「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の改正について 宮城県精神科病院医事研究会 安部
※主な改正点(1) 精神病院等に対する指導監督体制の見直し ※主な改正点(1) 精神病院等に対する指導監督体制の見直し 1.医療内容に係るチェック体制の見直し(法改正) ○精神医療審査会の委員構成の見直し(18年10月施行) (現行) (見直し後) 精神保健指定医 3人 2人以上 法律家 1人 1人以上 その他 1人 1人以上 都道府県の裁量の拡大 ○措置入院に係る定期病状報告の頻度の見直し(省令) ○医療保護入院患者の定期病状報告の様式の見直し(省令) ○隔離及び身体拘束等の行動制限について一覧性のある台帳の整備 (告示) 2.改善命令等に従わない精神病院に関する公表制度等の導入(法改正) (18年10月施行)
※主な改正点(2) 精神障害者の適切な地域医療等の確保 (救急医療体制・退院促進) ※主な改正点(2) 精神障害者の適切な地域医療等の確保 (救急医療体制・退院促進) 1.精神科救急医療体制の確立に向けた法的整備 ○緊急時における入院等に係る診察の特例措置の導入(法改正) 任意入院患者の退院制限、医療保護入院、応急入院等に係る 診察を精神保健指定医以外の医師ができるよう一定条件の下緩和する。 12時間の時間制限を設ける。 (18年10月施行) ○措置入院の指定病院に係る指定に関する基準の見直し(告示) 2.任意入院患者の適切な処置の確保 ○任意入院患者に関する病状報告制度の導入(法改正) 一定の要件を満たす任意入院患者の病状等の報告を求めること ができる 。 (18年10月施行) 厚生労働大臣、都道府県知事の改善命令に従わない病院が対 象。 ○任意入院の入院後も一定期間毎に同意書を提出させる仕組みの導入 (省令等) 3.市町村における相談体制の強化(法改正)(18年10月施行)
※主な改正点(3) その他の改正事項 1.精神保健指定医関係の見直し ○精神保健指定医の指定に関する政令委任事務の明確化 ※主な改正点(3) その他の改正事項 1.精神保健指定医関係の見直し ○精神保健指定医の指定に関する政令委任事務の明確化 (法改正)(18年10月施行) ○精神保健指定医の要件に係るケースレポートの対象症例の 見直し (告示) 2.地方精神保健福祉審議会の必置規制の見直し (法改正)(18年1月施行) 3.その他 ○「精神分裂病」の「統合失調症」への呼称の変更 (法改正)(公布日施行) ○精神障害者保健福祉手帳への写真の貼付(省令)
精神保健福祉法改正により同法から削除される主な項目 ※平成17年10月施行 ・通院医療に関する事項(第32条~第32条の4) → 障害者自立支援給付法(仮称)で自立支援医療として 規定 ※平成18年1月施行 ・精神障害者居宅生活支援事業に関する事項(第50条の3~第50条 の3の4) → 障害者自立支援給付法(仮称)で障害福祉サービス等とし て規定 ・地方精神保健福祉審議会に関する事項(第10・11条、第50条の2 の5第2項) → 都道府県の任意設置に転換 ※平成18年10月施行 ・精神障害者社会復帰施設に関する事項(第50条~第50条の2の5) → 障害者自立支援給付法(仮称)で障害福祉サービス等 として規定
※障害に係る公費負担医療制度の概要 ○障害に係る公費負担医療の見直しの背景と考え方 精神保健福祉法第32条関係は、障害者自立支援法(身体・知的・精神・児童)の自立支援医療(公費負担医療)に規定。 ○障害に係る公費負担医療の見直しの背景と考え方 ・精神通院公費、更正医療の対象者が急増し一般的な疾病になって きている 給付対象者を「負担能力の乏しい者」「重度でかつ継続し て医療費負担の発生する者」に重点を置く。 ・同じ障害なのに制度の違いによって負担割合の仕組みが異なる 障害者福祉サービスや医療保険制度等と均衡のとれた負担 と一定の負担上限を導入。 ・対象者、医療機関が増加し、医療の質の確保が課題となってきた 精神障害者通院公費については、他制度と同様に指定医療 機関制度を導入する。 ○自己負担割合 ・一律10%に(負担に上限があり、所得による調整があるため、平 均 7~8%程度の負担)
自立支援医療の対象者等の概要 ・所得税額 30万円以上 ※給付対象外 ・生活保護世帯 ・市町村民税 非課税世帯 給付対象 中間層 中間層 ①一定所得以下 ④その他の者 ②一定所得以上 ・所得税額 30万円以上 ※給付対象外 ・生活保護世帯 ・市町村民税 非課税世帯 ③重度かつ継続 ③重度かつ継続 ※継続的に 給付対象
