コンピュータ概論 B ー ソフトウェアを中心に ー #11 データベース ( 前編 ) 京都産業大学 安田豊.

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コンピュータ概論 B ー ソフトウェアを中心に ー #11 データベース ( 前編 ) 京都産業大学 安田豊

データベースとは 外見 – データを決まった形式(フォーマット)で整理し 蓄積したもの – レコード (Record) の存在 – オブジェクト指向データベースのように決まった データ型を用意しないタイプもある(例外は常に ある)

データベースの目的 目的 – 入力・更新 – 高速な検索、再利用 一元管理 – あちこちにあるデータを一元管理したい – 多数ユーザに最新で正しいデータを提供する 共有 – 多くのユーザで参照、更新したい – 一元管理と常にセットで現れる問題 – クライアント・サーバモデル (p.237-)

一元管理と共有の間で データと処理プログラムの独立性の確保 – 項目が一つ増えたらプログラム全部修正? 整合性の確保 – 複数箇所に同じ値がある – 学費データと履修データの両方に在籍情報がある – 多数利用者の同時更新から生まれる矛盾抑制 データの保全 – プログラムの中断やシステムダウンからの保護 アクセス制限 – 複数利用者が前提 簡易な問い合わせ言語機能の利用

データ DBMS 前出の機能をどうやって 実現するか? – データをプログラムが直 接扱えないようにする –DBMS の登場 –Database Management System – 全ての作業は DBMS とい うプログラムを経由する – 独立性、整合性、保全、 アクセス制限 PROGRAM DBMS

独立性・整合性 独立性 – データのフォーマットは DBMS に定義・管理 – 処理プログラムはその定義を引用して動作する 整合性 – 処理プログラムの手続きはすべて DBMS に対する 指示として実行される –DBMS は実行時にデータの正当性管理 (p.244) 、ア クセス制限管理 (p.249) 、排他制御 ( 後述 ) 、データ保 全 ( 後述 ) などを行う

排他制御 あるデータをカウントアップする – 「読んで」から「足し」て「書く」 – 複数の処理リクエストが来た場合、正しくカウントアップ できない – 「読・足・書・読・足・書」なら良いが – 「読・読・足・足・書・書」なら? (p.246-) 排他制御 – 「この処理が終わるまで、この資源はロック」 – デッドロックに注意 –DBMS ではロールバックの必要性につながる –DBMS に限らず多用されている – 計算機科学・技術の重要な概念の一つ

データ保全 処理プログラムの中断 – バグ、オペレーションミス、システムダウン 一貫性(整合性)の保持 – 更新処理途中での停止 – 会員資格更新時に会員番号 100 までで止まった – 会員マスターは更新したが支払いデータは未更新 – 作業しなかったか、完了したかのどちらかに確定 しないといけない トランザクションとロールバック

トランザクション データの整合性を保つために必要な最小の一 連処理 – その途中で終了した場合、データに矛盾が生じる – 大量データの削除処理などもそう – プログラマにしかトランザクションの存在が分か らないケースもある – 明示的なトランザクションもある ロールバック – トランザクションを完了できなかった場合、トラ ンザクション前の状態に巻き戻す

バックアップ・レストア DBMS 自体の不意の中断 – バグ、オペレーションミス、システムダウン – それでも一貫性を保持しなければならない – あるポイントでバックアップを取る – そこからは記録された更新情報を元に再現 ログ管理 – 更新記録 (Log) をトランザクション単位で記録 – レストアでは最終バックアップからログを頼りに 更新作業を再現 – ログがいっぱいになったら通常は DBMS 自体が自 動停止してデータを保護する。

DBMS のまとめ データベースが守るべき要件 – データ独立、整合性管理、データ保全、 アクセス管理 – 多くはマルチプログラミングからの保 護 – 排他制御 – バックアップ・レストア、ログ管理 いずれも一貫性保持のため – そのためにプログラムとデータの間に DBMS という「仲介人」を入れる データ PROGRAM DBMS

データベースの種類 データモデルに適したタイプ カード型 – 図書館蔵書カードのような一件一枚のもの ネットワーク ( 型 ) データベース – データの親子関係に注目 リレーショナル ( 型 ) データベース –Relational Database – データの関係 (relation) に注目 – 現在もっとも良く使われている 学生情報データベースを考える

カード型による学生情報データベース 一人一件 利点 – 全ての情報がカードの中にある のでカードを見つけられればあ との処理が簡単 欠点 – 柔軟な検索が出来ない – キー以外の検索は一枚一枚繰る ことに? – 通常はキーでソートして検索を 容易にする – インデックス(複数)の利用も 可能 氏名:榎田裕一郎 学生番号: 住所:京都市北区・・ 履修科目: コンピュータ概論 哲学と歴史

探索法 より高速な検索のために – 高速とは? –CPU 処理量 ( 計算量 ) が少ない – ディスクアクセス量が少ない 多様な探索手法の存在 – シーケンシャルアクセスとソート、二分探索 – ランダムアクセスとハッシュ、インデクシング

シーケンシャルな探索 順次当たる方法 sequential – 単純総当たり 図書カードをタイトルキーワードで繰る – ソート sort 図書カードをタイトル順で並べておく 妥当なところまでスキップ(調べるより送るだけの方が CPU 処 理量が少ない場合に有効) カード型データベースでは – 以下の記述は原理的な話として。ユーザインタフェイスとしてカード型に 見せているだけで、内実は違う、という場合もありうる – 何か一通りの方法でのみソート可能 – それ以外の方法でタイトル順のカードを作者で当たるとき は総当たり

ランダムアクセス を利用した探索 二分探索 binary search 手法 –sort されているカードの真ん中位置をま ずアクセス – キーの大小から判断して、上下いずれ のブロックに含まれるかを判定 – 該当ブロックの真ん中を次にアクセス 利点:高速な検索 (log N) 欠点:順列のある場合だけ検索可能 – 文字列部分マッチなどには使えない – ランダムアクセス可能なデバイス必須 1/2 1/4 1/8 3/16

ランダムアクセス を利用した検索 ハッシュ法 (hash) 手法 – キーワードなどから何らかの数値を計算 – 十分に拡散し、衝突が少なくなるように良い 計算式を選ぶ(定式は逆に無く、 case by case ) 利点 – うまくするとワンクッションだけでヒット 欠点 – 重なったときの処理が面倒 – ヒット率が入力データと計算式の相性に依存 – データ領域の充填率が低い – 空きがあることを利用した高速化手法である 109 キー算出

ランダムアクセス を利用した検索 インデクシング (indexing) 索引 (index) を利用する – 直接データを検索せずに – 検索に必要なデータだけをまとめた index を検索 – そこにデータ位置が書かれている – 現実世界でも常用されている手段 利点 – 複数のインデックスを持てる(名前順、学生番号 順) – データの特性に依らず一般的に有効 欠点 – インデックス作成に時間が掛かる(場合がある) – 追加より検索が圧倒的に多い場合に事前努力をす る方式 50 音順索引 番号順索引 109

ここまでのまとめ データベースの目的 – 仲介人としての DBMS の果たす役割 – データ保護、一貫性の維持 データベースの種類 – カード型、 etc. etc. 探索手法 – 高速な探索のための手法 – 二分探索、インデクシング、ハッシュ – データベース=一群の目的のための工夫の集積体 用語 – オンライン処理システム – トランザクション処理システム