3 相互依存と交易(貿易)からの利益
あるアメリカ(日本)人学生の一日 ある典型的な一日: 韓国製の目覚まし時計で起きる。 フロリダ産のオレンジ・ジュースとブラジル産の豆を使ったコーヒーを飲む。 ジョージア産の木綿をタイの工場で縫製してつくったシャツを着る。(ジョージア産→インド産) ニューヨークで制作されているニュースを日本製のテレビで見る。(ニューヨーク→東京) 世界中のたくさんの国でつくられた部品でできている車に乗って学校まで来る。
. . . でも、まだ一日の半分も終わってない! いろんな地域と国の名前がでてきた!
相互依存と交易(貿易)からの利益 思い出してください。経済学というのは、社会がその構成員の望みと必要を満たすためにどのように財・サービスを生産して分配するかを研究する学問だということです。 2
相互依存と交易(貿易)からの利益 世界経済(global economy)の中で、どうやって私たちは自分の望み(欲望)と必要を満たしているのでしょうか? ひょっとしたら自給自足も可能かもしれない。 でも、我々は特化(specialize)して、 他の国と交易(貿易)を行い、 その結果、経済的な相互関係 をとり結んでいる。 3
相互依存と交易(貿易)からの利益 個人と国家は、希少性から生じる諸問題を解決するために、生産を特化して、交換を行っている。 しかし、上に述べた言葉は、二つの疑問を生じさせるはずだ。 なぜ、相互依存が実際に成立しているのか? なにが生産と交易(貿易)のパターンを決定するのか? 4
相互依存と交易(貿易)からの利益 なぜ、相互依存が実際に成立しているのか? なにが生産と交易(貿易)を決定するのか? 相互依存が実際に起きるのは、人々が生産に特化して他の人々と交易(貿易)するときに人々の暮らしがよくなるからだ。 なにが生産と交易(貿易)を決定するのか? 生産と交易(貿易)のパターンは、機会費用の違いによって決定される。
現代経済の寓話 単純な経済を考えてみましょう: それぞれの人は何を作ったらよいだろうか? なぜ彼らは交易すべきだろうか? たった二つの財: ジャガイモと牛肉 たった二人の人: 牛飼いと(ジャガイモをつくる)農夫(農民) それぞれの人は何を作ったらよいだろうか? なぜ彼らは交易すべきだろうか?
表3-1 農夫と牛飼の生産機会(70頁) 1オンスの生産に必要な時間(分) 8時間で生産できる量(オンス) 1オンス=28グラム 牛肉 ジャガイモ 農夫 60 15 8 32 牛飼 20 10 24 48 Copyright © 2004 South-Western
生産可能性 自給自足 をするとしたら、、、 他の人のことは無視して、 農夫と牛飼のそれぞれは、それが生産したものだけを消費する。 ということは、生産可能性フロンティアは、同時に消費可能性フロンティアになるということ。 交易(貿易)なしでは、経済的な利益は減少する。 8
図3-1 生産可能性フロンティア (a) 農夫 の生産可能性 ’ 牛肉(オンス) もし貿易がなければ、 農家が選ぶのは、 図3-1 生産可能性フロンティア (a) 農夫 の生産可能性 ’ 牛肉(オンス) もし貿易がなければ、 農家が選ぶのは、 この生産の組み合わせと この消費の組み合わせ。 8 32 A 4 16 ジャガイモ(オンス) Copyright©2003 Southwestern/Thomson Learning
図3-1 生産可能性フロンティア 48 24 (b) 牛飼 の生産可能性フロンティア 牛肉(オンス) 24 もし貿易がなければ、 図3-1 生産可能性フロンティア (b) 牛飼 の生産可能性フロンティア 牛肉(オンス) 48 24 もし貿易がなければ、 牛飼が選ぶのは この生産の組み合わせと この消費の組み合わせ。 B 12 24 ジャガイモ(オンス) Copyright©2003 Southwestern/Thomson Learning
