戸別訪問業務の高度化・効率化 株式会社三菱総合研究所
目次 演習の概要 介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状 GISの活用による訪問業務を高度化・効率化の方策 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! 演習の振り返り ◆このページのポイント 当該演習の流れについて理解してもらうため、構成と全体時間配分を最初に説明しておく。 本科目について操作演習を行う場合にはシラバス別紙「演習で利用するツールについて」に記載のツールを用意する必要があるが、ツールを用意しない場合は、演習①と②についてはイメージ図により行うことを説明する。 ◆説明手順(ツールを使う場合:2時間30分~3時間、ツールを使わない場合:1時間~1時間半) ① 演習のねらい ・・・3分 ② 介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状 ・・・15分 ③ GISの活用による訪問業務を高度化・効率化の方策 ・・・2分 ④ 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! ・・・30~40分(10分) ⑤ 演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! ・・・80~90分(10分)) ⑥ 演習の振り返り ・・・20~30分 ※④、⑤については、ツールを準備した場合には操作演習を実施します。 ツールを用意しない場合は、本テキストに基づき、実際の訪問業務の手順の中でGISがどのように活用されているかを説明することになります。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
演習の概要 演習の目的 演習の特徴(重視ポイント) 演習に必要な環境 介護・福祉分野において重要となる戸別訪問業務(高齢者単独世帯等の見守り訪問、介護認定調査のための訪問等)における現状の課題を整理し、地理空間情報/GISを活用し、業務を効率化/標準化する方法を学ぶ。 「訪問業務支援ツール」を使った訪問業務体験を行うことで、“業務の効率化”のイメージをつかむ。 日常業務において利用する各種台帳等をGISデータ化することの業務改善の可能性を検討する。 演習の特徴(重視ポイント) 個人や施設等の分布図の作成 作成した分布図をモバイル端末へ移行することで、地図の持ち歩きによる業務の効率化 演習に必要な環境 訪問業務支援ツール(シラバス別紙「演習で利用するツールについて」を参照) ◆このページのポイント 演習のねらいについて、なぜ介護・福祉分野にGISを活用する必要があるのか、受講者全員に共有意識を持ってもらう。 ◆説明手順 ①以下のとおり演習の目的について説明する。 ・介護・福祉分野において、高齢者単独世帯の見守りや介護認定など需要が増え、戸別訪問業務の業務量が増えている中で、現状の課題を整理し、GISを活用することで業務を効率化・標準化することができる旨を説明する。 ・実際に研修会場周辺に出向き「訪問業務支援ツール」を使って、GISを活用した戸別訪問業務の効率化を体験してもらいイメージをつかんでもらう。 ・GISを利用すれば、日常業務で紙媒体やエクセル等で管理している各種台帳等簡単に地図上にプロットすることができるため、自分の業務と照らし合わせ、業務改善が可能となるか検討してもらう。 ②演習の特徴として、1)自治体業務で日常的に利用している台帳等から簡単に分布図が作成できること、2)モバイル端末と連携することで訪問等のこれまで効率化が進まなかった業務での利用が可能となることの2点を説明する。 ③演習に必要な環境としては、PCとモバイル端末が連携した訪問業務支援ツールを用意することを伝える。詳細は次のページを引用しながら説明する) ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状 ■福祉業務における戸別訪問の例 業務内容 訪問者 今後の動向 高齢者福祉 高齢者見守り 独居高齢者、認知症高齢者等のほか、配慮が必要な高齢者が安心して暮らし続けられるように、自治体職員や、地域包括支援センターほかが高齢者世帯を定期的に訪問して、安否を確認する事業。 自治体職員のほか、地域包括支援センター職員による訪問等が行われている。 高齢化に伴い急増 介護認定調査業務 市町村の認定調査員による心身の状況調査(認定調査)を行う業務。 市町村の認定調査員が基本だが、指定居宅介護支援事業者等に委託可能 生活保護 生活保護世帯戸別訪問 病気や貧窮、あるいは高齢や障害など、さまざまな理由によって社会生活を送ることに何らかの問題を抱えている人の相談に乗り、適切な助言・援助。