平成13年6月20日 関西電力株式会社 企画室 企画グループ

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平成13年6月20日 関西電力株式会社 企画室 企画グループ 電力自由化時代の電気事業 平成13年6月20日 関西電力株式会社 企画室 企画グループ

1.電気事業とは 2.電力自由化時代の到来 3.海外における電力自由化の動向 4.カリフォルニア州の電力危機 本日のトピック 1.電気事業とは 2.電力自由化時代の到来 3.海外における電力自由化の動向 4.カリフォルニア州の電力危機

1.電気事業とは

電気事業とは 1 発電 送電 配電 供給 水力発電所 ビル 住宅 マンモスビル 揚水発電所 二次変電所 一次変電所 配電 用変電所 商店 6,600V 200~ 100V 500,000 ~275,000V 77,000~ 22,000V 水力発電所 ビル 住宅 154,000 ~77,000V マンモスビル 200~ 100V 6,600V 77,000~ 22,000V 揚水発電所 二次変電所 一次変電所 配電 用変電所 商店 柱上変圧器 火力発電所 77,000~ 22,000V 200~ 100V 6,600V 工場 工場 原子力発電所 電鉄・工場 発電 送電 配電 供給

日本の電気事業の歴史 2 国家統制期 戦後再編成期 現行体制 電力自由化 創業・確立期 競争・寡占期 (明治中期~大正) ○明治19年東京電灯創立。関西では明治20年神戸電灯設立。 ○工業化で需要は飛躍的に増加。事業者数も急増。  (明治25年 11社→明治40年 116社→昭和5年 735社) ○第一次世界大戦後の不況で電力会社の合併が促進。  5大電力が支配的地位を確立。(昭和11年:シェア60.8%) ○激烈な需要争奪戦を展開。二重投資等で各社の経営基盤弱体化。 競争・寡占期  (大正~昭和15) ○電力国家統制体制が完成。日本発送電と9配電会社に再編成。    電力不足対応の供給責任の所在が曖昧化。 ○経営合理化、サービス向上への意欲が減退。 国家統制期 (昭和15~終戦) ○戦争による電力設備の被害甚大。深刻な電力不足に。 ○昭和25年ポツダム政令により公益事業令、電気事業再編成令公  布。 戦後再編成期 (終戦~昭和26) ○昭和26年5月より現行体制に。全国9地域に民営の発送配電一  貫、地域独占の電力会社が設立。 ○昭和47年、沖縄返還に伴い沖縄電力設立。「10電力体制」に。 現行体制 (昭和26~平成7) 電力自由化 (平成7~) ○平成7年、31年ぶりの電気事業法改正により卸電力市場自由化。 ○平成12年3月、特別高圧需要を対象に小売電力市場部分自由化。

(出典:電気事業連合会「電気事業統計」) 日本の電気事業の特徴 ~需要サイド~ 3 電力9社(除沖縄電力)の販売電力量の推移 (10億kWh) (年度) 東京オリンピック S39 大阪万博 S45 9電力発足 公害問題の高まり 夏の需給逼迫化 発足時 と比べ 約27倍 オイルショック S48 バブル景気 S61~H2 (出典:電気事業連合会「電気事業統計」) (他の先進諸国と異なり)戦後、近年まで需要が一貫して伸び続けている。

日本の電気事業の特徴 ~供給サイド~ 4 ○民間事業による効率性の追求 ○地域事業者間の間接競争 [料金格差小] ○地域毎に発送配一貫の供給責任 ○比較的事業規模が大きい   [燃料調達力、原子力発電所の保有が可能] 効率性と安定供給のバランスのとれた体制

関西電力の事業概要 5 設立年月日 昭和26年5月1日 資本金 4893億円 売上高 2兆5,328億円 総資産額 6兆9,145億円   昭和26年5月1日 資本金 4893億円 売上高 2兆5,328億円 総資産額 6兆9,145億円 従業員数 26,333人 販売電力量 1,388億kWh 契約口数 12,493千口 供給区域面積 28,681km2 (大阪府,京都府,兵庫県 (一部を除く),奈良県, 滋賀県,和歌山県,なら びに三重県,岐阜県,お よび福井県の各一部) ※データは平成11年3月末現在

供給信頼度の実現 6 一軒当たり年間停電時間の比較 日本の一軒当たり年間停電回数の推移 出典:電気事故統計 [分/年・軒] [回/年・軒] (※)1994年の日本は阪神・淡路大震災があり、    この災害停電を除くとわずか8分/年 出典:電気事業連合会 電気事業の現状(1999~2000) 出典:電気事故統計