農夫と牛飼は生産特化して交易(貿易)を行う 特化と交易(貿易)(72頁) 農夫と牛飼は生産特化して交易(貿易)を行う もしそれぞれが生産に特化して、自分が得意な財を生産して、それからお互いに交易(貿易、交換)を行えば、双方が得をする(つまり、暮らし向きが良くなる)。 農夫はジャガイモを生産すべきである。 牛飼は牛肉を生産すべきである。 10
表3-2 取引(交易)による利益 4 16 12 24 取引があるケース 取引からの利益 牛肉 ジャガイモ 取引なし:生産と消費 生産 取引 表3-2 取引(交易)による利益 牛肉 ジャガイモ 取引なし:生産と消費 4 16 12 24 取引があるケース 生産 取引 消費 取引からの利益 Copyright © 2004 South-Western
図3-2 交易(取引)による消費機会の拡張 8 5 4 32 16 17 (a) 農夫 の生産と消費 ’ 牛肉(オンス) 取引の場合の 図3-2 交易(取引)による消費機会の拡張 (a) 農夫 の生産と消費 ’ 牛肉(オンス) 取引の場合の 農夫の 消費 取引の ない場合の 農夫の 生産と消費 8 32 5 A* 4 A 取引の場合の 農夫の 生産 ジャガイモ(オンス) 16 17 Copyright©2003 Southwestern/Thomson Learning
図3-2 交易(取引)による消費機会の拡張 (b) 牛飼の 生産と消費 ’ 牛肉(オンス) 取引をした場合の 牛飼の 生産 48 24 図3-2 交易(取引)による消費機会の拡張 (b) 牛飼の 生産と消費 ’ 牛肉(オンス) 取引をした場合の 牛飼の 生産 48 24 取引をした場合の 牛飼の 消費 12 18 13 27 取引のない場合の 牛飼の 生産と 消費 B* 12 24 B ジャガイモ(オンス) Copyright © 2004 South-Western
表3-2 取引(交易)による利益 4 16 12 24 取引があるケース 32 18 +5 -15 -5 +15 5 17 13 27 表3-2 取引(交易)による利益 牛肉 ジャガイモ 取引なし:生産と消費 4 16 12 24 取引があるケース 生産 32 18 取引 +5 -15 -5 +15 消費 5 17 13 27 取引からの利益 +1 +3 Copyright © 2004 South-Western
誰がジャガイモをより低い費用で生産できるのか?--農夫か牛飼か? 比較優位の原理 生産費用の違いが次のことを決定する: 誰が何を生産すべきか? それぞれの財(産品)についてどれだけ交易(貿易、取引)すべきか? 誰がジャガイモをより低い費用で生産できるのか?--農夫か牛飼か? 11
比較優位の原理 生産費用の違い 生産費用を計測するには二つのやりかたがある: 財1単位生産するのに必要な時間(例えば、1オンスのジャガイモを生産するのに必要な時間) 一つの財を別の財のために犠牲にする機会費用
一つの財に関して、その生産性によって生産者を比較すること: 絶対優位(absolute advantage ) 絶対優位は、一人の人、一つの企業、一つの国の生産性を別の人、企業、国と比較して記述する 一つの財を生産するために必要な投入物がより小さい生産者は、その財に関して絶対優位を持っていると言う。 13
牛飼は、ジャガイモと牛肉の両方の生産について、絶対優位を持っている。 牛飼は10分間で1オンスのジャガイモを生産することができる。しかし、農夫は同じことをするのに15分間かかる(表3-1)。 牛飼はたった20分間で1オンスの牛肉を生産できる。しかし、農夫は同じことをするのに60分間もかかる。 牛飼は、ジャガイモと牛肉の両方の生産について、絶対優位を持っている。
もう一つの計測方法は、その機会費用( opportunity cost )によって、ある財の生産者を比較することだった。 機会費用と比較優位 もう一つの計測方法は、その機会費用( opportunity cost )によって、ある財の生産者を比較することだった。 機会費用=あるものを獲得するために失わなければならないすべてのもの ある財を生産する機会費用を比べて、より小さい生産者は、その財の生産について比較優位( comparative advantage )を持っていると言う。 14
