Belle IIに搭載する粒子識別装置TOPカウンターのLikelihood法を用いた性能評価

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Belle IIに搭載する粒子識別装置TOPカウンターのLikelihood法を用いた性能評価  名古屋大学 有田 義宣 2012.11.7 Bワークショップ@花巻

TOPカウンターの原理 TOPカウンター = 時間情報を用いるRing Image Cherenkov counter □荷電粒子の速度(β)を測定する 1イベントあたり Nhit ~20 検出光子 シミュレーションによる蓄積したリングイメージ π/K ( β=0.997,0.970) チェレンコフ光 TOP(Time Of Propagation) 石英 TOF(Time Of Flight) ~1.2m time[TOF+TOP](ps) 2 GeV/c ,θ=90° e+ X(ch) e- IP MCP-PMT K/π Δtime (θc:チェレンコフ角) ※運動量は他検出器で測定 検出光子の時間情報 (TOP+TOF)と位置情報(x) からリングイメージを再構成する Bワークショップ 2012.11.7

π/K リングイメージと粒子識別原理 ~200ps ➡βが違う 入射点! 検出位置と時間 Top view Bワークショップ 2012.11.7

π/K リングイメージと粒子識別原理 リングイメージアニメーション ~200ps ➡βが違う 光検出器 検出位置と時間 Top view ※リングイメージは入射位置、角度などに 大きく影響を受ける y 光検出器 1850mm z 400mm x t 実際はミラー でも反射 x 検出位置と時間 ~200ps Bワークショップ 2012.11.7

π/K 目的 ~200ps ➡βが違う 検出位置と時間 □検出光子がどちらに属しているかで識別 □原理的には検出光子の情報から リングイメージ(β)が再構成可能なはず ⇒βが測定できる MCシミュレーションによるデータの再現が必須 TOPカウンタープロトタイプでのビームテスト の実験データを用いて検証する Top view π/K ➡βが違う 1イベントでの 検出光子 (~20個) 検出位置と時間 ~200ps Bワークショップ 2012.11.7

TOP カウンタープロトタイプ MCP-PMT array 石英 光検出器MCP-PMT ・4ch x 8PMTs = 32チャンネル 915 mm 400 mm 20 mm フォーカシングミラー 1850 mm 光検出器MCP-PMT ・4ch x 8PMTs = 32チャンネル ・TTS < 40ps ・QE~20.5 % @400 nm フォーカシングミラー ・Al ミラー ・球面状ミラー(r=5 m) ミラー 石英 ・面粗さ~5Å ・屈折率 n = 1.47@400nm 1ch 32ch 4ch 有効面積1/2 検出光子数はフルTOPカウンターの半分 Bワークショップ 2012.11.7

TOPカウンター表面でのビームプロファイル ビームテスト@ CERN T4-H6-B beam line (CERN,SPS) - single π+ - 120 GeV/c(β≒1) - ~1Mイベントの入射粒子 π beam ビーム入射条件 cosθ = 0.5 (@Belle II) ➣入射角度60度. ➣すべての光子がミラー反射   する経路. ビームテストセットアップ Z X TOPカウンター表面でのビームプロファイル 100 mm ➣Φ5 mmのよく絞られたビーム ➣ふらつき19 psの時間原点 Bワークショップ 2012.11.7

時間ふらつき(σ)の全チャンネルの平均値 蓄積したデータ: 検出光子数, 時間分布 リングイメージ(蓄積したもの) 検出時間 (25ps/bin) PMTチャンネル 光子検出時間 (25ps/bin) 時間分布 時間ふらつき(σ)の全チャンネルの平均値 95±11 ps (92±11 ps MC) 1イベント中の検出光子数分布 データ 平均値:8.2 ±0.1 MCシミュレーション平均値:7.7 ±0.1 検出光子数 □時間ふらつき95ps±11 ps(データ) □検出光子数の平均は8.2 ➣MCシミュレーションでよく再現 蓄積したデータについてはよく理解できている ⇒イベント毎の評価が必要 Bワークショップ 2012.11.7

Likelihood法を用いた解析の手順 時間分布のPDF P(tdc,ch) 10-4 400 600 800 光子検出時間(25ps/bin) 解析手順 MCシミュレーションから、確率密度関数(PDF) を作成する。 入力変数 : x,z,θ,Φ,t0:時間原点,β 各チャンネルの検出光子位置・時間からPDFを用いてlnLを求める x z y θ Φ Beam N: 1イベントあたりの検出光子数 □TOPカウンターのMCシミュレーション 1. 荷電粒子と物質の相互作用をGEANT3で計算 2. MC法を用いてチェレンコフ光子ひとつずつの   放出と光検出器までの伝播過程を計算 3. 光検出器の反応をシミュレート チェレンコフ光 Bワークショップ 2012.11.7

Likelihood法による位置アラインメント あるチャンネルの検出時間分布 リングイメージはすべての変数に対して変化する。 1.Likelihoodスキャンを行なってβ以外の変数(x,y,θ,Φ,t0)の最尤値を求める。(β=1.0で固定) 2 . βスキャンで速度βの評価を行なう アラインメント前 変数Zについての一例(すべての変数について評価) 測量による位置精度:~10 mm 荷電粒子 z 300 600 900 検出時間(25ps/count) アラインメント後 ※β=1を仮定 z(mm) 5 mm lnL(all channel) Z scan 680 700 Z=704 mm 300 600 900 Bワークショップ 2012.11.7 検出時間(25ps/count)

