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1 個人情報保護について 弁護士法人龍馬 弁護士 舟木 諒,板橋俊幸. 情報化社会 □ 個人情報保護法の概要 2003 年(平成 15 年) 5 月 23 日成立, 2005 年(平成 17 年) 4 月 1 日全面施行。 ◆成立の背景 プライバシー侵害 国際上の問題 住民基本台帳問題 個人情報漏洩問題.
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第5時限 研究活動と知的財産(2) 秘密情報と守秘義務 第5時限 研究活動と知的財産(2)        秘密情報と守秘義務

第5時限 目次 5-1 秘密情報とは何か 5-2 守秘義務とは何か 5-3 共同研究、受託研究

守秘義務のない他人に内容を理解できる程度に知られるおそれがないこと 5-1 秘密情報とは何か 新しい物理・化学法則 研究開発 新しい情報を取得 実験データ データ取得のノウハウ 新しい技術的なアイディア 秘密として管理 する必要あり 新規の物質 秘密とは・・・・ 〔狙い〕 秘密情報とは何か、なぜ必要であるか、守秘義務とは何か、それぞれについて説明する。 〔説明〕 秘密情報の管理が、理系の学生にとって、学生時代のみならず、研究者やエンジニアとして社会に出てからも極めて重要であることを説明しながら、実際の事例を通じて学生の当事者意識を高める。特に在学中、在職中だけではなく、所属を離れてからも一定の制限がかかることに注意してもらう。 守秘義務のない他人に内容を理解できる程度に知られるおそれがないこと 知られるおそれがあると「新規性」喪失により特許されなくなる。 ※通常、研究者には、その所属する企業や機関から守秘義務が課されている 4

秘密情報管理の重要性 5-1 秘密情報を漏らすと重大な損失のおそれ 他の研究者に発表される 特許されない 守秘義務違反 情報が秘密でなくなると・・・ 他の研究者に発表される 研究の成果を漏らすと、それを他の研究者が見た場合、先に学会に発表されるなど、研究成果を横取りされるおそれがある。 特許されない その発明については、新規性がなくなり特許を取得することができなくなる。その結果、得られるはずだった独占利益やライセンス収入も得られない。契約違反とは別に考えること。 〔狙い〕 ここで、情報管理はなぜ必要であるかを理解させるのが目的である。秘密を漏らすとどのようなことになるのかを説明し、重要性を認識させる。 〔説明〕 秘密でなくなる三つの例を挙げて、このような事情が起こったら、どのような効果をもたらすのかを説明する。 守秘義務違反 経営上の秘密を他社に知られることで営業上企業が重大な損害を被るおそれがある。故意または過失によって秘密を漏らした研究者は契約違反であり、損害賠償責任を負う。 秘密情報を漏らすと重大な損失のおそれ 5

秘密維持の必要な場合 5-1 企業秘密 営業秘密 発明 学会等での発表可能 特許出願 秘密として管理 出願まで 秘密状態を維持 具体例 NO YES YES NO 特許出願 企業秘密である限り永久に秘密として 管理する 秘密として管理 YES 出願まで 秘密状態を維持 出願するか否かの判断 〔狙い〕 秘密情報とする判断とその対応を理解する。 〔説明〕  出願するか否かの判断では、もちろん、出願には手数料等の費用がかかること、特許要件を満たさないと登録されないこと、会社の特許取得状況などをも考慮する。  そのようにして、特許出願を断念したものについても、企業秘密としての管理の必要性を検討することになる。 ※参考事例 事例:遺伝子スパイ事件(東京高判平成16年3月29日判時1854号35頁) 研究資料を日本に持ち帰り、損壊した行為が米国経済スパイ罪に該当するかが問題 特許出願 → 出願から20年間特許権によって独占可能 企業秘密 → 期限はないが情報漏えい時の保護は弱い 具体例 医薬品(出願)→特許権満了後に低価格の後発品が出る(ジェネリック) 食品会社のレシピ(企業秘密)→厳重に管理すれば長年優位性を保てる

事業活動に有用な情報を秘密することで他の競業者に対し優位に立つため 5-1 営業秘密とは 秘密として管理することは重要! 事業活動に有用な情報を秘密することで他の競業者に対し優位に立つため 研究成果のインセンティブを保障するため + 不正競争防止法上の営業秘密の保護については、同法上の「営業秘密」の定義を満たすものが、その対象となり得る。(不正競争防止法第2 条第6 項) 企業の行動を法的に支援する ①秘密管理性 ②有用性 ③非公知性 三つの要件全てを満たすことが同法に基づく保護を受けるために必要である。 〔狙い〕 営業秘密の定義について理解させる。 〔説明〕  営業秘密の定義について説明する。  不正競争防止法上の営業秘密は、不正競争防止法2条6項に おいて、「秘密として管理されている〔①秘密管理性〕、生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報〔②有用性〕であって、公然と知られていないもの〔③非公知性〕をいう。」と定義されている。

