はくちょう座 P 星 (P Cyg) の スペクトル変動 岡山理科大学・田辺研究室 能勢樹葉 (4 回生 ) 、今村和義 (M2) 、田辺健茲.

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はくちょう座 P 星 (P Cyg) の スペクトル変動 岡山理科大学・田辺研究室 能勢樹葉 (4 回生 ) 、今村和義 (M2) 、田辺健茲

1. はじめに 2.LBV の特徴 3. 観測 4. 観測データ・処理 5. 結果 6. まとめ・今後の課題 もくじ

1. はじめに

新星 luminous blue variables (LBV) P Cyg( はくちょう座 P 星 ) はくちょう座 フラムスチード天球図譜 より引用 α : 20h 17m 47.2s δ : 38°01’ 58.5” 実 視 等 級:~ 4.8 mag 絶対実視等級: -8.6 mag スペクトル型: B2 距 離: 2147pc P Cyg( はくちょう座 P 星 )

測光と分光の同時観測をおこなった例はない。 P Cyg の分光、測光の同時観測により 輝線の強度の変化と光度変化の相関を調べる。 現在でも 0.2 等程度の光度変化 ( 例えば、 N Markova et al. 2000) 輝線の強度は数週間から数ヶ月のタイムスケールで変化 (Stahl & Kaufer 1994) 相関は見られない。 目的 1. はじめに

2.LBV の特徴

HR 図 LBV 質量の大きな星が主系列段階を終えた後の姿 HR 図 2.LBV の特徴

P Cyg Humphreys-Davidson の不安定限界 Understanding Variable Stars より引 用 一部改変 2.LBV の特徴 非常に明るい エディントン限界 ( 光度 L/ 質量 M) に近い。 不安定 脈動

外層を放出 輝線・光の吸収率の変化 2.LBV の特徴

3. 観測

観測期間 2009 年 6 月 26 日~継続中 観測場所 岡山理科大学 21 号館屋上 田辺研究室天文台 北緯 34° 41′ 37.56″ 東経 133° 55′ 50.87″ 3. 観測

分光観測 望遠鏡:セレストロン (C11) 赤道儀: NJP( タカハシ社製 ) CCD カメラ :ST-402(SBIG 社製 ) 分光器: DSS-7(SBIG 社製 ) ※ 5 秒露出、 1 晩に 3 枚 分光器 CCD D=28cm F10 f=280cm 分散 :5.4 Å /pixel ⊿ λ:15 Å R: 約 400 速度分解能 : 約 700km/s Temma2 3. 観測

望遠鏡:セレストロン (C9) f=148cm D=23.5cm F6.3 フィルター: B, V, Rc 赤道儀: EM200( タカハシ社製 ) Temma2 CCD カメラ: ST-7EX(SBIG 社製 ) 測光観測 3. 観測

4. 観測データ・処理

分光 Hα Hβ He Ⅰ 4. 観測データ・処理 He Ⅰ

分光 FcFc FλFλ F λ /F C 4. 観測データ・処理

分光 < F C の求め方> FcFc 輝線のピークの座標 4. 観測データ・処理

測光 V C1 C2 C3 C4 C5 V : P Cyg C1 ~ C5 :比較星 N 10.7’×16.0’ E V filter 4. 観測データ・処理

5. 結果

F λ /F C 分光結果 5. 結果

測光結果 5. 結果 より引用 一部改変

5. 結果 JD[ ] ⊿ mag F λ /F C 分光 測光 B filter +0.5mag V filter R filter -0.5mag

6. まとめ・今後の課題

輝線の強度および光度にそれぞれ 有意な変動が見られた。 現段階では、輝線の強度変化と光度変化に 相関らしいものは見られない。 Stahl et al. と同様の結果。 まとめ 6. まとめ・今後の課題

課題① < Hα 線の強度> 恒星風の変化に対して遅れて変動している可能性がある。 (Markova et al. 2000) 観測の継続 未処理のデータの解析 6. まとめ・今後の課題

