流通情報工学課程 張 翀 指導教官 鶴田三郎教授 黒川久幸助教授

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流通情報工学課程 2003731 張 翀 指導教官 鶴田三郎教授 黒川久幸助教授 JITとTOCの比較研究 流通情報工学課程 2003731 張 翀 指導教官 鶴田三郎教授        黒川久幸助教授 鶴田・黒川研究室の張ちゅうです。 これから発表をさせていただきます。 研究の題目は「JITとTOCの比較研究」です。

研究対象および対象の選択 JIT:カンバンを用い、必要なものを、必要な量だけ、必要なときに生産する。 TOC:生産工程上の各プロセスがCCRとなるプロセスにあわせて生産する。 MRP:需要の量から派生した資材と部品の量だけ生産と調達を行う。  大量生産から、多品種・少量生産に変化し、過剰在庫が問題になり、市場の動向に合わせた生産マネジメントが求められるようになった。このような生産マネジメントとして、JIT、TOC、MRPが考案されました。  ご存知のように、JITはカンバンを用い、必要なものを、必要な量だけ、必要なときに生産する。TOCは生産工程上の各プロセスをCCRとなるプロセスにあわせて生産を行う。MRPは需要の量から派生した資材と部品の量を生産、調達する。そのうち、JITとTOCは在庫削減、小ロット生産、ボトルネックの認識などの項目で似ているような主張をしている。本研究では、JITとTOCを選んで研究を行う。  JITとTOCは在庫削減、小ロット生産、CCRの認識などの項目で似ているような主張をしている。しかし、それを導いた理由は同じではない。

論文の構成 ①今までの研究を整理、小ロット生産の有効性を証明。 ②CCRのポジションと需要の変動が生産システムに対する影響を明確。 ③JITとTOCの導入時の注意点。  企業は新しい生産システムを導入するとき、どの場合JITに向いてあるか、どの場合TOCに向いてあるかはまだ明確になっていないし、このような討論があまりされていないようです。本研究ではJITとTOCを比較研究し、両者の違いを明確にすることで企業の意思決定に役が立つと考えられる。  まず、今までの研究を踏まえ、JITとTOCの理論的な違い点を明確にする。そして、両システムによる小ロット生産の有効性について数理的な証明を行う。そして、ボトルネックのポジションと需要の発生の変動が、JITとTOC生産システムに対する影響を明確にする。あと、JITとTOCを導入する際、注意しないといけない点を提案する。 今日は、時間の原因で、需要の変動がシステムに対する影響とJITの注意点、二つの項目を省略いたします。 CCR(capacity constrained resource):ボトルネック

目的その① ①CCRのポジションから、JITとTOCの違いを明確にし、意思決定の支援を行う。 ②TOCの導入時の注意点を提案する。

シミュレーションモデルの説明 本研究では、代表的な組立生産工程のA型構造と受注生産工程のT型構造の2つの生産構造を対象に、JITとTOCによる生産マネジメントをモデル化する。 A型構造 T型構造 D E P S P D  まず、シミュレーションで使用するモデルを説明します。  本研究で用いるA型構造は一つの最終製品に対して、AとBニ種類の原材料から組み立てられる。それぞれの原材料倉庫の後ろ、出庫作業がある、出庫作業を経ってから、加工作業が行われる。そして、最後に組立作業が行われ、出庫を行う。  T型構造の最も共通的な特徴は、限られた数のプロセスから、加工もしくは生産より、無数の最終製品を生産できることである。最終組立品は顧客が求めるオーダーで製造する。本研究で用いるT型構造は1種類の原材料があり。プロセスは需要により、生産能力が変更できるように設定しました。本研究で作ったT型構造モデルでは、最大8種類の製品が生産できる。 S P S D E P S P S P S D E P S P D E 入口工程 P プロセス S 倉庫 D 出口工程

A型構造 これは、A型構造のシミュレーションモデルです。  このような□はwork stationです。それぞれ、出庫作業、加工作業、組立作業を表します。  左の表は各プロセスの統計データです。プロセスに入った部品の数、もしくは出た数、プロセスにある部品の待ち行列の長さ、待ち時間を表します。  右上のグラフは現在仕掛け品在庫の数です。右下のグラフは現在の未処理のオーダーの数です。

