防潮堤の粘り強い構造に係る検討 (前回報告)

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防潮堤の粘り強い構造に係る 検討 平成26年2月5日 資料-5 平成26年2月5日(水)15:00~ 第7回南海トラフ巨大地震土木構造物耐震対策検討部会 防潮堤の粘り強い構造に係る 検討 平成26年2月5日

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 (前回報告) 防潮堤の粘り強い構造に係る検討                  (前回報告) <海岸防潮堤> ■構造タイプの分類  大阪府が管理する海岸防潮堤(泉州海岸)に対して、構造タイプを5タイプに分類。 A.波返し(背後フラットタイプ) B.波返し(背後裏法タイプ) タイプ 対象延長 A 25.9km B   8.7km C 25.3km D 11.4km E   1.7km 合計 73.0km C.護岸タイプ E.矢板式タイプ D.胸壁タイプ 1

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 (前回報告) 防潮堤の粘り強い構造に係る検討                  (前回報告) <海岸防潮堤> ■基本的な考え方   設計対象の津波高を超え、海岸防潮堤の天端を越流した場合であっても、    ・ 破壊、倒壊するまでの時間を少しでも長くする。    ・ 全壊に至る可能性を少しでも減らす。       減災効果を目指した構造上の工夫を施す   【粘り強い構造 検討フロ-】 【対策箇所仕分けの着目点】   ①津波波圧に対する観点   ②越流水深に対する観点 2

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 (前回報告+追記) 防潮堤の粘り強い構造に係る検討              (前回報告+追記) <海岸防潮堤> ■粘り強い構造 検討フロ-に基づく分類   【越流に対して粘り強い対策の必要箇所】    ②越流水深1.0m以上+③越流水深+比高 ⇒0 km    ②越流水深1.0m以上+④天端幅5m未満  ⇒0 km    ②越流水深1.0m以上+⑤消波根固工無し ⇒1.55 km      ※河川防潮堤で越流水深1.0m以上⇒0 km   【結果】上記条件でOUTとなる延長は1.55km      ⇒粘り強い構造化の検討対象とする 延長:1.55km 凡 例  : 南トラ液状化対策箇所 : 越流水深1.0m以上の地域 : 消波根固工無しの地域 3

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 (前回報告+追記) 防潮堤の粘り強い構造に係る検討              (前回報告+追記) <海岸防潮堤>  ■粘り強い構造 検討フロ-に基づく分類  【津波波圧に対して粘り強い対策の必要箇所】    ①津波波圧     ・波返し部材のせん断耐力     ・堤体の滑動・転倒  【結果】 ※河川では津波遡上方向に対し垂直方向でかつ面的に力を受ける 防潮堤は水門上流側にしか存在しない  ⇒水門閉鎖により直接波力を受ける可能性が低い  ⇒優先順位は低い(耐震補強時にチェックを実施) 今回報告 上記条件の内、「せん断耐力」でOUTとなる延長は22.98km ⇒粘り強い構造化の検討対象とする 延長:22.98km 凡 例  : 南トラ液状化対策箇所 : 津波波圧でOUT(せん断耐力)の地域 4

⇒「安全率1.0」を安定性照査の評価指標とする。 防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■堤体の安定性照査(滑動・転倒)   (1)評価指標     「港湾における防潮堤(胸壁)の耐津波設計ガイドライン(H.25.11)」より   (2)評価方法   (3)検討施設の抽出と検討結果     ①消波工なし(波力が直接作用する)     ②海岸線から100m以内に位置する施設     ③波返し高が1m以上の施設 胸壁の「粘り強い構造」の効果については、変形モードを適切に評価した上で、胸壁の変形に対する安定性について確認する必要がある。しかし、現時点では、胸壁の変形モードに対する安定性を適切かつ定量的に評価することは困難であることから、簡便的・間接的な手法として、堤体の滑動・転倒や基礎の支持力の照査において、「粘り強い構造」が受け持つ抵抗力を加味した状態における安全率が1.0を上回るレベルが「粘り強さ」の一つの目安となると考えられる。 ⇒「安全率1.0」を安定性照査の評価指標とする。 津波の直接的な影響や被災事例等を考慮し、影響が大きくなる施設を抽出して安定性照査を実施する。 該当11施設の内 7施設で安定性OUT 1m以上 ③ 100m以内 ② 消波工なし ① 5

