ジェンダーと文明 第7回 女性フェミニスト 女性フェミニスト ウルストンクラフトを中心に ウルストンクラフトを中心に
ルソー復習 ウルストンクラフトはルソーを読んだ ウルストンクラフトはルソーを読んだ
ルソーは 18 世紀フランス社会の 堕落への批判者 パリの社交界の堕落(「現代の習俗の腐 敗」「大都会においては、退廃は人が生 まれるとともに始まる」 パリの社交界の堕落(「現代の習俗の腐 敗」「大都会においては、退廃は人が生 まれるとともに始まる」 子どもへの無関心への批判(母親の手で 育てられなかったすべての女性は、自分 の子どもを育てるのを好まない」 子どもへの無関心への批判(母親の手で 育てられなかったすべての女性は、自分 の子どもを育てるのを好まない」 「真に家庭の女たるものは、社交界の女 性であるどころか、・・・自分の家に引 きこもっている」(いずれも『エミール 』第 5 編) 「真に家庭の女たるものは、社交界の女 性であるどころか、・・・自分の家に引 きこもっている」(いずれも『エミール 』第 5 編)
ばあやと女の子の会話 ばあや:女の子は大きくなると、なにに なるのですか。 ばあや:女の子は大きくなると、なにに なるのですか。 女の子:お嫁様になります。 女の子:お嫁様になります。 ばあや:そして、お嫁様はなにになるの ですか。 ばあや:そして、お嫁様はなにになるの ですか。 女の子:お母様になります。 女の子:お母様になります。
イギリスの状況 産業革命 産業革命 労働貧民の増大 労働貧民の増大 中小農民の貧困化 中小農民の貧困化 都市の小生産者の没落 都市の小生産者の没落 ジョージ3世の反動政治 ジョージ3世の反動政治 議会改革運動 議会改革運動 アメリカ独立戦争 アメリカ独立戦争 フランス革命 フランス革命
18世紀末の女性の状況 – 美しくあること、そして男性に隷従すること だけを要求される – 男性による女性支配 – ルソーの『エミール』における「良妻賢母」 =男性中心主義を批判、ただし女性の義務は 「妻」であり「母」である
ウルストンクラフト メアリ・ウルストンクラフト メアリ・ウルストンクラフト Mary Wollstonecraft シェリ夫人『フランケンシュタイン』18 18の母親 参考文献 ウルストンクラーフト『女性の権利の擁護』未 来社(1980) 水田珠枝『女性解放思想史』ちくま学芸文庫1994(1 979)
イギリスの女性教育 市民階級の上昇の手段は娘の結婚 市民階級の上昇の手段は娘の結婚 寄宿学校 寄宿学校 – ダンス、音楽、フランス語(男性とつきあい、 男性の気を引く趣味的教養。知的教育は無視 された)
紳士 学問的知識を拒絶 学問的知識を拒絶 経験的知識、礼儀作法、しつけのよさを 尊重 経験的知識、礼儀作法、しつけのよさを 尊重 → 女性=社会で活動する男性に休息の場 としての家庭を提供(「棚の上に飾られ た陶器」) → 女性=社会で活動する男性に休息の場 としての家庭を提供(「棚の上に飾られ た陶器」)
メアリ・ウルストンクラフト フェミニズムはここから思想として始ま る 女性も人間である以上、男性と等しく理 性をもつ=根本的原理 女性も人間である以上、男性と等しく理 性をもつ=根本的原理 女性と男性の平等 女性と男性の平等
ウルストンクラーフト 男女差別、女性従属の原因 男女差別、女性従属の原因 女性に対する社会的偏見 女性に対する社会的偏見 教育の欠陥による女性の無知(女はつく られたのだという主張は20世紀のボー ヴォワール「人は女に生まれるのではな い。女になるのだ」と共通の認識) 教育の欠陥による女性の無知(女はつく られたのだという主張は20世紀のボー ヴォワール「人は女に生まれるのではな い。女になるのだ」と共通の認識) → 理性による教育の必要(ジョン・ロッ クの合理主義を継承) → 理性による教育の必要(ジョン・ロッ クの合理主義を継承)
