地球温暖化対策と皆さんに望むこと 平成19年10月 環境省水・大気環境局土壌環境課 地下水・地盤環境室 佐藤 郁太郎.

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地球温暖化対策と皆さんに望むこと 平成19年10月 環境省水・大気環境局土壌環境課 地下水・地盤環境室 佐藤 郁太郎

1.地球温暖化の進行による影響  それでは、地球温暖化の進行による影響につい て説明いたします。 1

地球温暖化の進行 ・1990年代は過去1000年間で最も 暑かった ・氷河が大幅後退 ・世界各地での異常気象の頻発   暑かった ・氷河が大幅後退  ・世界各地での異常気象の頻発  (豪雨・洪水、干ばつ、台風、猛暑) ・20世紀中に平均海面水位10~20cm   上昇 《ヒマラヤの氷河の融解》 1978年 1998年  地球温暖化は、世界の平均地上気温の上昇だけの問題ではありません。異常気象の頻発化をはじめとする気象への影響や熱中症や感染症の増加や農作物への影響も予想されており、世界の社会・経済に影響を与える可能性がございます。  下の写真を御覧下さい。この写真は、同一の観測地点から1978年と1998年のヒマラヤ氷河を捉えたものです。氷河の後退が明らかに見て取れると思います。このように既に温暖化による影響が現れているのです。 2

温暖化の加速 ○過去100年間で世界平均気温が0.74℃上昇 ○最近50年間の気温上昇傾向は、過去100年間のほぼ2倍 【IPCC第4次評価報告書:第1作業部会報告書】 (IPCC:気候変動に関する政府間パネル、2007年2月2日公表) ○過去100年間で世界平均気温が0.74℃上昇 ○最近50年間の気温上昇傾向は、過去100年間のほぼ2倍 平均地上気温 (1961~1990年の平均気温との偏差) 出典:AR4 第3章 FAQ 3.1 図 1 線形トレンド データからひいた曲線 10年ごとの誤差範囲  (5~95%) 100年間の上昇ライン 50年間の上昇ライン 最近25年間  気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、本年2月に最新の科学的知見を公表しました。  この報告書では、 ○過去100年間で世界平均気温が0.74℃上昇していること、 ○最近50年間の気温上昇計画は、過去100年間のほぼ2倍であること、 を示し、地球温暖化が現在、既に起きていること、そしてその速度が近年加速化していることを示すとともに、人間が出す温室効果ガスの増加が温暖化の原因であることをほぼ断定しています。 ※ WMO(世界気象機関)及びUNEP(国連環境計画)共同で設立した政府間機構「気候変動に関する政府間   パネル(IPCC)」が、30名のメンバーを中核とする455名の科学者の参加を得て、温暖化の科学的知見等を報告。 3

温暖化の加速 4

予測される将来の影響 ○ IPCCでは、1980年から1999年までに比べ、21世紀末(2090年から2099年)の平均気温上昇は1.1~ 6.4℃と予測   気候変化に脆弱な分野においては、たとえ0~1℃の 気温上昇でも温暖化の悪影響が生じると予測される。 気温上昇の程度と様々な分野への影響規模 1 2 3 4 5℃ 湿潤熱帯地域と高緯度地域での水利用可能性の増加 水 中緯度地域と半乾燥低緯度地域での水利用可能性の減少及び干ばつの増加 数億人が水不足の深刻化に直面する 最大30%の種で絶滅 リスクの増加 地球規模での 重大な※絶滅 ※重大な:ここでは40%以上 生態系 サンゴの白化の増加 ほとんどのサンゴが白化 広範囲に及ぶサンゴの死滅 ~40%の生態系が影響を受けることで、 ~15% 陸域生物圏の正味炭素放出源化が進行 種の分布範囲の変化と森林火災リスクの増加 海洋の深層循環が弱まることによる生態系の変化 小規模農家、自給的農業者・漁業者への複合的で局所的なマイナス影響 低緯度地域における穀物生産性の低下 低緯度地域における 全ての穀物生産性の低下 食 糧 中高緯度地域におけるいくつかの穀物生産性の向上 いくつかの地域で穀物生産性の低下 洪水と暴風雨による損害の増加 世界の沿岸湿地  の約30%の消失※ 沿岸域 ※2000~2080年の平均海面上昇率4.2mm/年に基づく 毎年の洪水被害人口が追加的に数百万人増加 栄養失調、下痢、呼吸器疾患、感染症による社会的負荷の増加 熱波、洪水、干ばつによる罹(り)病率※と死亡率の増加 健 康 ※罹(り)病率:病気の発生率のこと いくつかの感染症媒介生物の分布変化 医療サービスへの重大な負荷 1 2 3 4 5℃ 8 1980-1999年に対する世界年平均気温の変化(℃) 出典:AR4 SPM