A型構造 E P P S D P S S E P P S D E P S 需要 30時間/個 5時間/個 15時間/個 30時間/個 平均通過時間 E P P S 30時間/個 5時間/個 15時間/個 D P S S 30時間/個 10時間/個 20時間/個 30時間/個 E  先ず、システムの初期条件をこのように設定しました。数字の意味は、部品一つ処理するために、プロセスがかかる時間です。 JITのA型構造では、倉庫内の在庫の数で、カンバンを表現した。倉庫内の在庫を最大2に設定し、2以下になる場合に、前のプロセスに命令を出し、生産を行う。こうすることで、在庫をコントロールし、必要なときにだけ生産する。需要は最終倉庫で発生する。 TOCのA型構造では、ボトルネックとなっているプロセスがあり、ボトルネックは命令を出し、入口工程はボトルネックの能力に合わせて、資材を投入する。そうすることで、システム内のプロセスは同じペースで働くことができる。 そして、本研究では、二つの評価指標を定義しました。納品時間と平均通過時間です。 納品時間:注文されてから提供するまでの時間であるので、納品時間が短いシステムでは、瞬間反応力が速いと評価できる。 平均通過時間:原材料が生産プロセスに投入されてから製品となるまでの時間であるので、生産プロセス上の各工程の生産時間、また、仕掛かり在庫としての滞留時間によって変化する。ですから、平均通過時間が短いシステムは、仕掛品在庫が少ない、キャッシュフローへの変更が速いと評価できる。 プロセスのポジションは前、中、後で設定した。 P P S 需要 納品時間 D E P S :倉庫 :出口工程 :入口工程 :プロセス

T型構造 これは、T型構造のシミュレーションモデルです。

T型構造 D D S E P P P S S D D D E P S 需要 25時間/個 10時間/個 15時間/個 25時間/個 :倉庫 Aかた構造とおなじように、JITとTOCの命令の出し方を設定しました。 需要 D D E P S :倉庫 :出口工程 :入口工程 :プロセス

ボトルネックのポジションによるシステムに対する影響 JITとTOCは連続的な改善のサイクルを主張。 CCRのポジションが移動が発生。   JITとTOCはともに連続的な改善のサイクルを主張します。改善のサイクルを実行したら、必ず、ボトルネックのポジションが移動することがある。ボトルネックが前、中、後にあるとき、どのシステムのパフォーマンスがよいかを明確にする。 CCRが前、中、後にあるとき、どのシステムのパフォーマンスがよい?

検討結果 平均通過時間 [時間] 納品時間 [時間] A型構造、CCRのポジションに よる納品時間の変化 平均通過時間 [時間] 納品時間 [時間] これは、A型構造の検討結果です。 左の二つのグラフは、CCRのポジションの変化により、納品時間に対する影響です。まず、横軸ではCCRのポジションの前・中・後を表示します。縦軸は納品時間であり、単位は時間である。 納品時間の検討では、CCRが一番前に存在するときだけ、両システムの納品時間が同じである。それ以外、JITの納品時間はTOCより速いです。それは、TOCでは、入口工程がCCRの能力に合わせて、働かないといけないから、納品時間が遅くなりました。需要の発生が不連続の場合、納品時間が短いから、一つの需要に対し、迅速的に反応できるということになる。 右では、横軸ではCCRのポジションの前・中・後を表し、縦軸は平均通過時間であり、単位は時間である。TOCのほうがJITより、平均通過時間が短い。それは、TOCでは、すべてのプロセスが同じペースで働くから、基本的に、部品の待ち時間は発生しない。一方、JITは、在庫の量でカンバンというシグナルを出すかどうかを判断する。CCRがシステムの後に行けばいくほど、システムの平均通過時間が長くなる。つまり、仕掛品在庫量が多くなる。 T型構造も似ているような傾向が得られました。 A型構造、CCRのポジションに   よる納品時間の変化 A型構造、CCRのポジションによる平均通過時間の変化

目的その② ①CCRのポジションから、JITとTOCの違いを明確にし、意思決定の支援を行う。 ②TOCの導入時の注意点を提案する。

時間30でTOCを導入する場合は、入口工程はCCRの能力に合わせて、資材を投入するから、元に溜まってた在庫が消耗できない。 ここに示しているのは、在庫の数です。 TOCを導入する最初段階、非ボトルネック工程はボトルネック工程に従属し、生産しないといけないと定義されているが、 シミュレーションでは、時間30でTOCを導入した場合は、CCRの前に溜まっていた仕掛品在庫が減らせない。それは、入口工程がCCRの能力に合わせて働くと、CCRは元々溜まっていた仕掛品在庫が消耗できないから。そのために、改善プロセスを実行する場合は、ある期間中に、入口工程が資材投入ペースを落とすべき。

ある期間中、入口工程の能力を落とすべきだと考えられる。 入口工程の能力はある期間中で落とせば、このような結果が得られました。

JITは在庫があるとき、カンバンを出さないので、このような問題が生じない。

目的その③ ①CCRのポジションから、JITとTOCの違いを明確にし、意思決定の支援を行う。 ②TOCの導入時の注意点を提案する。 ③今までの研究整理と小ロット生産の有効性について数理的な証明を行う。 ボトルネックのポジションから、JITとTOCの違いを明確にする。