(出典:日銀「消費者物価指数年報」「消費者物価指数総攬」) 料金の低廉化 7 (S55=100) バス 郵便 水道 JR 消費者 物価指数 ガス 電気 (出典:日銀「消費者物価指数年報」「消費者物価指数総攬」)

地域間の料金格差の大幅な縮小 8 (料金格差) 昭和26年発足時:約2.3倍 [北陸(2.00)と中国(4.49)] 電気料金水準(総合単価) 昭和26年 平成10年 単価 指数 単価 指数 (料金格差) 昭和26年発足時:約2.3倍 [北陸(2.00)と中国(4.49)] 平成10年2月改定時:約1.2倍 [北陸(16.93)と沖縄(20.19)] 北海道 3.52 176 19.00 112 東北 2.71 136 18.31 108 東京 3.53 177 18.43 109 中部 3.79 190 17.79 105 北陸 2.00 100 16.93 100 関西 4.14 212 17.86 105 中国 4.49 225 17.61 104 四国 3.64 182 18.35 108 九州 3.70 185 18.59 110 沖縄 - - 20.19 119 (指数:北陸(単価最安値)=100) 出典:「電気事業便覧」

NOx、SOx排出量の削減 ~排煙脱硫、脱硝装置の設置、LNGの導入、低硫黄燃料の利用~ 9 SOX排出量国際比較 (火力発電の排出原単位) NOX排出量国際比較 (火力発電の排出原単位) (g/kWh) (g/kWh) (1994) (1993) (1993) (1994) (1993) (1993) 出典;OECD Environmental Data Compendium ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES

CO2排出量の削減 10

電力会社は酸性雨、地球温暖化に対し、様々な大気汚染防止措置を講じている。 電気事業の環境への取組 11 排煙脱硝装置の仕組み 「熱帯林再生技術の開発」国際共同研究 排煙脱硫装置の仕組み 排煙脱炭パイロットプラント 電力会社は酸性雨、地球温暖化に対し、様々な大気汚染防止措置を講じている。

日本におけるエネルギーセキュリティーの必要性 12 1995年各国のエネルギー自給率 (一次エネルギーベース) (%) エネルギー資源に乏しく 輸入に依存 日本 115 80 米国 多様で豊富なエネルギー 資源を国内で産出 20 英国 北海油田の開発により 石油・ガスとも豊富 通産省・電事審資料より

エネルギーセキュリティーの確保 13 ○当社では、燃料種別の多様化、調達先の多様化等により、発電用燃料の安定確保に努めている。 1.燃料種別の多様化 ・ウラン、石油、LNG等をバランスよく調達し、燃料の多様化に努めている。 2.調達先の多様化 ・ウラン(豪州、アフリカ他)、石油(インドネシア、中国他)、LNG(インドネシア、豪州他)というふうに供給先の多様化、リスクの分散に努めている。

電源構成(燃料種別)の多様化 14 日本 米国 英国 我が国は1973年の石油危機以降、原子力の開発、LNGの導入等の電源の多様化を 図り、石油代替エネルギーへの転換を推進 IEA ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES 英国 米国 日本 1973 74% 14% 8% 2% 1996 18% 35% 23% 10% 17% 45% 19% 5% 1994 4% 53% 20% 15% 1% 62% 26% 6% 50% 27%

ティッシュペーパーの売出しに人が殺到したスーパー 第1次石油ショック 15 関連年表 1973年10月6日 第4次中東戦争勃発 10月17日 OPEC加盟6カ国が石油の公示価格を21.22%値上げ決定。OAPECが、毎月5%の生産削減を決定。 10月24日 サウジアラビアが日本への原油供給量10%削減と直接販売価格の70%値上げを通告。 10月25日 エクソン・シェルなど国際石油資本5社が10%の供給削減を通告。 10月31日 兵庫県尼崎市のスーパーマーケットでトイレットペーパーの買い占め騒ぎ。以後パニックは各地に広がる。 11月20日 百貨店・スーパーの開店時間を30分繰り下げ。 12月24日 ペルシア湾岸6カ国が74年1月1日から原油公示価格を約2倍に引き上げるとOPECが発表。 12月25日 OAPEC石油相会議で、日本を友好国とみなして生産量を10%増やし、必要量を供給すると決定。 ティッシュペーパーの売出しに人が殺到したスーパー

原子力を中心としたエネルギー・ベストミックスの追求 16 ○当社においても、早い段階から原子力や天然ガス発電を導入することにより、脱石油化に積極的に取り組んできた。 S45年 (大阪万博開催) 美浜発電所運転開始 S49年 (第一次石油危機の翌年) 堺港発電所にて LNGの利用開始 当社の発電電力量の推移 (億kWh) H10年度 構成比 (53%) (22%) (10%) (13%) (年度) (出典:「電力需給の概要」「関西電力統計便覧」)

