流体・磁気流体コース: イントロダクション

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流体・磁気流体コース: イントロダクション 天体とスペースプラズマのシミュレーションサマースクール 2003年9月8日ー12日(於:千葉大) 流体・磁気流体コース: イントロダクション 柴田一成 京大理・花山天文台

参考文献 数値流体力学ハンドブック(丸善2002) 最終節「天体数値流体計算」(柴田) シミュレーション天文学最前線2002 電子集録 数値流体力学ハンドブック(丸善2002)  最終節「天体数値流体計算」(柴田) シミュレーション天文学最前線2002  電子集録 http://th.nao.ac.jp/sim2002/proceedings/list.htm 詳しい文献リストについては、この中の私の原稿を参照のこと

天体MHD(流体・磁気流体)数値シミュレーションの魅力と魔力 2000年天文天体物理夏の学校 2001年天体磁気流体数値計算サマースクール             における講演を元に少し改訂 天体MHD(流体・磁気流体)数値シミュレーションの魅力と魔力 柴田一成 京大理花山天文台 2000年8月20日 天文天体物理夏の学校「宇宙力学過程」にて招待講演(於:神奈川県葉山) Tentai_MHD_movie.ppt と内容は同じ(html 用にコピー)

本講演の内容 1.はじめに 2.天体MHD現象のおもしろさ 3.天体MHDシミュレーションは超困難 4.天体MHDシミュレーションの魅力 5.天体MHDシミュレーションの魔力。はまると危険(落とし穴の数々) 6.むすび:ノーベル賞課題(超難問)に挑戦せよ

1.はじめに 時間に依存する電磁流体(MHD) 方程式を数値的に解くこと。 天体MHDシミュレーションとは? 天体現象への応用を目的として、  天体MHDシミュレーションとは?     天体現象への応用を目的として、     時間に依存する電磁流体(MHD)     方程式を数値的に解くこと。   シミュレーション=数値実験

天体MHDシミュレーションを取り巻く迷信・偏見の数々  1)シミュレーションは何でも解決してくれる  2)シミュレーションは、境界条件をうまく選  べば必ず望む結果を出してくれる  3)シミュレーションは、簡単である。頭が悪い  4)シミュレーションは、きれいな絵やムービー を見せて人をだまそうとする手段である

迷信にまどわされるな 1)MHDシミュレーションは、万能ではない。 2)MHDシミ ュレーションでは、境界条件をコントロールするのは至難のワザ。 3)MHDシミュレーションは、流体シミュレーションの 10倍くらい困難。精神力、体力が必要。 4)シミュレーション・ムービーは、実におもしろくて役に立つ。人(または自分)を「だます」のではなく、「教育する」。

私の場合 大学院に入りたての頃、コンピュータにも、シミュレーションにも全く興味はなかった。 FORTRANも知らなかった。  FORTRANも知らなかった。 そんな私が、いかにして、天体MHDシミュレーションに、はまっていったか、本日はその魅力と魔力について語りたい

2.天体MHD現象のおもしろさ 天体MHD現象の代表例 宇宙ジェット(AGN、連星系、原始星) 太陽フレア・ジェット    宇宙ジェット(AGN、連星系、原始星)    太陽フレア・ジェット               まずは、魅惑あふれる画像とムービーを見よう

宇宙ジェット (活動銀河核ジェット:電波銀河 Cyg A with VLA)

宇宙ジェット (原始星ジェット: HH1-2 with HST)

宇宙ジェット (連星系ジェット:SS433 with ASCA)

宇宙ジェットと降着円盤 (活動銀河核ジェット)

宇宙ジェットと降着円盤 (原始星ジェット)

太陽ジェット(Hα) (京大飛騨天文台: Kurokawa et al. 1988) 回転しながら噴出している

太陽スピキュール (彩層の超音速ジェット) 太陽スピキュール (彩層の超音速ジェット)

太陽コロナ・フレア・ジェット (ようこう軟X線)

太陽フレアからの衝撃波 (京大飛騨天文台:Hα)

太陽コロナ質量放出 (SOHO/LASCO 白色光) 太陽コロナ質量放出 (SOHO/LASCO 白色光)