理論的な比較項目 ①全体最適 ②目標 ③手段 ④在庫 ⑤CCR(ボトルネック) ⑥会計方式 ⑦稼働率 ⑧平準化 ⑨バッチサイズ ボトルネックを認識している、ボトルネックの1時間あたりのコストは工場の1時間のコストだと定義し、QCはボトルネック工程の前に行うべきだと主張し、ボトルネックが一番大事である。 ②目標 ③手段 ボトルネックを認めない、したがって、改善すべき工程が特定されず、個別工程の生産性を増やすために、自動化やロボットの技術を導入する。 ④在庫 ⑤CCR(ボトルネック) ⑥会計方式 ⑦稼働率 ⑧平準化  CCRは要旨にも書いてあるように、Capacity Constrained resourceの略語である。ここでは、ボトルネックと同じ意味で扱う。本研究は9個の理論的な比較項目を選んで、従来方式の考え方を加え、比較を行いました。このような項目を選んだ理由として、両システムはこの9項目では、似ているような考え方を示している。しかも、明らかに、従来の考えかたと異なっている。例えば、 …… そして、比較項目の第9項、バッチサイズについて説明します。 ⑨バッチサイズ 明確にボトルネックを認識しないが、実際的に、在庫を削減することで、ボトルネックに顕在化させる。 、

バッチサイズの数理的な証明 本研究ではJITとTOCの小ロット生産の有効性について数理的な証明を試みる。 従来方式:規模の経済性から、バッチサイズを最大。 JIT:「一個流し」、「小ロット生産」、バッチサイズを最小。 TOC:CCRと非CCRを分けて、バッチサイズを考える。  従来方式では、規模の経済性から、バッチサイズを大きくすべきだと考えている。  JITは「一個流し」、「小ロット生産」の生産方式を用い、バッチサイズを最小にすべきだと主張する。  TOCはボトルネックと非ボトルネックを分けて、非ボトルネックのバッチサイズをできるだけ縮小すべき、ボトルネックのバッチサイズを決めるとき、ボトルネックの能力を考慮すべきだと主張する。 本研究ではJITとTOCの小ロット生産の有効性について数理的な証明を試みる。

例:4つのプロセスA,B,C,Dを持つ生産ラインがあり、それぞれの使用可能時間は全部500分である。   生産リードタイム EとF、2種類の需要があり、それぞれの数は10個である。従来では、需要が10個であるから、処理バッチサイズと移動バッチサイズはともに10個になる。段取り時間は1回30分だとすれば、上の図から納品するために、生産リードタイムの長さは1260分であることが計算できる。 4つプロセスを持つ生産ラインがあり、数字は部品一つを処理するために、かかる時間である。→は部品の流れを示す。 バッチサイズ:あるまとまった単位で一括して処理する方式。Batch size ロットサイズ:同一仕様の製品や部品を生産単位としてまとめた数量。Lot size

バッチサイズをn等分する場合、4つのプロセスがあり、それぞれの処理時間はT1、T2、T3、T4だと設ける。バッチサイズをn等分したら、それぞれの処理時間はT1/n、T2/n、T3/n、T4/nになる。4つのプロセスの段取り時間はD1、D2、D3、D4だと考え、需要EとFの生産リードタイムを求める。          B   C    A T4/n T3/n T2/n D バッチサイズはn Tn T1/n もともとの処理時間はT1、T2、T3、T4でしたけれど、バッチサイズをn等分したら、処理時間はT1/n、T2/n、T3/n、T4/nになります。それに伴って、段取りにかかる時間も増えます。生産リードタイムT=A+B+C;です。 A、B、Cはこのように計算できますので、生産リードタイムTnはこのような式が得られました。 整理して、このような式が得られました。 仮に、D1=D2=D3=D4=Dの場合は Tnはこのように整理できました。 TnはTより小さいという条件のもとで、式②が得られます。nの最大値を求められました。 Tnの式で、nを微分して、生産リードタイムTnが最短の場合のnを求めました。  nが増大に伴って、 T1/n、T2/n、T4/nが小さくなります。生産リードタイムを決める因子はT3と段取り時間Dによって決められる。ここのT3は一番余裕をもたない工程であり、この生産ラインのボトルネックとなっている。CCRの重要性は証明できた。そして、トヨタでは徹底した「段取り替え時間の短縮」に取り組み、当初3時間ほどかかっていた段取り時間を3分に短縮したこともこの公式で説明できる。  2の意味はここでは、2種類の需要があること。nはバッチサイズをn等分することの意味である。 CCRのバッチサイズが小さくしすぎると、CCRの生産時間が影響されるから、CCRのバッチサイズを決定するとき、プロセスの稼動制限時間を考えないといけない。例えば、プロセスの稼動制限時間は500分、生産には400分が必要である。段取り1回に30分かかる場合は、CCRでは3回の段取りしか行えない。だから、バッチサイズ最小でも、3等分しかできない。 式③から、バッチサイズは3のとき(n=2.6)、Tn=1113、元より147分短縮。