2.電力自由化時代の到来

公益事業規制緩和の流れ① 17 電気通信 1985年 電電公社民営化、NTT設立。競争政策の導入。 1996年 同年2月の電気通信審議会答申に基づき、 「NTT再編成に関する方針」発表。分割後各社 に公正な競争条件を確保する措置を採ることを  明記。 1999年 NTT再編、持株会社(NTT)、長距離国際会社 (NTTコミュニケーションズ)、地域通信会社(東 日本、西日本)に分割。 2000年 電気通信審議会において、通信分野の競争政 策の基本方針について議論(12月に答申)

公益事業規制緩和の流れ② 18 鉄道(JR) 1987年 国鉄分割民営化。旅客部門地域6社、貨物部門 1社のJR発足。 1987年 国鉄分割民営化。旅客部門地域6社、貨物部門 1社のJR発足。 1993年 JR東日本株式の売却・上場(96年10月JR西日本、 97年6月JR東海) 1997年 新しい旅客運賃制度実施。(上限価格制、手続 簡素化、情報公開等) ガス 1995年 ガス事業法改正。大口需要家(200万m3/年以上) 向けガス供給自由化。原則として自由な価格設 定により供給。 1999年 大口需要家の範囲拡大(200万→100万m3/年)。 接続供給約款の届け出、公表義務化。

わが国の電力自由化の背景 19 技術革新や国際化が進む中、産業の高コスト構造是正のための規制緩和 政策の一つとして、電力供給システム全般の見直しが実施された。 規制緩和の背景 ○規制緩和政策   「経済構造の変革と創造のためのプログラム」(H8.12閣議決定)に   おいて、電力に関し「平成13年までに国際的に遜色のないコスト水   準とすることを目指す」という目標が掲げられた。 ○国際化   国際的な相互依存関係が進展し、諸外国から規制分野の市場開放を 求められるようになった。電気事業については、諸外国において 自由化が進展。 ○技術革新   小容量ガスタービン発電機などの開発により、従来、自然独占とされ ていた分野への参入可能性が高まった。

内外価格差(諸外国との料金比較) 20 単純為替レートによる比較 購買力平価による比較 100 84 64 67 100 119 84 87 (円/kWh) (円/kWh) 100 84 64 67 100 119 84 87 (モデル)家庭用 (280kWh/月) 日本は2000年10月料金改定反映後 為替レートは1999年平均 1US$=113.91円、1£=216.83円、 1FFr=22.19円 (モデル)家庭用 1999年OECD購買力平価 1US$=161円、1Stg£=242.47円、 1FFr=24.21円

内外価格差の要因 21 ○為替レートの変動 ○日本の需給構造問題 ○人件費の高さ ○環境基準の厳しさ ○土地制約 負荷率の低さ 需要の増加が高いための設備投資水準の高さ (設備の若さ) ○人件費の高さ ○環境基準の厳しさ 良質な燃料の使用 環境投資額の高さ ○土地制約 土地代など土地関連コストの高さ 送電線ルートの確保の困難さ 、送電線の長距離化

販売会社が電気を市場から調達し需要家に販売 電気事業における競争形態(イメージ) 22 発送配一貫電力会社 発電機能 発電会社A 発電会社B 卸売市場 送配電(独占) 送電・系統運用等のサービスは卸売・小売市場への参入者に非差別的に提供。 販売機能 販売会社が電気を市場から調達し需要家に販売 販売会社 需要家と直接契約し販売 小売市場 需要家

世界の電力自由化モデル 23 任意プール 強制プール 第三者アクセス (託送) 発電 新規 参入者 発電 新規 参入者 発電 新規 参入者 送電 配電 小売 託送 送電 配電 小売 送電 託送 託送 配電 小売 小売 小売 需要家 需要家 需要家 ・北欧(Nord Pool) ・英国(現行)  ・ドイツ ・米国/PJM    ・英国(改革前) ・オーストラリア ・米国/加州 (3大電力・電力危機以前) ・日本 ・フランス

部分自由化への帰着 24 現状において現実性高い 電気事業審議会では、小売市場の全面自由化やプール市場の創設も検討されたが、エネルギーセキュリティ・環境や供給信頼度、ユニバーサルサービス等の「公益的課題と両立」を図るために、部分自由化とすることが決定。 部分自由化 全面自由化 プール市場 問題多い 現状において現実性高い エネルギー セキュリティ 環境 原子力開発の困難化 エネルギー輸入依存度の上昇 地球環境問題への影響 公益的課題への影響 供給信頼度 系統運用の困難化 ユニバーサル サービス ・地域毎に電気料金格差が発生 ・供給事業者の撤退等による需要  家への不利益発生

