微粒子合成化学・講義 村松淳司 E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/muramatsu/MURA/main.html E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司.

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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
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北大MMCセミナー 第94回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2019年1月25日(金) 16:30~18:00
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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微粒子合成化学・講義 村松淳司 E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp http://www.tagen.tohoku.ac.jp/labo/muramatsu/MURA/main.html E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司

コロイド化学への誘い

コロイドとは何か 理化学辞典にみるコロイド コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態にあるときのみを、コロイド状態、と定義できる 物質がふつうの光学顕微鏡では認められないが、原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散しているとき、コロイド状態にある、という。 コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態にあるときのみを、コロイド状態、と定義できる では、巨大分子が溶けているのと、何が違うのだろうか?

粒子径による粒子の分類 微粒子 コロイド分散系 超微粒子 ナノ粒子 光学顕微鏡 電子顕微鏡 100μm 1m 10cm 1cm 10μm ソフトボール 10cm 硬貨 微粒子 1cm パチンコ玉 10μm 光学顕微鏡 1mm 小麦粉 1μm サブミクロン粒子 コロイド分散系 100μm 10μm 花粉 1μm 100nm タバコの煙 電子顕微鏡 100nm ウィルス 超微粒子 10nm 10nm ナノ粒子 セロハン孔径 1nm 1Å 1nm クラスター

身の回りのコロイド 牛乳

牛乳

水 乳脂肪 タンパク質

牛乳は、蛋白質であるカゼインや乳脂肪の細かい粒子が1ml当たり10数兆個ほど乳濁している液体です。この粒子に光が当たり乱反射されるので白色にみえます。  蛋白質カゼイン粒子の大きさは、直径数ミリミクロンから300 ミリミクロン(1ミリミクロンは100万分の1ミリメートル)といわれコロイド状に牛乳中に分散しています。比較的大粒のものによる反射光は白色が強く、小さい粒子になるほど青味をおびます。  また、牛乳中のエマルジョン状態で分散している脂肪球の大きさは、直径0.1 ~10ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)であり、平均2.5 ミクロン(ホルスタイン種)程度であります。すなわち小粒子になるほど光線を乱反射して白色に、大きな粒子になると黄色を帯びてきます。  従って牛乳の白色は蛋白カゼイン粒子と脂肪球の大きさにより影響されます。

牛乳はO/Wエマルション 水 油 界面活性剤 界面活性剤 油 水 O/Wエマルション W/Oエマルション ビデオ

身の回りのコロイド ビール

ビール ビールの泡 移流集積によって下から上に運ばれ、二次元の結晶構造を形成するコロイド。下の方のコロイドは動いているためブレている。 永山国昭(東京大学教養学部)

ビールの泡

ビールの泡 なぜ合一しにくいのか? 分散安定化への指針 泡の表面にホップと麦芽由来のフムロンや塩基性アミノ酸が吸着し、分散剤的な働きをしている

分散と凝集

コーヒー牛乳に塩を入れる 乳脂肪が浮上している 1 mol/L KCl溶液 コーヒー牛乳だけ

なぜ、乳脂肪は浮上したか? 乳脂肪は水よりも軽い 牛乳は乳脂肪が分散したもの 塩を入れることで「凝集」して浮上した

分散と凝集 分散とは何か 凝集とは何か 物質は本来凝集するもの 溶媒中にコロイドが凝集せずにただよっている コロイドがより集まってくる 分子間力→van der Waals力

分散と凝集 (平衡論的考察) 凝集 van der Waals力による相互作用 分散 静電的反発力 粒子表面の電位による反発 凝集 分散

分散と凝集 (速度論的考察) 分散するためには 平衡的に分散条件にあること 速度論的に分散条件にあること ブラウン運動(熱運動) 分散

速度論:ブラウン運動 分散の平衡論的な解釈は、静電的反発力であるが、水の中を漂い、空気の中に分散する、コロイド粒子の動き、つまり速度論的解釈は、ブラウン運動 Brownian motion である。 分散

速度論:ブラウン運動 粒子がブラウン運動を起こして(不規則な運動)いるとすると、ブラウン運動は粒子の熱運動であるので、粒子1個について、kTのエネルギーを持っている。これが運動エネルギーに変換されているとすると kT = 1/2 mv2 となる。 分散

速度論:ブラウン運動 Einsteinの統計的計算によると、粒子1個がブラウン運動によって、t時間にx方向へ移動する平均距離xは、 Dは、粒子の拡散定数。Einsteinは、さらに、拡散定数に関する式 を提出した。ここで、fは摩擦係数と呼ばれるもので、粒子が媒質の分子に比べて非常に大きいとき、Stoksの法則がなりたつ。 分散

速度論:ブラウン運動 ここで、ηは物質の粘度、aは粒子半径である。 結局、 となる。Rは気体定数、NAはアボガドロ数。 分散

速度論:ブラウン運動 たとえば、20℃、蒸留水中において、粒子の1秒後の変位xを計算すると、つぎのようになる。 粒子半径 1秒後の変位(μm) 1 nm 20.7 10 nm 6.56 100 nm 2.07 1μm 0.656 である。 分散

分散するか凝集するか 平衡論 静電的反発力 コロイドの界面電位による 速度論 コロイド同士の衝突←熱運動と衝突確率

静電的反発力とは 力の源は、粒子の表面電位 表面電位が絡んでいる現象 電気泳動 電気浸透 沈降電位

電気泳動 電気泳動というのは、電気を帯びた分子(イオン)が、電圧によって動く現象のこと プラスの電気を帯びた分子はマイナス電極へ、マイナスの電気を帯びた分子はプラスの電極へ、引きつけられる コロイドも同じ。電圧のかかっている場所(電場)の中で、コロイド全体としての電荷の反対符号の電極の方向へ動く + -

表面電荷