基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第9回.

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基礎商法2_07 2015/11/18 基礎商法2 第9回

本日のお題 手形の意義 約束手形の振出しと手形行為 手形学説 意思表示の瑕疵 手形行為独立の原則

有価証券総論

所持人に善意・無重過失弁済で免責(通帳等) 有価証券総論 有価証券の定義 財産的価値を有する私権を表章する証券 権利の(発生)・移転・(行使)に証券が必要なもの ⇒説明の違いで結論には差がないのであまり論じられない 有価証券とそれ以外の証券の区別 単なる証明書(借用書等) 証券 証拠証券 免責証券 有価証券 手形・小切手 株券 貨物引換証 (金銭代用証券) 非証券 所持人に善意・無重過失弁済で免責(通帳等) 発生・移転・行使 移転・行使(?) 移転・行使

有価証券の性質と分類 完全/ 不完全 設権/ 非設権 無因/ 有因 文言/ 非文言 要式/ 非様式 譲渡方法 権利 手形 完全 設権 無因 指図 金銭債権 小切手 指図・無記名 株券 無記名 社員権 貨物引換証 引渡請求権 ※株券は「記名株券」だが、交付だけで譲渡できるので無記名証券

手形(・小切手)総論

約束手形の流通(その1) 建前編 約束手形 手形金請求 手形金 受取人 振出人

約束手形の流通(その2) 現実編 口座残高 約束手形 振出人 受取人 当座勘定契約 当座勘定契約 手形用紙 手形交換所 銀行残高 銀行残高

為替手形・小切手の流通(その1) 送金建前編 為替手形・小切手の流通(その1) 送金建前編 為替手形 受取人 振出人 手形金 手形金請求 支払人

為替手形・小切手の流通(その2) 送金現実編 為替手形・小切手の流通(その2) 送金現実編 口座残高 為替手形 振出人 受取人 当座勘定契約 当座勘定契約 手形用紙 銀行残高 銀行残高 支払人

為替手形・小切手の流通(その3) 取立編 ※貨物引換証・船荷証券を組み合わせると「荷為替取引」 口座残高 為替手形 振出人 支払人 為替手形・小切手の流通(その3) 取立編 ※貨物引換証・船荷証券を組み合わせると「荷為替取引」 口座残高 為替手形 振出人 支払人 当座勘定契約 当座勘定契約 受取人(乙支店) 受取人(甲支店)

約束手形総論

約束手形の基本構造 振出人 裏書人 受取人 被裏書人 裏書人 被裏書人 原因関係 原因関係 原因関係 振出 裏書 裏書 約束手形 再遡求 請求(支払呈示) 不渡り 手形金請求権 遡求権

約束手形の意義 経済的意義 法的な工夫(特徴) 債権譲渡の容易化(資金回収手段の多様化) 支払確保 手形外の事情(手形行為の原因)と手形の効力を切り離すことで、債権発生の確定を図る ⇒手形の無因性、人的抗弁の切断 金銭債権の動産化(証券を用いて可視化、交付を債権譲渡の効力要件とすることで動産的処理) ⇒善意取得制度 裏書人の遡求義務原則化で所持人(手形債権者)保護

約束手形の紛争の基本形 原因関係 ②債権者ではない ③正しい手形債務者・手形債権者だが、支払を拒絶できる理由がある 受取人 振出人 被裏書人 ①債務を負担していない ②債権者ではない ③正しい手形債務者・手形債権者だが、支払を拒絶できる理由がある

紛争の類型 紛争の原因 善意の 所持人保護 保護の手段 債務を負担していない 手形要件欠缺 保護しない 意思無能力 制限能力 意思表示の瑕疵 保護する/しない 人的抗弁化 前者の行為の無効 保護する 手形行為独立の原則 会社法違反 相対的無効説等の 会社法の保護法理 振出の無権代理 表見代理(手8) 偽造 表見偽造 時効 限定的に保護 利得償還請求 所持人は債権者 ではない 盗取 善意取得 裏書の無権代理 善意取得(拡張) 他の理由 原因関係の消滅等 人的抗弁の切断

手形行為 ―約束手形の作成―

約束手形の成立要件 署名 ※振出、裏書共通 自然人の場合 法人の場合 自署 記名捺印 代理人による署名(代理方式の署名) 署名   ※振出、裏書共通 自然人の場合 自署 記名捺印 代理人による署名(代理方式の署名)  署名の代行(代行方式の署名)  法人の場合 上記③の方法しか許されない(通説) 上記③④の方法が許される(少数説)