電気事業法の改正 25 ○改正電気事業法 施行 部分自由化制度スタート ○制度実施の約3年後、部分自由化制度の検証 99年5月に電気事業法が改正され、昨年3月より新制度がスタート。 制度実施の3年後には、部分自由化制度の検証が行われる。 電気事業法改正 国会提出 ▼ 同案 国会可決 H11.2月 H11.5月 H12.3月 ○改正電気事業法 施行 部分自由化制度スタート ・今後、電気事業法改正に向けたスケジュールは画面の通り。 ・現段階では平成12年3月21日を予定。 H15年頃 ○制度実施の約3年後、部分自由化制度の検証  ・自由化の範囲、制度内容についての検証     <検証の視点>       ①部分自由化の実績、②海外の自由化の動向、       ③系統安定技術の状況、④公益的課題への影響  ・全面自由化、電力プール制度導入の是非についての検討

電気事業法改正(H12.3.21施行)の主要なポイント 26 ○部分自由化の導入   ・特別高圧受電(2万V)・2千kW以上のお客さまを対象に小売   分野での競争を導入(沖縄は6万V・2万kW以上)   ・新規参入者は、経済産業省への届出のみで事業開始が可能 ○料金改定手続きの簡素化   ・非自由化分野のお客さまへの電気料金について、料金を引き   下げるなどお客さまの利益を阻害するおそれがない場合、届出   のみで料金改定が可能(従来は認可制)   ・選択約款は、事業の効率化に資すると見込まれるものについ   ては広く設定が可能(従来は負荷平準化に資するものに限定)

自由化の制度設計 27 (他電力管内) (関電管内) 送配電 ネットワーク 関西電力 IPP・自家発 他電力、IPP 関西電力 IPP・自家発 送配電 ネットワーク 行政に届け出る接続供給約款により公平に運用 規制対象のお客さま (規制料金) 自由化対象のお客さま (自由料金)

自由化対象顧客の規模 28 業 務 用 電 力 産業用 業務用 関西電力管内における規模 自由化部門 (販売電力量) 2,000kW 2万V 産業用  業務用 関西電力管内における規模 自由化部門 (販売電力量) 特別高圧電力 業 務 用 電 力 2,000kW 2万V 30% 高圧電力B 特別高圧 その他 500kW 70% 高圧電力A 非自由化部門 (収入) 50kW 6,000V 低 圧 電 力   21% 200V 特別高圧 従 量 電 灯 B 200~ 100V その他 79% 従 量 電 灯 A

主な新規参入(PPS等)の状況 (主に出力1万kW以上・平成13年6月現在) 29 凡例 既存PPS 新設予定 自家発 サニックス(苫小牧) 6.29万kW/廃プラ/2002年 水力 石炭 丸紅(三峰川) 3.22万kW/水力 イーパワー(六ヶ所) 200万kW/LNG/2007年 石油 ガス エネット(大ガス・日本製紙都島) 1.5万kW/都市ガス/2001年 呉羽化学工業(いわき) 5~10万kW/石油コークス/- その他 発電所名(地点名他) 発電規模/燃料/運開年 下線は特定規模電気事業者(PPS) エネサーブ(舞鶴or滋賀) 1.5万kW/ディーゼル/2004年 ダイアモンド・パワー(鹿島北) 3.5万kW/副生ガス イーパワー(宇部) 140万kW/石炭/2006年 エネット(日立造船・茨城) 2.1万kW 新日鐵(旭硝子・北九州) 1.9万kW/重油/2001年 大王製紙(三島工場) 1万kW/石炭/2001年 エネット(東ガス・袖ヶ浦) 10万kW/LNG/2003年 サニックス(伊万里) 5万kW/廃プラ/2002年 エネット(イースクエア・袖ヶ浦) 9.5万kW/LNG/- イーパワー(大牟田) 50万kW/石炭/- ダイアモンド・パワー(NKK・京浜) 2万kW/高炉ガス サミット・エナジー (住友共火・新居浜西) 5万kW/石炭 イーレックス(旭化成・九州延岡) 0.7万kW/石油 ダイアモンド・パワー(三菱化学・四日市) 1.5万kW/石油/2001年 旭化成(日向) 10万kW/石炭/- トクヤマ(トクヤマ・自家発増設) 14.5万kW/石炭/- PPSの届出は現在9件。建設予定を含め、計約52万kW(小売用・報道ベース)