対象者の生活状況等により、訪問頻度が異なる(例:月1回、3か月に1回、年に1回程度) 市区町村職員(社会福祉士) 低所得層の拡大傾向 子育て世帯 子育て世帯見守り相談 妊娠や出産について心配のある場合に訪問する「妊婦訪問」や、4か月未満の子どもがいるすべての家庭に訪問し、育児等の相談や子育てに関する情報の紹介等を行う「乳幼児訪問」、健診を受けなかった家庭を訪問する「未受診者訪問」がある 保健師や看護師の資格を持つ母子保健推進員等が訪問 子ども・子育て関連3法の成立により重視傾向 ◆このページのポイント 福祉業務における戸別訪問を事例を表形式で整理し、いずれの業務においても、今後の動向として需要が増加傾向にあり業務の効率化が求められていることを理解してもらう。 ◆説明手順 ①高齢者福祉では、「高齢者見守り」と「介護認定調査業務」に大きく分かれ、特に高齢者見守りにおいては、自治体職員だけでなく地域包括支援センター職員や社協などの連携により行われていることを説明。高齢化はどこの自治体でも共通の課題として挙げているテーマであり、職員を増やせない中で業務の効率化が求められていることを伝える。 ②生活保護では、病気、障害、高齢など様々な問題を抱えた方の生活状況を把握するために、定期的に訪問を実施しているが、低所得者層が増え、各ケースワーカーが持つ担当ケース数は増加傾向にあるため、業務の効率化が求められていることを説明する。 ③子育て世帯では、「妊婦訪問」、「乳幼児訪問」、「未受診者訪問」などの戸別訪問業務があり、少子化傾向にあるが、子ども・子育て関連3法の成立により、手厚くサービスを充実させることが求められており、業務の効率化が必要である旨を説明する。 ④その他、保育料徴収、障害者世帯訪問や、介護保険料徴収、公営住宅滞納徴収等、さまざまな戸別訪問業務があり、いずれの業務においても需要が増え業務の効率化が求められていることを説明する。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 受講者に対して、スライドに掲載している例以外で訪問するシーンがあれば挙げてもらう。 ※その他、保育料徴収、障害者世帯訪問や、介護保険料徴収、公営住宅滞納徴収等、さまざまな戸別訪問業務がある。
介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状 Q.現在、介護・福祉分野の戸別訪問業務において 地図を使っている部分で課題になっていることは何ですか。 地図を使えればもっと便利になると思うことは何ですか。 お隣前後の人と少し話し合ってみましょう。 ◆このページのポイント 介護・福祉分野の戸別訪問業務で地図を使用している上での課題等を話し合い、共通の課題認識を持ってもらう。 ◆説明手順 ①戸別訪問業務を行っている中で、地図を使っている部分での課題や地図を使っていない人でも地図を使えばもっと便利になるということを話し合ってもらう。 →普段地図を使っている人は、どのような地図をどのように使っているか、なるべく具体的に話してもらう。 Google Mapsやスマートフォンなどで場所を検索することも含めて、「地図の活用シーン」は幅広くとらえてもらう。 ②隣前後の人と、自己紹介を含めて話し合ってもらう。 ※時間は5分程度 →福祉業務に携わっていない人でも、想像の範囲で課題になっていることを話し合ってもらう。 ③受講者に意見を出してもらってから、共通の課題認識をまとめて整理する。 →話あってもらったチームごとに意見を出してもらう。時間がなければ、「訪問業務を経験したことがある人」を優先的に当てていくとよい。 受講者から意見が出そうな課題として想定されるものは5~6ページでおおむね網羅していると考えられるため、適宜関連するスライドを活用しながら説明していく。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 「説明手順」③では、各受講者が日常業務で感じている課題を具体事例をもって説明してもらうとよい。
介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状(例1) 高齢者の居住地は台帳で住所情報で管理し、必要に応じて紙地図にプロットしたり、位置を検索している 各部署で保有する台帳・リストでは場所がわからない code 氏名 性別 年齢 住所 家族構成 身寄りの家族状況 所得 要介護度 ケアマネージャー ・・・ 1 ○○ ○○ 男 72 △△町△-△-△ 本人のみ 市内居住 なし 3 □□□□ 2 ひとつひとつの住所情報をもとに、市販の地図、住宅地図等と照合したりして紙地図に書き込んだり、都度Google maps等の地図サイトで検索した結果を印刷したりする <課題> 件数が多いと特定作業に膨大な時間がかかる Google maps等を使っても、1か所ずつ位置を検索する必要がある/検索結果を個別に出力する必要がある 情報が更新されると地図を一から書き換える必要がある 担当者それぞれが独自のやり方で個別に地図を作成してしまい、情報の集約が困難 今後、高齢化により対象者が急増するとさらに作業が大変になる 等 ◆このページのポイント 前頁の共通の課題認識を整理したものを含め、事前に想定していた課題を説明し情報を整理する。 ◆説明手順 ①以下の課題があることを、前頁に出てきた意見とも照らし合わせて説明する。 ・現状としては、紙ベースやエクセルベースの台帳を管理しており、別途紙媒体地図などに位置を記し管理している。 ・Google mapsやスマートフォン等を使用しても、複数の位置情報を確認することができない。 ・紙媒体の地図で管理している場合、情報の更新が煩雑になる。 ・担当者が複数いる業務では、個別に地図を作成してしまい、情報の集約が困難になり、業務の標準化を図ることができない。 ・今後高齢化により対象者が急増すると業務が大変になる。など ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状(例2) 訪問に必要なあらゆる情報を持ち歩くのは大変 外で紙地図を広げて場所を探す <課題> 紙地図で訪問先や訪問ルートを探すのは大変 その日に訪問しない訪問先の情報も持ち歩くことになる(情報を発見しにくい) 万一、外出先で台帳や地図を紛失してしまうと、機微な情報も漏洩してしまう懸念(拾得者がどのように情報を使うかわからない) 等 相談業務に必要な情報は膨大 <課題> 相談者の最寄りの地域資源を的確に教えることができない 地域資源を紹介するのに場所をわかりやすく教えられない 等 ⇒担当者の知識の範囲でしか相談対応ができない ◆このページのポイント 【前頁の続き】共通の課題認識を整理したものを含め、事前に想定していた課題を説明し情報を整理する。 ◆説明手順 ①以下の課題があることを、「スライド4」に出てきた意見とも照らし合わせて説明する。 ・紙地図で訪問先や訪問ルートを探すことは大変である。 ・その日に訪問しない対象者の情報も持ち歩くことになる。 ・外出先で紙媒体の台帳や地図を紛失してしまうと、機微な情報の漏洩につながってしまう。 ・訪問対象者の地域資源情報(近い病院・介護施設等)や場所を的確に伝えることができない。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
介護・福祉業務における戸別訪問業務の現状のまとめ 現行の訪問業務における課題 ①地図の作成・更新に関する課題<例1> ・紙地図に訪問先の位置をプロットしたもの(例:切り貼りの住宅地図、Google Maps等で個別に出力)を持ち歩いており、劣化や情報更新、紛失時に都度作成しなおす必要がある。 ②業務フローの標準化に関する課題 ・訪問ルート選定等は各訪問担当者が独自に行っており、担当者により訪問効率が大きく異なる。人事異動が生じた場合、慣れない担当者ではより時間がかかる可能性がある。 ・事業者/市民等に委託/協力依頼をしている訪問業務については、事業者/市民により訪問方法、訪問報告結果の形態が異なるため、非効率になっている。 ③他部署等との情報共有における課題 ・訪問記録等は紙媒体のみで管理しており、関連部署/関係主体と共有されておらず、またバックアップもない。この結果、生活困難の複合化(DV被害、生活の自立支援、母子家庭等)への対応が難しい。 ④他の情報との重ね合わせにおける課題<例2> ・訪問先で市民から相談された際、関連する施設・サービス等の地域資源の立地状況がわからない。 ⑤情報漏洩等への対応における課題<例2> ・訪問先がプロットされた紙地図や台帳等を外部に持ち出して訪問しており、紛失資料をコントロールできない。 ◆このページのポイント これまでの議論の中で出てきた戸別訪問業務で発生している課題を、次の各フェーズごとに分けて整理し理解してもらう。 ◆説明手順 ①「地図の作成・更新に関する課題」について説明(紙地図で情報を管理している場合、更新や修正が難しい。) ②「業務フローの標準化に関する課題」について説明(担当者により訪問効率が異なり(人事異動や慣れない担当者など)作業の効率化がバラバラになってしまう。) ③「他部署等との情報共有における課題」について説明(今までは福祉の問題も独立していたが、生活困難の複合化が発生しており、情報の共有化が求められている。) ④「他の情報との重ね合わせにおける課題」について説明(訪問先で関連する施設やサービス等の地域資源の立地状況がわからない。) ⑤「情報漏洩等への対応における課題」について説明(訪問する際に、紙媒体の地図や台帳を持ち歩いている現状があり、紛失した場合情報漏洩の危険がある。) ※①、④、⑤については既に詳細に説明してあることから、②、③については詳細に説明する。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 ⇒このほか、現行業務の課題を挙げてみましょう!
