佐藤 勝昭 東京農工大学大学院工学研究科 電子情報工学専攻

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佐藤 勝昭 東京農工大学大学院工学研究科 電子情報工学専攻 龍谷大学特別講義 2000.12.22 高密度光メモリ 佐藤 勝昭 東京農工大学大学院工学研究科 電子情報工学専攻

この講義の内容 光磁気記録 光メモリのいろいろ 光メモリの特徴 記録につかう物理現象 DVDの仲間たち 光相変化記録 超高密度への課題 原理光磁気記録媒体 光磁気記録の 記録再生過程の物理 MSR AS-MO MAMMOS 超高密度への課題 光メモリのいろいろ 光メモリの特徴 記録につかう物理現象 DVDの仲間たち 光相変化記録 相変化と反射率 DVD-RAM DVD-RW

光メモリのいろいろ 光ディスク ホログラフィックメモリ、PHB光化学ホールバーニング 再生専用のもの 記録可能なもの CD, CD-ROM, レーザディスク, DVD-ROM 記録可能なもの 追記型(1回だけ記録できるもの) CD-R, DVD-R 書換型(繰り返し記録できるもの) 光相変化 CD-RW, DVD-RAM, DVD-RW, DVD+RW 光磁気: MO, GIGAMO, MD, MD-Data, AS-MO, ホログラフィックメモリ、PHB光化学ホールバーニング

光メモリの特徴 リムーバブル 大容量・高密度 ランダムアクセス 高信頼性 最近のハードディスク(10Gbit/in2)には及ばない ハードディスクに比べるとシーク時間がかかる 高信頼性 ハードディスクに比し、ヘッドの浮上量が大きい

記録につかう物理現象 CD-ROM, DVD-ROM: ピット形成 CD-R, DVD-R: 有機色素の化学変化 CD-RW, DVD-RAM, DVD-RW, DVD+RW: アモルファスと結晶の相変化 MO, MD, GIGAMO, AS-MO: 強磁性・常磁性相転移 ホログラフィックメモリ:フォトリフラクティブ効果 ホールバーニングメモリ:hole burning現象

DVDの仲間たち 容量GB 4.7/8.5 3.95 7.9 2.6 5.2 4.7 3.0 disk レーザλ レンズNA DVD-ROM DVD-R DVD-RAM DVD-RW DVD+RW 容量GB 4.7/8.5 3.95 7.9 2.6 5.2 4.7 3.0 形状 disk cartridge 記録膜 反射率 ピット形成 80% 有機色素 相変化型 50% 50-80% 詳細不明 レーザλ レンズNA 650/635 0.6 650 0.6 638/650 0.6 650 0.6 ピット長 0.27m 0.293 041-43 0.267 トラック幅 0.74m 0.8 0.74L/G 0.74(G) 繰返回数 - 105 103-104

各種DVD規格 DVD-5: (単層片面)4.7GB DVD-9: (2層片面) 8.5GB DVD-10:(単層両面)9.4GB

光相変化記録 アモルファス/結晶の相変化を利用 追記型 アモルファス状態で付着したカルコゲナイドグラスを加熱冷却して結晶化して記録 追記型 アモルファス状態で付着したカルコゲナイドグラスを加熱冷却して結晶化して記録 記録:アモルファス→(レーザ加熱・冷却)→結晶化      (反射率大)-------→(反射率小) 書換可能型 成膜初期状態のアモルファスを熱処理により結晶状態に初期化しておきレーザ光照射により融点Tm (600℃)以上に加熱後急冷させアモルファスとして記録。消去は結晶化温度Tcr(400℃)以下の加熱緩冷して結晶化。 Highレベル:Tm以上に加熱→急冷→アモルファス Lowレベル:Tcr以上に加熱→緩冷→結晶化 DVD-RAM: GeSbTe系、DVD-RW: AgInSbTe系