排出権と吸収量のバランス 現在 自然の濃度 大気中の二酸化炭素 380ppm 工業化 280ppm ○ 温室効果ガス濃度安定化のためには、排 ○ 温室効果ガス濃度安定化のためには、排   出量を、今後自然吸収量と同等まで減らさ   ねばならない。 ○ 現在の排出量は自然吸収量の約2倍以上  にも達している。 人為的排出量 (2000~2005年) 72億炭素トン/ 年 年1.9ppm増 (1995~2005年平均) 現在  地球温暖化の影響を防止するためには、大気中の二酸化炭素などの温室効果ガスの濃度を安定させる必要があります。  現在、人間が化石燃料の使用などにより排出する温室効果ガスは、炭素に換算すると約72億トンですが、海や森林の光合成などで吸収される量は31億トンと、約半分しかありません。  つまり、地球温暖化の影響を安全なレベルまで抑えるためには、まず、現在の世界の総排出量をおよそ半減させて、排出量と吸収量をバランスさせることが人類の課題なのです。 380ppm 工業化 280ppm 自然の濃度 大気中の二酸化炭素 自然の吸収量 31億炭素トン / 年 (IPCC第4次評価報告書(2007)より  国立環境研究所・環境省作成) 9

2.国際的な動向  次に、地球温暖化をめぐる国際的な動向につい て説明いたします。 10

国際交渉の経緯と今後 国 連 (COP) G8サミット 1992年  気候変動枠組条約 採択 <G8英国サミット(グレンイーグルズ)> 温暖化の人為的影響について首脳間で合意 1997年  京都議定書 採択 2005年 2005年  京都議定書 発効(2月16日)       第1約束期間(2008-2012) 第1回気候変動対話(G20)(イギリス) 2006年 <COP12>(ケニア)   京都議定書の見直しプロセスの合意 2006年 第2回気候変動対話(G20)(ドイツ) 2007年 G8環境大臣会合(ドイツ) 2007年 <COP13>(インドネシア)   京都議定書の見直し準備、   各国の削減ポテンシャル検討 <G8ドイツサミット(ハイリゲンダム)> 第3回気候変動対話(G20) (ドイツ)   地球温暖化対策のための初の国際条約「気候変動枠組条約」は1992年に採択されました。この条約では、大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを究極の目的としており、米国を含め189カ国が締約国となっております。   この究極の目的実現のための第一歩として、1997年に京都で開催されたCOP3で、 我が国が議長国となり京都議定書が採択され、2004年11月ロシアの批准により京都議定書が昨年2月16日に発効しました。我が国は、2002年に国会の全会一致の賛成を得て、議定書を批准し、1990年比6%削減を約束しております。 2008年 2008年 第4回気候変動対話(G20)(日本) <COP14> 京都議定書の見直し実施 G8環境大臣会合(日本) 2009年 <COP15> 次期枠組みの交渉妥結の可能性 <G8日本サミット> 2013年以降、空白期間(ギャップ)を生じさせないためには、遅くともこの時期までには合意が必要 2010年 2011年~2012年 各国批准手続 11 2013年 第 2 約 束 期 間 開 始

気候変動枠組条約(UNFCCC、191ヵ国・地域) 1992年採択 究極目的: 温室効果ガス濃度を、気候システムに対して危険な人為的干渉を         及ぼすこととならない水準に安定化させる 原 則:   共通だが差異のある責任、及び各国の能力に従い、気候系を保護 全締約国の義務:  排出目録の作成、削減計画の立案等 先進国等の義務:  排出量を1990年の水準に戻すことを目的に削減活動を報告 先進国の途上国支援義務:  資金供与、技術移転、キャパシティ・ビルディング等 京都議定書(Kyoto Protocol、175ヵ国・地域) 1997年採択 「共通だが差異のある責任」 原則に基づき: ①先進国全体で1990年比で少なくとも5%の削減を目標。 ②各国毎に法的拘束力のある数値目標設定(途上国は削減約束なし) ③柔軟性措置として、京都メカニズムを用意 ○ 気候変動枠組条約は、京都議定書を含め、全ての温暖  化対策の根本となる枠組み。 ○ 究極の目的として、「温室効果ガス濃度の安定化」を掲げ  ている。 ○ 「共通だが差異のある責任」とは、先進国と途上国はとも  に責任を有するが、先進国の責任が重いことをあらわした  もの。 対象ガス CO2,CH4,N2O,HFC,PFC,SF6 の6種類 吸収源 森林等の吸収源によるCO2吸収量を算入 基準年 1990年(HFC、PFC、SF6 は1995年) 目標期間 2008年~2012年の5年間 数値目標 日本-6%,米国(未批准)-7%,EU-8%等 我が国は2002年6月4日に締結し、議定書は 2005年2月16日に発効。 12