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 ⇒粘り強い構造化の検討対象とする <海岸防潮堤> 【結果】 【津波波圧に対して粘り強い対策の必要箇所】    ①津波波圧     ・波返し部材のせん断耐力【一部更新】     ・堤体の滑動・転倒【今回更新】 【結果】 ・「せん断耐力OUT」=22.98km ⇒ 16.04km   (見直し)波力が直接作用しない箇所(消波ブロック有)を除外 ・「滑動・転倒OUT」 = 5.74km  重複箇所を除いた合計延長:17.26km ⇒粘り強い構造化の検討対象とする 波返し部材OUT延長:16.04km 堤体の滑動・転倒OUT延長:5.74km 合計延長:17.26km(重複延長は除く) 凡 例  : 南トラ液状化対策箇所 : 波返し部材がOUTの地域 :堤体の滑動・転倒がOUTの地域 6

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■浸透流に対する研究事例による支持力低下(概念図) 押波時より引波時が津波水位差が 水 圧(残留水位) 水 圧 津波水位差 津波水位差 浸透流 浸透流 透水性「大」 透水性「小」 透水性「大」 透水性「小」 ※津波の周期は長く、一方向の  浸透流が継続する時間も長い ( 海 ) ( 陸 ) ( 海 ) ( 陸 ) 押波時より引波時が津波水位差が 大きく、浸透流の影響「大」 沈下 水 圧 浸透流による 基礎地盤の拘束圧低下 ⇒基礎の支持力低下に  伴う堤体沈下 支持力破壊 ⇒浸透流の影響を基礎地盤の  安定性評価に反映させる 7

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■浸透流に対する研究事例(出典:「防波堤の耐津波設計ガイドラインH25.9(参考資料Ⅲ) 」)    ●浸透流による支持力低下について    ●浸透流を考慮した支持力の安定性照査について 防波堤前後の水圧差と支持力の関係 水圧差98kN/m2で 26%の支持力低下 “防波堤の基礎マウンドに浸透力が作用した場合、基礎マウンドの支持力は低下し、防波堤前後の水位差が10m程度であるとその低下は2割となる。この影響は、設計において浸透力を考慮する必要があると考えられる” 基礎部がマウンド形式に限定されるが、津波により発生する水位差に伴う浸透力の影響があるため、検討において考慮する。 “基礎マウンド内の浸透流による支持力低下を評価する方法は、現時点では確立されておらず、この影響を考慮した支持力照査を行う場合は、当面の間、浸透流と弾塑性変形を考慮したFEM解析により対応することになる” “円弧すべり計算において有効単位体積重量γ’を低減し、浸透力によるマウンド内の拘束圧低下を仮想的に見積もる計算方法による照査が可能になることが期待される” 『浸透流と弾塑性変形を考慮したFEM解析』と『拘束圧低下を仮想的に見込んだ円弧すべり計算』により、照査を実施。 8

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■研究事例((独法)港湾空港技術研究所)  ■研究事例((独法)港湾空港技術研究所)  仮想の防波堤を対象とし、遠心模型実験と実験結果に基づいた数値解析による再現性を評価し、浸透流がもたらす基礎マウンド支持力の低下の数値解析による評価手法について検討しており、浸透流による支持力低下が示されている。 実験モデル 解析モデル 実験結果 解析結果 9