< F λ /F C の変化の要因> 星自体の黒体放射が影響している可能性もある。 課題② 色指数と F C 、色指数と F λ /F C の比較 6. まとめ・今後の課題

課題③ 輝線の強度の表し方の検討 ・等価幅 ・ Hα/Hβ 0 1 等価幅 Hβ Hα 6. まとめ・今後の課題

課題④ 南天の LBV との比較 グラフのフィッティング SGS 分光器による観測 南天の LBV

参考文献① de Groot M. 1990, ASPC 7, 165D de Groot M. 1988, IrAJ 18, 163D de Groot M. 1983, IrAJ 16, 162D J. Percy, “Understanding variable stars ”(Cambridge UP, 2007), pp Markova N. 1993, A&A 273, 555 Markova N. Morrison N. Kolka I. de Groot M. 2000, ASPC 204, 111M Richard Berry. James Burnell, “The Handbook of Astronomical Image Processing”, (Willmann-Bell, Inc. 2005), pp Roberta M. Humphreys. Kris Davidson 1994, PASP 106, 1025H Stahl O. and Kaufer A. 1994, A&AS 107, 1-8

D.C. ベイアート, 加藤幸弘, 近藤康, 千川道幸 ( 訳 ), 「実験法入門」, ( ピアソン・エ デュケーション, 2004), p.14, pp G. ヘルツベルグ, 堀健夫 ( 訳 ), 「原子スペクトルと原子構造」, ( 丸善, 1964), pp Ian Ridpath, 岡村定矩 ( 監訳 ), 「オックスフォード天文学辞典」, ( 朝倉書店, 2003) SBIG 社 HP, URL 今村和義, 卒業論文 活動銀核の CCD 分光観測, ( 岡山理科大学・田辺研究室, 2008) 岡崎彰, 「奇妙な 42 の星たち」, ( 誠文堂新光社, 1994), pp 川端哲也, 「分光解析ソフト BeSpec チュートリアル」, ( 美星天文台, 2002) 恒星社編, 「フラムスチード天球図譜 ( 新装版 ) 」, ( 恒星社 ), p.11 国立天文台編, 「理科年表 2009 」 小暮智一, 「輝線星概論」, ( ごとう書房, 2002), pp.1-43, pp , pp , pp 野本憲一, 定金晃三, 佐藤勝彦編, 「恒星」, ( 日本評論社, 2009), p.7, pp64-69, p.91, pp 参考文献②

全観測日の結果 分光 測光 JD[ ] F λ /F C ⊿ mag B filter +0.5mag V filter R filter -0.5mag

Stahl et al.(1994) の結果 1990 年 年 Hα Hβ

Markova(2000) の結果 1989 年 年

AAVSO の結果

AAVSO の結果

n=1 n=2 n=3 n=4 n=5 エネルギー準位 高い 低い 輝線 原子の 輝線の形成 水素 Hα Hβ

誤差の求め方 分光①

分光② 回帰分析 normalize 誤差の求め方 y=(-2.94±0.01)x + (0.20±0.48) σa σb erro=(σa×x)+σb F λ /F C ± erro

誤差の求め方 測光 C :カウント値 S : Signal n :ピクセ ル数

望遠鏡 スリット CCD カメラ 平面鏡 コリメーター 回折格子 http;// m.html より引用 ( 一部改変 ) DSS-7 の構造

1.5’ スリット 星 スリットの位置

B, V, Rc 測光系の感度曲線

等価幅 0 1 はくちょう座 P 星は輝線の袖が長い。 等価幅の測定に問題 (Stahl & Kaufer. 1994)

データ処理 分光① 星のスペクトルの部分 ピクセル座標 カウント値 スキャンの幅 スカイの範囲 分光ソフト: BeSpec

データ処理 分光② カウント値 ピクセル座標

データ処理 測光① 測光ソフト: AIP4Win

データ処理 測光② ピクセル座標 カウント値

データ処理 測光③ 平均 和

HR 図上の輝線星 輝線星 通常の星 恒星 より引用 一部改変