世界全体のCO2排出量と今後の予測 (世界全体で排出量の大幅な削減が必要) 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100 5 10 15 20 25 先進国 開発途上国 年 途上国 CO2排出量   (炭素換算10億トン) その他 アメリカ 22.1% 31.8% 2004年の 全世界のCO2排出量 72億t-C (265億t-CO2) 18.1% 4.3% 中国 インド 4.8% 6.0% 12.8% 日本  国別の二酸化炭素排出量をみると、日本は約5%を占め、米国(約22%)、中国(約18%)、ロシア(約6%)に次いで 世界第4位です。  また、今後の世界の二酸化炭素排出量の予測をみると途上国の排出量が先進国を追い抜くことがわかります。  このような状況を勘案して、世界最大の排出国である米国だけでなく、今後は、中国やインドを始めとする途上国についても、「共通だが差異のある責任」の考え方をふまえつつ、地球温暖化防止のための対策を求めていくことが重要です。  このため、様々な機会を活用して、引き続き、途上国も含めて、すべての国が参加する実効ある国際的な枠組みが構築されるよう、努力してゆかなければなりません。 ロシア EU 15ヶ国 出典: Kainuma et al., 2002: Climate Policy Assessment, Springer, p.64. エネルギー・経済統計要覧 (2007年版)より環境省作成                           京都議定書第1約束期間後(2013年以降)の次期枠組みについては、 ・京都議定書を批准していないアメリカや、 ・京都議定書上、削減約束のない中国、インドなどの主要排出途上国にも 最大限の排出削減努力を促す実効ある枠組みを構築する必要がある。 13

安倍前総理新提案「美しい星50」 ~ 3つの提案、3つの原則 ~ 提案①:長期戦略 - 「世界全体の排出量の半減を2050年までに実現する」の全世界共通目標化 - 「革新的技術開発」と「低炭素社会づくり」という長期ビジョンの提示 提案②:中期戦略 -  2013年以降の具体的枠組みを設計するための「3原則」  1)「主要排出国が全て参加し、京都議定書を超え、世界全体での排出削減につながること」  2)「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること」  3)「省エネ等の技術を活かし、環境保全と経済発展とを両立すること」 その他: 新しい資金メカニズムを構築し、志の高い途上国に対し、日本から政策と協力を提案・発信する 公害対策と温暖化対策の一体的取組み、エネルギー効率向上に関する国際的取組の拡大等 提案③:京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開 自治体や主要業界に計画の公表を要請し、広く国民に対しても呼びかけを行い、排出削減に向けた行動の加速化を促す 国民運動の制度的な対応も含め今後更に強化を図る。具体的にはクールビズの定着、白熱球の蛍光ランプへの交換、省エネサービス事業などの推進等  次に、「美しい星50」の内容について、少しお時間をいただいてじっくり御説明したいと思います。 「美しい星50」は、大きく、3つの提案がございます。 (提案①:長期戦略)  1つめの提案は、長期戦略です。「気候変動枠組条約」の究極目的達成のためには、世界全体の排出量を自然界の吸収量と同等のレベルに抑え込む必要があります。このため、「世界全体の排出量を現状に比して2050年までに半減する」という長期目標を、世界全体としての目標として提案しました。実現のため、「革新的技術の開発」と「低炭素社会づくり」という長期のビジョンも示しています。  低炭素社会づくりは、生活の豊かさの実感と、二酸化炭素の排出削減が同時に達成できる社会の実現を目指すものです。生活様式や社会システムの変革にまで踏み込み、他方で日本に昔からある良き伝統と優れた技術を活かし、環境と調和した美しい社会づくりを、「日本モデル」として世界に向けて発信していきたいとしています。 (提案②:中期戦略)  2つめの提案は中期戦略として、2013年以降の温暖化対策の具体的枠組みを設計するための「3原則」の提案です。 ・第1の原則は、米国、インド、中国など「主要排出国が全て参加し、京都議定書を超え、世界全体での排出削減につながること」です。 ・第2の原則は、「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとすること」です。 ・第3の原則は、「省エネ等の技術を活かし、環境保全と経済発展とを両立すること」です。  また、新しい「資金メカニズム」を構築し、排出の抑制と経済成長を両立させようとする志の高い途上国を、我が国は広く支援することを表明いたします。特に、国土の水没、砂漠化等の危機に晒されている途上国、特に最貧国に配慮していきたいと思います。  そのほか、途上国の公害対策と温暖化対策との一体的取組みのための協力方策や、排出量取引、経済的インセンティブなど、様々な手法について、施策の効果や経済への影響など幅広い観点から検討していくこととされています。 (提案③:国民運動)  最後の提案は、我が国の京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開です。国民全体で6%削減目標の達成に取り組む決意を示しています。特に、排出量の伸びが著しいオフィスや家庭を中心に、新たな対策を追加し、本年度中に京都議定書目標達成計画を見直します。  政府は率先して取組み、既に大きな効果を挙げています。自治体や主要業界には計画の公表を要請し、行動の加速化を促したいと思います。また、「国民運動」を展開するとともに、制度的な対応も含めて取組を強化していきます。  さらに、国民運動の展開については、新しい提案を公募し、効果が確認されれば、積極的に紹介し、普及を図っていきます。 (次へ) 14