① 本人による署名 ② 代理方式による署名 ③ 機関方式による署名 ④ 法人における署名 自署 振出人 土田 亮 記名捺印 振出人 土田 亮 ① 本人による署名 自署 振出人  土田 亮 土田 記名捺印 振出人  土田 亮 ② 代理方式による署名 自署 振出人  土田 亮 代理人 前田修志 記名捺印 振出人  土田 亮 代理人 前田修志 前田 ③ 機関方式による署名 自署 振出人  土田 亮 ←実際の署名者は別人 土田 記名捺印 振出人  土田 亮 ④ 法人における署名 前田 甲 甲株式会社代表取締役 前田修志 甲株式会社

通称の使用 ・・・通称の使用自体は(手形法的には)問題なく許される ⇒問題は、どの程度使用されれば「通称」といえるか (周知性の問題) ※実務上は当座勘定口座名との一致が必須 ⇒問題は、どの程度使用されれば「通称」といえるか (周知性の問題) 〔判例〕(周知・慣用があれば)「自己を表示する名称として」他人名義を使用したと認める(最判S43.12.2百1)

署名以外の手形要件 記載事項の分類 絶対的記載事項(=手形要件) 任意的(有益的)記載事項 無益的記載事項 有害的記載事項 記載しないと手形が無効となる事項(次ページ参照) →手75、76 ※例外 満期の記載がなければ一覧払い 振出地の記載がなければ支払地(振出人住所)または振出人の名称に附記した地 任意的(有益的)記載事項 手形要件ではないが記載しなければ効力を生じない事項 無益的記載事項 手形に記載しても効果が生じない事項 有害的記載事項 記載すると手形を無効にする事項

約束手形の記載事項 約束手形の文字 単純な 支払約束文句 一定の金額 受取人 満期(確定日払) 振出人の署名(記名捺印) 振出地 振出日 支払場所 支払地

不合理な手形の記載事項の効力 手形金額の重複記載(最判S61.7.10百-39) 〔事案〕金額欄に「\1,000,000―」と「金壱百圓」の記載があり100円の収入印紙が貼られた約束手形が振り出され、満期日に所持人(≠受取人)が100万円を請求したところ、振出人は漢数字の記載優先(手6)を根拠に100円の支払い以外を拒絶 〔判旨〕手6は文字で記載した金額を画一的に手形金額とし、それ以外の事情は手形外の関係として処理する趣旨。経験則により誤記として処理すると判断基準が曖昧であり手形取引の安全を害する

2.満期日以前の振出日(最判H9.2.27百-21) 振出人Y 受取人A 被裏書人B 所持人X 振出 裏書 裏書 約束手形 支払呈示 振出日 空欄 振出日 空欄 振出日H3.11.25 満期 H3.11.22 満期 H4.6.22 満期 H3.11.22 満期 H4.6.22 判旨:振出日についてもこれを手形要件と解すべきものである以上・・・満期の日として振出日より前の日が記載されている確定日払の約束手形は・・・無効である。

交付欠缺と手形理論

手形理論の意義と交付欠缺 手形理論 概説 交付欠缺との関係 手形行為(手形の振出し、裏書き等の法的な効果を持つ行為)の法的性質の理論的な検討が「手形理論」 民法の法律行為論に忠実な立場(交付契約説)と、手形独自の行為論(創造説。特に二段階創造説)が対立し、中間に発行説等 交付欠缺との関係 交付欠缺=手形に署名はされたが交付されていない状態 この状態で流通した手形の効力について、創造説から交付契約説に対する攻撃がなされたため学説対立の主戦場に。

交付欠缺 受取人B 振出人A 振出 手形用紙 手形用紙 約束手形 盗取 盗取者C 所持人D 交付欠缺(けんけつ)の手形

主要な手形学説 手形の成立時期 交付契約説 発行説 修正発行説 創造説 法的性質 契約 相手方のある 単独行為 相手方のない 書面行為+ 交付行為 署名 必要 自発的な 占有離脱 不要 受取人への 到達 受取人の 受領能力 遅い 手形の成立時期 早い

交付契約説 手形成立 振出人A 受取人B 振出 約束手形 約束手形 振出人A 振出人A 署名時:未成立 交付 (申込の意思表示) 受領 A 振出人A A 署名時:未成立 交付 (申込の意思表示) 受領 (承諾の意思表示) 契約成立 手形成立

発行説 手形成立 行為能力・意思能力不要 振出人A 受取人B 振出 約束手形 約束手形 振出人A 振出人A 署名時:未成立 交付 A 振出人A A 署名時:未成立 交付 (単独行為の意思表示) 受領 (意思表示の到達) 手形成立