かに星雲中の波 (HST)

天体 形成 (重力収縮)

天体 形成 降着円盤ージェット システムの形成 天体 形成 降着円盤ージェット システムの形成

恒星・降着円盤(銀河円盤) 内部におけるエネルギー発生による活動

惑星・中性子星磁気圏 外部からのエネルギー供給による活動

天体の温度と密度 加藤(1999) in 活動する宇宙(柴田、福江、松元、嶺重)より

MHDの適用範囲 MHD(電磁流体力学)   プラズマのマクロな振る舞いを記述   空間スケール>>イオンラーモア半径   時間スケール>>イオンラーモア周期 扱えない問題 粒子加速 電気抵抗の起源 電磁波

MHDの適用範囲(続)    例) 太陽フレアのサイズ、時間=数万km、数10分     >> 太陽コロナのイオンのラーモア半径・周期       

天体MHD現象共通の問題 磁場生成 ダイナモ (MHD乱流) 構造形成ーループ、磁気圏、星間雲 MHD不安定性 磁場生成    ダイナモ (MHD乱流) 構造形成ーループ、磁気圏、星間雲             MHD不安定性 プラズマ加熱   磁気リコネクション    MHD乱流/shock/non-MHD     (非定常ーフレア、定常ーコロナ) プラズマ加速 磁気遠心力/磁気圧、ガス圧、輻射圧     (非定常ーコロナ質量放出/ジェット、      定常ー天体風/ジェット) 非熱的粒子   粒子加速(non-MHD)

3.天体MHDシミュレーションは 超困難 (でも、だから、やりがいがある) 3.天体MHDシミュレーションは 超困難  (でも、だから、やりがいがある) 電磁流体力学の方程式がそもそも複雑  8変数の非線形偏微分方程式   cf)流体力学の方程式は5変数 電気抵抗が入るとさらに複雑   磁気リコネクションの物理は未だ解明   されていない

流体方程式 (断熱、重力なし) 未知数5個: 密度(ρ)、速度ベクトル(v)、圧力(p) 方程式5個: 非線形連立偏微分方程式 質量保存   未知数5個: 密度(ρ)、速度ベクトル(v)、圧力(p)   方程式5個: 非線形連立偏微分方程式 質量保存 運動量保存 エネルギー保存 ただし

電磁流体(MHD)方程式 (断熱、重力なし)   未知数8個: 密度(ρ)、速度ベクトル(v)、圧力(p)、磁場ベクトル(B)   方程式8個: 非線形連立偏微分方程式 質量保存 運動量保存 エネルギー保存 ただし 誘導方程式

流体とMHDとの違い 流体 MHD 5変数 8変数 音波 速い磁気音波(fast mode) 遅い磁気音波(slow mode)   流体     MHD   5変数    8変数   音波     速い磁気音波(fast mode)           遅い磁気音波(slow mode)           アルフベン波(Alfven mode)

電磁流体波(Alfven, fast, slow) Fast mode 磁場 Slow mode Group velocity diagram

MHD wave 特性曲面 2次元: fast +-, slow +-, 流線=5本の射影特性曲線 2.5次元/3次元: 2.5次元/3次元:    fast +-, Alfven +-, slow +-, 流線=7本の射影特性曲線

数値MHDの解法 MHD方程式は磁場=0ならば、通常の、圧縮性流体の方程式に帰着する。 理想流体力学方程式=双曲型偏微分方程式 同様に、理想MHD方程式も、双曲型偏微分方程式 よって、流体力学方程式のために開発された数値解法のほとんどをMHD方程式にも適用できる。

偏微分方程式の型 2次方程式=2次曲線の式 双曲線=>双曲型 楕円=>楕円型 放物線=>放物型

双曲型偏微分方程式 例:波動方程式

放物型偏微分方程式 例:熱伝導方程式

楕円型偏微分方程式 例:ポアソン方程式

差分法 差分法: 微分を差分で近似。 有限の格子点上 で計算 (詳しい解説=>松元) 粒子法: 超粒子の運動方程式を解く 差分法: 微分を差分で近似。 有限の格子点上      で計算  (詳しい解説=>松元) 粒子法: 超粒子の運動方程式を解く         ラグランジュ法。MHDには不向き。         (磁場を解く必要があるので、             格子点はどうしても必要)               =>国立天文台スクール

