1 未来社会構築への情報技術活用 慶應義塾大学ビジネス・スクール 國領 二郎 ( )
2 何のために情報化をするの か ・高付加価値化で未来を拓く ・環境を守りながら生活を豊かにする ・自由でありながら安全な社会をつくる ・バリアフリーで活力ある高齢社会を造る ・物的な豊かさから文化の豊かさを追求する社会へ
3 新しい需要の創造 魅力的な情報商品で新規の需要を開発 情報技術による創造のプロセス改善 ITの力:効率性と創造性 より効率的な供給システム サプライチェーンマネジメントで在庫圧縮 電子市場形成による需給マッチング 情報量を増やす 非対称性の解消 情報処理能力を 強化する
4 オープンなソルーショ ン
5 集中処理と分散処理 データ アプリ 入出力装置 センター/大型計算機 データ アプリ データ アプリ データ アプリ 透明なネットワーク データ交換の標準 ・中核組織による囲い込み ・中央制御、情報専有 ・保護、集権的ガバナンス ・中央に高負荷 → 高コスト ・センターの存在しないシステム ・自律分散、情報共有、参加型 ・自己責任、セルフガバナンス ・中央への負荷軽い → 低コスト データ アプリ 入出力装置 集中処理型 分散処理型 ローカルなイニシアチブが発揮できる構造へ
6 自律・分散を支える構造 多数の技術 の複合した システム モジュラー型 インテグラル 型 オープン型 モジュール間の接続に公開 され社会的に広く利用され たインターフェースを使用。 社会的分業を可能にする。 クローズド型 モジュール間の接続に自 社専用仕様インター フェースを使う。必然的 に自社専用の囲い込み型 システムになる 独立性の高いモジュー ルの組み合わせでシス テムづくり。調整費用 を下げるが資源の無駄 づかいを発生させる。 モジュール化しない。 無駄のないシステムが 設計可能だが調整能力 高いチームが必要でメ ンバーが固定化する傾 向。 80年代:モジュラーvsインテグラル⇒ 90年代:オープンvs. インテグラル⇒ 21世紀? アーキテクチャ=モジュール間の役割分担及びモジュール間連携の方式のルー ル
7 情報を発信するコストの劇的な低下。「末端」から世界 中に低コストで情報提供。 オープンアーキテクチャの採用で、断片化され、散在し ていた力がネットワーク上で巡り合い、編集されて新た な価値を生む。単独の企業の中だけではとても果たし得 ないような爆発的なイノベーションの連鎖反応が社会的 に起こる。 個人が主体的に情報を発信し、社会の進路を決める参加 型の社会構築。 地域における「身の丈にあった」投資を連結させて大規 模なネットワーク形成。 ネットワークの創造性
8 ビジネスによるソルーション提供
9 擬似物財型 情報そのものを希少に 物財帰着型 モノの希少性 サービス帰着型 設備容量の希少性 情報価値の収益化:一般モデルの模索 物販モデル サービス手数料モデル デジタルコンテンツ ダウンロードモデル 認知限界訴求型 顧客の attention を買う 広告モデル・名誉モデル お布施モデル 自己実現型
10 新しいビジネスモデルの創造 ・誰にどんな価値を提供するか? (顧客の)ビジネスのコストを下げる。 新しいビジネスチャンスを与える。 新たに支出したくなるような新しい商品を提供する ・どのように価値の生産と供給を行うか? → サプライチェーンの設計 → コミュニケーション構造の設計 ・誘引(インセンティブ)の設計 → 誰にどのように報酬を与えるか? ・収益モデル → 誰からどのようにお金をいただくか?