3.海外における電力自由化の動向

欧州における電力自由化の背景 30 英 国 ドイツ フランス 背景 ねらい ○割高な電気料金 英 国 ドイツ フランス ○非効率な国営事業の 民営化サッチャー政権) ○厳しい財政状況を踏まえ、国内炭保護政策を転換 ○北海油田等により、石油・ガスとも豊富に産出し、エネルギー・セキュリティ上の不安がない ・自給率114.9%  (1995年)   ○割高な電気料金 ・特に産業用はフランスの約 1.5倍、英国の約1.7倍(1996年) ・自由化によりフランスや北 欧の割安な電力の輸入 が可能になる ○経済分野全般にわたる規制緩和の流れ ○国内的な自由化要請は少なく、むしろEU大での自由化推進の雰囲気がフランス国内の自由化を後押し ・電気料金が比較的割安 ・「公共の福祉」の追求 を目的とした産業政策 など、国による長期的・ 計画的な政策を重視す る社会性   背景 ○割高な電気料金の引き下げ ○競争政策が推進されている他産業との整合性 ○国営事業の効率化(民営化)による電気料金の引き下げ ○EUとの関係における一種の外圧による自由化の導入 ねらい

欧州における電力自由化の経緯 31 欧 州 大 国レベル 1987 1997 EU委員会「域内エネルギー市場」構想 欧 州 大 国レベル 1987 1997 EU委員会「域内エネルギー市場」構想 市場統合の一貫として、EU内各国間の電気料金格差の解消を目指すもの。 EU指令発効。99.2までに国内法整備を義務づけ。 発電における競争 アクセス料金の透明化 発電、送電、配電の会計分離 小売市場の一定シェア開放(99.2までに27%、2003.2までに32%) 1990 1991 1996 2000 イギリス電気事業再編 強制プール導入、小売部分自由化 ノルウェー新エネルギー法施行 任意プール導入、小売全面自由化 スウェーデン新電気法施行 ノルウェーと共同でNord Pool開設 小売全面自由化 フランス電力自由化法施行 EDF(フランス電力公社)による発送配一貫体制 小売部分自由化(年間消費量1,600kWh以上の需要家、約30%) 2000/5全加盟国で国内法化完了。

欧州の電力自由化の現状 32 90% 28% 33% 35% 30% 27% 30% 34% 46% :全面自由化 :段階的全面自由化 :部分自由化 %の数字は市場開放率 (2000.11)

米国における電力自由化の背景 33 米国全体 カリフォルニア州 背景 ねらい ○全米平均よりかなり高い 電気料金(1998年)  ○全米平均よりかなり高い  電気料金(1998年)   →加州:9.9¢/kWh、    全米:6.74¢/kWh   (1.5倍) ○州間の料金格差の存在   →最高/最低州:2.9倍    (日本の場合1.2倍) ○石油・天然ガス等多様で  豊富なエネルギー資源を  産出  ・自給率79.7%(1995年) 背景 ○州の壁を撤廃して、州外の安い電  気を導入 ねらい

米国における電力自由化の経緯 34 連 邦 大 州レベル 1978 1992 1996 1999 公益事業規則政策法(PURPA) 連 邦 大 州レベル 1978 1992 1996 1999 公益事業規則政策法(PURPA) QF※からの購入義務づけ ※QF:認定施設(qualifying facility)と呼ばれる、再生可能エネル ギーを使用する小規模電源やコージェネレーターのこと。 エネルギー政策法(EPA) IPPの卸売市場への参入自由化 送電線へのオープンアクセス義務づけ FERC ※ Order888,889   ※FERC:連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission) ⇒「卸売市場の自由化」 オープンアクセスのルール整備、送電部門の機能分離義務づけ 回収不能費用の回収許可 FERC Order2000 ⇒「卸売市場の競争環境整備」 送電線を所有・運用する事業者に対し、地域的な拡がりを有する系統運用機関RTOの自主的設立と参加の要請 1996 1998 カリフォルニア州、ペンシルバニア州等で電力再編法成立 カリフォルニア州、マサチューセッツ州小売全面自由化 電気料金の高い州を中心として、 電気事業再編(小売自由化)の検討開始 2001/1現在、24州で電力再編法が成立し、内17州で自由化開始。 自由化に慎重で、検討を中断する州もある。

米国の電力自由化の現状 35 WA VT ME MT ND NH OR MN NY WI MA ID SD MI RI WY CT PA NJ IA NE DE NV OH IN IL WV UT MD CA CO VA KS KY DC MO NC TN AZ OK SC NM AR GA MS AL TX LA (注) 州名の斜体は、電気料金が全米平均を上回ることを示す。 FL AK :小売自由化開始(17州) HI :電力再編決定(7州+DC) :州議会、規制当局で検討中(18州) 出典:EIAホームページ等 :活動なし(8州)

