「光と量子力学」 ー「粒子」と「波動」の融合ー

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

基礎セミ第7章 (1-4) 偏光のしくみと応用 12T5094E 龍吟. 目次 光の偏光とは? 複屈折とは? 偏光を作り出すもの (偏光プリズム、偏光板、位相板)
物理化学 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛. 物理化学: 1 章原子の内部 (メニュー) 1-1. 光の性質と原子のスペクトル 1-2. ボーアの水素原子モデル 1-3. 電子の二重性:波動力学 1-4. 水素原子の構造 1-5. 多電子原子の構造 1-6.
プレチャレンジ at 宇都宮高校 日本物理学会 NPO 物理オリンピック日本委 員会 Japan Physics Olympiad J PhO 2014 年 3 月 15 日 プランク定数を測る ( 2005 年第2チャレンジ実験コンテスト 課題)
1 関西大学 サマーキャンパス 2004 関西大学 物理学教室 齊 藤 正 関大への物理 求められる関大生像 高校物理と大学物理 その違いとつながり.
2009/5/16 SilverlightSquare Sao Haruka 量子暗号について 量子力学から量子暗号まで 2009/5/16 Sao Haruka.
宇宙の「気温」 1 億度から –270 度まで 平下 博之 ( 名古屋大学・理・物理 U 研 ).
今日の予定 ・ ラザフォードの実験 ・ 水素原子のスペクトル ・ ボーアの量子仮説 §1.3 前期量子論 ・ 物質波(ド・ブローイ波) §1.4 物質波 Text pp / 年度 第4週.
基礎ゼミ:電子と光と物質 多元物質科学研究所 上田潔・奥西みさき・高桑雄二・虻川匡司・佐藤俊一 大学とは何か? 大学で学ぶとはどういうことか? 大学:人類の遺産としての知識の伝 達 未知のものへの挑戦! 基礎ゼミの特徴:学生が積極的に授業に参加する。 自分で考え、自分で工夫して調べ、教室で発表する。
光・放射線化学 4章 4.4 FUT 原 道寛.
電子物性第1 第4回 ーシュレーディンガーの波動方程式ー 電子物性第1スライド4-1 目次 2 はじめに 3 Ψがあると電子がある。
原子核物理学 第3講 原子核の存在範囲と崩壊様式
生体分子解析学 2017/3/2 2017/3/2 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
       光の種類 理工学部物理科学科 07232034 平方 章弘.
電子物性第1 第3回 ー波動関数ー 電子物性第1スライド3-1 目次 2 はじめに 3 電子の波動とは? 4 電子の波動と複素電圧
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
実習B. ガンマ線を測定してみよう 原子核・ハドロン研究室 永江 知文 新山 雅之 足立 智.
電子物性第1 第5回 ー 原子の軌道 ー 電子物性第1スライド5-1 目次 2 はじめに 3 場所の関数φ 4 波動方程式の意味
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛 名列____ 氏名________
単色X線発生装置の製作 ~X線検出器の試験を目標にして~
学年 名列 名前 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛
電子物性第1 第6回 ー原子の結合と結晶ー 電子物性第1スライド6-1 目次 2 はじめに 3 原子の結合と分子 4 イオン結合
放射線(エックス線、γ線)とは? 高エネルギー加速器研究機構 平山 英夫.
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
光の干渉.
前回の内容 結晶工学特論 第5回目 Braggの式とLaue関数 実格子と逆格子 回折(結晶による波の散乱) Ewald球
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
物理学Ⅰ - 第 14 回 - 期末試験   8/4に実施予定.
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
アインシュタインの光電効果と ド・ブロイの物質波
ナノデザイン特論2 レーザーの基礎
前期量子論 1.電子の理解 電子の電荷、比電荷の測定 2.原子模型 長岡モデルとラザフォードの実験 3.ボーアの理論 量子化条件と対応原理
光子モンテカルロシミュレーション 波戸、平山 (KEK), A.F.Bielajew (UM)
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
g-2 実験 量子電磁力学の精密テスト と 標準理論のかなた
生体分子解析学 2019/1/ /1/16 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
古典論 マクロな世界 Newtonの運動方程式 量子論 ミクロな世界 極低温 Schrodinger方程式 ..
原子の姿 ボーアの水素模型とエネルギー順位
黒体輻射 1. 黒体輻射 2. StefanのT4法則、 Wienの変位測 3. Rayleigh-Jeansの式
前回の講義で水素原子からのスペクトルは飛び飛びの「線スペクトル」
原子で書いた文字「PEACE ’91 HCRL」.白い丸はMoS2結晶上の硫黄原子.走査型トンネル顕微鏡写真.
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
運動の規則性と不規則性 科学的認識の芽生えと発展 2012/8/4 京都教育大学 オープンキャンパス.
光子モンテカルロシミュレーション 光子の基礎的な相互作用 対生成 コンプトン散乱 光電効果 レイリー散乱 相対的重要性
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
光電効果と光量子仮説  泊口万里子.
分子軌道理論(Molecular Orbital theory, MO理論)
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
光スイッチングデバイス.
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
Mini-RT装置における 強磁場側からの異常波入射による 電子バーンシュタイン波の励起実験
量子コンピュータ 株式会社アプライド・マーケティング 大越 章司
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
機器分析学 赤外吸収スペクトル ラマンスペクトル.
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
Geant4による細分化電磁 カロリメータのシミュレーション
2・1・2水素のスペクトル線 ボーアの振動数条件の導入 ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列.
My thesis work     5/12 植木             卒論題目 楕円偏光照射による不斉合成の ためのHiSOR-BL4の光源性能評価.
生体分子解析学 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析.
5×5×5㎝3純ヨウ化セシウムシンチレーションカウンターの基礎特性に関する研究
CSS符号を用いた量子鍵配送の安全性についての解析
荷電粒子の物質中でのエネルギー損失と飛程
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
Presentation transcript:

「光と量子力学」 ー「粒子」と「波動」の融合ー 物質科学入門 「光と量子力学」 ー「粒子」と「波動」の融合ー

古典物理の限界 量子力学へのIntroduction 19世紀末~20世紀初頭 ミクロ領域で、古典的な「波動」、「粒子」の考え方では説明できない現象が発見された。 「光」:波動のはずが粒子の性質をもつ 「電子」:粒子のはずが波動の性質を持つ 「波動」「粒子」の両方の性質をもつもの           「量子(Quantum)」

「光」:波動から粒子へ 光電効果(Photoelectric Effect) コンプトン効果(Compton Effect) 金属に紫外線(光)を照射すると電子が放出される コンプトン効果(Compton Effect) 光が電子によって散乱される 黒体輻射(Black Body Radiation) 熱く熱された物体から、様々な波長の電磁波(光)が放出される

「電子」:粒子から波動へ 線スペクトル(Line Spectrum) 電子線回折(Electron Diffraction) 原子は単一波長の光(単色波)を放出・吸収 単色波の波長に規則性 電子は原子核に落ち込まない 電子線回折(Electron Diffraction) 電子線を結晶に入射すると回折が生じる

「光」:波動から粒子へその1 光電効果 アインシュタインの「光量子仮説」 金属に紫外線を照射すると電子が放出される              1887 H. R. Hertz, 1888 W. L. Hallwacks 「光」はエネルギーを「かたまり」として持っている      アインシュタインの「光量子仮説」                               1905 A. Einstein 電子数は光強度に比例 電子の運動エネルギーは光強度と無関係 電子の運動エネルギーは光の振動数が大きいほど高い 電子放出には光の振動数に限界が存在

「光」:波動から粒子へその2 コンプトン効果 X線が自由電子によって散乱される 光をエネルギーE=hν、運動量P=E/c=hν/c の粒子として弾性散乱を考えるとよい                      1923 A. H. Compton 電子がランダムに瞬間的に散乱される 散乱によるX線の波長変化:

「光」:波動から粒子へその3 黒体輻射とプランクの輻射則 プランクの輻射則 光のエネルギーはhν の整数倍とするとあう 2017/3/4 「光」:波動から粒子へその3 黒体輻射とプランクの輻射則 光のエネルギーはhν の整数倍とするとあう     プランクの輻射則                1918 M. Planck 物質を加熱すると連続スペクトルの発光が生じる スペクトル分布は物質の種類によらない 温度が高いほど強度増加、ピークが短波長側にシフト(恒星の表面温度と色)          黒体:黒は全ての色の光を              吸収放出する          ボルツマン分布:熱平衡状態              での光の分布

光の「粒子」「波動」2重性    粒子の性質       波動の性質

「電子」:粒子から波動へ (詳しくは量子力学入門で) 線スペクトル 原子は単一波長の光(単色波)を放出・吸収 系列:ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列… バルマーの実験式 ボーアの原子モデルと量子化条件 電子線回折 電子は回折する(デビソン、ガーマー、トムソン)                     「光」と同じ関係

「粒子性」と「波動性」の矛盾 「粒子性」と「波動性」は両立できない!     (古典的な意味であるかぎり) 単一粒子干渉

単一の「光子」は干渉するか? 古典粒子、古典波動ではない! 「波」と「粒子」の両立の困難 1光子干渉 2017/3/4 単一の「光子」は干渉するか? 「波」と「粒子」の両立の困難 1光子干渉 古典波動なら両方のスリットを通過するのに問題はない→干渉 古典一粒子(不可分)は両方のスリットを通れない→干渉なし 単一の「光子」は干渉を起こす          古典粒子、古典波動ではない!     ヤング干渉計               マッハ・ツェンダー干渉計