GISの活用による訪問業務を高度化・効率化の方策 課題 GISによる改善イメージ <>はGISの機能 ①地図の作成・更新に関する課題 ・台帳・リストの住所をもとにいっせいに地図にプロットすることができる。<アドレスマッチング> ⇒訪問先や地域資源等、短時間でプロット図が作成可能。修正・更新も容易。 ②業務フローの標準化に関する課題 ・簡単に最短ルートを検索することが可能。<ルート検索> ・同一ツールを使えば、訪問結果の集約も標準化可能。 ⇒担当者が同一基盤を使うことで、業務の効率化が容易になり、管理者の情報管理が簡素化される。 ③他部署等との情報共有における課題 ・高齢者等の居住分布が必要な他の部署/他の主体に、位置情報付きで情報を共有することができる。<GISデータ出力> ⇒これまでバラバラに管理されていた情報の重複整備・管理を回避し、同一の情報基盤で業務を遂行することができる。 ④他の情報との重ね合わせにおける課題 ・訪問先の相談業務において地域資源等の情報を提供する際、訪問先の立地を踏まえた情報提供が可能となる。<重ね合わせ、近傍検索> ⇒訪問者の最寄りの施設やサービスの紹介が可能となる。 ⑤情報漏洩等への対応における課題 ・セキュリティ対策、遠隔管理、データの所在等の運用を工夫することで、端末紛失等に対応することができる。 ⇒地図データ自体の保管場所はサーバーとし、モバイル端末からはサーバーへ参照しにいく形とすれば、端末の紛失等のリスク回避も可能。情報の漏洩リスク等を軽減することができる。 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! ◆このページのポイント これまで挙げてきた課題をGISを活用することで、どう訪問業務を高度化・効率化することができるかを整理し、前頁の課題に照らし合わせてGISの機能性を理解してもらう。 ◆説明手順 ①「地図の作成・更新に関する課題」に対するGISによる改善イメージを説明(大量の台帳リストをいっせいに地図上にプロットすることができ、地図上の修正も容易である。この中でアドレスマッチングの概念を簡単に説明する。) ※アドレスマッチングとは、住所と緯度経度の対照表を使って、住所を投入すると緯度経度を返してくれる仕組みである。緯度経度さえあればGIS上では地図に簡単に表示ができるため、これまで1件1件地図で場所を探してプロットするという作業が不要となる。 ②「 業務フローの標準化に関する課題」に対するGISによる改善イメージを説明(情報の集約ができ、業務フローが標準化され、管理者側の情報管理も簡素化される。) ③「他部署等との情報共有における課題」に対するGISによる改善イメージを説明(業務で作成したGISデータ化された地図は、データとして、他のGISのシステムでも読み込むことができる。そのため、一つの部署で作成した地図データも、他の部署が利用することができ、これまで重複して作成していたことが回避できる。) ④「他の情報との重ね合わせにおける課題」について説明(対象者の情報、地域資源の情報を重ねて表示することができるため、訪問先の立地を踏まえた情報提供が可能となる。) ⑤「情報漏洩等への対応における課題」について説明(セキュリティ対策、遠隔管理、データの所在等の運用を工夫することで、紙媒体のときと比べ、情報漏洩のリスクを軽減することができる。) ⑥課題①については、この後行われる演習1「住民や地域資源を地図にプロットしてみよう!」で行われることを告げる。 ⑦課題②~⑤については、演習1の後に行われる演習2「モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! 」で行われることを告げる。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
演習で利用する訪問ツールについて 「訪問業務支援ツール」(※ツールを使った演習をしない場合は、シラバス(別紙)「演習で利用するツールについて」を参照のこと) 「PC版」(演習①「住民や地域資源を地図にプロットしてみよう!」で利用)と「モバイル端末版」(演習②「モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう!」で利用)による構成 注1:以降のスライドに掲載されている画面イメージは、平成25年1~2月に開催した「介護・福祉業務におけるGIS高度活用人材育成プログラム」の演習で実際に利用したソフト「訪問業務支援ツール」に基づくものであり、実際に利用するソフトに応じて、スライドを調整する必要がある。 注2:以降は、実際の操作演習で行う概要を示したものである。