(社)地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 藤 内 修 二

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(社)地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 理事 藤内 修二
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(社)地域医療振興協会 ヘルスプロモーション研究センター 藤 内 修 二 変革の時代に求められる保健活動 (社)地域医療振興協会  ヘルスプロモーション研究センター       藤 内 修 二

情勢分析  ~今,何が起こっているのか?~

国と地方の財政の破綻 国と地方を合わせた公債残高 695兆円(平成15年度末) 税収の実に10年分 国と地方を合わせた公債残高   695兆円(平成15年度末) 税収の実に10年分 行財政改革による歳出の縮小   合併の有無に関わらず,避けて通れない! 大きな政府から小さな政府へ   民間でできることは民間へ 公務員を減らすことによる歳出の削減   市町村合併もそれが狙いの一つ 市町村合併による基礎自治体の体力増強   地方分権の受け皿をめざしているが・・ 「団体自治」ばかりが強調され,「住民自治」は軽視されている

三位一体の改革 権限と財源を地方へ ①個人住民税と地方消費税の拡充による税源の委譲 ②地方交付税制度の廃止と新財政調整制度の導入 ③政策誘導・奨励的補助金の廃止  減額した補助金の8割程度を地方に税源委譲

全国知事会など地方6団体の要望 補助金の廃止を提案 2年間に厚労省関係で9,340億円 補助金の廃止を提案 2年間に厚労省関係で9,340億円 一般財源化され,保健事業をどこまでやるかは地方自治体の判断にかかっている  保健計画が事業の根拠として重要になってくる! 健康の地域格差の増大が懸念される  同じ県内でも平均寿命が3~4歳も異なる現実

保健事業内容の自治体間の違い 国から言われるだけの事業やってきた自治体 補助金廃止に伴い,保健事業をどう組み立てる? 国から言われるだけの事業やってきた自治体  補助金廃止に伴い,保健事業をどう組み立てる? 地域の健康課題を明確にして取り組んできた自治体  補助金が廃止されていても,保健計画で必要な  事業が明確になっている

地域支援事業における介護予防事業

地域支援事業 今までの事業の再編 再編 介護給付費の3%を上限 財源:保険料と公費で折半 地域支援事業計画を策定 老人保健事業 介護予防・ 地域支え合い事業 在宅介護支援 センター運営事業 再編 地域支援事業 財源は実質2~3割の減少に! 介護給付費の3%を上限 財源:保険料と公費で折半 地域支援事業計画を策定

従来の基本健診に,栄養状態, 運動器,口腔機能の低下を把握 65歳以上の高齢者 高い       生活機能       低い 生活習慣病予防・介護予防検診 従来の基本健診に,栄養状態, 運動器,口腔機能の低下を把握 活動的な状態 生活機能低下状態 要介護・要支援状態

基本的な考え方 高い 生活機能 低い 一次予防 二次予防 三次予防 活動的な状態 生活機能低下状態 要介護・要支援状態 高い       生活機能       低い 活動的な状態 生活機能低下状態 要介護・要支援状態 新予防給付 介護給付の提供 健康教育的メニュー  転倒予防  運動指導  アクティビティデイ 地域包括支援センター 中学校区(人口2万人)に1ヶ所 機能訓練的メニュー  IADL訓練  筋力向上訓練  食生活改善 主任ケアマネジャー 保健師,社会福祉士 が利用計画を作成 サービスは民間業者に委託が可能 一次予防 二次予防 三次予防 果たして一次予防や生活習慣予防に取り組めるか?

地域支援事業への再編に伴う 財源の削減のしわ寄せ 現行の老人保健事業の基本健診診査に要する 費用が狙われている!?    65歳未満の生活習慣病予防の部分は,    どうなるのだろうか? 生活習慣病予防や健康増進に要するマンパワーや予算は確保できるのか?

次世代育成支援対策推進法と母子保健事業 次世代育成支援対策地域行動計画に母子保健計画が吸収されることになった この計画の策定にどれくらい母子保健担当者は関わっているのだろうか? 児童福祉サイドと「協働」での策定 35.1%の自治体 地域行動計画に,母子保健計画の内容がどれくらい引き継がれるだろうか? 母子保健事業の後退の危機!?

母子保健担当者が児童福祉担当課に 移されるのも時間の問題? 母子保健から児童福祉に移された事業   思春期における保健福祉体験事業(平成15年度)   乳幼児発達相談指導事業(平成16年度) 保健師は児童福祉担当課で虐待事例の「後追い」をすることに!? 健診は医療機関委託で,本来の母子保健事業は? 保健事業「解体」の危機!?   老人保健は「介護予防」に吸収され,   母子保健は「次世代育成」吸収される

この流れの中で保健事業をどう進めるか? 流されないための鍵は?

1.「住民自治」の推進 どんなにきめ細かなサービスを提供しようとしても,公的なサービスには財源的な制約が 住民自身が地域の問題を自分たちで解決しようと する「住民自治」が重要になる! 住民はサービスの「受け手」だけではなく,地域づくりを進めるパートナー 「自助」「共助」の仕組みづくりがますます重要に 健康でいきいき暮らせる地域づくりに向けての住民組織活動の育成と支援がより重要 市町村合併に伴い,住民組織活動も後退の傾向に

「関係性」の回復が鍵を握る 次世代育成支援も介護予防も,地域の「関係性」の回復が不可欠 育児不安,閉じこもりなどの問題は「関係性」の喪失が大きな要因 校区単位などでの健康づくりや介護予防に取り組める仕組みづくりを