4.カリフォルニア州の電力危機

カリフォルニア州電力市場の概要 36 PG&E :Pacific Gas & Electric SCE :Southern California Edison SDG&E:San Diego Gas & Electric

加州電力供給システムの枠組み 37 ISO PX(電力取引所) 需 要 家 【州内シェア15%】 【州内シェア85%】 既存3社に火力発電設備50%売却要請。 3社は全ての火力設備を州外事業者に売却。 PG&E社 水力・原子力 州外 電源 SCE社 原子力 SDG&E社 原子力 IPP火力 公営、QF等 マストラン電源としてゼロ入札 ISO (独立系統 運用者) 競争移行期間中の措置 (2002.3orストランデッドコスト回収まで) PX(電力取引所) 既存3社には全量PXでの電力取引を義務づけ PX取引占有率:85%程度 ESP 新規参入 小売事業者 PG&E社 配電部門 SCE社 配電部門 SDG&E社 配電部門 ESP 新規参入 小売事業者 既存3社は小売価格を自由化以前の水準で凍結 ストランデッドコスト※を回収 3社販売シェア:80%程度 需 要 家 ※ストランデッドコスト:電力自由化により、新規参入差に顧客を奪われることで回収が見込めなくなった先行投資費用。回収不能費用とも言う。 ISO:independent system operator、 PX:power exchange

加州の発電事業者シェア(2000年) 38 売却された既存3社の火力発電設備は、州外の事業者が購入 QF他1,175万kW 非公益事業者 (22%) 非公益事業者 2,123万kW (40%) 売却された既存3社の火力発電設備は、州外の事業者が購入 発電設備 5,321万kW (2000年) AES 407万kW(19%) その他 402万kW(19%) 公営 1,198万kW (23%) Calpine 87万kW(4%) 非公益事業者 内 訳 Southern 307万kW(14%) 公益事業者 825万kW (15%) Duke 295万kW(14%) Reliant 353万kW(17%) Destec 117万kW(6%) PG&E : Pacific Gas & Electric SCE : Southern California Edison SDG&E : San Diego Gas & Electric Dynegy/NRG/Destec 155万kW(7%) 出典:CPUC 2000.8.2報告書

~ 需給逼迫の進行~初のStage3発動~ 39 最大電力 【今冬の需給逼迫の推定要因】 PX日最高価格 4月 5月 6月 7月 8月 9月 [セント/kWh] [万kW] 12/7:初のステージ3発動 150 ~ 最大電力 1/17,18 輪番停電実施 75セント/kWh 【今冬の需給逼迫の推定要因】 P/S定期点検が集中 天然ガス高騰による発電用ガス不足 NOX排出権消化による運転停止 電力会社の経営不安? PX日最高価格 50セント/kWh 上限価格:25セント/kWh (本年1/18時点) 凡例 Stage 予備率 2000 2001 対  策 ● 1 7%以下 55回 6回 節電の要請 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2001/ 1月 ■ 2 5%以下 36回 4回 需給調整契約発動 12/8 :ISOは供給力確保優先のため上限価格撤廃 ◆ 3 1.5%以下 1回 5回 輪番停電 出典:CAL-PXホームページ

輪番停電の影響 40 対象地域 停電時間 遮断負荷 州北部のサンフランシスコ市内・シリコンバレー周辺 州中部から州北部のPG&Eの供給 2001年に入り、カリフォルニアISOは、6度の輪番停電を実施している。(5/9まで) 対象地域 停電時間 遮断負荷 州北部のサンフランシスコ市内・シリコンバレー周辺 州中部から州北部のPG&Eの供給 エリア全域 ほぼ州全域 1月17日(水) 11:40~14:00 約50万kW 1月18日(木) 9:50~12:00 約100万kW 3月19日(月) 12:00~16:00 18:00~19:15 3月20日(火) 9:20~14:00 約50万kW 5月7日(月) 16:45~18:00 約30万kW ほぼ州全域 対象地域 停電時間 遮断負荷 5月8日(火) 15:45~17:15 約40万kW 出典:Wall Street Journal等