Advanced Methods 近似的リーマン解法=>富阪 CIP(-MOCCT)法 =>矢部 スペクトル法(周期境界問題が得意)

CIP 法 (矢部教授(現東京工大)が1991年に開発) 接触不連続が精度良く解ける。 気体、液体、固体が同時に解ける

Example with CIP scheme Comet Shoemaker-Levy 9 on entry into Jovian atmosphere (Yabe et al. 1994)

天体MHDシミュレーションは どこが難しいか? 境界条件(MHDでは自由境界は、きわめ       て困難) 密度成層(アルフベン速度が大きく変化)    例)太陽光球密度/コロナ密度= 初期条件(初期平衡解を求めることさえ、         大仕事)   =>数値不安定の嵐!

重力成層大気中では電磁流体波の振幅は鉛直伝播により著しく増大 例えば、鉛直の磁束管に沿って伝わるスロー波(磁力線に平行に伝わる音波)の振幅は次のようになる よって大気の底で微小振幅でも大気の上層部に伝播すると、大振幅となり、衝撃波が容易に形成される

Amplification of Slow mode MHD wave along vertical flux tube (Suematsu et al. 1982. Shibata and Suematsu 1982)

太陽スピキュール (彩層の超音速ジェット) 太陽スピキュール (彩層の超音速ジェット)

Alfven wave model of spicules: numerical simulation (Kudoh-Shibata 1999)

Magnetically driven jet from accretion disk (Shibata and Uchida 1986, 1990) Magnetic field line disk time

4.天体MHDシミュレーションの 魅力 とにかく、ムービーはおもしろい。 「人をだます」などと言わずに、素直に感動しよう。 4.天体MHDシミュレーションの 魅力   とにかく、ムービーはおもしろい。 「人をだます」などと言わずに、素直に感動しよう。 1) 横山: 太陽フレア・ジェットの磁気リコネ       クション・モデル(天文学会奨励賞) 2)  林:  原始星フレアの磁気リコネクション・ モデル(SGI コンピュータグラフィックス賞) 3) 工藤: 宇宙ジェットのMHDモデル        (CIP科学賞) ほか 

Magnetic reconnectin driven by the Parker instability (Yokoyama and Shibata 1995) ようこう軟X線望遠鏡 で観測された 太陽コロナX線ジェット

原始星フレアのMHDモデル (Hayashi et al. 1996)

宇宙ジェットのMHDモデル (Kudoh et al. 2003) CIP-MOCCT法

Numerical simulation of accretion disk (Kudoh, Matsumoto, Shibata 2002, PASJ) Magnetorotational Instability (Balbus and Hawley 1991) leads to turbulence and reconnection Similar to ADAF

Time variability of 3D magnetized accretion disk (Kawaguchi et al Time variability of 3D magnetized accretion disk (Kawaguchi et al. 1999, Machida et al. 2001 Hawley et al. 2001, Stone et al. 2001)

General relativistic MHD simulation (Koide, Shibata, Kudoh 1998, 1999,2000) Maximum Lorentz factor ~2=>real limit ?

天体MHDシミュレーション の効用 1) 定性的物理が良くわかる。教育的効果。 1) 定性的物理が良くわかる。教育的効果。 2) 天体物理学的モデリングを可能にする。観測と理論の橋渡し。(e.g., Yokoyama and Shibata 1995) 3) 解析的手法では発見困難な物理の 発見の道具。シミュレーションは数値実験。 理論のカンニング(!)   例) scaling law (Yokoyama and Shibata 1998)      (世界初の熱伝導MHDリコネクションの       シミュレーションより発見)

世界初の 熱伝導MHDリコネクション計算 (Yokoyama-Shibata 1998) Lax-Wendroff+陰解法 ようこう 軟X線望遠鏡 で観測された 太陽フレア

フレア温度の scaling law の 発見(Yokoyama and Shibata 1998, 2001)