ツールを使った操作演習を行う場合は、「【参考資料】戸別訪問業務の高度化・効率化_演習の進め方」(利用するツールの操作手順が具体に記されている資料)と並行して説明する。 ◆このページのポイント 演習①と②の流れとねらいについて説明する。 利用するソフトは、自治体の事情等によって変わるが、本演習では、一般的なGISによってできること(アドレスマッチング、地図表示、属性検索・空間検索等)やモバイル端末で利用することで業務の効率化を図れることを実感してもらう。 (ツールを用いた操作演習をしない場合は、スライドに掲載している図をもとに、どのような操作手順となるか、全体像を説明する) ◆説明手順 演習で利用するGISの構成や、それと演習で学んでほしいことの関係性を示す。 例えば、平成25年1~2月に開催した「介護・福祉業務におけるGIS高度活用人材育成プログラム」の演習で実際に利用したソフト「訪問業務支援ツール」では、以下のような説明を行った。 ※利用するソフトの構成に応じて変える必要がある。 ①演習1では、住所リストをGISを活用して自動的に地図上にプロットするアドレスマッチングを理解してもらい、地図化作業の効率化を学んでもらうことがねらいであることを説明する。 ②演習2では、演習1で地図上にプロットしたデータを活用し、モバイル端末を使って実際に巡回して、ルート検索や周辺の地域資源情報の確認などを行うことで、訪問業務の高度化・効率化を図ることがねらいであることを説明する。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 (※)
演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習目的 住所リストをGISを活用して自動的に地図に落とす手法(アドレスマッチング)を学ぶことで、地図化作業の効率化を理解する。 演習内容 日常業務で利用している(作成している)高齢者の台帳リストを使い、高齢者の居住分布を把握する。 高齢者向けの地域資源(病院、介護福祉施設、介護福祉サービス、集会所・公民館等)の施設リストをもとに、地域資源マップを作成する。 ※本演習では、便宜上、高齢者リスト及び施設リストにて行うが、各自治体で日常的に利用している住所リストで同様の作業が可能。 ◆このページのポイント 演習1で行う、住所リストをGISを活用して自動的に地図に落とす手法(アドレスマッチング)を学ぶことで、地図化作業の効率化を理解する。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、目的・演習で想定されている内容について説明する) ◆説明手順 ①日常業務で利用している(作成している)高齢者の台帳リストのデータを使い、高齢者の居住分布を把握する。 ②高齢者向けの地域資源(病院、介護福祉施設、介護福祉サービス、集会所・公民館等)の施設リストをもとに、地域資源マップを作成する。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) ・本演習では高齢者リスト及び施設リストを対象とするが、各自治体で日常的に利用している他の住所付のリストでも同様の作業が可能であることを補足する。 ・アドレスマッチングなどの専門用語については、随時、用語や概念を説明して、GIS未利用者でもわかるような説明に配慮する。(アドレスマッチングの説明は、p.10のティーチングノートに記載している。) ◆受講者への確認事項 特になし。
演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 地図化する高齢者データ ◆このページのポイント 演習で利用するのはダミーデータであるが、日常業務で使っている台帳を使えることを説明する。 ◆説明手順 ①今回利用するダミーデータの説明を行う。(属性にどのような項目があるかを説明する)。 本演習で取り扱うのは数十件のデータであるが、件数が多いほど、GIS活用の効果が大きいことを伝える。 ②属性については、今回のダミーデータにとらわれず、自分たちの業務で必要であると思う項目を検討する必要があると伝える。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) <教材作成の際のデータの作り方についての留意事項> ・演習データとしては、住所以外はすべて架空のデータでもよい。 ・少なくとも数十件のリストとなっている方がよい。 ◆受講者への確認事項 特になし。
