災害概論とトリアージ 高知医療センター 救命救急センター   黒住健人.

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災害概論とトリアージ 高知医療センター 救命救急センター   黒住健人

災害とは 自然災害と人為災害がある 被災者が最初の対応者であるが非被災地からの応援が必要 ルールはなく、次にどこで起きるか予知できない 原因がどうであれ、同様に医療や公衆衛生上の需給バランスの 崩壊が起きる 災害医療の鍵は多くの傷病者にとって最善の医療提供である

災害の種類 自然災害:地震、台風、竜巻、津波、洪水、旱ばつ 疫病、飢餓など 人為災害: 大規模交通事故:飛行機・列車事故・船舶事故など        疫病、飢餓など 人為災害:  大規模交通事故:飛行機・列車事故・船舶事故など  大規模事故:火災、爆発、化学災害、放射線災害 (複合緊急人道支援)  難民、戦争、紛争、テロリズム

最近の災害 自然災害 北海道南西沖地震 阪神・淡路大震災 宮城県北部地震 新潟中越地震 ⇨岩手、宮城内陸地震 人為災害 地下鉄サリン事件 O-157集団食中毒 砒素入りカレー事件 東海村臨界事故 池田小学校事件 明石花火大会事故 JR福知山線事故 ⇨岩手、宮城内陸地震

自然災害 阪神・淡路大震災 1995年(平成7年)1月17日 マグニチュード 7.2(震度6)   死者   6,425名   負傷者 43,772名

家屋倒壊 大渋滞 高速道路上のバス 一般道路崩壊 ビル崩壊 高速道路崩壊

Confined Space Medical Careが行われた 人為災害 JR西日本福知山線列車脱線事故 阪神・淡路大震災の教訓が活かされた Confined Space Medical Careが行われた (2005年4月25日) 死者 107名

救急医療≒災害医療 どちらも緊急対応を要求される Priority(治療優先順位) 生命>機能>整容

災害医療の特殊性 平時の 救急医療 災害医療

災害医療の最終目標 傷病者搬送システムの整備によって 災害医療を平時の救急医療に近づける努力が 行政に求められる 「多数の負傷者に対して最大多数に最良の医療を提供する」 (The best for the greatest number of victims) 現有する有限な医療資材(人的、物的)を最大限に活用しても、 全ての患者に対して最善の医療が施せない状況 個々の患者にとっては必ずしも最良の医療が提供されない場合もあり得る 傷病者搬送システムの整備によって 災害医療を平時の救急医療に近づける努力が 行政に求められる

災害医療の標準化 災害対応における共通の知識・理論 災害対応における共通の言語

情報伝達が失敗する原因 情報の欠損 確認の不履行 協力体制の不在 訓練の不足、平時の連携不足 ⇨分散搬送、個別搬送は?

災害現場における体系的な対応 (CSCATTT) Command & Contorol 指揮命令、統制/調整 Safety    安全 Communication 情報伝達 Assessment   評価 Triage   トリアージ Treatment 治療 Transportation 搬送

獲得目標 トリアージの性質を理解する トリアージがどこで実施されるかを理解する どのようにトリアージを実施するかを理解する

災害時のトリアージの概念 To do greatest good for the greatest number of people 限られた医療資源のもとで最大多数の傷病者に最善を尽くす →軽症、救命の見込みの無い重傷患者に優先を与えない

トリアージの目的 正しい患者を (Right Patient) 正しい場所へ (Right Place) 正しい時間内に  (Right Time) 篩い分け、優先順位をつけること

トリアージ・カテゴリー 赤 最優先治療群(Ⅰ) 待期的治療群(Ⅱ) 保留群(Ⅲ) 死亡群(O) 黄 緑 黒

赤:最優先治療群(Ⅰ):重症群 生命を救うために、ただちに処置を必要とするもの 窒息、多量の出血、 ショックの危険のあるもの 意識障害 窒息、多量の出血、 ショックの危険のあるもの 意識障害 気道閉塞・呼吸困難 ショック 大量外出血 胸部開放創 血気胸 腹腔内出血 多発骨折 クラッシュ症候群 多発外傷 広範囲熱傷 気道熱傷

黄:待期的治療群(Ⅱ):中等症群 多少治療の時間が遅れても、生命に危険がないもの 入院治療を要するが、基本的にバイタルサインが安定 6~12時間以内に手術をすればよいもの 四肢骨折 脊髄損傷(頸髄以下) 気道熱傷を伴わない全身熱傷

緑:保留群(Ⅲ):軽症群 処置不要 歩行可能 処置後外来通院可能 専門医の治療を必要としないもの 外来処置が可能な、四肢骨折、脱臼、打撲、捻挫、擦過傷、切創、挫傷、軽度熱傷、過喚起症候群など *軽症群とされても、そのまま帰宅させるのではなく、一ヶ所に集めてアンダートリアージされたり、容態変化した傷病者がいないか再確認

黒:死亡群(O) すでに死亡しているもの、又は明らかに即死状態であり、心肺蘇生を施しても蘇生の可能性はないもの

トリアージ 篩い分け (Sieve) 並び替え・順位付け(Sort)

トリアージ(篩い分け:Sieve) 迅速に、大別する   「素早く、大まかに」 おもに災害現場で行う START方式を用いる

トリアージ (並び替え/順位付け:Sort) 主に現場救護所や病院で行う 生理学的、解剖学的に評価し、処置・搬送治療の優先順位を確定 JPTEC、JATECの手法も用いる

トリアージと処置 トリアージの際に許されるのは気道管理と止血のみである 治療ではない!

