平成22年7月 環境省リサイクル推進室長 上田康治 循環型社会とリユース政策 平成22年7月 環境省リサイクル推進室長 上田康治
循環型社会とは 廃棄物等の発生抑制と適正な循環的利用・処分により、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会 【循環型社会形成推進基本法(平成12年6月公布、13年1月完全施行) 第二条】 循環型社会形成推進基本計画策定 天然資源の投入 生産 (製造、流通等) 1番目: 発生抑制Reduce 廃棄物等の発生を抑制 天然資源投入量 の抑制 循環型社会の形成に向け、政府一体となった取組を推進 3番目:再生利用 Recycle 再使用できないものでも、資源としてリサイクル 消費・使用 2番目: 再使用Reuse 使い終わったものでも、繰り返して使用 廃棄 4番目:熱回収 リサイクルできずかつ燃やさざるを得ない廃棄物を焼却する際に発電や余熱利用を行う 処理 (リサイクル、焼却等) 5番目:適正処分 処分する以外の手段がない場合は、適正に処分 最終処分 2
第2次循環基本計画の概要 各主体の取組 現状と課題 循環型社会の形成に向け、すべての主体が相互に連携 ○連 携・協 働 ○国民 ○事業者 ○連 携・協 働 関係主体の取組により、最終処分量の減少など循環型社会の形成の推進に一定の成果 世界的な資源制約、地球温暖化等の環境問題への対応の必要性 3Rの徹底など国内外において循環型社会の形成をより一層進めていくことが課題。 ・マイ箸、マイバッグの利用などのライフスタイルの変革 ○国民 ・不法投棄の防止や3Rの徹底 ・廃棄物処理の高度化、産業間連携 ○事業者 ・連携・協働のつなぎ手 ・知見の充実や信頼情報の提供 ○NGO/NPO、大学等 ・関係主体のパートナーシップを図るとともに、国全体の取組を総合的に実施 ○地方公共団体 循環型社会の中長期的なイメージ ○国 「低炭素社会」や「自然共生社会」に向けた取組とも統合した、「持続可能な社会」の実現 より良いものが多く蓄積され、それを活かした豊かさが生まれる「ストック型社会」の形成 地域の特性に応じた循環型社会(地域循環圏) 「もったいない」の考えに即したライフスタイル、等 ・関係主体のパートナーシップを図るとともに、国全体の取組を総合的に実施 ①低炭素や自然共生との統合的取組(廃棄物発電やバイオマス利活用)、 ②「地域循環圏」の形成推進、③3Rに関する国民運動、 ④グリーン購入の徹底など循環型社会ビジネスの振興、 ⑤発生抑制を主眼とした3Rの仕組みの充実、 ⑥3Rの技術とシステムの高度化、⑦情報把握と人材育成、 ⑧ごみゼロ国際行動計画や東アジア循環型社会ビジョン、資源生産性の向上等国際的な循環型社会の構築 指標及び数値目標 【1 物質フロー指標 】 【2 取組指標 】 (ア)1人1日当たりのごみ排出量 (イ)1人1日当たりの生活系ごみ排出量 (ウ)事業系ごみ排出量 (1) 数値目標 ① 一般廃棄物の減量化 ② 産業廃棄物の最終処分量 ③ 国民の3Rに関する意識・行動 ④ 循環型社会ビジネスの推進 (2) 「レジ袋辞退率」や「 3R取組上位市町村」など、各主体の 取組の推移をモニターする指標を設定 (1) 数値目標 ① 「入口」:資源生産性 → 平成12年度から約6割向上 ② 「循環」:循環利用率 → 平成12年度から約4~5割向上 ③ 「出口」:最終処分量 → 平成12年度から約6割減少 (2) 「低炭素社会への取組との連携に関する指標」等を 補助指標として設定 (3) 地球規模の環境問題の認識を広める指標である「隠れた フロー・TMR」などを、推移をモニターする指標として設定 3
我が国における循環資源フロー(平成19年度) 4
家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機) 環境省のこれまでのリユースの取組 家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・乾燥機) リユースとリサイクルの仕分け基準ガイドライン(小売店向け) 製造後7年以内:積極的にリユース 15年以上:原則的にリサイクル 自動車 中古車市場を前提とした制度 自動車リサイクル法で関係者の責務を規定 メーカー:耐久設計 ユーザー:長期使用努力(リサイクル料金承継) リユース部品の利用促進 エンジン フロントドア 容器包装 ペットボトルリユース実証実験の実施 地域におけるリターナブルびんモデル事業の実施(東京都港区、目黒区、世田谷区、横浜市、茅ヶ崎市、大和市、名古屋市、京都市、八尾市、南九州地域、那覇市) 地域におけるリターナブル食器モデル事業の実施(岐阜県揖斐郡、京都市) 中古パーツの環境保全効果 個別展開 より総合的な取組へ