演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 地図化する地域資源データ ◆このページのポイント 訪問業務の際に必要となると思われる地域資源のリストの中身を説明する。 どのような地域資源が必要となるかは、各受講者で考えるように促す。 ◆説明手順 ①今回利用するデータの説明を行う。 ②各受講者が自分で作成するのであれば、庁内の各部署から収集する方法のほか、国土数値情報を活用する方法などがあることを伝える。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) <教材作成の際のデータの作り方についての留意事項> ・研修会場のある市町村の病院、診療所、社会福祉施設のリストをもとに演習用データを作成する。 ・自治体のホームページにある情報のほか、国土数値情報の「医療機関」、「福祉施設」、「市町村役場等及び公的集会施設」などを利用する方法もある。 国土数値情報のURL⇒http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/gml_datalist.html ◆受講者への確認事項 特になし。
演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! (1)高齢者リストをプロットしましょう(高齢者リストが地図になる手順のイメージ) ②①のcsvファイルを「訪問業務支援ツール(PC版)」に、アップロードする。 ③②のデータの住所情報をもとに緯度経度情報を付与します。(訪問業務での活用を想定し、住居表示の「号レベル」の精度) ①要介護者リストや介護保険システム、住民基本台帳等から、訪問先の高齢者リストをcsv形式で抽出する。 (※)本演習では、抽出済のデータ(見守り対象となっている一人暮らし高齢者リスト)を活用。 ◆このページのポイント 高齢者リストがエクセル等のデータベースとして整理されていれば、GISを活用してアドレスマッチングを行うことで、地図上にいっせいにプロットできることを実感してもらう。 (ツールを用いた操作演習をしない場合は、スライドの画面イメージを例に、エクセル等のリストが地図に自動的に表示される流れを説明する) ◆説明手順 ①本演習用に作成した、高齢者見守り対象者のダミーデータを活用し、データのアップロード→アドレスマッチング→地図へのプロットの流れを説明する。 ②演習2で訪問する対象者を、市販されている住宅地図を使って探してもらい、GISとの違いを体感してもらう。 ※時間は5分程度。 →受講者分地図があれば、一人一人体験してもらう。受講者分の地図がなければ、住宅地図の利用経験度の違い等により作業者を指名する。 →住宅地図を使って訪問先をプロットしてもらうときには、時間を計り、1件あたり何分かかったかフィードバックする。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 時間があれば、住宅地図上で位置を特定する作業がどうだったか(何が難しかったか、時間がかかると感じたか等)について、作業者に確認する。 ④地図上に表示し、分布を確認します。 位置がずれていれば、修正します。
演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! 演習① 住民や地域資源を地図にプロットしてみよう! (2)地域資源をプロットしましょう(地域資源リストが地図になる手順のイメージ) ②①のcsvファイルを「訪問業務支援ツール(PC版)」に、アップロードする。 ③②のデータの住所情報をもとに緯度経度情報を付与します。(訪問業務での活用を想定し、住居表示の「号レベル」の精度) ◆このページのポイント 地域資源の住所リストについても、前頁の高齢者リストと同様にGISを活用してアドレスマッチングから地図上のプロットまでの流れを理解してもらう。 (ツールを用いた操作演習をしない場合は、スライドの画面イメージを例にして、エクセル等のリストが地図に自動的に表示される流れを説明する) 高齢者リストを地図化する作業と同じであることを強調し、住所付のリストであればどんなデータでもよいことを説明。 ◆説明手順 ①本演習用に作成した、地域資源のダミーデータを活用し、データのアップロード→アドレスマッチング→地図へのプロットの流れを説明する。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 ④地図上に表示し、分布を確認します。 位置がずれていれば、修正します。 ①地域資源の住所リストを作成します。 (※)本演習では、作成済の地域資源の住所リストを提供します。