3.我が国の取組  次に地球温暖化に関する我が国の政策を紹介し ます。 15

2005年度における我が国の排出量は、基準年比7.8%上回っており、 議定書の6%削減約束の達成には、8.4%の排出削減が必要。 我が国の温室効果ガス排出量 2005年度における我が国の排出量は、基準年比7.8%上回っており、 議定書の6%削減約束の達成には、8.4%の排出削減が必要。 13億6,000万トン (+7.8%) 13億5,700万トン (+7.6%) (百万トンCO2) (2.3%) (2.8%) 8.4%の排出削減が必要 1,300 原発の利用率 低下による 一時的影響 (+5.5%) (+4.8%) 12億6,100万トン -0.6% 森林吸収源対策で3.8% 京都メカニズムで1.6% 1,200 -6% の確保を目標。 1,100 1,000 基準年排出量 (原則1990年) 2004年度 排出量 2005年度 排出量 京都議定書削減約束(2008年~2012年) 16

排出形態別、管理主体別の二酸化炭素の排出状況(2005年度) -CO2 17

部門別エネルギー起源二酸化炭素排出量の 推移と2010年目標 単位:百万トンCO2 単位:百万トンCO2 1990年度 増減率 2005年度       目標までの削減率 2010年度目安(※) としての目標 482 -5.5% 456 -4.3% 435 217 +18.1% 257 -3.1% 250 164 +44.6% 238 -44.2% 165 127 +36.7% 174 -29.2% 137 68 +15.7% 78 -14.0% 69 産業(工場等) 運輸(自動車・船舶等) 業務その他 (オフィスビル等) こちらの図では、部門別の排出量を記載しています。おわかり頂けますように、全体の量として工場等からの排出が大部分を占めていますが、排出量は微減しております。  一方で、特にオフィスビルなどの業務部門、家庭部門での排出量の増加が著しい状況となっています。 家庭 エネルギー転換 (※) 温室効果ガス排出・吸収目録の精査により、京都議定書目標達成計画策定時   とは基準年(原則1990年)の排出量が変化しているため、今後、精査、見直しが必要。 18 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005     

京都議定書目標達成計画 京都議定書の6%削減約束の確実な達成 地球規模での温室効果ガスの更なる 長期的・継続的な排出削減 6%削減約束を達成するために必要な対策・施策を盛り込んだ「京都議定書目標達成計画」を2005年4月に閣議決定。 京都議定書の6%削減約束の確実な達成 地球規模での温室効果ガスの更なる    長期的・継続的な排出削減 21世紀は「環境の世紀」 地球温暖化は人類の共通課題  2005年の4月28日、「京都議定書目標達成計画」が閣議決定されました。  我が国は、世界に冠たる環境先進国家として、6%削減を果たし、地球温暖化問題で世界をリードする役割を果たしていく必要があります。 我が国は、世界に冠たる環境先進国家として、地球温暖化問題で世界をリードする役割を果たしていくことを目指す。 19