2大電力会社の経営危機 41 PG&E、SCEの2社は、小売価格を凍結させられているため、需給逼迫により高騰した卸電力価格を小売料金に転嫁できず、2000年6月以降大幅な逆ざやが発生。 1月16日: SCEは同日期限の債務約6億ドルの支払を一時停止 ・両社を投資不適格に格下げ 翌17日、PG&Eも約8千万ドルの社債償還金の支払を停止 株価[$] 9月下旬: 夏場の損失を受け、格付け機関が格下げ 3月28日:CPUC料金再値上げ認可 更に、一律3セント/kWh上乗せ。 値上げ幅は約40% 1月4日 CPUCは2社の小売料金の7~15%値上げを認可 PG&E 2月1日 ・カリフォルニア州電力 調達法案可決。 ・州が最大100億ドルの 州債を発効し、長期契 約で電力を調達。 SCE 12月中旬: ・逆ざやが解消せず、損失が拡大 ・格付け再引下げ 1月4日:CPUC料金値上げ認可 暫定措置として、一律1セント/kWh上乗せ。 ただし2社の申請幅の約半分。(30%⇒15%) 値上げ幅が不十分と判断した格付け機関が、再々格下げ 2月16日 ・州が各社の送電設備 を買い取り直営とする 大手3社に対する救済 案発表。 4月6日 ・PG$E連邦地裁に破産申請。 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 出典:Dow Jonesホームページ他

加州電力危機の主な原因 42 需給バランス上の問題点 電力取引市場の不備 需要の高い伸び 天然ガス価格の高騰 渇水による水力発電の減少 加州以外からの電力調達の減少 厳しい環境規制による稼働可能電源の不足 発電能力の確保義務の欠如 環境規制や将来の不確実性が新規投資の抑制要因となる 電力会社のリスクヘッジが困難 長期契約の禁止 小売価格の固定化 発電設備の売却要請 先物市場の未整備 価格高騰を狙ったゲーミングの問題

需給逼迫の原因~加州の需給バランス~ 43 1991年来の経済的活況 IT関連需要の増 [万kW] 1991年来の経済的活況 IT関連需要の増 猛暑・渇水に加え、計画外停止340万kW 経年30年以上の老朽設備が多い上、保守点検が不十分なことも要因か。 (FERCスタッフレポート) 最大輸入容量 需要の伸び:4%/年以上 最大電力 州内発電可能量 供給力の伸び:1%/年以下 州当局の厳しい環境規制や、90年代の規制緩和の先行き不透明感により、電力会社は殆ど新設せず。 290万kWが建設中。1,060万kWが計画中だが、実現性は不透明。 連邦:FERC Order888 ▲ 加州:電力自由化法成立 ▲ 小売自由化開始 出典:CPUC 2000.8.2報告書     FERC 2000.11.1報告書 CEC “California Demand2000-2001”

44 まとめ 1.日本の電気事業の特色 2.電力部分自由化の仕組み 3.欧米における自由化動向 4.カリフォルニア州電力危機からの教訓

参考資料

3Eトリレンマの構造 1 エネルギー (Energy) エネルギーの枯渇 地球温暖化 成長の限界 酸性雨 環 境 (Environment) 環 境 (Environment) 経済発展 (Economy) 自然破壊 オゾン層破壊

化石燃料のポテンシャル 2 石 油 天然ガス 石 炭 ウラン 231年 リサイクルにより利用年数を伸ばすことが可能 62年 43年 72年 144兆m3 1兆316億トン (高品位炭) 436万トン 1兆195億バレル 石 油   天然ガス 石 炭  ウラン 1998年1月現在  1998年1月現在  1993年末    1997年1月 (出典:原子力2000)

各種電源の1kWhあたりCO2排出量 3 (kg-CO2/kWh) (注)発電のみならず、原料採掘、   輸送、建設等全ての行程を    対象にCO2排出量を算定。 (出典:電力中央研究所報告)

新エネルギーの評価と見通し 4 太陽光発電 風力発電 項目 燃料電池(リン酸型) 評価 メリット クリーン 枯渇の恐れがない クリーン 分散設置が可能 廃熱を利用できる デメリット エネルギー密度が低い。 自然条件に左右されるなど不安定。 エネルギー密度が低い。 自然条件に左右されるなど不安定。 電池の長寿命化が必要。 実用分野 経済性が改善されれば小規模電源として有望。 経済性が改善されれば離島等の電源として有望。 信頼性、経済性が改善されれば、熱需要の見込めるところに適用可能。 導入の実績と 目標 ①実績:9.1万kW ②目標:2010年 500万kW ①実績:2.1万kW ②目標:2010年 30万kW ①実績:1.2万kW ②目標:2010年 220万kW (注)実績は1997年度暫定値である (出典:通産資料(1999年7月)他)

一般消費者向けのグリーン電力制度の枠組み 5 グリーンファンド 一般消費者向けのグリーン電力制度の枠組み 売 電 購入料金 (当該地域分) 風力・太陽光 (電力会社も拠出) 電力会社 (各地域ごとに設置) グリーン電力制度 運用主体 参 加 者 拠 出 助 成 (全国運用分) 風 力 グリーンラベル

6 原子力発電の光と陰

原子力発電の経済性 7 13.6 10.2 6.5 6.4 5.9 1kWhあたりの発電コスト (ただし、原子力 については核燃 料サイクルコスト) ※総合エネルギー調査会原子力部会の試算(H11.12)