演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! 演習目的 モバイル端末で訪問先や地域資源の位置やルートを検索・確認しながら、訪問業務を体験し、紙地図との違いを体験する 演習内容 一人暮らし高齢者の見守り訪問を想定 「訪問業務支援ツール(モバイル端末版)」と紙地図を使った場合それぞれの一連の訪問業務を体験する。 研修拠点近隣の一人暮らし高齢者(想定する場所)を3件程度巡回する (1)訪問ルートを考える<ルート検索>(演習室・外部) (2)モバイル端末を見ながら訪問する<現在地確認・訪問ルート確認>(外部) (3)訪問先で様々な情報を確認する<属性検索・近傍検索等>(外部) (4)訪問記録を作成する<属性編集>(外部) (5)訪問記録結果を掃き出す<データ出力>(演習室) 演習の体制(演習②と連動) 2~3人で1チーム体制。モバイル端末1台と紙地図(住宅地図)1冊を活用。 2~3チームで1グループを形成し、グループごとに外部演習を実施。 ◆このページのポイント 演習2で行う、モバイル端末を使った戸別訪問業務を体験し、紙地図との違いを体験してもらうことが目的であることを伝える。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、目的・演習で想定されている内容について説明する) ◆説明手順 ①演習1でアドレスマッチングした高齢者と地域資源の位置情報データを活用し、モバイル端末を使った戸別訪問演習の流れを以下のとおり説明する。→訪問は、一人暮らしの高齢者(想定する場所)3件を巡回する。 (1)訪問ルートを考える<ルート検索>(演習室・外部) (2)モバイル端末を見ながら訪問する<現在地確認・訪問ルート確認>(外部) (3)訪問先で様々な情報を確認する<属性検索・近傍検索等>(外部) (4)訪問記録を作成する<属性編集>(外部) (5)訪問記録結果を掃き出す<データ出力>(演習室) ②実際に訪問する際は、各グループの中でモバイル端末を使って訪問する人と紙地図を持って訪問する人で役割を分け、3ヵ所巡回する中で役割を交代し、紙地図とGISの違いを各々に体験してもらう。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! (1)訪問ルートを考える(訪問順を検討する手順のイメージ) ②モバイル端末のアプリケーションを立ち上げ、ログインし、地図を立ち上げて高齢者と地域資源のポイントを表示します。 ①「演習①」で作成した一人暮らし高齢者から、本日の訪問先をフラグにチェック ◆このページのポイント 演習①でプロットした高齢者データから、訪問先となる対象者の情報を絞り込み、巡回時にモバイル端末で操作する流れを理解してもらう。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、スライドの画面イメージを例に、高齢者分布の地図から訪問対象者のみを抽出したり、訪問先を表示することができることを説明する) ◆説明手順 ①演習①でプロットした高齢者データのうち訪問先となる対象者のデータを検索する。(PC上の作業) ②外部でモバイル端末を操作する際に①でフラグを立てた訪問対象者を絞り込む。(モバイル端末上の作業) ③絞り込んだ訪問対象者が近傍順に表示されるため、最初に訪問する対象者を選択し、ルートに従って巡回訪問を実施する。(モバイル端末上の作業) ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 ③「訪問先選択」で本日の訪問先だけを抽出します ④現在地から、一番初めに訪問する順序を決めます。
演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! (2)モバイル端末を見ながら訪問する(訪問ルートの表示イメージ) ◆このページのポイント 外部での訪問演習の際、現在地確認と訪問ルート確認の流れを説明し理解してもらう。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、スライドの画面イメージを例に、最短ルートを検索できるイメージを伝える。) ◆説明手順 ①訪問演習で外に出たら、モバイル端末で現在地情報を確認する。(モバイル端末上の作業) ②次に訪問先の対象者を選択し、現在地からの訪問ルートを確認する。(モバイル端末上の作業) ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 ①現在地を確認する ②訪問ルートを確認する