目標達成計画の骨子 (平成17年4月28日閣議決定、 平成18年7月11日一部変更) 20

新エネルギーの面的導入やエネルギー融通の促進 産業部門の対策 新エネルギーの面的導入やエネルギー融通の促進 〇複数事業者の連携による省エネルギー 《約320万t-CO2》 施設・主体単位の対策 〇自主行動計画の着実な実施とフォローアップ 《約4,240万t-CO2 》 〇省エネルギー法によるエネルギー管理の徹底(産業) 《約170万t-CO2 》 機器単位の対策 〇高性能工業炉の導入促進 《約200万t-CO2 》 〇高性能ボイラーの普及 《約130万t-CO2 》 〇次世代コークス炉の導入促進 《約40万t-CO2 》 〇建設施工分野における低燃費型建設機械の普及 《約20万t-CO2 》   工場や発電所などの産業部門は、最も排出量の多い部門です。省エネ等の取組は世界的に見ても進んではいるものの、なお一層の取組が必要です。これからは、個々の事業者だけでなく、複数事業者が協力した対策なども講じていく必要があります。   先進的な対策の例ですが、神戸製鋼の神戸発電所では、排熱を酒造会社で活用し、これによって酒造会社で消費していたエネルギーを約32%も削減しています。   また、更に省エネ性能の高い設備の導入を推進することが重要です。例えば、多くの産業で材料の加熱や溶解などに用いられている工業炉を、燃焼ガスの熱を回収して高温燃焼させる「高性能工業炉」に転換すると、3割以上の省エネとなることから、こうした設備の導入が効果的です。 複数事業者の連携による省エネルギー 高性能工業炉の導入支援 ※発電所の廃熱を酒造(蒸米、洗瓶、    火入れ)に活用。 複数主体間での工場廃熱等の融通等により、 工場単体を超えた省エネルギーを実現。 加熱、熔解等に用いられる工業炉について、3割。 以上の省エネとなる高性能工業炉への転換を支援。 21

運輸部門の対策 自動車の燃費向上等の単体の対策とともに、交通システムの効率化や物流体系全体の グリーン化のような「面」の対策を実施し、運輸部門から排出されるCO2を削減 自動車交通対策 渋滞対策等 自動車単体対策及び 走行形態の環境配慮化 2,920万t-CO2 交通流対策 490万t-CO2 道路整備 従来から進めてきている施策であり、2010年のCO2排出量算定の前提 ・クリーンエネルギー自動車の普及促進 (300万t-CO2) ・トップランナー基準による自動車の燃費改善( 2,100万t-CO2 ) ・エコドライブの普及促進等による自動車運送事業等のグリー ン化                                   (130万t-CO2) ・アイドリングストップ車導入支援 (60万t-CO2) ・サルファーフリー燃料 (120万t-CO2 ) ・バイオマス由来燃料の導入 (130万t-CO2 ) ・高速道路での大型トラックの最高速度の抑制 (80万t-CO2) ・高度道路交通システム(ITS)の推進   (360万t-CO2) ・自動車交通需要の調整(30万t-CO2) ・路上工事の縮減(50万t-CO2) ・交通安全施設の整備(50万t-CO2) ・幹線道路ネットワーク の整備、 ボトルネック対策 運輸部門 5,280万t-CO2 削減   運輸部門は、産業部門に次いで排出量の多い分野です。 地域・都市構造における環境負担の少ない物流体系を図ることが重要です。   そのため、自動車の更なる燃費向上、バイオマス由来の自動車燃料の導入促進などの自動車単体対策が必要です。更に、公共交通機関の利用促進・円滑な道路交通を実現する交通の施設やマネジメントなど、総合的な対策を実施する必要があります。  また、自動車輸送から二酸化炭素排出量の少ない海運又は鉄道による輸送へ転換するモーダルシフト、トラックの輸送の効率化などを通して、物流全体の省CO2化の推進を図る必要があります。 環境負荷の小さい交通体系の構築 物流の効率化等 1490万t-CO2 公共交通機関の利用促進等 380万t-CO2 ・海運グリーン化総合対策 (140万t-CO2) ・鉄道貨物へのモーダルシフト(90万t-CO2) ・トラック輸送の効率化 (760万t-CO2) ・国際貨物の陸上輸送距離の削減(270万t-CO2) ・鉄道のエネルギー消費効率の向上(40万t-CO2) ・航空のエネルギー消費効率の向上(190万t-CO2) SHIFT ・鉄道等新線の整備 ・既存鉄道・バスの利用促進 ・通勤交通マネジメント   等 22