平成21年度リユース実態調査 本事業は、環境保全上の効果の点からも推進することが望ましいリユースに関する様々な取組の活性化を図るため、リユース市場の市場規模を含めた現状、環境保全上の効果、今後のリユース推進についての課題を把握することを目的とし、予備的な調査を行ったもの。 実施に当たっては、関係業界等の有識者からなる意見交換会を開催し、調査項目及び調査結果について、多角的な意見交換を行っていただいた。 内容 ・リユース市場の推計について ・消費者のリユースに関する意識について ・市町村等におけるリユースに関する取組について ・品目別の排出・流通実態(マテリアルフロー)の推計 ・リユースの環境保全上の効果の把握手法について ・リユース業者に向けたアンケート調査の実施方針について ・業界における優良事業者支援の自主取組
Ⅰ.リユース市場規模の推計 商業統計によれば、中古品小売業(骨とう品除く)の年間販売額は増加傾向 2007年の年間商品販売額は3,452億円と5年間で1.6倍に拡大 1事業所あたりの販売額は1.7倍に拡大 ただし、商業統計の数値では捕捉できていない中古品市場が存在 主業としての販売のみ。また、中古自転車、古本については捕捉不可 中古車が含まれていない(中古車小売業で別途計上) 「C to C」での売買が含まれていない 中古品小売業(骨とう品を除く)における事業所数・販売額の推移
リユース市場規模(消費者アンケートからの推計) リユース市場の規模を消費者アンケート調査(後述)より推計 「消費段階としてエンドユーザーが中古品を購入した総額」を市場規模とする アンケートより品目別の中古品購入数量・金額をもとに拡大推計 家具、電気電子機器、日用品等のリユース市場は約1兆円と推計され、中古車市場(推計2.6兆円)と合計すると3~4兆円に上る 上記1兆円を流通経路別に見ると、「①リユースショップで購入」が約5,000億円(50%)、「②ネットオークションで購入」が約4,500億円(45%) 流通経路別のリユース市場規模(自動車除く) 品目別の内訳(自動車除く) (億円) (億円) 合計 1兆円
Ⅱ.消費者のリユースに関する意識について インターネットアンケート調査を実施、消費者のリユースに関する意識・意向等を把握した 中古品を「過去にあなた以外のユーザーが利用・使用していた商品」と定義、「新古品」は対象外としている 中古自動車、骨とう品、中古住宅は除く。 調査対象は以下の14品目、調査は事前調査(N=86,823)と本調査(N=3,000)に分けて実施 <調査対象品目> 1.テレビ 2.エアコン 3.電気洗濯機・乾燥機 4.電気冷蔵庫・冷凍庫 5.家具 6.衣類 7.デジタルカメラ 8.携帯電話 9.ゲーム機 10.パソコン・周辺機器 11.書籍 12.自転車 13.カー用品 14.その他
中古品の購入経験、不要品の売却・引渡し経験 中古品の購入経験は、「利用したことはない」が約6割、次いで「ネットオークション」が23.0%、「リユースショップ・中古品販売店」が19.7%と続く 不要品の売却・引渡し経験は、「利用したことはない」が約6割、「リユースショップ・中古品販売店」が21.7%、 「ネットオークション」が15.0%と続く 中古品の購入経験 不要品の売却・引渡し経験 ※いずれも過去1年間における経験 ※「ネットオークション」の経験については、インターネットモニターアンケートの結果であることに留意
品目別の購入経験、購入意向 品目別の購入経験は、「書籍」(22%)、「その他」(15.0%)、「衣類」(12%)が上位。一方、「エアコン」、「洗濯機・乾燥機」、「冷蔵庫・冷凍庫」、「テレビ」、「携帯電話」は1%未満と、他と比較すると低い 購入意向については、「書籍」、「家具」、「自転車」、「ゲーム機」が上位 品目別の購入経験 品目別の購入意向 家具 ゲーム機 書籍 自転車
中古品を購入した理由/不要となった製品の引渡先の選定理由 中古品を購入した理由について、いずれの品目も以下の理由が上位 「安い価格で購入できるから」 「汚れやキズはあまり気にしないから」 「新品・中古品に対するこだわりがないから」 不要となった製品の引渡先を選んだ理由は、「金銭的な理由」が最も多く、次いで「煩雑な手続きや準備をしなくてすむから」、「まだ使用する人がいれば有効に利用して欲しかったから」が上位 中古品を購入した理由 例 家具 例 パソコン・周辺機器
Ⅲ.市町村等におけるリユースに関する取組について 全国市町村に対しリユースに関する取組状況をアンケート調査 リユースについて何らかの取組を行っている市町村は63.5% 市町村における「リユース品の販売・譲渡」は約1/4 (309件)が実施 具体的品目は「家具(84.5%)」「中古自転車(58.3%)」「その他(44.3%)」が上位 リユースの方法としては、「市民への販売(52.8%)」、「無償譲渡(45.6%)」が上位、「リユース業者への販売」は10.7%。 市町村におけるリユース推進に向けた取組 リユース品の販売・譲渡の具体的内容