女子教育の改革の必要性 女子教育の改革の必要性 男女共学の国民教育 男女共学の国民教育 経済的に自立すること、職業をもつこと (医者、農場主、商店主) 経済的に自立すること、職業をもつこと (医者、農場主、商店主)
男女共学 イギリスのロバート・オーエン Owen (1771 -1858)協同組合運動, イギリスのロバート・オーエン Owen (1771 -1858)協同組合運動, 1819, 工場法(女性と児童労働を保護) 幼稚園創設 ウィルダースピン Samuel Wilderspin (1792 -1866) ウィルダースピン Samuel Wilderspin (1792 -1866) 1824, infant school 協会設立 1870年代 1870年代 – 男女共学、義務教育、無償、宗教的に中立の小学校 の設立
第1期 フランス革命の開始(1789)まで フランス革命の開始(1789)まで 『女子教育についての考察』1787 『女子教育についての考察』1787 女性解放には女性の意識改革が必要 女性解放には女性の意識改革が必要
第2期 フランス革命から1795年まで フランス革命から1795年まで フランスの影響で急進主義思想が広まる フランスの影響で急進主義思想が広まる 『人間の権利の擁護』1790 『人間の権利の擁護』1790 『女性の権利の擁護』1792 『女性の権利の擁護』1792 「女性の風習に革命を起こすときである。女性 にその失われた尊厳を取り戻させ、女性を人類 の一員として世界の改革に貢献させるべきとき である。」(『女性の権利の擁護』) 『フランス革命の起源と発展についての歴史 的・道徳的考察』1794 『フランス革命の起源と発展についての歴史 的・道徳的考察』1794
女性の自立 理性の覚醒による女性の人格的独立 → 女 性の経済的従属からの解放、政治的従属 からの解放 理性の覚醒による女性の人格的独立 → 女 性の経済的従属からの解放、政治的従属 からの解放 自立するために:女性の側で教育による 自己改革 自立するために:女性の側で教育による 自己改革 女性が従事すべき職業:医者、看護婦、 産科医 ( 産婆) 女性が従事すべき職業:医者、看護婦、 産科医 ( 産婆)
第3期 1796-1797 1796-1797 ロベスピエール独裁 ロベスピエール独裁 イギリス国内で革命運動弾圧、革命に幻 滅、挫折 イギリス国内で革命運動弾圧、革命に幻 滅、挫折 結婚生活の破綻 結婚生活の破綻 『女性の虐待またはマライア』(遺稿) 『女性の虐待またはマライア』(遺稿)
合理主義的な女子教育 『女子教育についての考察』、ほとんど影響力 はない 『女子教育についての考察』、ほとんど影響力 はない 『実生活実話集』1788、かなり成功 『実生活実話集』1788、かなり成功 『女子教育』21の話題 『女子教育』21の話題 「保育、道徳のしつけ、浅薄な稽古事、わざと らしいしぐさ、服装、芸術、読書、寄宿学校、 気質、現代的な教育を受けながら財産を与えら れなかった女性の不幸な状態、恋愛、結婚生活、 漫然とした考え、失望がもたらす利益、召使の 取り扱い方について、日曜の遵守、動揺する信 仰の不幸、博愛、トランプあそび、劇場、公共 の場所」 「保育、道徳のしつけ、浅薄な稽古事、わざと らしいしぐさ、服装、芸術、読書、寄宿学校、 気質、現代的な教育を受けながら財産を与えら れなかった女性の不幸な状態、恋愛、結婚生活、 漫然とした考え、失望がもたらす利益、召使の 取り扱い方について、日曜の遵守、動揺する信 仰の不幸、博愛、トランプあそび、劇場、公共 の場所」
中産階級の女性 中産階級のなかでも没落していく層の女性に関 心を持つ 中産階級のなかでも没落していく層の女性に関 心を持つ 女性も男性と同じく、理性による教育を受ける べきだ 女性も男性と同じく、理性による教育を受ける べきだ ピューリタニズム--女性の生活の場は家庭 ピューリタニズム--女性の生活の場は家庭 寄宿学校の教育内容 寄宿学校の教育内容 – 人をもてなす作法、挨拶、儀礼的な手紙の書き方、 絵画、刺繍、フランス語とイタリア語(理性を眠ら せる教育)