Likelihood法による速度β分解能の評価 ➣MCシミュレーションのデータについても同様に βを評価し、データでの結果と比較する。 lnL 結果:βはほぼ1。σβ (β分解能)=2.17x10-3 ➣ 検出光子からリングイメージが再構成できる ➣ MCが実験データをよく再現 ➣ テール成分は・・・ β 実験データ MCシミュレーション ➣ β = 1.0005±10-5 σβ(β分解能) = (2.17±0.01)×10-3 β = 1.0000±10-5 σβ(β分解能) = (2.10±0.01)×10-3 β β 0.985 0.99 0.995 1 1.005 1.01 0.985 0.99 0.995 1 1.005 1.01 Bワークショップ 2012.11.7

検出光子数とβ分解能の関係 ― 実験データ(32ch) - - - MC(60ch) フルTOPカウンター □検出光子数依存性がみられる ➡検出光子が多くなれば、分解能は良くなる □大きい検出光子数の部分では悪化の傾向 ➡二次荷電粒子(δ線、ハドロン反応起源)のチェレンコフ光の影響 MCシミュレーションはその傾向も再現している フルTOPカウンターは今回のプロトタイプとしてはチャンネル数60chのものに相当。 平均光子数は18個程度。 ⇒次は実際にフルTOPカウンターで実験的に性能評価したい フルTOPカウンター(60ch)の 検出光子数の平均値      検出光子数 データ / MC Bワークショップ 2012.11.7

Likelihood ratioの評価 実際のPIDでは、仮定した粒子それぞれについてβが分かっているので、そこからlnLを計算し比較する。 分かっている情報: - 入射位置(x, y, z) - 入射角度(θ, Φ) - 時間原点t0 - 荷電粒子の運動量 すべての粒子についてβを仮定できる 実際のPIDでは、仮定した粒子それぞれについてβが分かっているので、そこからlnLを計算し比較する。 例:3GeV/cのK粒子β=0.9867を仮定 ΔlnL = lnL1(β=1.0) – lnL2(β=0.9867) をイベント毎に算出する Bワークショップ 2012.11.7

Likelihood ratioの評価 MC(60ch) full TOP 20.2% 10.0% ΔlnL= lnL(β=1.0) – lnL(β=0.9867) MC(60ch) full TOP 実験データ/ MC (36ch) 入射粒子β = 1.0 10.0% 20.2% ➡TOFの情報を加えれば、約6.5%になる   予想される性能どおり MCシミュレーションはデータをよく再現している ⇒フルTOPカウンターでは20.2%→10.0%になるはず Bワークショップ 2012.11.7

まとめ - 荷電粒子の入射条件(x,z,θ,Φ,t0)のアラインメント - 速度βとβ分解能の評価 □TOPカウンターのプロトタイプについて、120GeV/c πビームを用いて性能評価(β分解能評価)を行なった。 □プロトタイプはフルTOPカウンターの半分の8個の光検出器を用いており、半分のおよそ検出光子数 □Likelihood法を用いて、 - 荷電粒子の入射条件(x,z,θ,Φ,t0)のアラインメント - 速度βとβ分解能の評価 ⇒ 実験データの結果:β=1.0005 , σβ = 2.17x10-3 - Likelihood ratioの評価( β=1.0 and β=0.9867) をした。 イベント毎にリングイメージ再構成ができている また、シミュレーションでデータを非常によく理解できている □今後、本番と同じフルTOPカウンターで同様に評価したい Bワークショップ 2012.11.7

β (MC expectation) 36ch→60ch フルTOPカウンターになったらβがどうなるか β Bワークショップ 2012.11.7

Likelihood ratioと検出光子数 ― 実験データ(32ch) ― MCシミュレーション(32ch) - - - MC(60ch) フルTOPカウンター Bワークショップ 2012.11.7

Backup Bワークショップ 2012.11.7

Upgrade Belle/Belle II barrel PID Belle II upgrade Update Barrel PID: Time Of Propagation counter 1.154 m Original Belle 1.5 T This page shows the location of PID detector for Before and After upgrading. Upper region is related to Belle II upgrade, and Lower region is related to original Belle. Originally, there were two detectors which are ACC and TOF counter. TOP counter will be install instead of those detectors. It will be compact compared to previous systems. It prevents particles from multiple scattering. Particles from interaction points flies about 1.2m in the 1.5 tesla magnetic field. Then particles detected at TOP counter. Aerogel Cherenkov counter(ACC) Time-Of-Flight(TOF) counter Bワークショップ 2012.11.7

MC simulation(cosθ=0.5) Fakerate:6-8% @ cosθ=0.5 MC study for 2-bar by Mori-san Fakerate:6-8% @ cosθ=0.5 ΔlnL = lnLπ - lnLK

lnL scan in an event β Maximum lnL lnL1 lnL2 β=0.9867 β=1.0 Bワークショップ 2012.11.7

lnL scan in an event β Maximum lnL lnL1 lnL2 β=0.9867 β=1.0 Bワークショップ 2012.11.7

Nhit dependence of Beta resolution □Evaluates beta resolution for any Nhit(detected photon).  ⇒ Extrapolate discussion to performance of full scale TOP counter. Nhit=1 Nhit=2 Nhit=3 Nhit=4 Nhit=5 Nhit=6 Nhit=7 Nhit=8 Nhit=9 Bワークショップ 2012.11.7

β = 1.0004 β = 1.00018 σβ=2.0651×10-3 σβ=1.962×10-3 TOFを入れる Data w/ TOF MC w/ TOF β = 1.0004 σβ=2.0651×10-3 β = 1.00018 σβ=1.962×10-3

- Data - MC(36ch) --- MC(60ch) full TOP Bワークショップ 2012.11.7

Data 36670 150306 35922 14650 ΔlnLと収束するβの関係 β=0.9868 β=0.9934 lnL1-lnL2 36670 150306 35922 14650 β Bワークショップ 2012.11.7