市町村等におけるリユースの具体的な取組 アンケート結果をもとに、市町村の具体的な取組内容をインタビュー調査 リユース品の収集方法などより、「①リユースを前提として不要品を収集」、「②ごみからリユース可能な製品を分別・仕分け」、「③住民同士のリユースを仲介」の3つの大別される いずれも、必要なメンテナンス(清掃・修理など)を施し、住民又はリユース業者に譲渡・販売される。 ① リユースを前提に 不要品を収集 ② ごみから リユース可能な製品を仕分け ③ 住民同士の リユースを仲介 ・リユースを前提として収集。排出者の意向は確認ずみ ・家具、衣類、小型家電など対象 <具体的取組> ・リサイクルセンターなどにリユース品を持ち込んでもらう ・不要品発生時に住民から連絡を受け、引き取り ・衣類を対象に、リユース業者・輸出業者と連携・海外リユース ・粗大ごみや不燃ごみとして排出されたものから、リユース可能な製品を分別・仕分ける ・家具、衣類、小型家電などが対象 <具体的取組> ・市町村等が独自に目利きしリユース ・リユース業者と連携しリユース(判断基準など) 掲示板や広報誌などを使って不要品などの情報提供を実施 実際の製品・お金のやりとりは住民同士にやってもらう事例が多い
リユース利用の促進に関して想定される課題 市町村等におけるリユース推進上の課題 リユースを促進させるための取組予定について、「積極的に進める予定」(5%)、「進める予定」(13%)。「検討中」(42%)を含めると6割の市町村に可能性あり リユース利用の促進に関して想定される課題は「人員・予算が不足」、「保管するストック・スペースが不足」、「製品の品質保証ができない」が上位 これらは、先行事例の情報提供やリユース業者との連携で解決される可能性あり リユース利用の促進に関して想定される課題 先行事例に関する情報提供や、 リユース業者と連携することで 推進される可能性あり
リユースのモデル事業に対する市町村の関心 (昨年度行ったアンケートから) 人口10万人以上の都市(226市)の約4割が「関心がある/詳しい話を聞いてみたい」と回答 (設問)環境省では、リユース促進に向けたモデル事業を検討しています。市町村が収集した粗大ごみ・不燃物の中から、リユース可能な製品を選別し、リユース事業者と連携して活用するというものですが、平成22年度以降このような事業があるとした場合、関心がありますか。
Ⅳ. 品目別の排出・流通実態(マテリアルフロー)の推計 消費者アンケート調査をもとに、中古品の購入経路、不要品の排出・引渡先の割合、及びその際の費用について、品目別に整理。 例 (パソコン・周辺機器) リユース品合計 1,192万台
Ⅴ.リユース推進による環境保全上の効果(廃棄物の削減効果) リユースの推進によって廃棄物発生量を抑制する効果がある。短期的な効果として、リユース品の流通量(重量換算)が廃棄物の発生抑制効果であると仮定し推計 正確には「リユースにより廃棄時期を先延ばしした」と表現 家具、電気電子機器、日用品等(自動車除く)のリユースにより、短期的には665千t/年の廃棄物を削減できていると推計され、その量は一般廃棄物総排出量の1.3%に相当する 品目別の中古品流通量(重量換算) 665千t/年
リユース推進による環境保全上の効果(温室効果ガス排出削減) LCAの考え方を踏まえて、リユースの推進により新製品の製造が抑制されたと仮定し、CO2排出量の削減効果を試算する 使用段階における削減効果は使用年数等のデータが不足しており、算定対象外とした 家具、電気電子機器、日用品等(自動車除く)のリユースによる新規製造抑制効果のCO2削減量は、現状年間約174万t-CO2、国内排出量の0.14%に相当 新規製造抑制によるCO2排出削減量 174万t-CO2/年
平成22年度のリユース促進事業の概要 リユースの意義 循環型社会形成推進基本法に定める基本原則では、リユースはリサイクルより上位 リユースの推進 → 製品の使用期間の長期化・廃棄物の発生抑制 → 製品製造時、廃棄時の資源消費・環境負荷を回避 事業の概要 概況調査 <リユース市場の規模> <リユース可能な物品の現在の流れ> <リユースによる定量的な環境保全効果> <リユースに関する国民の意識> <リユース促進に向けた課題> ・・・・等を調査 具体的な促進事業 廃棄されていたものをリユースへ リサイクルされていたものをリユースへ 市町村収集ごみリユース可能性調査 粗大ごみに含まれるリユース可能な使用済製品(例:家具、自転車等)の実態把握や、市町村と事業者がタイアップしたモデル事業等を実施。 家電リユースGLのフォローアップ 「小売業者による特定家庭用機器のリユース・リサイクル仕分け基準作成のためのガイドライン」(20年9月)について、家電小売業界における実施状況等を調査。 リユース業者の環境意識高度化事業 市町村や消費者が安心して取引できる高度な環境意識を持つ業者を増やすため、環境上適切なリユース/リサイクルの仕分け基準、物の流れの透明化策等を検討。 業務用容器包装のリユース手法検討 容リ法の対象外であるために排出抑制に向かいづらい業務用容器包装(居酒屋の酒瓶等)について、リユースのモデル事業と利用促進策の調査等を実施。 予算 上記を行うため、平成22年度予算に「使用済み製品等の総合的なリユース促進事業費」 として53百万円を確保。