光相変化記録 アモルファス/結晶の相変化を利用 書換可能型 成膜初期状態のアモルファスを熱処理により結晶状態に初期化しておきレーザ光照射により融点Tm (600℃)以上に加熱後急冷させアモルファスとして記録。消去は結晶化温度Tcr(400℃)以下の加熱緩冷して結晶化。 Highレベル:Tm以上に加熱→急冷→アモルファス Lowレベル:Tcr以上に加熱→緩冷→結晶化 DVD-RAM: GeSbTe系 DVD±RW: Ag-InSbTe系

相変化と反射率 初期状態:結晶状態 記録状態:アモルファス状態 R:大 R:小 記録 消去 レーザスポット 記録マーク

DVD-RAM DVD-ROMとの互換性に問題 書き替え耐性が中程度 高密度化は青色レーザ頼み 転送速度低い 反射率が低い、Land/Groove記録 カートリッジ式 書き替え耐性が中程度 GeSbTe系合金の結晶/アモルファス相変化を利用 多層化により公称10万回達成 (cf. DVD-RW 1000回、MO 1000万回以上) 高密度化は青色レーザ頼み 超解像技術が研究開発段階 転送速度低い 11Mbps (cf. GIGAMO 5.92MB/s=47.4Mbps)

DVD-RW DVDフォーラムではオーサリング用途限定 DVD-ROMとの互換性高い 書き替え耐性低い:Video tape代替なら十分 ランダムアクセスしにくい(セクタに分かれていない) DVD-ROMとの互換性高い 反射率が高い、Grooveのみに記録、ディスク型 (AgInSbSe系合金使用:位相差・反射率差を大きくとれる) 書き替え耐性低い:Video tape代替なら十分 1000-2000回 (cf. DVD-RAM 10万回、MO 1000万回) 転送速度遅い

光磁気 (MO)メモリ 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 再生: 磁気光学効果 MO, MDに利用 互換性が高い 記録: 熱磁気(キュリー温度)記録 光を用いてアクセスする磁気記録 再生: 磁気光学効果 磁化に応じた偏光の回転を電気信号に変換 MO, MDに利用 互換性が高い 書き替え耐性高い:1000万回以上 ドライブが複雑(偏光光学系と磁気系が必要) MSR, MAMMOSなど新現象を有効利用

比較しよう 磁気記録(1)情報の記録方法 磁気記録:磁気ヘッドからの磁界によって磁性体の磁化の状態を変化させて記録。 ヘッド:軟磁性体 媒体:硬磁性体 磁気ヘッド H M Hc Mr Ms 残留磁化 飽和磁化 磁界 磁性体 保磁力 磁気ヒステリシス曲線

比較しよう 磁気記録(2)情報の読み出し方法 磁気媒体に記録された磁区からの漏れ磁界を磁気ヘッドで検出する 磁気誘導型ヘッド:磁束変化をコイルで電圧に変換 磁気抵抗(MR)ヘッド:磁束変化→抵抗変化→電圧 誘導型磁気ヘッド MRヘッド N S N S N S N S N S N S N S 漏れ磁界 漏れ磁界

