光球面磁極の磁気活動現象の頻度と 太陽面磁束量分布 横山研 博士課程2年 飯田佑輔 0. 太陽研究の紹介 1. イントロダクション

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光球面磁極の磁気活動現象の頻度と 太陽面磁束量分布 横山研 博士課程2年 飯田佑輔 0. 太陽研究の紹介 1. イントロダクション 2010.06.23 STPセミナー@ISAS/JAXA 光球面磁極の磁気活動現象の頻度と 太陽面磁束量分布 0. 太陽研究の紹介 1. イントロダクション 2. 観測データ・解析手法 3. 結果・議論 4. まとめ 5. 課題 横山研 博士課程2年 飯田佑輔

0. 太陽研究の紹介

0. 太陽研究紹介 コロナ (β<<1) コロナ加熱 彩層 (β中間層) (D1北川) 光球 (太陽表面、β>>1) TRACE コロナ (β<<1) 彩層 (β中間層) コロナ加熱 (D1北川) 光球 (太陽表面、β>>1) 磁束管沈降? (D2飯田) 表面現象 - フレア 、プロミネンス、ジェット(M1松井)、スピキュール、極紫外線・X線輝点など 黒点、活動領域 - 出現・崩壊過程  太陽ダイナモ (M2 堀田) 磁束管浮上 (M2 鳥海: Toriumi & Yokoyama 2010, ApJ) タコクライン

太陽物理学最古にして最難関、最重要の11年の活動周期の解明に挑む 太陽ダイナモ 修士2年 堀田英之 太陽物理学最古にして最難関、最重要の11年の活動周期の解明に挑む 緯度 黒点数 年 (Hathaway/web) NASA/Goddard Space Flight Center Scientific Visualization Studio提供 太陽の黒点数は11年周期で変動していて 400年のデータがある! これを数値シミュレーションにより解明しよう と試みている。 太陽内部で差動回転、コリオリ力により磁場 をつくられ11年周期が作られている。 (Hotta & Yokoyama 2010, ApJ)

EIS(極端紫外線撮像分光装置)による太陽ジェットの観測 修士1年 松井悠起 TRACE 171Å ジェット EISのスリット 分光観測 FeXII 195.12Å  ブルーシフト成分 プラズマの速度に直すと150km/s スリットを動かしながら分光観測することで撮像と分光観測が同時に行える。 インテンシティ ドップラー速度

・ 速度場の時間発展・水平磁場を捉えることができた。 ・ キャンセレーションの大部分はΩ字型沈降で解釈される。 0. 太陽研究紹介:私の研究 (Iida et al. 2010, ApJ) ・ 速度場の時間発展・水平磁場を捉えることができた。 ・ キャンセレーションの大部分はΩ字型沈降で解釈される。

1. イントロダクション

1. イントロダクション:磁束量の定量化 では、各過程の磁束量を定量化できているのか? - できていない。 黒点の磁束減少量 - 見えているキャンセレーション@MDIでは20%ほどしか説明できない。 - Kubo et al. (2009)によると小さい磁場@Hinodeまで考えると合う。 2. キャンセレーションによる磁束消滅量評価 - 分解能により大きく変わっている。  120hr@Martin et al.(1985); 40-70hrs @Schrijver et al.(1998); several hrs @Hagenaar et al.(2001) 磁束管沈降? 表面磁束輸送 3. 静穏領域の磁束バランスについて - 各過程について定量化できていないためわ かっていない。 - 磁極構造を十分に再現する磁気対流数値シ ミュレーションは未だ不可能。 磁束管浮上

1. イントロダクション:静穏領域の磁場の様子 たくさんの磁極活動が見える。整理してみよう。

1. イントロダクション:磁極活動素過程 分裂過程 合体過程 発生過程(磁束管浮上) 消滅過程(キャンセレーション)

1. イントロダクション:磁束量分布の先行研究 Wang (1995) : - INとN磁場分布(ともにべき) Schrijver (1997) : - Magneto-Chemistry Equation - 磁極のexp分布と解析解 Hagenaar (2001) : - 浮上磁場の自動判別(exp分布) - 磁極のダブルexp分布 Parnell (2002) : - 自動判別による磁極分布 (Weibull分布) - それに対する解析解 Parnell (2009) : - 自動判別による磁極分布 (べき分布)

いくつかの解析解が考えられているが、実際の関数型は未知。 1. イントロダクション:磁気化学方程式 磁気化学方程式 – Schrijver (1997, ApJ) 磁気要素の数方程式 磁気要素の変化が生成、合体、分裂、消滅のみ、衝突確率が数密度に比例の仮定 未知関数は、N・S・l・k・mの5つ x-F いくつかの解析解が考えられているが、実際の関数型は未知。 磁極の磁束管浮上、分裂、合体、キャンセレーション現象について分布関数を求める必要がある。 磁気化学方程式について

Lockheed Martin Solar and Astrophysics Laboratory (LMSAL) 1. イントロダクション: Lockheed Martin Solar and Astrophysics Laboratory (LMSAL) GCOE「地球から地球たちへ」海外派遣プログラムを利用して磁極の自動判別コードを作成してきた。それを利用した静穏領域の各素過程の頻度分布を求めた結果について報告する。 場所:カリフォルニア州、パロアルト (西海岸、サンフランシスコから電車で1時間) 期間:2010年 3/1 – 4/10 受け入れ: Hagenaar博士 研究課題:磁場活動の自動判別コードの開発 他の研究者:  Shineさん、Titleさん、 Tarbellさん、Schrijverさん、Steinさん、新田さん、Mark DeRosaさん、Wei Liuさん、Mark Cheungさん 他