給付対象者の考え方(1) ①負担能力の乏しい者の範囲 ○生活保護世帯に属する者(及びこれに準ずる者) ○生活保護世帯に属する者(及びこれに準ずる者) ○市町村民税非課税世帯に属する者(市町村民税非課税Ⅱ) ・世帯員の全員が非課税である世帯に属する者 ・5,000円を上限 ○上記のうち特に負担能力が乏しい世帯に属する者 (市町村民税非課税Ⅰ) ・世帯員全員の所得がゼロであり、かつ、収入が80万円未満で ある世帯に属する者 ・2,500円を上限 ②給付対象外とする一定所得以上の者の範囲 ・所得税額年間30万円以上の者 ・「重度かつ継続」であれば経過的に給付対象
給付対象者の考え方(2) ③重度かつ継続の範囲 ○疾病、症状から対象となる者 ・GAF(機能の全体的評定尺度)が30以下(精神) ○疾病、症状から対象となる者 ・GAF(機能の全体的評定尺度)が30以下(精神) ・統合失調症、躁鬱病(狭義)、難治性てんかんの者(精神) ・腎臓機能、小腸機能、免疫機能障害(更正・育成) ○疾病等に関わらず、高額な費用負担が継続することから対象となる者 ・医療保険の多数該当の者(各障害共通) ・5,000円(所得税課税は10,000円)を上限 ④その他の者 ・初期の適切な受診を確保する観点から一定の期間(1年間)を給 付対象 ※自立支援医療費の支給認定手続き 旧制度により支給認定を受けている者で17年9月29日までの有効期限 が切れる者で更新する者、17年10月1日を超えた有効期限の者について は、「みなし支給認定」が必要。その場合、新制度により「重度かつ 継続」に該当する者は、診断書、課税状況を確認できる書類が必要。
GAF(機能の全体的評定)尺度 100-91 広範囲の行動にわたって最高に機能しており、生活上の問題で手 に追えないものは何もなく、その人の多数の長所があるために他の人々から求められている。症状は何もない 90-81 症状が全くないか、ほんの少しだけ(例:試験前の軽い不安) 全ての面で良い機能で、広範囲の活動に興味を持ち参加し、社交的にはそつが無く、生活にだいたい満足し、日々のありふれた問題や心配以上のものはない(例:たまに家族と口論する) 80-71 症状があったとしても、心理的社会的ストレスに対する一過性で 予期される反応である(例:家族と口論した後の集中困難)、社会的、職業的又は学校の機能にごくわずかな障害以上のものはない(例:学業で一時遅れをとる) 70-61 いくつかの軽い症状がある(例:抑鬱気分と軽い不眠)、又は 社会的、職業的又は学校の機能に、いくらかの困難はある(例:時にずる休みをしたり、家の金を盗んだりする)が、全般的には機能はかなり良好であって有意義な対人関係もかなりある 60-51 中等度の症状(例:感情が平板的で、会話がまわりくどい、時 に恐慌発作がある)、又は社会的、職業的又は学校の機能における中等度の障害(例:友達が少ない、仲間や仕事の同僚との葛藤)
GAF(機能の全体的評定)尺度 50-41 重大な症状(例:自殺の考え、強迫的儀式がひどい、しょっちゅ う万引きする)、又は社会的、職業的又は学校の機能において何か重 大な障害(友達がいない、仕事が続かない) 40-31 現実検討か意志伝達にいくらかの欠陥(例:会話は時々非論理 的、曖昧又は関係性がなくなる)。又は仕事や学校、家族関係、判断、思考又は気分など多くの面での粗大な欠陥(例:抑鬱的な男が友人を避け家族を無視し、仕事ができない、子供が年下の子供を殴り、家で反抗的で、学校では勉強ができない) 30-21 行動は妄想や幻覚に相当影響されている、又は意志伝達か判断 に粗大な欠陥がある(例:時々滅裂、ひどく不適切に振る舞う、自殺の考えにとらわれている)、又はほとんど全ての面で機能することができない(例:一日中床についている、仕事も家庭も友 達もいない) 20-11 自己又は他者を傷つける危険がかなりあるか(例:死をはっき り予期することなしに自殺企画、しばしば暴力的、躁病性興奮)、 又は時には最低限の身辺の清潔維持ができない(例:大便を塗りたくる)、又は意志伝達に粗大な欠陥(例:ひどい滅裂か無言症) 10-1 自己又は他者を傷つける危険が続いている(例:何度も暴力を ふるう)、又は最低限の身辺の清潔維持が持続的に不可能、又は死をはっきり予測した重大な自殺行為