大学は学術的側面を、企業は営利的側面を重視する傾向がある 5-1 研究発表と秘密情報 ①研究成果の二つの側面 学術的側面 営利的側面 研究成果 論文を学会誌等に掲載する、学会で発表するなど、先に発表した者の成果とされる 特許出願まで、または企業秘密として管理する限り秘密として管理しなければならない 情報管理には、このように相反する二つの側面を考慮する必要がある 組織の性格上 〔狙い〕 情報管理は組織の性格によって、管理手段も大きく変わるため、学術的側面と営利的側面の違いを明らかにする。 〔説明〕 大学と企業の性質の違いによって、情報管理には、このような相反する二つの側面を考慮する必要がある。両者の違いを説明した上で、研究発表と秘密管理の関係を理解させる。 大学は学術的側面を、企業は営利的側面を重視する傾向がある 相手の立場を理解したうえで情報の管理をする必要がある。 特に共同研究開発では、立場の異なるものが研究に関わるので注意する

研究発表により新規性がなくなると、原則として、特許を取得することができない 5-1 研究発表と秘密情報 ②特許出願と研究発表(出願を先にするのが原則) 研究発表により新規性がなくなると、原則として、特許を取得することができない 特許出願は、研究発表の前にできるように出来るだけ早く 研究発表は、特許出願がなされるまで待つ 共同研究の場合、企業は大学側研究者の発表の意向を確認し、発表する場合には、優先的に出願手続きをする必要がある。 実際、大学と企業の共同契約では、成果を公表する際は、事前に相手方の同意を得るという取り決めがなされるのが通常である。 〔狙い〕 研究発表と特許出願のタイミングを理解する。 〔説明〕 特許出願を行うタイミングは、基本的には、研究発表(論文、学会など)に先駆けて行う必要性があることから、共同研究を行っている場合などには、特に双方の情報共有を密にすることが重要であることなど、時系列など事例を提示して説明する。 大学側は、研究発表の希望、発表の時期について、企業側に承認を得る必要がある。実際に発表する場合は、出願手続きが完了していることを確認する

復習:新規性喪失の例外 5-1 本人 他人 発表と出願のタイミング 対 象 期間 6月 必要 1年 不要 新規性喪失の例外の適用 が受けられる場合 (特許法第30条) 発表と出願のタイミング 新規性喪失の例外規定 国際比較 本人 他人 対 象 期間 出願時手続 日本 すべての公知行為 (特許公報等による公開を除く) 6月 必要 米国 1年 不要 欧州 限定された国際博覧会 中国 所定の学術会議または技術会議 韓国 特許を受ける権利を持っている人 (発明者や発明者から権利を譲渡された者) の行為による ○刊行物やインターネットを通じた発表 ○研究集会(学会)での発表  や博覧会への出品 ○TV・ラジオでの公表 ○製品の販売    など 論文等で発表 6月以内 他人の出願 30条適用出願 30日以内 〔狙い〕 新規性喪失の例外規定がどのようなものか、また例外規定により出願することの危険性や限界について理解させる。 〔説明〕  新規性喪失の例外規定について、出願前に、自分で論文発表などにより公表してしまった場合でも、発表から6月以内であれば、出願と同時に申請を行うことで、その発表によって新規性が否定されないという取り扱いがされる制度であることを解説する。  そして、この新規性喪失の例外は、あくまでも例外的救済であって、危険性があることを強調して説明する。  すなわち、発表から出願の間に、第三者が同内容の発明を出願した場合には、特許を取ることができない場合があることや、この制度が各国により異なるものであり、特にヨーロッパには、このような例外がないため、特許を取得できない可能性が高いことを強調して説明をする。 証明書類の提出 その結果 発明が初めて 公知となる ○本人の出願→他人の先出願と同一であれば拒絶される。 ○他人の出願→論文が公知技術となり拒絶されるが、   本人も特許が取れない場合がある。

自社にない技術があるA社と共同研究したい。 その技術が本当に自社の事業に役立つか詳細な情報が必要 5-2 守秘義務とは 自社にない技術があるA社と共同研究したい。 その技術が本当に自社の事業に役立つか詳細な情報が必要 秘密保持契約を締結 〔狙い〕 秘密保持契約を結ぶ理由を具体的にイメージしてもらう。 〔説明〕 何故秘密保持契約をしておかないといけないのか、具体的に説明を行う。 秘密保持誓約書に署名 秘密を守る義務が発生! 「業務上・職務上知りえた秘密を他に漏らしてはならない」という義務。 守秘義務とは