ハードディスク ディスク媒体 ロータリー・ アクチュエーター 2.5”および3.5 ”ハードディスク 磁気ヘッド

ハードディスクの記録密度 10年で10倍 10年で100倍

記録密度とヘッド浮上量

磁気ヘッド拡大図

光磁気記録の歴史 1962 Conger,Tomlinson 光磁気メモリを提案 1967 Mee Fan ビームアドレス方式の光磁気記録の提案 1971 Argard (Honeywel) MnBi薄膜を媒体としたMOディスクを発表 1972 Suits(IBM) EuO薄膜を利用したMOディスクを試作 1973 Chaudhari(IBM) アモルファスGdCo薄膜に熱磁気記録(補償温度記録) 1976 Sakurai(阪大) アモルファスTbFe薄膜にキュリー温度記録 1980 Imamura(KDD) TbFe系薄膜を利用したMOディスクを発表 1981 Togami(NHK) GdCo系薄膜MOディスクにTV動画像を記録 1988 各社 5”MOディスク(両面650MB)発売開始 1889 各社 3.3 ”MOディスク(片面128MB)発売開始 1991 Aratani(Sony) MSR(磁気誘起超解像)を発表 1992 Sony MD(ミニディスク)を商品化 1997 Sanyo他 ASMO(5”片面6GB:L/G, MFM/MSR)規格発表 1998 Fujitsu他 GIGAMO(3.5”片面1.3GB)発売開始 2000 Maxell他 ASMO準拠(2“片面730MB):ディジタルカメラ用発売

光磁気ディスクの構造 MOディスクの構造 ポリカーボネート基板 窒化珪素保護膜・ (MOエンハンス メント膜を兼ねる) Al反射層 (アモルファスTbFeCo) groove land 樹脂

光磁気記録 情報の記録(1) レーザ光をレンズで集め磁性体を加熱 キュリー温度以上になると磁化を消失 冷却時にコイルからの磁界を受けて記録 M Tc 温度 Tc 光スポット 光磁気記録媒体 外部磁界 コイル

光磁気記録 情報の記録(2) TcompでHc最大: 補償温度(Tcomp)の利用 アモルファスTbFeCoは 一種のフェリ磁性体なので  一種のフェリ磁性体なので  補償温度Tcompが存在 TcompでHc最大: 記録磁区安定 Hc M Tb FeCo Mtotal 室温 Fe,Co Tb Tcomp Tc T

アモルファスTbFeCo薄膜 TM (Fe,Co) R (Tb)

光磁気記録 情報の読み出し 磁化に応じた偏光の回転を検出し電気に変換 D1 LD - D2 偏光ビーム スプリッタ + N S N S N

ファラデー効果とは? 直線偏光が入射したとき 出射光が楕円偏光になり 主軸の回転 (磁気円二色性) その主軸が回転する効果  出射光が楕円偏光になり (磁気円二色性)  その主軸が回転する効果   (磁気旋光:Faraday回転) 主軸の回転 楕円偏光 直線偏光

磁気カー効果 M 極カー効果、  縦カー効果、  横カー効果

MO用光ヘッドの構造 Bias field coil Recorded marks Track pitch Focusing lens Laser diode Photo-detector Focusing lens Half wave-plate lens Beam splitter PBS (polarizing beam splitter) Rotation of polarization Recorded marks Track pitch Bias field coil MO film mirror

2種類の記録方式 光強度変調(LIM):現行MO 磁界変調(MFM):MD, ASMO 電気信号で光を変調 磁界は一定 ビット形状は長円形 電気信号で磁界を変調 光強度は一定 ビット形状は矢羽形 Modulated laser beam Constant Constant field Modulated field Magnetic head (a) LIM (b) MFM

超高密度光ディスクへの展開 超解像 短波長化 近接場 MSR/MAMMOS Super-RENS (Sb) SIL Super-RENS (AgOx)

MSR(磁気誘起超解像) 記録層と再生層を分離 解像度は光の回折限界から決まる d=0.6λ/NA (ここにNA=n sinα) 波長以下のビットは分解しない 記録層と再生層を分離 読み出し時のレーザの強度分布を利用 ある温度を超えた部分のみを再生層に転写する α d

MSRの分類 高温部が光スポットのやや後方に偏ることを利用 FAD (front aperture detection) 読み出し層の記録マークの後ろの部分をマスクして、開口を小さくする。 RAD (rear aperture detection) 読み出し層を磁界によって消去しておき、高温部で記録層から転写する。 CAD (center aperture detection) 記録層の上に面内磁気異方性をもつ読み出し膜を重ねておき、レーザ光で加熱すると中心部のみの異方性が変化し、交換結合により記録層から読み出し層に転写

