サービス・イノベーションのための知的財産権の在り方に関する考察と提案 [日本知財学会2007大会発表用] サービス・イノベーションのための知的財産権の在り方に関する考察と提案 2007年7月1日 幡鎌 博 文教大学 情報学部 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
発表の構成 1. 自己紹介 2. サービスサイエンスとサービスイノベーションの研究動向 3. ビジネス方法特許の動向 4. サービスの知的財産の必要性 5. サービスイノベーションを促進する知的財産権とは? 6. 元祖権の提案 7. おわりに 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
1.自己紹介 著書=「eビジネスの教科書」など。 自分のWebサイトに、次のような情報を公開中。ブログも。 http://open.shonan.bunkyo.ac.jp/~hatakama/ または、幡鎌 博 と検索してください。 「eビジネス/eコマースの動向と技術」(リンク+簡単な解説) ・事業動向と技術面の工夫(特にビジネス方法特許)を継続的に調査。 ビジネス方法特許と実際の事業とを対応付け。 「戦略的情報システムの事例集」(Excel形式をHTML化) ・雑誌やベンダーの事例紹介から、各企業の戦略とIT活用とが深く結びついた最新事例を継続的に調査。 (300以上) 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
2. サービスサイエンスとサービス イノベーションの研究動向 サービスサイエンス・サービスイノベーション関連の動き IBM --- 産官学一体となったサービスイノベーション推進へ。 研究者 --- OR学会誌と一橋ビジネスレビューに特集 (昨年)。 「サービス・イノベーション研究会」の報告書 経済産業省の委託調査事業 「サービス・サイエンス」 サービスイノベーションを主なテーマとした書籍。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
3. ビジネス方法特許の状況 特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」(2006年9月版) によると、 サービス業の企業からの出願 ・2000年をピークに出願数が減り続けている。 ・特許査定率は8%。 サービス業の企業からの出願 ・金融や広告は多いが、他の業界は少ない。 ネットベンチャーからの出願が少ない。 ・しらけている? 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
ビジネス関連発明の出願数の推移 特許庁の資料より ネット広告のイノベーション = 新市場型 (破壊型) 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
4. サービスの知的財産の必要性 アートコーポレーションの逸話 新たな知的財産権が望ましい? 千代乃はアート独自のサービスに特許権を与えるか、商標登録ができないものかと特許庁を訪れて相談を持ちかけた。 「当社が考えて始めたサービスなのに、他社が黙ってうちと同じサービスをするようになったのです。私どものサービスに特許権を与えてもらえないですか」と、真剣に相談をもちかけた。しかし、知的財産権の概念が確立していなかった当時のこと。 「サービスのような無形のものに特許権を与えることはできませんよ」と言われて、千代乃は悔しさを飲み込んだ。 新たな知的財産権が望ましい? サービスではテクノロジープッシュは有効ではない。顧客視点へ。 イノベーションのための補助金政策は非効率・不平等。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
5.サービスイノベーションを促進する知的財産権? 「サービス・イノベーション研究会」の報告書では、 サービスのアイデアは ~、そもそもIPの定義が難しく、 また、特許は~、サービスの場合には馴染まないとの意見が出された。それよりは、商標やブランドのような総合評価を保証する仕組みのほうが適切であるということで一致した。 しかし、 サービスを始めてすぐに真似られると、ブランドが確立する前に事業に敗れてしまう危険性があるはず。 製造業のシーズである科学技術とは異なるので 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
サービス関連の特許は サービス産業での知的財産は課題 特許化可能 すべてシステム/IT化 部分的に特許化可能 すべて人による接客 例:ディズニーのファストパス(特許3700833) スーパーホテルの自動チェックイン機(特許3000437) すべてシステム/IT化 利用者 人による接客 システム/IT 部分的に特許化可能 裏側のシステム/ITの部分のみ 利用者 支援 すべて人による接客 特許化は不可能 利用者 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
サービスの権利化の必要性 ・今日、サービス/流通のイノベーションを促進する制度として、特許では保護できる範囲が狭く不十分。 ・特許制度では、技術の面が伴わない仕組みやビジネスモデルは、いかに革新的であっても権利化できないため。 ・しかし、サービス/流通では「独占」は望ましくないため、特許のように独占するのではなく営業的な優位をもたらす制度を考えるべき。 ・Wikinomicsの考え方を取り入れるべき。著作権ではオープンソースやCreative Commonsといった新たな考え方あり。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
5.サービスイノベーションを促進する知的財産権の提案 要件 ・独占しない権利。 ・自然法則利用(IT・システムなど)が必須でない。 元祖権(イノベーション25に提案) ・一部のみ自然法則利用(IT・システムなど) ・元祖登録されたサービスを真似した企業は、HPやカタログに元祖企業の情報を表示義務。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
6.「元祖権」の提案 権利の特徴 ・サービスに関する非独占の権利。営業的な優位のみ。 ・権利のみの譲渡/売買は不可。 ・権利存続期間 = 6年程度 (実用新案程度でいいか?) ・先発明主義 (または先実施主義?)。 ・発明者には、職務発明としての権利。 審査 ・一部のみ自然法則利用(IT・システムなど)でいい。 ・サービス実施が前提 (審査を受けるためには実施が条件) ・新規性だけでなく、ビジネスモデル等の進歩性も必要。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
「元祖権」の権利内容 「自分が元祖」と正式に主張できる。 他社が真似して同じサービスを実施する場合(抵触時) 同時に商標登録している場合 元祖権を持つ会社が「元祖」であることとその問合せ先/リンクを、真似した会社のカタログやWebページ上に表示することを義務付ける。 → 他社が真似した場合に、必ず営業的な効果を得られる。 同時に商標登録している場合 第三者に対しても、商標表示の際に元祖の表示も義務付ける。例えば、「○○はA社の登録商標(△△サービスでは元祖)」。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
元祖権にふさわしいサービス例 往復宅急便 --- 利用者には、安く、手間が少なくなる。ビジネスモデルとしては、他社の市場を切り崩せるし、復路便の需要予測可。 QBハウス --- 待たせない床屋の市場を開拓。駅の近くで安い床屋。何分待ちかが分かる仕組み。 About.com のサービス (日本ではオールアバウト) --- ガイドを教育して汎用的な専門サイトを構築。広告費はガイドに分配 (貢献したガイドに多く分配する仕組みのみ、米国で特許化)。 オークションのエスクローサービス などなど 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
7. おわりに サービスイノベーション サービスイノベーションを促進する知的財産権とは? 元祖権の提案 サービスにもイノベーションが必要。 広くサービスを権利化できるようにするべき。 特許でなく、独占しない権利を考えるべき。 元祖権の提案 あくまでも一例。多くの人に考えていただきたい。 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌
ご静聴ありがとうございました. 2007.6.17 JASMIN春全国大会 : 幡鎌