 日本の水ビジネス 新たな成長戦略となり得るか!? 2012/12/17 1136593c 中村眞悠.

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 日本の水ビジネス 新たな成長戦略となり得るか!? 2012/12/ c 中村眞悠

もくじ 【1】世界の水事情 【2】水ビジネス 【3】日本の水ビジネス 【4】政策提言

 【1】 世界の水事情

地球上の水資源

水の地域格差 地球上の … ・11億人が良質な飲料水を得られない ・26億人が適切な衛生状態にない(世界人口の40%) ・毎日4500人の子供が亡くなる (水不足・不衛生が原因) ・毎日180万人の人が下痢性の病気で亡くなる 安全で衛生的な水を 得られるかは、地域 格差が大きい

水需要の増加 人口増加の2倍の割 合で水需要は増加 ⇔淡水供給量は 変わらず 水危機が叫ばれる 「今後は水が 石油以上に貴重な資源に」 ( 2009 年 1 月 世界経済フォーラム)

 【2】 水ビジネスの 世界

水ビジネスの全体像 利水・ 造水 浄水 給水・ 配水 排水・ 汚水処 理 【水循環体系】 ・ダム、用水路 整備 ・水輸出 ・水輸送 ・浄水場整備 ・薬品投入 ・膜処理 ・水運用、水輸送 ・配水管整備 ・給水所整備 ・汚泥処理 ・廃水 ・処理場整備 【水ビジネス】 ・部品、技術販売 ・プラント設計、建設 ・事業運営、維持管理 ・対顧客サービス あえて 市場原理を導入 ↓ コスト削減 効率的な水利用 を目指す ・海水淡水化 ・ボトルウォー ター ・上水道 ・工業用水道 ・農業用水道 ・下水道 ・工業下水 ・再生水

水ビジネス市場 分野別成長見通し ( 出典 )Global Water Market 2008 、経済産業省試算 (計 19.3 兆円) ( 計 38 兆円 )

水ビジネスの国際比較 イギリス 完全民営化 国際展開 価格の安定 漏水削減 安全性向上 フランス 歴史的に民間委 託 民間3社による 寡占市場 国際展開 贈収賄事件 設備の不備 再公営化 ( 2000 ~) スペイン 官民パートナー シップの伸展 海水淡水化 大手民間企業の 海外進出 シンガポール 水ビジネス新興 国 国を挙げ水産業 育成を推進 積極的な海外事 業展開 水道料金:東京 の 0.6 倍 ※欧州水メジャー(仏ヴォエリア、仏スエズ、英テムズ・ウォーター)が世界水市場の圧倒的シェ アを誇る

水道事業民営化の メリットと課題 【メリット】 競争原理が働く ↓ 経営効率化 技術革新の進展 料金の低下 財政赤字削減 【課題】 企業は利益目的 ↓ 利益が企業に再投資される 貧困層へのサービス低下 水資源保全が主要目的から外れる 水は共有財産 汚職発生の懸念

 【3】 日本の 水ビジネス

日本の制度体系 □ 経営主体:原則として市町村(公営原則) □ 形態:上下水道事業の分離 □ 料金設定:地方議会の決議を経て、条例で決定 (日本水道協会の要領に基づく) 水道法、改正 → 民間企業の 水道事業参入可能に ※「官民パートナーシップ」

日本の課題 ・ 2025 年 水道施設への投資額<施設の更新にかかるお金 (厚生労働省試算) ・市町村による水道料金差 大きいところでは 10 倍近くとの試算も ・多すぎる事業数 ・下水道普及の地域格差 全国の普及率は 73% ・下水道の水質の改善対策 雨天時の未処理水の放流が問題に (出典)総務省「平成 19 年度地方公営企業年鑑」( 2008 )

日本の水ビジネス 【国内事業】 ・水道事業の一部の民間委託を実施した自治体はわずか 1.5% (日本水道協会、 2006 年調査) ・民間委託の制度は整うも、実施する自治体はほとんどない ・事業運営・維持管理分野は自治体が独占 【海外展開】 部品供給・技術提供分野:水処理関連企業が進出 旭化成、クラレ、東芝、三菱電気 等 プラントの設計・建設分野:エンジニアリング関連企業が進出 IHI 、オルガノ、栗田工業、日立 等 事業運営・保守・管理分野:商社・地方自治体が進出 住友商事、三井物産、地方自治体 等

日本の水ビジネスの強み ①高い GDP に比較して取水量が相対的に少ない ⇒高度な省水技術がある ②高い技術力 ‥水処理膜 → 世界市場の約5割を日本企業が占める 超純水製造、ポンプ等にも強み ③耐震技術、漏水防止に関する技 術 ⇒日本の水道の漏水率の水準は 世界トップクラス 漏水率 東京 3.6% ロサンゼ ルス 9.0% モスクワ 10.0% カイロ 20.0% ロンドン 26.5% バンコク 33.0% メキシコ 35.0%

日本の水ビジネスの課題 【国内事業】 ・進まない民間委託 ← インセンティブの低さ(公務員削減、横並び感) 【国際展開】 ・実績、ノウハウを持つ主体が複数の組織、分野に分散 ⇔海外の大手企業は建設から管理運営まで あらゆる業務を一社でこなす ※運営、維持管理の分野は地方自治体が「行政サービス」と して行い、実績・ノウハウを独占してきたことが原因 ・国際ニーズに合わない ← 日本の水インフラは「良質だが料金が高い」

 【4】 政策提言

政策提言(国内) 官民パートナーシップ推進による合理化と効率化 * 施行 「地方財政の健全化に関する法律」の強化 :赤字改善の促進 → 強制型規制へ その手段の一貫として民間委託推進 *民間に委託できる部分は委託 政府・自治体は規制側にまわる

政策提言(海外展開) 得意分野、水需要の増大地域に特化した民間企業の進出 *水処理膜分野やアジア地域にターゲットをしぼる *政府による営業支援 異なる分野の企業同士、民間と地方自治体の連携 *民間へのノウハウ伝授 *官民複合体の活用(第三セクター、企業と自治体による合弁企業 等) * ODA の活用(国際協力) 民間も参画 → 人的ネットワーク構築 → 将来のビジネス獲得の礎 事業の第三者評価制度の構築 *事業の情報公開の徹底、基本的人権を尊重した持続可能な水利用を目指 すものになっているかのチェック *政府主体

参考文献 『ウォータービジネス』 モード・バーロウ 著 (2010 第 5 刷 ) 『中国最大の弱点、それは水だ』 浜田和幸 著 (2011) 『水ビジネスの現状と展望』 服部聡之 著 (2010) 『水ビジネスの世界』 Steve Hoffmann 著 (2011) 『水ビジネスの戦略とビジョン』 服部聡之 著 (2011) 水ビジネスを取り巻く現状 経済産業省