数値気象モデルCReSSの計算結果と 観測結果の比較および検討

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数値気象モデルCReSSの計算結果と 観測結果の比較および検討          岐阜大学工学部                土木工学科                水文気象学研究室                 横山拓也

研究背景 観測では大気現象の立体・平面構造を得ることは難しい CReSSのシミュレーションにより立体・平面構造を得る 大気境界層内の対流構造が明らかになり、地表面付近への 影響を知ることができる

CReSS(Cloud Resolving Storm Simulator) ・坪木和久(名古屋大学地球水循環環境センター) ・榊原篤志(高度情報科学研究機構) ・力学過程の基礎方程式系は非静力学・圧縮系で、地形に沿う座標系の3次元領域で計算を実行 ・地形と初期場および境界条件を与えて予報実験を行える ・乱流クロージャはLES(Large Eddy Simulation)である

研究内容 CReSSのシミュレーションによって得られた大気境界層内の現象などをcaps2002の観測データと比較 ・散布図、相関係数を用いた比較 ・積分スケールによる比較 ・地点間の距離、風向風速を考慮したずらし相関

観測データと計測点配置図 滋賀県北部の水田地帯において面的集中観測 乱流を含んだ地上での気温・風向風速などを観測  CReSSのシミュレーション結果と 比較可能

この条件によりシミュレーションが行われた CReSSの計算条件 2002年11月17日 9時~12時  天気:晴れ 風向の安定 水平一様・周期境界条件 水平方向 40m間隔で200格子→8000m 鉛直方向 最下層10mで80層→2000m  粗度0.017m・アルベド0.2・蒸発散効率0.2     この条件によりシミュレーションが行われた

温位の鉛直分布 ・地表面で暖められた空気が持ち上げられている ・大気境界層上端が700m~800m付近にあり、観測と一致している

温位と鉛直風の平面図 温位:COLOR、鉛直風:等値線 ・温位の変化の境目に鉛直風の境目もある。

散布図および相関係数 CReSS(高度5m) 観測(高度2.45m) 相関係数   0.781              0.457     

積分スケール 積分スケールLを以下のように定義する L 積分スケールを算出するということは、ある時系列が相関をどれだけの間もちつづけていられるかを求めるということ

積分スケール ・CReSSにおいては高度があがるにつれ積分スケールが大きくなっている ・観測の積分スケールのほうがCReSSよりも大きい

最下ポイント(黒)に時間スケールの大きな変動がみえる 地表面付近の時系列 CReSS 観測 黒:高度5m 赤:高度15m 緑:高度25m 黒:高度1m 赤:高度2.45m 緑:高度5.9m 最下ポイント(黒)に時間スケールの大きな変動がみえる

地点間のずらし相関 ずらし相関Rjを以下のように定義する

右図:2点間距離とずらし相関係数が最大値となる距離 地点間のずらし相関 CReSS-● 観測ー▲ 左図:2点間距離とずらし相関係数 右図:2点間距離とずらし相関係数が最大値となる距離

CReSSは理想的なシミュレーションが行なわれたにも関わらず、観測結果でみられたいくつかの特徴を再現している 結論 ・地表面に近いポイントでの積分スケール値の変化のパターンは似ている ・ずらし相関係数の落ち方に似た傾向がみられたが、 CReSSのほうが傾向が強い CReSSは理想的なシミュレーションが行なわれたにも関わらず、観測結果でみられたいくつかの特徴を再現している

観測器具

地表面付近の散布図(CReSS) 高度5m 高度15m

温位と水蒸気量 CReSS 観測