発される背景 は何か。 ここ 15 年ほどの間に急激に複雑怪奇なも のなってきた。 特に、前回の改正である 2004 年改正はひ どく、「マクロ経済スライド」、「有限 均衡方式」といった名前からでは内容が まったく想像できない仕組みが数多く新 設。
実態からみると「マクロ経済スライド」は 単なる「給付カット」。 「有限均衡方式」は「積立金の早期取り崩 し」。 しかし、不用意に易しい言葉を使ってし まっては、マスコミや国民が大騒ぎをし、 ひょっとすると 2004 年の金改正法案は廃 案に追い込まれた可能性。 実際、 1999 年の年金改正法案は大反対 あって、法案成立が遅れる。これに懲りた 厚生労働省の官僚たちが、マスコミや国民 が関心を持たないように難しい言葉で「武 装」。
また、厚生労働省の官僚たちは、 2004 年改 正で、 5 年に 1 度の改革を義務化していた法 律文を削除。その根拠であったマクロ経済 スライドが年金財政の自動安定化装置であ ることは真っ赤な嘘。 現在、年金財政の改革は先送りされ、今後 長期間にわたって問題を放置し続けること が可能。 厚生労働省の官僚達にしてみれば、年金改 革は大変な苦難・ストレスであり、法律削 除は長年の悲願。 国民は、不必要に難解な専門用語のために、 官僚達に「まんまとしてやられた」