2.法定計画の策定 次世代育成支援地域行動計画も健康日本21地方計画(健康増進計画)も法定計画 自分達がやりたい事業を法定計画に盛り込もう 次世代育成支援地域行動計画も健康日本21地方計画(健康増進計画)も法定計画   自分達がやりたい事業を法定計画に盛り込もう 法定計画の策定に今ひとつ消極的な現状   「策定のための時間がない」   「市町村合併をするので」   「主管課が違う」・・ このままでは,老人保健事業も母子保健事業もやりたい事業がほとんどやれないことになりかねない

健康増進計画の策定 健康増進計画を市町村合併のいかんに関わらず,17年度中には策定しよう 合併直前でも策定することで,自治体の地域特性を明確にすることになる 住民と一緒に策定することにより,「協働」で地域の健康づくりの仕組みを作ろう   合併後にこうした仕組みを作るのは容易ではない 来年度策定予定の地域支援事業計画とリンクさせることも重要

地域支援事業計画の位置づけ この重なった部分が 地域支援事業計画 健康増進計画 (健康日本21) 介護保険事業計画

次世代育成支援対策地域行動計画の策定 今からでもできることがある! 住民と一緒に考える機会の提供   周知を兼ねた子育てフォーラムなどの開催      → 住民との「協働」を促す仕組みの検討  保健,福祉,教育などとの連携を促すための仕組みの提案   「次世代育成」という新しい概念が希求する   「総合性」を担保しよう アウトカム指標の設定を提案  行政評価システムの流れで,事業の成果を示せる  ことが求められている

3.アウトカム指標 アウトカム指標を掲げることを躊躇しない これがあるから事業の見直しができる! アウトカム指標を掲げることを躊躇しない   これがあるから事業の見直しができる! 「健康日本21」の中間評価結果に,アウトカム指標を掲げることに及び腰になる自治体? 目標値をいくらにするという議論より,何がアウトカム指標として重要なのかの議論を 要支援・要介護高齢者数がアウトカムでいいのか?

3.アウトカム指標 アウトカム指標の変化をもっと見えるように工夫を 要支援・要介護率は増える一方 高齢化の進行で減ることは期待できない アウトカム指標の変化をもっと見えるように工夫を   要支援・要介護率は増える一方     高齢化の進行で減ることは期待できない 80~84歳の要介護率(要介護2以上)の推移を見る   こうした率が下がっていることで,健康づくりや   介護予防の効果をアピール アウトカム指標も多面的な評価ができることが重要 エンパワメントの評価も重要(自信を持って,自分の人生を生きているか?) 生活習慣の改善の指標,学習の指標,組織・資源・環境の指標も

図1 保健活動の評価指標の構造 Quality of Lifeの指標 健康指標 生活習慣や行動の指標 組織・資源 環境の指標 学習の指標 図1 保健活動の評価指標の構造 Quality of Lifeの指標 生活満足度や生きがい,エンパワメント 健康指標 健康寿命,死亡率や有病率,有訴率 生活習慣や行動の指標 健康的な生活習慣,健診の受診 学習の指標 知識や態度 健康づくりの技術 組織・資源 環境の指標 家族や周囲のサポート 住民組織等の活動状況 社会資源へのアクセス 保健事業の質と量の指標 普及啓発事業の回数,訪問や相談件数 関係機関との連携や住民参画の状況 基盤整備の指標 マンパワーや施設の整備 協議会等の設置,制度づくり

エンパワメントと生活習慣 このサイクルが続くことがゴール! 資料8ページ 好ましい生活習慣 環境への働きかけ 自信の回復(エンパワー) 自己効力感の向上 首尾一貫感覚の回復 健康状態の改善 心地よさ,周囲の評価 このサイクルが続くことがゴール!

4.「継続性」 保健活動では健康な状態から介護状態まで一連の経過を見ることができる こうした継続的な関わりができることが「介護予防」を考える上で,最大の強み 事業の評価も短期的な評価ではなく,長期的な評価ができる 事業対象者の2年前,1年前,1年後,2年後の状態を評価ができる

5.個別のマネジメントから 地域のマネジメントへ 5.個別のマネジメントから         地域のマネジメントへ 個別のケースへの支援からその背景を探り,地域を変える取り組みや仕組みづくりを検討 それが保健師の最大の強みであり,「専門性」 個別のマネジメントから地域のマネジメントへ  地域保健法以後,個別のマネジメントが主流に?

21世紀における保健所10の機能 健康問題の発掘及び顕在化能力 健康情報センター機能 市町村の機能でもある! 健康な地域づくり計画の策定支援と評価 健康を支援する環境づくりの促進 地域の健康資源(人材,組織)の開発 関係機関との連携と調整 地域の公衆衛生活動に関する「質の保証」 地域の健康問題に即したモデル的取り組み 健康危機管理機能(感染症,災害,事故) 公衆衛生研究(参加的行動研究など) 地域のマネジメント 市町村の機能でもある!

地域のマネジメント機能の強化 計画の策定に先立って,地域の課題を分析する 計画の推進のための関係機関・団体との連携の推進 計画の進行管理・評価のための情報収集をルーチンワークの中でできる仕組みづくり こうした地域のマネジメント機能の重要性を事務職も学ぶこと!

6.プロセス評価の重視 目標の達成に向けての取り組みの経過を評価することが重要 アウトカム指標とプロセス評価の指標が,リンクしていることがポイント アウトカムが改善しなかった場合に,どのプロセスを見直せばいいのかがわかる

プロセス評価の指標例 既存の事業の見直し 目標を明確にして,事業内容を見直したか 既存の事業の見直し  目標を明確にして,事業内容を見直したか 関係機関・団体との連携  情報の共有,共同事業の実施状況  資源(人,モノ,金)の共有 住民の参画状況  どのような形で住民の声が計画や事業内容に  反映されているか 実際の事業の実施状況(回数,参加者数) 事業の手ごたえ(参加者,スタッフの感想)