業務その他部門の対策 省CO2型の都市デザイン 〇地域レベルでのテナントビル等に対する温暖化対策の推進 施設・主体単位の対策 〇BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の普及 《約1,120万t-CO2 》※ 機器単位の対策 〇トップランナー基準による機器の効率向上 《約2,900万t-CO2 》※ 〇省エネ機器の買替え促進 《約560万t-CO2 》※ 〇エネルギー供給事業者等による消費者へのエネルギー情報の提供 《約420万t-CO2 》 〇家電製造事業者、販売事業者、消費者等が連携した省エネ家電普及のモデル的取組 〇高効率給湯器の普及 《約340万t-CO2 》※ 〇業務用高効率空調機の普及 《約60万t-CO2 》 〇業務用省エネ型冷蔵・冷凍機の普及 《約60万t-CO2 》 〇高効率照明の普及(LED照明) 《約340万t-CO2 》※   事務所や商店などの業務部門は、近年、特に排出量が 増大しているため、対策の強化が重要です。   この部門の対策としては、具体的には、建築物の省エネルギー性能の向上(二重窓ガラス、樹脂サッシの取り付けなど)、 省エネ型の電気機器の利用(照明、パソコン、エアコン、冷蔵庫など)などの取組を進めていく必要があります。   また、地域熱供給といった、複数の施設での効率的なエネルギーの供給、下水道の排熱など未利用エネルギーの活用等、エネルギーの面的利用を進めていくことが必要です。 ※…排出削減見込量は家庭部門と業務その他部門の合計 23

家庭部門の対策 施設・主体単位の対策 〇住宅の省エネ性能の向上 《約850万t-CO2 》 〇HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)の普及 《約1,120万t-CO2 》※ 機器単位の対策 〇トップランナー基準による機器の効率向上 《約2,900万t-CO2 》※ 〇省エネ機器の買替え促進 《約560万t-CO2 》※ 〇家電製造事業者、販売事業者、消費者等が連携した省エネ家電普及のモデル的取組 〇高効率給湯器の普及 《約340万t-CO2 》※ 〇高効率照明の普及(LED照明) 《約340万t-CO2 》※ 〇待機時消費電力の削減 《約150万t-CO2 》  家庭部門も、業務部門と同様、排出量の増大傾向が続いている部門です。   1世帯あたり、現状の2割程度の削減が必要です。   例えば、省エネ型の冷蔵庫などの使用、エコキュートなどの高効率給湯器の設置などハード面の取組、また、暖房温度を20℃に設定するなどの省エネ行動によって削減することが可能です。   また、 太陽光発電を設置すれば、これだけで大幅な削減が可能となります。   目標達成計画では、以上、御説明しましたように、それぞれの各部門で様々な対策を推進することで、6%削減目標を達成していくこととしています。 ※…排出削減見込量は家庭部門と業務その他部門の合計 24

新エネルギーの面的導入やエネルギー融通の促進 エネルギー供給部門の対策 省CO2型の都市デザイン ○エネルギーの面的な利用の促進(地域冷暖房等の複数の施設・建物への効率的なエネルギー の供給など) 新エネルギーの面的導入やエネルギー融通の促進 ○分散型新エネルギーのネットワーク構築 ○バイオマスの利活用の推進(バイオマスタウンの構築) ○未利用エネルギーの有効利用 施設・主体単位の対策 ○原子力の推進等による電力分野における二酸化炭素排出原単位の低減 《約1,700万t-CO2》 ○新エネルギー対策の推進(バイオマス熱利用・太陽光発電等の利用拡大) 《約4,690万t-CO2》 ○コージェネレーション・燃料電池の導入促進等                          《天然ガスコージェネ 約1,140万t-CO2》  《燃料電池 約300万t-CO2》 E3 25