2. 観測データ・解析手法

2.観測データ 観測視野 112”x112” 時間間隔 ~1分 ピクセル サイズ 0.16” ( ~ 117km) 観測時間 2009/11/11 0:30-4:09

2. 観測データ・解析手法: 自動判別の手順 1 1. 前処理 ・ ダーク、フラット、CCD処理、自転の補正する。  ・ V/I、キャリブレーションの結果から磁場に直す。  ・ 衛星の微動修正、時間(5minutes)と空間(3pix)について平均する。 2. 磁極の判別  ・ 磁場強度と大きさの閾値 (2s~10G、81pix)から定める。 3. トラッキング  ・ 磁極の重なりから磁極を追跡。   - 大きいものから追跡。   - 複数個ある場合は磁束量で判断。 4. 分裂と合体  ・ 磁極の重なりと磁極の出現で分裂 を判断。  ・ 時間逆回しで合体を判断。

2. 観測データ・解析手法: 自動判別の手順 2 C E C C 5. 磁束量変化イベント - 各磁極の合体と分裂の際の磁束変化を取り除いた磁束量変化を調べる。 - 3stepで時間平均し、6x1018Mx/hr (Chae et al., 2002, Park et al., 2009)以上の変化が5分以上続くものを磁束量変化イベントとする。 6. 発生・消滅 - 3pixel(~350km; Otsuji et al., 2009)以内の磁束減少イベントペアを消滅現象とする。 - 5pixel(~590km; Chae et al., 2003)以内の磁束増加イベントぺアを発生現象とする。 C E C C

3. 結果・議論

3. 結果: 基本結果 正極 負極 磁極 1636 1637 分裂 493 482 合体 536 535 消滅 86 発生 3 消滅、発生は分裂・合体に対し非常に少ない? 磁極、分裂、合体、(消滅)について磁束に対する分布関数を調べる。

3. 結果:磁束の分布関数 10-34 頻度 (/cm /Mx) 2 10-37 10-40 1017 1018 1019 1020 磁束量 (Mx) 指数 : 1.78 → 1.86 (Parnell et al., 2009)

3. 結果:分裂の分布関数(1磁極あたり) 10-2 10-3 頻度 (/sec) 10-4 10-5 1017 1018 1019 1020 磁束量 (Mx) 1019Mxあたりはほぼ一定のタイムスケールを持っている。 小さい磁束側の落ち込みは何なのか?

3. 議論:分裂の分布関数(1磁極あたり) 分裂確率は磁束に依存していないのか?見えていない分裂について評価する。 見えていない分裂分を除くと、 今回のスレショルドでは、1017.5 Mxが下限であると判断した。

3. 結果:分裂の分布関数(1磁極あたり) 10-2 10-3 頻度 (/sec) 10-4 10-5 1017 1018 1019 1020 磁束量 (Mx) Phi > 1017.5 Mx、K~ 5.20 x 10-4 sec-1 ~ 32 min

3. 議論:分裂の定常解 両辺をtで微分すると -2のべき関数が定常解である。(小さい方にべきを伸ばしていくことに注意)

3. 結果:合体の分布関数(1磁極あたり) 10-1 10-2 頻度 (/sec) 10-3 10-4 10-5 1017 1018 1019 1020 磁束量 (Mx) Phi > 1017.5 Mx、指数:0.26、t ~ 31 min@1019 Mx

3. 結果:キャンセレーションの発生頻度 10 8 発生個数 6 4 2 2 4 6 8 10 磁束量 ( x1017 Mx) 2 4 6 8 10 磁束量 ( x1017 Mx) イベント数は少ない(86例)が、非常に小さいキャンセレーションの数が多い。

3. 議論:キャンセレーションによる磁束消失時間 磁極運動のランダム性、超粒状班を仮定することで磁束の分布関数からキャンセレーションを評価できる。

3. 議論:べき分布の場合のキャンセレーション頻度 (1.5<γ<2) τはΦminに正の比例関係をもつ。

3. 議論:べき分布の場合のキャンセレーション頻度 (γ>2) τはΦminに正の比例関係をもつ。

3. 議論:磁束輸送に対するイメージ

5. まとめ 磁極の発生・分裂・合体・消滅現象の自動判別コードを開発し、ひのでSOT/FG データで各過程を定量化した。磁束分布変化については、分裂・合体現象が支 配的であり、それぞれ以下の傾向が見られた。 ・分裂現象: - 分裂時間スケール(~32分)は磁束量によらない。 - どの大きさにも等確率で分裂する。 - 解析的に-2のべきをつくる作用をもつ。 ・合体現象: - 磁束に対して-0.26 ~ -0.35程度の弱い依存性を持つ。 ・消滅現象: - 1017.5Mx – 1019Mxではイベント数は非常に少ない。 - べき分布の傾向とあっている。(今回は紹介しなかったが絶対値も) ・発生現象: - イベント数が非常に少ない。

6. 課題 これからの課題としては キャンセレーションなどについても統計的に十分な量を解析する。 4過程含めた定常解を求める。 分裂のランダム性、合体の磁束依存性の理由を探る。 (対流が支配的だから? & サイズ依存性?) 妄想としては BPのべき乗則も解決できる? 不明な磁束変化イベントも見えないもどれかのイベント?