修正発行説 手形成立 受領不要 振出人A 受取人B 振出 約束手形 約束手形 振出人A 振出人A 署名時:未成立 交付 (自発的占有の離脱) A 振出人A A 署名時:未成立 交付 (自発的占有の離脱) 手形成立

(二段階)創造説 自発的な 占有離脱不要 受領不要 振出人A 受取人B 振出 約束手形 約束手形 振出人A 振出人A 署名:手形成立 交付 A A 署名:手形成立 交付 (手形債権の譲渡)

権利外観理論 署名者は 手形記載に従った 責任を負う 債務を 負っていない 払います 振出人A 受取人B 手形用紙 払って下さい 盗取 交付契約説 発行説 修正発行説 盗取者C 所持人D 所持人Dの 保護に欠ける 約束手形 ①虚偽の外観(手形っぽい紙) ②帰責性(署名? 保管?) ③信頼(所持人の善意・無重過失) 署名者は 手形記載に従った 責任を負う 権利外観理論 による保護

判例の立場 「流通に置く意思で・・・署名・・・した者は、たまたま右手形が・・・その者の意思によらずに流通に置かれた場合でも、連続した裏書のある右手形の所持人に対しては、悪意または重大な過失によって同人がこれを取得したことを主張・立証しない限り、・・・手形債務を負う」(最判S46.11.16百-8) ⇒どの学説に立つかは巧妙に言及を避けている。 ただし、保管の帰責性ではなく署名の帰責性を認めている点には注意。 ※約束手形として流通に置く意思が必要(=約束手形と認識していない場合や、抗拒不能で署名した場合は責任を負わない

手形行為と意思表示の瑕疵

手形行為と意思表示の瑕疵 パターン1 錯誤 手形成立 手形不成立 払って下さい 債務を 負っていない 振出 裏書 振出人A 受取人B 所持人C 約束手形 振出人A A 約束手形 振出人A A 約束手形 振出人A A 手形成立 手形不成立

判例の立場 全面適用説→揺らぎ→全面適用否定説 意思表示の瑕疵に関する学説 全面適用説 (弥永、関) 一般的 修正適用説 (木内、田辺) 個別的 (田中耕、大隅) 全面適用否定説 (鈴木、前田)* 心裡留保 適 用 適用するが 権利外観理論 で修正 不適用 通謀虚偽表示 適用 錯誤 詐欺 強迫 * 二段階創造説は、手形債務負担行為については民法の適用を全面的に排除し、手形権利移転行為については民法を適用する 判例の立場 全面適用説→揺らぎ→全面適用否定説

手形金の錯誤最判S54.9.6百-6 判旨:①錯誤は人的抗弁(直接の相手方+悪意者のみに対する支払拒絶事由)にしかならない ⇒全面適用否定説 1500万払って 錯誤 全額無効 振出人A 受取人Y 被裏書人B 所持人X 振出 裏書 裏書 約束手形 遡求 売掛債務:150万円 150万円の 手形として譲渡 1500万円の 手形と気づく 1500万円の手形として受け取る 手形:1500万円 事情を知っていたかどうか不明 判旨:①錯誤は人的抗弁(直接の相手方+悪意者のみに対する支払拒絶事由)にしかならない  ⇒全面適用否定説 ②手12Ⅱにかかわらず、150万円部分に錯誤はない

手形行為と意思表示の瑕疵 パターン2 錯誤 払います 払いません 人的抗弁 払って下さい 払って下さい 人的抗弁切断 振出 裏書 裏書 裏書人A 被裏書人B 所持人C 約束手形 振出人Z Z 交付契約説、発行説、修正発行説が民法全面適用否定説を採った場合 ⇒A直接の相手方Bに支払は拒絶できる(人的抗弁)が、手形の返還を求めることはできないので流通を止められない(Bが錯誤について悪意でも同じ) →二段階創造説(権利移転行為有因論)は、Bが悪意・重過失ならばAに手形を返還すべきとする。

手形行為独立の原則

手形行為独立の原則 総論 A B C 振出 裏書 制限能力取消 約束手形 ある手形行為が実質的理由(制限能力、無権代理、偽造等)によって無効であっても、それによって他の署名者の債務は無効とならない(手7) ⇒Aの手形行為が無効でもBの遡及義務は有効 手7の根拠については、取得者保護のための政策的な規定である(政策説)、手形署名者の意思表示の効果である(当然説)との見解が対立