妊娠・出産・救急 恩田早苗 市立稚内病院助産師
産科の基礎
分娩に関する用語 正期産妊娠 37 週以後 42 週未満の分娩 早産妊娠 22 週以後 37 週未満の分娩 過期産妊娠 42 週以後の分娩 –22w 以後は胎児は体外でも生存可能である。早期にドク ターカー要請、 NICU 管理が行われれば救命できる。 – 妊娠週数、分娩予定日は重要な情報である。搬送先もしく は転送先をトリアージするための基準となりうる 。
分娩の3要素 産道 娩出力 胎児および付属物 – 分娩の3要素のそれぞれの状態、相互関係 が分娩の難易を決定する
出生直後の新生児のケア 第3回旋後にすぐ顔を拭くかサクション施行 出生後すぐに臍帯結紮・切断 同時にサクション施行し気道確保する 羊水・胎脂を拭き取りつつ刺激し、呼吸を促す 1 ・ 3 ・ 5 分でアプガースコア判定 呼吸・循環に問題なければ母に接触させる(カンガ ルーケア) 加温しながら計測、点眼、全身観察、母児標 識をつける 再び母のもとで接触、授乳を行う
Apgar score
カンガルーケアとは 出生後すぐに母児接触させることにより母児 相互作用を促す。早期母乳栄養確立にもつな がる 新生児の放熱を防ぎ、保温する 母の常在細菌叢の移行 → 感染防止の役割を担 う
新生児と救急
救急救命士が行う救急・救命処置 産科領域 – 墜落産時の処置 臍帯処置(結紮・切断)、胎盤処理 新生児の蘇生(口腔内吸引・酸素吸入・保 温) 子宮復古不全(弛緩出血時)-子宮輪状 マッサージ
救急現場での活動 基本は大人と同じく呼吸と循環 直ちに臍帯クランプする サクションでの気道確保 → 啼泣させ呼吸を促す Aps 低ければ O 2 送与 (5ℓ ~ 10ℓ) 病院に 自発なければ Bag&Mask にて換気連絡 心拍 50↓ なら絶え間ない心マ搬送 保温水分は拭き取りタオルなどで保温 体温が新生児の呼吸と循環の確立を大きく左右する。 聴診器さえも体温を奪うことを念頭におく。
墜落産とは 急産のひとつで分娩徴候のなかった妊 婦が突然急激な陣痛により急速に起立 中、歩行中排便中に分娩してしまうこ と つまり救急隊の現着時、もしくは搬送 中に患者は2人(母体と新生児)にな るということである
墜落産の合併症 母体頸管、会陰裂傷、外陰血腫 – 臍帯の牽引によって胎盤の異常剥離または 子宮内反をおこしうる – 大量出血の可能性 新生児仮死 – 墜落産による頭蓋骨骨折 – 臍帯断裂による出血、死亡
褥婦と救急
胎盤剥離徴候
産科出血の特徴 出血は劇的で数分で大量出血となりや すく、容易にショックを起こしやすい 外から診断不可能である場合が多い 基礎疾患のない場合が多いため、早期 に適切な管理を受けられれば止血可能 である
救急現場での活動 感染防御(血液、羊水、全てが感染源である) 特殊診療科であるため早期にメディカルコントロー ルを受ける 出血においては静脈路確保、酸素投与は基本 バイタルサインに留意、チェックは頻回に – バイタルのわりに患者は元気に見えることが多いがショッ クは進行している どの時点から出血したかが、治療のための重要な情 報となる 出血量も重要な情報源である
弛緩出血 胎盤娩出後、子宮が良好な収縮をきたさない ものを子宮弛緩症といい、これに由来する分 娩第3期以後の持続性の異常出血 症状 – 持続する異常出血と柔軟で大きな子宮出血は静脈 性 処置 – 子宮底の輪状マッサージと冷庵法 – 決定的治療は子宮収縮剤の投与
頸管裂傷 分娩時の子宮頸管の裂傷 症状 – 胎児が娩出された直後から出血 – 動脈性の出血であることが多い 処置 – 産科医による裂傷の縫合の他ない
妊婦の搬送 対象は常に2名であることを心得なければ ならない(母体と胎児) 母体の一般状態が悪くない場合でも、胎児 の状態は必ずしも良いとはいえない 左側臥位が仰臥位低血圧症候群の予防に有 効であるが、母の好む体位でかまわない