比較優位と交易 誰が絶対優位を持っているか? 農夫か牛飼か? 誰が比較優位を持っているか? 15
表3-3 牛肉とジャガイモの機会費用 1オンス当りの機会費用 (あきらめたジャガイモで測った)牛肉 (あきらめた牛肉で測った)ジャガイモ 農夫 ジャガイモ 4オンス 牛肉 ¼オンス 牛飼 2オンス ½オンス
比較優位と交易 農夫の1オンスの牛肉の機会費用は、ジャガイモで測って4オンスである。これに対して、牛飼の1オンスの牛肉の機会費用は、ジャガイモで測って2オンスである。 農夫の1オンスのジャガイモの機会費用は、牛肉で測って1/4 オンスである。これに対して、牛飼の1オンスのジャガイモの機会費用は、牛肉で測って1/2ポンドである。ということは、、、
ということは、牛飼は牛肉の生産に比較優位を持っているが、農家はジャガイモの生産に比較優位を持っている。 比較優位と交易 ということは、牛飼は牛肉の生産に比較優位を持っているが、農家はジャガイモの生産に比較優位を持っている。
比較優位と機会費用における違いが生産の特化と交易(貿易)の基礎である。 比較優位と交易 比較優位と機会費用における違いが生産の特化と交易(貿易)の基礎である。 取引をするかもしれない相手と自分が機会費用で違いがある限り、二人は交易(貿易、取引)をして、交易から利益を得ることができる。 16
比較優位と交易 交易からの利益 交易は社会の全ての構成員に利益をもたらすことができる。なぜなら、交易があることによって人々は自分が比較優位を持っている生産活動に特化することができるからである。 17
参考: アダム・スミスとリカードの遺産 アダム・スミス(Adam Smith) デイビッド・リカード(David Ricardo) 参考: アダム・スミスとリカードの遺産 アダム・スミス(Adam Smith) 1776年に出版された『諸国民の富』において、アダム・スミスは交易と経済的相互依存について詳しい分析を行った。その分析を、現代の経済学者は今も信奉している。 デイビッド・リカード(David Ricardo) 1816年に出版された『経済学および課税の原理 』において、デイビッド・リカードは、現在われわれが知っている比較優位の原理を明らかにした。 二人ともイギリス人。
比較優位の応用例 タイガー・ウッズ(もしくは丸山茂樹)は、自分の家の庭の芝刈りを自分ですべきだろうか? ? ? ?
比較優位の応用例 アメリカ(日本、中国)は他の国々と貿易すべきだろうか? ただし、それぞれの国にはいろいろな利益・関心を持った人がいる。国際貿易は国全体で見れば豊かにするものだが、一部分の人々をより貧しくすることもある。そのことが、自由貿易に対して反対が起きる大きな原因になっている。 輸入(Imports)—海外で生産されて国内で販売される財 輸出(Exports)—国内で生産されて海外で販売される財
要約 個人は、国内に限らず世界中の多くの人々によって生産された財・サービスを消費している。 相互依存と交易(貿易)は、より多くのより多様な財・サービスをすべての人々が享受することを可能にするので望ましいことである。
要約 一つの財を生産する能力を、二人の間で比較するときには、二つの方法がある。 より少ない投入量で生産することのできる人は、絶対優位をもっているという。 より低い機会費用で生産することのできる人は、比較優位をもっているという。
要約 交換(貿易)の利益は、絶対優位ではなく比較優位に基づいている。 交換(貿易)が人々を豊かにするのは、自分が比較優位をもっている活動に特化することを可能にするからである。 比較優位の原理は、国の場合にも人の場合にもあてはまる。経済学者は比較優位の原理に基づいて、自由貿易を提唱する。