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ・実施設計段階で、浸透流解析等により影響を把握。 ■浸透流に対する検討方法   (1)マウンド形式    (2)それ以外の形式 マウンド形式 それ以外の形式 代表断面以外でも 材質にバラツキ「小」 現場により地盤条件が異なる ⇒代表断面のみでは評価困難 ・基礎地盤は捨石などの材質であり、代表断面以外でも材質はほぼ均一。 ・防波堤における実験や論文などで浸透流に伴う支持力低下に関する事例がある。 検討方法 ⇒代表断面を選定し、静的・動的解析により安定性を照査する ・静的解析:基礎地盤の単位体積重量を2割低減させ、円弧すべり解析にて安定性を照査する。 ・動的解析:浸透流による支持力低下を考慮した解析を実施し、安定性を照査する。 ・実験や論文などで浸透流に伴う支持力低下に関する事例がない。 ・基礎地盤(土質条件)が設置位置により異なるため、代表断面での結果をその他断面へ適用は困難。 検討方法 ⇒各個別断面において、浸透流の 影響度に応じて動的解析により安定性を照査する ・実施設計段階で、浸透流解析等により影響を把握。   ※河川防潮堤も同様に対策実施の際に浸透流の影響を検討 10

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■検討結果(動的解析・FLIPカクテルグラスモデル) 解析条件 モデル図 水位差 防潮堤天端 引波時の最大想定水位 水位差に相当する水圧分布荷重 水位差 引波時の最低水位 埋土 基礎捨石 基礎地盤 ( 海側 ) ( 陸側 ) 解析結果 水圧分布図 防潮堤天端 水位差に相当する水圧分布荷重 浸透流による基礎地盤の拘束圧低下 ⇒基礎の支持力低下に伴う堤体の変形 浸透流 水圧上昇 (拘束圧低下) ( 海側 ) ( 陸側 ) 11

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ■粘り強い構造対策 下図に地震・津波に伴う「発生する現象」「減災目標」「粘り強い構造対策」の関係を示す。 浸透流に対する粘り強い構造については、動的解析等で浸透流の影響を把握した上で、影響度に応じた対策を実施する。 越流による洗掘等 津波波圧による 波返し部材の損傷 浸透流による 支持力低下等 浸水範囲の 低減を目指した 部材損傷度の軽減 粘り強い構造対策 減災効果の目標 発生する現象 倒壊に至らせない 堤体の変形抑制  ・部材耐力の向上 腹付コンクリート  ・堤体転倒リスク低減  ・堤体の変形抑制 鋼矢板・杭打設 堤体の滑動・転倒 影響度に応じた対策  ・浸透流の抑制  ・拘束圧の低下抑制 水叩き一体化  ・洗掘の防止  ・吸出の抑制 12

防潮堤の粘り強い構造に係る検討 <海岸防潮堤> ⇒以下の優先順位で対策を実施する。 ■対策箇所と優先順位(総括) ② ③ ① ④1.21km  ・防潮堤の液状化対策は、浸透流に対しても有効な対策工となる。  ・防潮堤の液状化対策と併せて対策を実施する事で、工期・工費等を縮減できる。 ⇒以下の優先順位で対策を実施する。 ①液状化対策重点箇所(緑実線・緑点線) ②浸水深1.0m以上の箇所(2箇所) ③波返し部材がせん断耐力不足の箇所 ④背後地盤が高く、浸水の影響が少ない箇所 (高) ↑ 優 先 度 ↓ (低) ⇒液状化対策と併せて実施(最優先) ⇒ 対策不要(1.21km) 波力OUT(曲げ引張り)延長: 16.04km 波力OUT(滑動・転倒)延長:  5.74km 越流OUT(越流深1m超)延長:  1.55km 対策不要(浸水無し) 延長:▲1.21km 合計延長:16.05km(重複延長は除く) 凡 例  : 南トラ液状化対策箇所 :波力OUT(曲げ引張り)の地域 :波力OUT(滑動・転倒)の地域 :越流OUT(越流深1m超)の地域 ②  ③  ①  ④1.21km  13