11 バリューチェーンコーディネーターの 役割 パッケージャー 顧客 購買代理店 オープンなネットワーク環境 バリューチェーン コーディネーター 要素を編集、統合。業界によっ て購買代理者が強いところと パッケージャーが強いところが ある。
12 電子市場とプラットフォーム・ビジネス ・ 取引相手の探索 ・ 信用(情報)提供 ・ 経済価値評価 ・ 標準取引手順の提供 ・ 物流など諸機能の統合 ・情報ネットワーク上で不特定多数の主体が取引。 ・ただし、コンピュータ・ネットワークだけでは取引が成立しない。 誰もが明確な条件で提供を受けられる商品やサービスの供給を通じて、第三 者間の取引を活性化させたり、新しいビジネスを起こす基盤を提供する役割 を私的なビジネスとして行っている存在のこと。 プラットフォーム・ビジネス
13 1.産業の高付加価値化
14 提言: 日本を開発とテストマーケティングのセン ターに ・感度の高く、厳しい顧客 日本の顧客が納得した商品は世界で通用する 実はネットワークが大好きな日本の消費者 ・何でも作れてしまう製品開発・生産ネットワーク 製造業も情報化、ネットワーク化 顧客を価値の生産者として捉えることで日本の製造業も 復活する。(消費者と呼ぶのをやめよう。)
15 供給システム 完成度の高い製品をオープンなプロセスで 作る プロダクトの統合度の高さ 低 高 高 低 日本 米国 モジュール化された製品を 巡り、オープンなコラボ レーションを行って創造性 高い経営。但し、製品は最 適化されず無駄が多い。 限られたメンバーで長期的 で緊密な関係で無駄なく、 最適化された「統合度」の 高い製品を作って競争力を 高めた。 オープンな文脈共有 ネットワーク上で英知を 集め、完成度の高い製 品・サービスを提供する。 ブロードバンドやモバイルで時空を超えたコラボレーションを実現する。
16 顧客が情報を発信する時代のマーケティン グ 目標:市場の声を把握して製品開発にフィードバック 企業 掲示板等 全ネットワークユーザー 閲覧 別ML 発言者 閲覧 口コミ マスコミ 情報 全消費者 口コミ ROM AM
17 発言状況別第 3 者への情報伝達経験
18 伝える手段
19 國領研究室調査による 掲示板・ ML の利用有無別日常生活の情報源に対する評価) どの情報源を重視するか?
20 2.環境と経済成長を両立させる
21 物質文明から精神文明へ 情報技術によって 物質と化石燃料の使用を徹底的に効率化 人間の知的な創造性発揮の場を提供 表現する空間を提供 知の交流をうながす 物質と化石燃料の消費拡大による生活向上の戦略か ら精神的充足による幸福を追求する戦略への転換。
22 3.自由で安全な社会
23 集中処理と分散処理 データ アプリ 入出力装置 センター/大型計算機 データ アプリ データ アプリ データ アプリ 透明なネットワーク データ交換の標準 ・中核組織による囲い込み ・中央制御、情報専有 ・保護、集権的ガバナンス ・中央に高負荷 → 高コスト ・センターの存在しないシステム ・自律分散、情報共有、参加型 ・自己責任、セルフガバナンス ・中央への負荷軽い → 低コスト データ アプリ 入出力装置 集中処理型 分散処理型 現実にはハイブリッドなシステム⇒ハイブリッドなセキュリティとなる?
24 4.バリアフリー空間で活力ある高齢社 会
25 バリアフリーの経済空間を構築し、高齢社会を迎え撃つ。 高齢者や、身体障害者や子育て中の主婦もネットワーク にアクセスし情報価値生産活動に参加してもらう。 ネットワーク空間上で多様な個人や企業の知恵が結合し、 新たな価値を生み出す。 市場原理だけではない。NPO,コミュニティとビジネ スのコラボレーション。 活力があって生活者に優しい オープンアーキテクチャ社会を構築
26 5.物的豊かさから知的な豊かさ へ
27 情報財生産の誘因設計 二つの思想がある。 (1)情報価値を何らかの希少性にリンクさせて貨幣経 済にのせる。 (2)開き直って非貨幣経済的な協働体系を目指す。例 としてソースコードをオープンにして社会的な開 発を目指す LINUX など。 ビジネス:何らかの希少性に帰着させて収益を得る。
28 オープンな環境で差異化する手法 希少性を増大させ収益を拡大させる ・物財帰着 → 情報技術により物財ブランド強化し、物財販売で回収。 ・擬似物財(情報)販売 → Versioning (新製品を短サイクルで投入) ・サービス容量 → 価格弾力性別セグメンテーション(例:米国航空業界) ・認知限界 → 評価サイトなどによる集団的情報処理 → (例外的に希少となる情報)信頼、プライバシー ・自己実現 → 「勲章」 編集能力による差異化