MSR方式の図解

AS-MOの規格

MAMMOS の効果 通常再生 信号はほとんど0 MSR再生 信号振幅小 MAMMOS再生 信号はフルに出る

Super-RENS super-resolution near-field system Sb膜:光吸収飽和 波長より小さな窓を開ける AgOx膜:分解・Ag析出 散乱体→近接場 Agプラズモン→光増強 可逆性あり。 相変化媒体だけでなく光磁気にも適用可能 高温スポット 近接場散乱

短波長化 DVD-ROM:405nmのレーザを用い、track pitch =0.26m、mark length=213mのdisk(容量25GB)を NA=0.85のレンズを用いて再生することに成功 [i]。 [i] M. Katsumura, et al.: Digest ISOM2000, Sept. 5-9, 2000, Chitose, p. 18. DVD-RW:405nmのレーザを用い、 track pitch=0.34m、mark length=0.29m、層間間隔35mの2層ディスク(容量27GB)のNA=0.65のレンズで記録再生を行い、33Mbpsの転送レートを達成[ii] 。 [ii] T. Akiyama, M. Uno, H. Kitaura, K. Narumi, K. Nishiuchi and N. Yamada: Digest ISOM2000, Sept. 5-9, 2000, Chitose, p. 116.

青紫レーザとSILによる記録再生 NA=1.5 405nm 80nm mark 40GB SILヘッド 青紫色レーザ I. Ichimura et. al. (Sony), ISOM2000 FrM01

SIL (solid immersion lens)

SILを用いた光記録

光アシストハードディスク 青紫色 レーザ 記録用 光ヘッド (SIL) 再生用 磁気ヘッド 60Gbit/in2を達成 H. Saga et al. Digest MORIS/APDSC2000, TuE-05, p.92. TbFeCo disk

光磁気メモリを可能にしたもの 長期にわたる研究の積み重ね アモルファス希土類遷移金属膜の発見 半導体レーザの進歩・短波長化・低価格化 光エレクトロニクス技術(例えばサーボ技術) 信号処理技術の進歩(例えばMDの圧縮技術) パソコンの大容量化による市場のニーズ 厳しい競争(HDD, ZIP, CD-R, CDRW, DVD-RW)

超高密度光メモリへの課題(1) DVD-RAM: MO: CN比の向上:結晶相の微細構造制御必要 青色レーザへの対応(微小ビットの安定性) 転送速度の向上 書き替え耐性の向上 MO: MSR/MAMMOS技術の確立 青色レーザへの対応 ドライブの低価格化

超高密度光メモリへの課題(2) ホログラフィックメモリ ホールバーニングメモリ 良質のフォトリフラクティブ結晶の安定供給 ホログラム光学系の単純化 システムとしての検討 ホールバーニングメモリ 室温用記録材料の開発 高分解分光系の課題

ホログラフィ 干渉を利用して光の位相情報を記録 位置のシフトにより、異なる情報を体積的に記録 フォトリフラクティブ結晶、フォトポリマーの開発 空間光変調器(SLM)の進歩: ディジタルマイクロミラー(DMD)など 高感度光検出器アレーの出現: CMOS型アクティブピクセルデテクタ(APD)

ホールバーニングメモリ 波長多重記録 不均一吸収帯内の特定波長の吸収を消滅して記録 無機物: 有機物: 低温が必要 アルカリハライドの色中心の電子励起とトラッピング 絶縁物中の希土類イオンや遷移金属イオンの電子励起吸収帯 Eu+3: Y2SiO5 を用いてホールバーニングによるホログラフィック動画記録に成功している[i]。 [i]光永正治,上杉 直,佐々木 浩子,唐木 幸一 :応用物理, 64 (1995) 250. 有機物: 光互変異性、水素結合の光最配位、光イオン化などの光吸収帯 低温が必要 常温で動作する材料開発が課題