女性が自活する道 コンパニオン(金持ちの老婦人の話し相 手) コンパニオン(金持ちの老婦人の話し相 手) 学校教師 学校教師 家庭教師(ガヴァネス) 家庭教師(ガヴァネス)
『女性の権利の擁護』 1792 直接にはタレイラン=ペリゴールの著作 で婦人参政権が認められていないことへ の反発から書かれた(女性の天職は家庭 にある、政治に参加することではないと いうタレイラン) 直接にはタレイラン=ペリゴールの著作 で婦人参政権が認められていないことへ の反発から書かれた(女性の天職は家庭 にある、政治に参加することではないと いうタレイラン) ルソー(復習)『人間不平等起源論』1 755 ルソー(復習)『人間不平等起源論』1 755 – 自然的不平等(年齢、健康、体力、精神力) – 社会的政治的不平等(富、権力) ルソー的な不平等批判を継承しながらもウルス トンクラーフトはルソー批判 → ルソーの家族 像=男性に服従する女性像(市民社会の矛盾 の指摘でもある)
性差別の根源は女性の無知 男性=理性、女性=感覚 男性=理性、女性=感覚 理性の覚醒 理性の覚醒 女性の主体性の確立(精神的、知的存在としての自立) 女性の主体性の確立(精神的、知的存在としての自立) 経済的自立 経済的自立 教育の機会均等(コンドルセの女性教育は上流貴族女性 に限定。ウルフストンクラーフトはすべての女性を対 象) 教育の機会均等(コンドルセの女性教育は上流貴族女性 に限定。ウルフストンクラーフトはすべての女性を対 象) 社会的偏見の除去 社会的偏見の除去 法の前の平等 法の前の平等 結婚における不平等の除去 結婚における不平等の除去 職業選択の自由(就職の機会均等) 職業選択の自由(就職の機会均等) 政治的権利の保障(イギリス婦人参政権要求第1号) 政治的権利の保障(イギリス婦人参政権要求第1号) 母性保護 母性保護
博愛主義 イムリーとの結婚とその失敗 → 理性信仰から感 情信仰への思想的転換、文筆業で生計を立てる (ジョンソン書店) イムリーとの結婚とその失敗 → 理性信仰から感 情信仰への思想的転換、文筆業で生計を立てる (ジョンソン書店) 愛情に基礎を置くロマン主義的家族、自由恋愛 (『女性虐待』小説、1789、無政府主義者 ゴドウィンと再婚 愛情に基礎を置くロマン主義的家族、自由恋愛 (『女性虐待』小説、1789、無政府主義者 ゴドウィンと再婚 男女の自由な結婚(相互に独立した対等な存 在) 男女の自由な結婚(相互に独立した対等な存 在) 幼児期の動物愛護 幼児期の動物愛護 貧民への慈善行為 貧民への慈善行為
女性全体の改善と解放を論じる 女性全体の改善と解放を論じる 他の不平等=階級や人種による差別は女 性差別と同じ 他の不平等=階級や人種による差別は女 性差別と同じ 女性解放=社会全体の改革、革命 女性解放=社会全体の改革、革命
ウルストンクラーフトに対する 現在の評価 1970年代、第二派フェミニズムによる女性 学のたまもの 1970年代、第二派フェミニズムによる女性 学のたまもの リベラル・フェミニズム、男女同権(参政権) の限界を示す リベラル・フェミニズム、男女同権(参政権) の限界を示す 母性主義への批判 母性主義への批判 道徳尊重、女性のセクシュアリティ抑圧への批 判 道徳尊重、女性のセクシュアリティ抑圧への批 判 一夫一婦制偏重 一夫一婦制偏重 国民教育、家族の重視とナショナリズム 国民教育、家族の重視とナショナリズム 男性的道徳規範偏重 男性的道徳規範偏重 女であるという定義づけを女自身の手に取り戻 させる -現代的な側面として高く評価すべ き 女であるという定義づけを女自身の手に取り戻 させる -現代的な側面として高く評価すべ き