まとめその① JITのほうが納品時間が短く、さらに、必要な在庫も常に持っているから。需要の発生は不連続の場合は、相応しいと考えられる。 TOCのほうが平均通過時間が短く、仕掛品在庫は少ないから。迅速的にキャッシュフローに変更できるから。需要が十分にある場合は、相応しいと考えられる。 従来の生産方式からTOCを導入する際、仕掛品在庫の問題点について注意しないといけない。 JITとTOCの違いを比較し、論理的な違いをまとめた。さらに、JITとTOCが主張している小ロット生産が数理で証明できた。 ニッチ製品を生産する場合、JITが相応しいと考えられる。 需要が少ない場合は、需要がCCRになってしまうので、TOCでは、このような生産システムをコントロールすることは難しいと考えられる。

まとめその② CCRの生産能力が変化するとき、各製品の通過時間のバラツキに対する影響は、TOCのほうが小さいという結論が得られた。 JITにも資材の投入間隔をコントロールすることで、仕掛品在庫量をさらに削減できる。しかも、最終的な生産量(製品数)も同じで改善前と変わらない。 そして、今日時間の原因で説明できなかった二つの項目についても、結論を述べます。まず……

今後の課題 今回で検討されていないV型構造にも分析を行う。 将来、さらに優れた生産マネジメント方式を提案できること。 考える範囲を拡大し、対象は一つの工場ではなく、資材の供給者から、顧客までのサプライチェーンを対象として、JITとTOCの応用を考案する。

ご清聴ありがとうございました。

T型構造、CCRの生産能力の変 動が通過時間に対する影響  横軸は製品の種類の増加によるCCRの生産能力の変動である。縦軸はそれぞれの製品の通過時間、つまり製造時間である。需要の種類が増えるに伴って、CCRの能力が変動するように設定し、それぞれのケースにおいて、通過時間の標準偏差を得た。需要の種類が多くなるとき、CCRの処理能力の変動も大きくなる。図ではJITの方が、CCRの処理能力の変動が増える場合に、通過時間のバラツキが大きくなった。それは、JITでは在庫をシグナルに使用するから、CCRの生産能力が激しく変動したら、在庫も激しく変動する。それに伴って、製品の通過時間も変動する。TOCの場合は資材の投入ペースがCCRに合わせるから、通過時間の変動の原因は単に、それぞれの需要がプロセスに要求する能力の変動により発生したものと考えられる。JITでは、プロセスの能力の変動により、倉庫内の在庫の量も変動する、倉庫内の在庫量が変動するとき、入口工程にも資材を入れて、カンバンの設定最大値に満たそうとするから、バラツキの変動は大きくなる原因だと考えられる。バラツキの変動が小さいことは、受注生産において、顧客に対して、より正確に製造時間を答えられることである。ここでは、入口工程の投入スピードが遅い原因で、バラツキが大きくなると推測した。  注:本研究で用いるTOCのモデルでは、CCRの処理能力が変化したとき、入口工程の生産能力も瞬間的にCCRに合わせて変化する。これは、極めて理想の状態である。現実では、難しい状態である、CCRの生産能力の変化に反応する時間が必要である。  入口工程の資材投入ペースを早くする場合、元より、バラツキが小さくなった。入口工程の資材投入ペースは速くしたら、それぞれの部品の通過時間のバラツキが小さくなくなるという結論が得られる。

JITの平均通過時間の改善策  A型構造では、例えCCRが一番前のポジションに存在しても、JITとTOCを用いるシステムの間に、平均仕掛品在庫量のギャップがある。それは、A型構造では、いくつの生産ラインを持ち、例えCCRが一つのラインの一番前に存在しても、もう一つのライン上のプロセスはCCRにあわせて生産しないので、その能力の差により、仕掛品在庫が多く生産された。

JITの平均通過時間の改善策  TOCでは、すべての入口工程がCCRに合わせて働かないといけないと決めてあるので、平均通過時間が少ないという結果がえられたと考えられる。JITも、入口工程をCCRにできるだけ合わせ、資材投入ペースを遅くする場合に、結果をまとめた。横軸では、投入間隔である。投入間隔が長くする場合は、資材の投入ペースが遅くなる。  本研究で用いるA型構造では、二つの生産ラインから、製品を組み立てるので、それぞれのラインの資材投入ペースを落とし、結果をまとめた。図から、JITでも、入り口工程で、資材の投入間隔をコントロールすることで、平均通過時間を短縮することができる。しかも、最終的な生産量(製品数)も同じで改善前と変わらない。シミュレーションにより、T型構造も同じ傾向が得られた。それは、図のCCR存在するラインからわかる。