新興中間層ターゲットの ビジネス戦略 東京大学経済学部 3 年 島田将広
Emerging Middle 中間層の定義は調査主体によって異なる ex)METI 下位中間層(家計所得 5000 ドル~ ド ル)と 上位中間層(家計所得 ドル~ ドル) アフリカ開発銀行 一日当たり消費が 4 ドル ~ 20 ドル 所得によらない評価も LSM ( living standard measure) 居住地や耐久消費財の購入に基づく
だいたい、こんな感じ・・ 南アフリカ LSM 5,6の住居の様子
だいたい、こんな感じ・・・ ケニアの中間所得者層(年間所得 2000 ~ 3000 ドル程度)
つまりどういうこと? 新興中間層の定義は曖昧かつ恣意的。 そもそも「中間層」というように相対的 でドメス ティックな概念。 「新興中間層へのビジネス戦略」を考え るときには、詳細な個別の市場分析が不 可欠。 アジアなどでの先行事例を応用できるこ ともある
PwC による戦略
実例 Nokia Maney (インド) 価値提案 携帯電話を使って簡単な財務管理、送金、料金支払い、商品購 入を簡単かつ安全に行うことができる(「低コスト以上の価 値」) ビジネスモデル 金融サービスへのアクセス需要に対応。販売店が銀行の業務 窓口に。僻地などで金融サービスが受けられていないが、携帯 電話はもっている層に。(「賢い消費者リーチ」) モバイルネットワーク事業者や金融機関、小売業者と提携(エ コシステムの創造(「エコシステムの協調」) 発想の転換 金融インフラの空白を正しく理解し、それを自己製品によっ て埋める。ある種の消費者にとっては唯一の金融サービスへの アクセス手段に。 (「破壊的な思考」)
JETRO による市場分析 黒人中間層「ブラックダイアモンド」 LSM 7以上、南アフリカ全体の 40 %の年間購 買力 ( 2500 億ランド)を持つ 300 万人 以下のような特徴をもつ 高等教育を受けている 流行のけん引役 旺盛な物欲、ブランド志向 アフリカ文化を愛する
JETRO によるマーケティング ブラックダイアモンド層へのマーケティングと して フィールド・マーケティング ( 聞き込み。消費性向から流通のニーズまでわかる ) メディアの利用 長い通勤時間を利用するタクシー、バス、ラジオ広告 テレビはブラックダイアモンド層に効果あり。 口コミによるブランドの浸透 BD 層の女性には、白人女性のまねではなく、他の黒人 女性に人気があるということが大事。
Case 1.コカコーラ 南アフリカ市場はアフリカ全体の 4 割。 成長率は10%( 一人当たり消費は世界平均の 3 倍 小売商人に冷蔵庫と看板を供与 徹底した広告戦略。どこにでも見られる 看板 「コカコーラ・フットボール・スター」 有名人の起用よりも現地との結びつきと 開発 水、教育、健康、起業分野での地域開発
Case2. ロレアル ヘアケア製品部門で圧倒的シェア ブランド志向の高い「ブラックダイアモ ンド・ウーマン」の消費大 自社製品を直営店で販売し、消費者に深 い知識を提供 ヘアスタイリストの育成やコンペティ ションの開催によりブランドイメージを 深めていく 南アフリカに工場を持ち、アフリカ人や その気候に合わせた製品の研究開発
現地のショッピングモールの様子 南アフリカ 中高所得者向け モール
現地のショッピングモールの様子 (2) ケニア 高所得者向け (左) 中所得者向け (下)
EMTI 新中間層獲得戦略研究会 高所得者向け製品と BOP ビジネスの狭間 ローカルフィットした製品の導入 現地社会の受け入れ 現地スタッフ、日本人スタッフの育成 「 OKY 」 政府による支援も必要
ナイジェリアにおける日本アニメ放送 在日ナイジェリア大使館で交渉。大使に よるテレビ局の紹介 日本のクールジャパン戦略による支援 アニメ制作の専門学校立ち上げ、現地の 人材育成とナイジェリア国産アニメ制作 を支援 ナイジェリアのテレビ普及率は成長期の 日本程度
参入障壁とリスク( PwC より) マーケティングリスク 現地の慣習・文化の理解不足 製品サービス開発リスク 高品質すぎる製品など オペレーションリスク 高い人件費、輸送手段の脆弱性 外部経済的なリスク 現地企業との衝突、政府の汚職など これらの考えうるリスクに対し、回避、転嫁、軽減、受容いず れかの対策を講じる必要性
参考資料 「世界の新興中間層に向けた、収益力ある 成長戦略」 P w C 「新中間層獲得戦略」 METI 新中間層獲得戦 略研究会 「アフリカ地域社会経済開発のためのアフ リカ地域ビジネス 基礎情報収集・確認調査 最終報告書」 PwC,JICA 「南アフリカ市場と市場開拓」 JETRO