= × × 守秘義務違反となる判断要素 5-2 ☆守秘義務に違反しないために 所属する機関の情報管理ルールに従う 場所 ・資料の持ち出し禁止 ・カメラ(カメラ付携帯)持ち込み禁止 ・社内からのメール発信禁止 ・オンラインPCへのデータ入力の禁止 ・USBメモリの持ち込み禁止 ・ファイル交換ソフトのインストール禁止 ※ルールの一例(組織等により異なる) 不用意な情報漏えいが多発している。 細かいルールから遵守することが肝要 ☆守秘義務違反になるかどうかの判断要素 = ※下記の要素の組み合わせで、守秘義務違反となるかどうか考えてみよう。 〔狙い〕 守秘義務を守ることの重要さを認識させるのが目的である。 〔説明〕 守秘義務はどのような場面で存在しているのかを説明し、守秘義務に違反しないためにどのような点を気を付ける必要があるかを例示する。 家族 友人、恋人 研究者 同僚 共同開発の研究者 ライバル会社の人 相手 ・家で ・研究室(大学)で ・研究室(企業)で ・道端で ・トイレ(大学・企業)で 場所 研究テーマ 進み具合 具体的な内容 内容 × ×

情報漏洩に該当する行為 5-2 ●漏洩に該当する行為とは? ※漏洩すると損害賠償責任が発生! 〔狙い〕 秘密情報を、大学の承諾なく外部に持ち出すこと。 秘密情報を、第三者(正当な権限を有しない大学の教職員等を含む。)に対して漏洩、開示すること。 秘密情報を、業務遂行の目的以外で使用、流用すること。 秘密情報を、方法の如何にかかわらず複製・複写すること。 〔狙い〕 秘密情報、秘密漏洩行為について理解する。 〔説明〕 特に漏洩行為についてイメージを持ちやすいよう具体例を掲載した。 ※漏洩すると損害賠償責任が発生! ・営業秘密の不正取得及び不正取得された営業秘密の使用又は開示行為については、不正競争防止法上、差止請求権(第3 条)、損害賠償請求権(第4 条)、信用回復措置請求権(第7 条)が規定されている。 ・契約法上の観点からは、契約違反の場合における、損害賠償義務を規定することもある。

共同・受託研究契約の際に留意すべきこと 5-3 着想 研究 発明 出願 権利発生 誰が考えたか 誰が開発したか 誰が完成させたか 誰を発明者として出願するか (★誰が「発明者」となるか) 誰が権利者となるか 〔狙い〕 共同・受託研究においては、その発明者や権利の帰属等について紛争が生じやすいこと、その予防として、事前に契約やガイドライン等で明示しておくこと、予防的解決の重要性について理解する。 〔説明〕  着想から権利化までのフローチャートを示した。その流れの中で、誰が発明者となるか、誰が権利者となるかが争点になりやすいことについて考察させる。 発明が完成するまでには、着想・研究開発・完成までの道のりを経るが、各段階に関わる者の内、誰が「発明者」および「権利者」となるか、その判断が困難であることを理解させる。  その困難さから、そういった事項について事前に取り決めておくことが重要であるということについて思いを至らせる。 ※参考事例 事例:ガラス多孔体事件(知財高判平成20年5月29日判時2018号146頁) →教授・学生・准教授が共同で実験を行ったが、教授は除外された。 事例:University of Pittsburgh v. Mare Hedrick(国際商事法務Vol.38,No.1 111頁) 発生した秘密・機密をどのように扱うか。 (秘密保持契約、就業規則、ガイドライン) MTA(Material Transfer Agreement、研究材料提供協約等)  ※いかに予防的に解決するかが重要

MTA (Material Transfer Agreement) (研究材料提供協約)について 5-3  MTA (Material Transfer Agreement) (研究材料提供協約)について 共同研究契約 研究 成果 +研究材料の移転(貸借、分譲、譲渡など)に関する合意 研究材料、物質の取扱いに関する事項 研究の成果物の取扱いに関する事項 成果 論文、知的財産権の取扱いに関する事項 MTA 〔狙い〕 MTA(研究材料提供協約)について理解してもらう。 〔説明〕  共同研究における研究材料や成果物などは、それ自体の中に、共同研究において当事(研究)者が提供した秘密を含んでいる。  これらは、物としての実体を持っていて持ち運び等が容易であって、特に取り扱いに注意をする必要があることから、特別に取り扱いに関する取り決めを用意する。  その取り決めをMTAと総称している。 共同研究等の際、研究機関間で研究材料となる物質の移転(貸借、分譲、譲渡など)を行う際に、機関間で取り交わされる契約のことをいう。 物質自体の扱いに関する条項の他、研究の成果として得られた論文や知的財産権の取扱い及び帰属などが定められる。 例えば生物学・医学の分野においては、マウスなどの実験動物、遺伝子、培養細胞(細胞株)など様々な対象の移転に際して契約が交わされる。