京都議定書6%削減目標の達成に必要な実用化技術 ○太陽光発電システム ・太陽光エネルギーを利用して二酸化炭素を出さずに電気を作り出すシステム。我が国は、累積導入量、生産量ともに世界一を誇る ○ヒートポンプ ・家庭、業務用の省エネ機器のキーテクノロジー。空調機器、冷蔵冷凍機、給湯器の効率化を実現。 エコキュート(家庭用CO₂冷媒ヒートポンプ式給湯器 太陽光発電システム(左:住宅用、右:業務用) ○LED(発光ダイオード) ・高効率かつ長寿命な証明を省エネを実現するキーテクノロジー ○キャパシタ(蓄電器)/二次電池(蓄電池) ・電気エネルギーを蓄えたり放出したりする機器。 ○ハイブリット自動車 ・自動車の大幅な燃費向上を可能とした画期的な技術 京都議定書の6%削減目標を達成するために必要な、代表的な実用化技術を5つ紹介いたします。   ・我が国が累積導入量、生産量ともに世界一を誇る「太陽光発電システム」   ・空調機器、冷蔵冷凍機、給湯器などの高効率化を実現するためのカギとなる「ヒートポンプ技術」   ・自動車の大幅な燃費向上を実現した「ハイブリッド自動車」   ・照明の省エネ化のカギとなる「LED」   ・電気を効率的に放充電することにより、エネルギーの効率的な利用を可能とする「キャパシタ」や「二次電池」  こういった技術を国内や国外で普及させていくことが求められています。 →キャパシタ(風力発電などに併設して出力変動の平準化を行うもの) ↑LED信号機 ↑LED卓上ライト ←マンガン系リチウムイオン電池(高出力、小型軽量、低コストな特電地。ハイブリッド自動車等への実用化が見込まれる) 26 プリウス(トヨタ自動車㈱)

京都メカニズムの活用 共同実施(JI) クリーン開発メカニズム(CDM) 国際排出量取引 ○他国での排出削減プロジェクトの実施による排出削減量等をクレジットとして取得し、自国の議定  書上の約束達成に用いることができる制度。 ○①わが国の確実かつ費用効果的な約束達成に資するとともに、②地球規模での温暖化防止、  ③途上国の持続可能な開発への寄与。 ○国内対策を補足するものであるとの原則を踏まえつつ京都メカニズムを活用(基準年(1990年)  総排出量の1.6%分)。政府によるクレジットの取得等に必要な規定を整備するため、 2006年通常   国会において、地球温暖化対策推進法などの改正を行った。 共同実施(JI) 先進国A 資金 技術 先進国B 共同の削減 プロジェクト 削減量 (クレジット) 先進国どうしが共同で事業を実施し、その削減分を投資国が自国の目標達成に利用できる制度 クリーン開発メカニズム(CDM) 先進国と途上国が共同で事業を実施し、その削減分を投資国(先進国)が自国の目標達成に利用できる制度 各国の削減目標達成のため、先進国どうしが排出枠を売買する制度 代金 国際排出量取引 途上国B 目標以上の排出削減量 排出割当量 ○ 京都議定書においては、国際的に協力しながら、温室効果ガスの 削減を進める仕組みである、京都メカニズムの活用が認められている。  クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、国際排出量取引(ET)  の3類型がある。 ○ 「京都議定書目標達成計画」においても、国内対策を最大限努力 してもなお約束達成に不足する差分については、この京都メカニズム の仕組みを活用することが必要とされている。 ○ クレジットを調達するための具体的な取組として、2006年度から政府に  よるクレジット取得事業をNEDOに委託して実施している。  クリーン開発メカニズム(CDM)、共同実施(JI)、国際排出量  取引(ET)の3類型がある。 ○ クレジットを調達するための具体的な仕組みの構築に向けて、  現在議論を進めているところ。 29

4.皆さんに望むこと  次に皆さんに望むことについてお話します。 30

「チーム・マイナス6%」の6つのアクション ③商品の選び方 ①温度調節 で減らそう で減らそう で減らそう ⑤買い物とゴミ ⑥電気の使い方  で減らそう  エコ製品を選んで買おう ①温度調節  で減らそう  冷房28℃、暖房20℃  にしよう  ②水道の使い方   で減らそう   蛇口はこまめにしめよう    より直接的には、ご覧の6つのアクションを呼びかけています。どれも日常生活のちょっとした心がけでできることです。クールビズなどは、「温度調節を減らそう」をオフィスで格好良く快適に実践していただくための提案です。  ⑤買い物とゴミ で減らそう   過剰包装を断ろう  ⑥電気の使い方   で減らそう   コンセントから  こまめに抜こう ④自動車の使い方  で減らそう  ふんわりアクセル e-ドライブをしよう 31