演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! (3)訪問先で様々な情報を確認する(訪問先の属性を確認するイメージ) ①訪問者の属性を確認する (個人属性、前回の訪問内容等) ②訪問先の市民から相談を受けている状況を想定し、訪問者の最寄りの病院等を検索します。 ◆このページのポイント 訪問先で、属性情報(家族構成、要介護度、ケアマネ情報など)を確認し、課題でも挙がっていた訪問先周辺の地域資源(最寄りの病院等)を、モバイル端末で確認する。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、スライドの画面イメージを例に、GIS上にポイントで表示された訪問者の属性(エクセルリストにあった項目)を確認できるイメージを伝える。) ◆説明手順 ①モバイル端末上の訪問者予定者を選択すると、属性情報がポップアップされるため、必要な情報について確認する。(モバイル端末上の作業) ②モバイル端末の地図上に訪問者と地域資源情報が重なってプロットされているため、訪問対象者の最寄りの地域資源情報を巡回時に確認する。(モバイル端末上の作業) ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項
演習② モバイル端末でGISを使って訪問業務を体験しよう! (4)訪問記録を作成する(訪問結果を端末に記録するイメージ) (5)訪問記録結果を掃き出す (データ出力イメージ) 訪問記録をつけるため、訪問先の属性を表示させる。 「最終訪問日」を記録する。 「メモ」欄に気付いた点等を記録する。 ◆このページのポイント 訪問先で訪問記録や最終訪問日を属性情報に入力・更新することができ、帰庁後にPC上のGIS(訪問業務支援ツール)からモバイル端末で更新されたデータをCSV形式で出力でき、訪問業務の高度化・効率化を図ることができる。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、GISがあればできることを伝えるため、スライドの画面イメージを例に、属性を編集したり、データ編集後のGISデータを掃き出せるイメージを伝える。) ◆説明手順 ①訪問先でモバイル端末を使って、訪問記録や最終訪問日を属性情報に直接入力・更新することができる。(モバイル端末上の作業) →その場で記録することで、業務フローが効率化することを伝える。 ②帰庁後(演習室に戻ったら)、演習1で行ったPC上のGIS(訪問業務支援ツール)か ら、①で入力・更新したデータをCSV形式で出力する。(PC上の作業) →出力したデータは、異なるGISでも読み込むことができることを強調して説明する。これにより、他部署や他の主体とのデータ共有が容易であることを伝える。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 帰庁後(演習室に戻ったら)、PC版で訪問記録が更新されたファイルをcsv形式で掃き出します。 ⇒各担当者のcsvファイルを統合・集約すれば、最新の訪問状況を管理することができます。
チームごとに以下の点について話し合いましょう。演習で行ったことの再確認も含めて、意見を出し合いましょう。 演習の振り返り チームごとに以下の点について話し合いましょう。演習で行ったことの再確認も含めて、意見を出し合いましょう。 演習①、②を通じて、紙地図とGIS(訪問業務支援ツール)ではどのような点が違いましたか。GISの方が便利な点、特にかわらない点をそれぞれ挙げてみましょう。 演習①で作成した高齢者や地域資源の地図や、一連の訪問業務支援ツールが有効な場面はありますか。 戸別訪問業務にGISを導入するにあたって課題になることはありますか。 訪問業務を支援するツールとして、どのような機能・要件があるとよいと思いますか。 ◆このページのポイント 本演習を振り返って、演習で行ったことの再確認も含めて、意見交換を行い演習の成果を確認する。 (ツールを用いた操作演習をしない場合でも、テキストの画面イメージを参考に、実際にツールがあれば、自分たちの業務に役立ちそうかをふりかえってもらう。) ◆説明手順 ①演習を振り返って、以下の項目について、一緒に訪問したグループで意見交換を行う。※時間5~10分程度 ・演習①、②を通じて、紙地図とGISではどのような点が違ったか、GISの方が便利な点、特にかわらない点を列挙させる。 ・演習①で作成した高齢者や地域資源の地図や、一連のGISが有効な場面が他にあるか考えさせる。 ・戸別訪問業務にGISを導入するにあたっての課題について考えさせる。 ・今回のGIS(訪問業務支援ツール)は、さらにどんな機能・要件が満たされると、より有効になるか考えさせる。 ②意見がまとまったらグループごとに発表してもらう。 ③発表された意見から、GISを活用することでの便利な点と課題について整理し、今後の訪 問業務等にGISが活用できるか自治体等に帰った際に検討してもらうように促す。 ◆補足事項(スライド未掲載のデータやファクト等) 特になし。 ◆受講者への確認事項 説明手順①~③を通じ、本演習で学んだことを確認する。