Triage Sort (並べ替え/順位付け) Triage Sieve (篩い分け) 災害現場 赤 現場救護所 救急車乗車エリア 赤 赤 病院 黄 黄 黄 病院 緑 病院 黒 病院 救護所トリアージ 搬送トリアージ 現場トリアージ 応急処置の優先順位を決定 搬送順位、手段、病院選定 救出の優先順位を決定

Simple Triage And Rapid Treatment 呼吸(A,B)、循環(C)、意識(D)の3つのパラメーターでトリアージ STARTトリアージ Simple Triage And Rapid Treatment 大量の傷病者を短時間でトリアージ 呼吸(A,B)、循環(C)、意識(D)の3つのパラメーターでトリアージ 30秒以内で完了! (正確な診断が目的ではない)

STARTトリアージ A B C D はい 歩行可能? 軽症群 いいえ 呼吸(気道開通にて) 死亡群 呼吸数 最優先治療群 9/分以下、30/分以上 呼吸数 最優先治療群 10‐29 C 橈骨動脈/CRT/脈拍 触知不可/2秒↑/120以上 最優先治療群 D なし 意識:従命反応 最優先治療群 あり 保留群

トリアージタッグの記載 通し番号 個人識別情報 トリアージ実施場所 トリアージ実施者 推定される傷病名 トリアージ区分 トリアージの根拠 施行した応急処置  バイタルサイン・時間

トリアージタッグの記載の約束事 繰り返しトリアージが行われるので現場救護所ではタッグが完成できるように情報を整理して記載する トリアージタッグ=災害現場のカルテ 救護所にてタッグを完成させる

30秒以内 書けるところは書いておく 書けてなくても批判しない 緑は書かなくても良い? どこにつける? タッグがない場合は?

いつちぎる? 一枚目;災害現場(現場統括機関) 二枚目;搬送機間(救急隊?) 間違ってちぎったら? (色の部分、複写の部分)

トリアージを行うチーム編成について トリアージ判定者と記録者の2名一組が原則である 

2次トリアージ(並び替え/順位付け:Sort) 第1段階:生理学的評価 第2段階:解剖学的評価 意識  JCS2桁以上 呼吸  9/分以下、30/分以上 脈拍  120/分以上、50/分未満 血圧  sBP90未満、200以上 SpO2  90%未満 その他 ショック症状、低体温            (35度以下) 開放性頭蓋骨陥没骨折 外頸静脈の著しい怒張 頸部又は胸部の皮下気腫 胸部動揺、フレイルチェスト 開放性気胸 腹部膨隆、腹壁緊張 骨盤骨折(骨盤の動揺、圧痛、下肢長差) 両側大腿骨骨折 四肢切断 四肢麻痺 穿通性外傷 デグローピング損傷 15%以上の熱傷、顔面気道熱傷の合併 いずれかの異常があれば 最優先治療群

トリアージは動的(dynamic)なプロセス 災害現場 現場救護所 搬送選別 病院の入口 手術 術後入院 判断基準は状況によって変化する =繰り返し行う必要あり ⇨全員緑なら?

災害現場における体系的な対応 (CSCATTT) Command & Contorol 指揮命令、統制/調整 Safety 安全 Communication 情報伝達 Assessment 評価 Triage トリアージ Treatment 治療 Transportation 搬送

Prevention and Preparedness 災害サイクルから見た災害医療 PTSD 慢性期 (1ヶ月~3年) 復旧復興期 リハビリテーション期 静穏期 Silent Phase 災害準備 前兆期 計画、準備、備蓄 Prevention and Preparedness 亜急性期(~4週) 救急救助期 救急医療期 急性期 (~3日) 初期集中治療期 感染症期 急性後遺症期 災害発生

高知県における過去の主な災害 自然災害が多い地域である 1946年 南海地震 (マグニチュード8.1) 1946年  南海地震 (マグニチュード8.1)         死傷者2515名 全半壊 13853世帯  焼失196世帯 1970年  台風10号災害        死者・行方不明者13名 全半壊 4479世帯      (死傷者162名  全半壊 13816世帯  床上・床下浸水 10127世帯) 1972年  豪雨災害  (土佐山田町繁藤地区の山崩れ)         死者 60名  1975年  台風5号災害         死者・行方不明者 77名   全半壊2160世帯 1998年  集中豪雨災害  (高知市)         死傷者18名   全半壊33世帯  床上・床下浸水19749世帯 2004年  台風16号災害 (大川村孤立)  自然災害が多い地域である

南海大地震に備えて・・・

⇨硫化水素 ANAボンンバルディア機の胴体着陸 (2007.3.13) 高知空港 胴体着陸 高知医療センター受入れ準備 8:55 大阪発高知便の前輪出ず 10:12 医療チーム待機要請 10:30 DMAT自主的に出動 10:50 DMAT空港に到着 10:54 胴体着陸 11:08 乗員乗客全員無事 胴体着陸 高知医療センター受入れ準備 高知医療センターDMAT出動 高知空港 トリアージエリア ⇨硫化水素

まとめ 災害は忘れないうちにやってくる!