めざせ!「1人1日1kg」のCO2削減 ■ 私のチャレンジ宣言 ■ 応援キャンペーン 32 地球温暖化問題の解決に向けて安倍前総理が5月24日に提案した「美しい星50」において、京都議定書の目標達成に向けた国民運動の展開が重要であるとされ、「1人1日1kg」の温室効果ガスの削減をモットーとして、ライフスタイルの見直しや、家庭と職場での努力や工夫を呼びかけています。  ■ 私のチャレンジ宣言 「1人1日1kgのCO2削減」に向けて、一人ひとりが、身近な取組の中から実践してみようと思うものを選択し、CO2削減に向けて宣言する「私のチャレンジ宣言」を実施中。 【チャレンジ宣言数】 345,615件 (平成19年9月18日現在)                   (チャレンジ宣言カード)  【項目の例】 ・冷房時の設定温度を26℃から28℃に2℃高くする                      →83g CO2削減 ・シャワーを1日1分短くする   →14 gCO2削減  ■ 応援キャンペーン 「私のチャレンジ宣言」に参加する人々に数々のメリットを提供することを通じて、温暖化防止のための国民運動の飛躍的拡大を目指しています。(平成19年9月18日発表分までで、協賛企業 110企業・団体) また、著名人がクールアースアンバサダー(現在94名)として温暖化防止を訴えていきます。 32

日本の資源を活用した目に見える国際環境協力の検討 アジア等における環境汚染 ■法執行段階での問題  法律は一定程度整備されていても、モニタリングなど実施体制・技術の 点で不十分であり、正確な環境状況の把握ができているとは言えない。 ■汚染等の例 ○事業・生活による汚染 : 河川・湖沼等の大規模汚染、 工場地帯 ・                    道路沿道等の大気汚染 、 有害廃棄物に よる水質・土壌汚染、廃棄物問題、温暖化                    問題など ○災害・事故による汚染 : 地震、津波、ハリケーン、洪水、タンカー座 礁、金採掘による有機水銀汚染など 日本の国際協力の課題・・・支援が目に見えない  ・物資・資金援助中心で現地で活動する日本人が不在      または少ない。  ・支援のタイミングが遅い  ・支援団の規模が小さい 日本の事情・資源 ・団塊の世代の人々の退職・・・自治体等にモニタリング等 の経験豊富な人が 多い ・モニタリング機材等の優れた環境関連機材・技術の存在 ・人材・関係団体とのネットワーク化、国内の人材等とアジア等の国とのコーディネイトの必要性 国内の人材等をネットワーク化し、必要な人材を国境なき環境調査・協力団(仮称) として迅速に派遣。 資金 人材 技術 政府 民間 団塊の世代 (自治体OB等) 自治体職員 学識経験者 民間人 民間企業 自治体 自ら環境の状況を測定するほか、現地スタッフに対するサンプリング・分析方法等の指導も行い、アジアなどの国のモニタリング能力の向上等に努める。環境汚染による水環境・大気環境・土壌環境・生態系等への影響(廃棄物問題を含む)を迅速・正確に調査し、環境改善案を提示。 技術                機材                ネットワーク化 +  人  国境なき環境    調査・協力団 (仮 称) 環境の状況についての正確なデーターが得られるようになる。アジアなどの水・大気・その他の自然環境の破壊・健康被害を未然防止するとともに、回復を容易にする。必要に応じ他の組織と連携し、環境改善事業につなげる。   目に見える国際環境協力の実現、人材(団塊の世代等)と日本の技術の活用、アジアなどの環境の改善・保全 35

国境なき環境調査・協力団の運営イメージ 理事会 常任委員会 事務局 経済界 | 政府 環境省・JICA・JBIC等 事業展開の決定 連 学会等 水環境学会、大気環境学会 廃棄物学会等 地方自治体 東京都、愛知県、北九州市等 国際援助機関 国際連合 (UNEP.UNCRD等) 理事会 | 常任委員会 事業展開の決定 経済界 日本経団連 企業(分析機器メーカー等) 民間財団(助成) 市民・学生・研究者 NPO・NGO 環境ベテランズファーム等    国内外コミュニティー(協働)   受益者(東南アジア各国・国民) 事務局 国境なき環境調査・協力団 連    携 政府 36

ご静聴ありがとうございました 環境省水・大気環境局土壌環境課 地下水・地盤環境室 佐藤 郁太郎