フレアの温度は何で決まっているか? 磁気リコネクション加熱=熱伝導冷却の バランスで決まる(Yokoyama and Shibata 1998, 2001)

5. 天体MHDシミュレーションの魔力。はまると危険 その1 5. 天体MHDシミュレーションの魔力。はまると危険 その1 魅力的なシミュレーション・ムービーが、いくらでも作れるし、また、そのようなムービーは人からもほめられるので、計算結果の解析、理論作り、論文執筆が、ついおろそかになる。 =>禁シミュレーションの期間を意識的に作り、ちゃんとサイエンスをやる

天体MHDシミュレーションの 魔力。はまると危険 その2 天体MHDシミュレーションの 魔力。はまると危険 その2 MHDシミュレーションは、とにかく、計算が難しいので、満足できる結果を出そうとするあまり、コードの改善、計算法の改良に、泥沼的にのめりこんでゆく恐れがある。 =>その方面(数値流体力学)で飯を食う自信があれば別だが、そうでなければ、天文学や宇宙物理学の成果を出すべく、適当なところでシミュレーションをうち切って論文を書く勇気が必要。

シミュレーション研究の実際 (その1) 問題設定(現在のコンピュータで解ける問題か?) 方程式をたてる(物理をどこまで入れるか) 解くべきアルゴリズムを考える 計算領域設定 初期条件 境界条件 パラメータ決定 メッシュ幅を決める プログラミング デバッグ

シミュレーション研究の実際 (その2) 結果の表示・解析 コードのテスト 結果のチェック(質量保存、エネルギー保存、、、) 1次元図、2次元図 時間変化、動画 コードのテスト 結果のチェック(質量保存、エネルギー保存、、、) 様々な解析(時間変動・空間構造のスペクトル解析、理論との比較、観測との比較) 学会・研究会発表 論文執筆・投稿

コードのテスト問題 1次元流体(MHD)ショックチューブ 点源爆発(セドフの相似解) 線形MHD波 平衡解(静水圧平衡、force free field) 定常解(太陽風Parker解、Weber-Davis 解、      Bondi accretion 解) 線形不安定性(KH、RT、Parker、MRI) 相似解(B.C.LowのCME解,      Larson-Penston の重力収縮解) ほか

6.むすび:ノーベル賞課題(超難問)に挑戦せよ その1 6.むすび:ノーベル賞課題(超難問)に挑戦せよ その1 1) 太陽(恒星)フレア:      ミクロとマクロの物理の融合:  電気抵抗の起源や粒子加速機構を  self-consistent に含むマクロなシミュレーション。   拡散領域のサイズはどれくらいか?       粒子はいかにして加速されるか?   イオンのラーモア半径100cm              << フレアのサイズ 1万km   (7桁の空間スケールのギャップをいかに        乗り越えるか? )

ノーベル賞の課題(超難問) に挑戦せよ その2 ノーベル賞の課題(超難問) に挑戦せよ  その2 2) 太陽(恒星)ダイナモ:     激しい密度変化があり(圧縮性気体)、かつ、乱流状態にある対流を矛盾なく解き、かつ、    生成された磁場の反作用(磁気浮力や磁気張力)を正しく含むダイナモのモデル(シミュレーション)は、はたして可能か? 理論が予言する磁場の強さはいくらか?       対流層の底の密度=0.1g/cc       光球の密度=      g/cc      (6桁の密度のギャップ,      5桁の時間スケールのギャップ)

ノーベル賞の課題(超難問) に挑戦せよ その3 ノーベル賞の課題(超難問) に挑戦せよ  その3 3)宇宙ジェット   ジェットの足元の降着円盤から、ジェットの先端までセルフコンシステントに含む、ジェットのMHDシミュレーション。降着円盤活動(フレア、コロナ)の非定常性はジェット(の内部構造)と関係しているか? ジェットの収束や安定性は?     原始星ジェットの足元の降着円盤の     内縁の半径=0.1AU    ジェットの長さ=1光年=10万AU     (7桁の長さのスケールのギャップ)

おわりに:若者たちへの メッセージ 理論    MHDシミュレーション 観測データ解析 この3分野に通じた幅広い研究者を目指してほしい