重ね合わせ状態 上のスリットaを通る波動をΨa、下のスリットbを通る波動をΨbとする aまたはbを等確率で通る波動 シュレーディンガーの猫 シュレーディンガー(E. Schrodinger) 量子力学研究の中心人物 量子力学の奇妙さを説明するため  導入した例え話 一粒子の重ね合わせ状態:猫状態

古典的確率と量子的確率の違い 結果は同じでも状態の内容は異なる

2つの状態の違い 波動の強度は振幅の2乗 Ψ*a Ψb+ Ψa Ψ*b :干渉項 (量子的状態には干渉が起こる) →それぞれの強度測定したとき 古典的状態 Ψa (強度|Ψa|2)またはΨb (強度|Ψb|2)なので  平均は(|Ψa|2+|Ψb|2)/2 量子的状態 常に(Ψa +Ψb)/21/2なので 平均は|(Ψa +Ψb)/21/2|2= (|Ψa|2+|Ψb|2)/2+ Ψ*a Ψb + Ψa Ψ*b Ψ*a Ψb+ Ψa Ψ*b :干渉項 (量子的状態には干渉が起こる)

Ψ*aΨb+ ΨaΨ*bは干渉を表すか?

そんなもんが役に立つ? 量子暗号通信 量子コンピュータ 量子テレポーテーション 原理的に盗聴が不可能な通信ができる 現在のコンピュータ(インテルはいってる)で長時間かかる計算を一瞬でできる 量子テレポーテーション 量子的対象(電子、光子など)の状態をそのまま別の場所の量子的対象に移動できる

量子暗号通信(BB84プロトコル) 使い捨てパッド(One-time Pad)暗号 送り手(Alice)と受け手(Bob)とで送るデータと同じ長さのランダムなデータ列(暗号鍵)を共有 送り手は、暗号キーを見ながら、暗号鍵が0ならそのまま、1ならデータをひっくり返して送る 受け手は、暗号キーを見ながら、暗号鍵が0ならそのまま、1ならデータをひっくり返して記録 盗聴者(Charlie)はデータを盗み見しても、どれをひっくり返すのか分からない

量子鍵配送 AliceとBobで、暗号鍵が共有できればよい 暗号鍵は完全にランダム(規則性は皆無) 暗号鍵がCharlieに知られなければよい 量子的重ね合わせ状態を利用して、AliceとBobとで暗号鍵を共有する

BB84プロトコルその1 1984 C. H. Bennet & G. Brassard 送信手続き(Alice) 単一光子の偏光を利用 偏光状態として(縦、横)のペア1と(右斜め、左斜め)のペア2を用いる ランダムなデータ列を2個用意 ランダム列1:(縦、横)にするか(右斜め、左斜め)にするか ランダム列2:ペア中のどちらの偏光にするか

BB84プロトコルその2 受信手続き(Bob) ランダムなデータ列を用意 (縦、横)にするか(右斜め、左斜め)を決めて測定 結果記録

BBプロトコルその3 最終処理 Bob:ペア1かペア2を決めるのに用いたランダムな列の内容を電話でAliceにしらせる Alice:Bobからのランダム列と自分のランダム列1を比較し、一致している列の順番を電話でBobにしらせる 双方、一致している順番のデータのみを残し、他をすてる 残ったものが、共有する暗号鍵

BB84のキーポイント(鍵だけに) 縦偏光、横偏光の光子は、(右斜め、左斜め)のペア2の測定に対しては猫状態 右斜め偏光、左斜め偏光の光子は、(縦、横)のペア1の測定に対しては猫状態 猫状態光子測定の結果は完全にランダム 猫状態でない(非猫状態)光子の結果は完全に一致 非猫状態のみピックアップすればランダムデータの共有ができる(暗号鍵共有)

猫状態以外の量子状態 1光子状態、2光子状態 量子もつれあい状態 「粒子性」と「波動性」が相反する領域 2光子が「量子相関」をもつ状態 2光子が「量子干渉」を生じる 量子コンピュータ、量子テレポーテーションに応用できる

量子もつれあい状態 EPR(アインシュタイン・ポドルスキー・ローゼン)状態 EPRのパラドックス 位置測定 相互作用 運動量測定 粒子1 粒子2 相関 Δp=0 Δx=0 (Δp=0) (Δx=0) 量子力学(不確定性原理)は間違っている? 正解:測定しない側も量子状態確定⇒量子相関

量子もつれあい状態の生成 光パラメトリック効果 偏光エンタングル状態 ω1, e1,k1 非線形 光学結晶 量子 相関 ω2, e2,k2 入射光子: ω0 一方の光子の偏光状態を測定すると   もう一方の偏光状態も確定する

2光子干渉

量子相関 量子干渉による、非古典的ディップ (マンデルディップ) 2光子状態偏光量子相関測定装置