美浜原子力発電所(166.6万kW)を 太陽光発電で賄おうとすると 8 美浜原子力発電所(166.6万kW)を 太陽光発電で賄おうとすると 美浜発電所の発電電力量 約132億kWh(平成10年度) 滋賀県全体の年間 需要量にほぼ匹敵 これをすべて太陽光発電で賄おうとした場合 必要となる土地=約250k㎡ 大阪市と吹田市全体に太陽光パネルを敷き詰めることが必要になる。

日本中の原子力発電所を石油火力に 置き換えると ~経済への影響(エネルギーセキュリティ)~ 9 日本中の原子力発電所を石油火力に 置き換えると ~経済への影響(エネルギーセキュリティ)~ 日本の電力会社が持つ 原子力発電所 設備容量:4500万kW 追加の石油消費量 約6300万 t/年 すべて石油 火力に代替 日本の石油消費量の 約23% 世界の石油消費量の 約1.9% ○今回の原油価格急騰時のように、原油が10$/bl→30$/blに      値上がりした場合(1$=110円とすると):         →約9400億円もの損失を追加的に蒙る。 (資源エネルギー庁「エネルギー2000」「総合エネルギー統計」「電気事業便覧」のデータより試算)

日本中の原子力発電所を石油火力に 置き換えると ~環境への影響~ 10 日本中の原子力発電所を石油火力に 置き換えると ~環境への影響~ 日本の電力会社の 原子力発電電力量 発電電力量:3200億kWh 追加のCO2排出量 約2.3億 t/年 すべて石油 火力に代替 日本の総排出量の 約19% 世界の総排出量の 約1.0% ○CO2排出量は大幅に増える。特にCOP3において削減の   基準となる1990年の排出量比では、約22%の増となる。   (原子力発電所なしで6%削減目標達成は非常に困難。) (電気事業連合会「環境とエネルギー」「電気事業の地球温暖化対策」「電気事業便覧」のデータより試算)

今後の原子力の役割について 我が国の脆弱なエネルギー供給構造 温暖化、酸性雨等地球環境問題の深刻化 11 今後の原子力の役割について 我が国の脆弱なエネルギー供給構造 温暖化、酸性雨等地球環境問題の深刻化 と言った観点から鑑みると、環境に優しく、準国産エネ ルギーといえる原子力発電が、安全安心運転を第一と した上で、エネルギーの中核として位置づけられていく 必要がある。

次世代の電力システムのイメージ 12 (現状のシステム) (融合型2重構造電力システム) 集中型大型電源 地域分散型の小規模電源

13 電力自由化の進展 分散型電源の技術進歩 既存の集中型電源、分散型電源の良さを 組み合わせる総合エネルギー産業への転換 ● 集中型、分散型を組み合わせてのベスト・   ミックスの追求

自由化に関する通信と電力の違い 14 電力 電気通信 託送されるもの 電力: 送電網の中では完全に無差別となる。 情報: 他の情報との混合なし。 商品 電力 ネットワークそのもの ネットワーク外部性 小さい 大きい 相互接続コスト 相互接続に関するコストのみを抽出する事は困難。 接続に係る(traffic sensitive)コストのみを抽出可能。 事故・需給逼迫時 事故や需給逼迫は、システム全体に影響。 事故・一部不通は、迂回などにより対応可能。 技術革新 ほとんど起こっていない。 急速に進展している。

ドイツにおける原子力の段階的廃止について 15 背 景 <電力側の状況> 1998年5月、輸送容器表面汚染問題から使用済燃料の輸送が全面的に禁止。→使用済み燃料貯蔵プールがいっぱいで運転停止に追い込まれそうな状況。 <政府側の状況> 議席をのばした社会民主党が脱原発を掲げる緑の党と連立政権樹立(98年10月)。原子炉廃止の実績が必要。 「連邦政府は、残存運転期間における原子力発電所の妨害なき運転及びバックエンドを保証する」との約束を取り付けて妥協(2000年6月合意、2001年6月調印) 合意概要 新規原子力発電所建設の禁止 既存発電所の運転期間に一定の制限を設ける。2000年1月1日からの原子力発電電力量を2623.3TWhに制限。(平均運転期間は32年) 使用済燃料の国内及び国外への輸送再開 2005年7月以降の再処理の禁止(既存契約分は再処理は全うする) 原子力エネルギー利用を経済面、税制面で差別しない。 ※原子力発電を廃止した後の代替エネルギー確保については、先送りされている 最大野党CDU(前政権)は、政権交代時には原発廃止政策を破棄するとコメント