市中肺炎.

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市中肺炎

市中肺炎の定義 FDA(1988年) 48時間以内に新たに出現した胸部X線写真上の浸潤影が必須であり以下の7項目のうち2項目を満たす。 ①咳 ②膿性痰 ③聴診により肺雑音または肺硬化の陽性所見 ④呼吸困難または頻呼吸 ⑤発熱(>38℃)または低体温(<35℃) ⑥末梢白血球増加(10000/mm3) またはsegの増加(>15%) または多核白血球の減少(<5000/mm3) ⑦低酸素血症(PaO2<60Torr)

市中肺炎患者の分類 外来管理可能な市中肺炎患者 Ⅰ群 60歳以下合併症なく外来管理できる市中肺炎 Ⅱ群 60歳以上か合併症があるか、の患者で Ⅰ群 60歳以下合併症なく外来管理できる市中肺炎 Ⅱ群 60歳以上か合併症があるか、の患者で 外来管理可能な市中肺炎患者 Ⅲ群 入院を必要とするが、集中治療室は 必要としない市中肺炎患者 Ⅳ群 集中治療室が必要な重篤な市中肺炎患者

Ⅲ群/Ⅳ群を考慮する患者因子 ①年齢65歳以上 ②合併症あるいは他の所見の存在 (気管支拡張症、嚢胞性線維症)    a COPD、慢性の器質的疾患        (気管支拡張症、嚢胞性線維症)   b 糖尿病 c 慢性腎不全 d CHF e 慢性肝疾患     f 市中肺炎発症1年以内の入院歴 g 誤嚥の疑い     h 精神状態の変調   I 脾臓摘出後 j 慢性アルコール摂取、栄養不良

重症肺炎の定義 ①呼吸数が30回/分以上 ②重篤な呼吸不全 P/F ratio<250Torr以下 ③人工呼吸器の適応 ④胸部X線写真:両側性肺陰影、多葉にわたる陰影、 24時間以内に陰影領域が50%以上増加 ⑤ショック(DBP<60㎜Hg あるいは、SBP<90㎜Hg) ⑥4時間以上の血管収縮薬の必要性 ⑦尿量20ml/h以下、あるいは1日尿量80ml/4h以下 しかも、これらの所見を説明する理由がほかに見つからない、透析の適応のある急性腎不全 以上の所見がある場合は注意が必要

市中肺炎の起因菌 肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、 モラキセラ、黄色ブドウ球菌、 好気性グラム陰性桿菌、結核菌 マイコプラズマ、クラミジア レジオネラ 呼吸器ウイルス OCHデータ(H12~H13) H.Flu 23% Pneumococcus 22% Klebsciella 7% Moraxellea 6% Mycoplasma 6% P.aureginosa 5% Chlamydia 3% 同定できず  37%

尿中検査の有用性 肺炎球菌尿中検査 レジオネラ尿中抗原検査 感度 70.4-80.4% 感度90% 特異度99%  感度 70.4-80.4%  特異度 89.7-98.8% 製造元報告(日本国内) 喀痰培養法との相関      感度 61.3%,特異度 72.1% 血液培養法との相関      感度 80.0%, 特異度 73.7% 尿中に排出される肺炎球菌莢膜抗原は,通常,症状出現後3日以降に検出される.また,症状が改善しても2ヶ月以上にわたり尿中への排出されることがある. レジオネラ尿中抗原検査 感度90% 特異度99% 比較的安価で数時間以内に結果が出る 抗生剤投与後でも数日間は陽性となるのでempiric therapyを受けた患者でも有用。 培養検査に比べると、利点が多い。    時間がかかる。    培養が難しい。    どの施設でもできる検査ではない。     など

グラム染色の有効性   sputum Gram stain and culture は、入院患者全例と 外来患者で耐性菌(PISP等)の保菌が疑わしい症例に対して行う。ただし、グラム染色に関わらず治療はempiricに迅速に行う。 The 2001 American Thoracic Society (ATS) ガイドライン   Gram stain and culture は入院患者の場合は抗菌剤をnarrowにすることや耐性菌を明らかにするために行うが、外来患者に関しては有用ではない。          The 2003 Infectious Diseases Society of America (IDSA)ガイドライン

市中肺炎患者のRisk評価 ①~④の得点を合計する 以下の条項を1つでも満たさなければ、classⅠ 50歳以上                                                   悪性疾患 うっ血性心不全 脳血管障害 腎疾患 肝疾患 意識障害 HR≧125 RR≧30 BP≦90 BT<35℃、≧40℃ 上記を1つでも満たした患者で、どの程度のriskを持っているか、                           ①~④の指標の合計から判定する。                                        ①患者背景 ②合併症 ③理学的所見 ④検査所見 ①患者背景 男性  +(年齢) 女性  +(年齢-10)            施設入所者 +10 ③理学的所見 精神症状の悪化 +20 呼吸数30回/分以上 +20 BP<90mmHg +20 BT<35℃ or >40℃ +15 HR>125/分 +10 ④検査値 PH<7.35 +30 BUN>10.7 +20 Na<130mEq/ℓ +20 glu>250mg/dl +10 Ht<30% +10 PaO2<60mmHg +10 胸水の存在 +10 ②合併症 悪性腫瘍 +30  肝疾患 +20  CHF +10   脳血管障害 +10 腎疾患 +10 ①~④の得点を合計する

市中肺炎患者のRisk評価 危険度 点数 risk 患者数 死亡率 推奨 Ⅰ 点数なし low 3034 0.1 外来 Ⅱ ~70 low 5778 0.6 外来 Ⅲ 71~90 low 6790 2.8 入院 Ⅳ 91~130 mod 13104 8.2 入院 Ⅴ 130~ high 9333 29.2 入院 Pneumonia patient outcomes research team (PORT) score NEJM 336 243-250 1997

抗生剤をいつ入れるか? EC来院後、8時間以内に抗生剤を投与すれば、 30日後のmortalityを15%減少させる。 Meehan TP JAMA 1997;278:2080-2084 EC来院後、迅速に適切な抗生剤投与を行う と、入院期間を短縮する事ができる。 David S Battleman Arch Int Med 2002

DCの目安 ① バイタルサインが24時間安定 BT≦37.8度、RR≦24、HR≦100、sBP≧90、 ② 経口抗生剤が内服可能  ① バイタルサインが24時間安定   BT≦37.8度、RR≦24、HR≦100、sBP≧90、 SpO2≧90%(RA)またはいつものHOTの酸素量  ② 経口抗生剤が内服可能  ③ 適切な量の水分と栄養の摂取が可能  ④ 精神状態が正常(いつもどおり)                      その他に入院が必要な活動性のある       臨床的・精神社会的問題がない NEJM 347 2002

肺炎球菌ワクチン 肺炎球菌ワクチンは、高齢者の肺炎球菌性敗血症の リスクを減少させるが、肺炎球菌性肺炎の感染を予防 する効果はない。                      N Engl J Med 2003; 348:1747-1755, May 1, 2003 肺炎球菌ワクチン接種による肺炎球菌性肺炎の 予防効果は見られないが、以下のリスクを有する サブグループでは有意な予防効果が認められる。  免疫不全、ワクチン接種1年以内に免疫抑制療法を受けている  がん患者、全身性の膠原病、アルコール依存症  心臓または肺の疾患を有する施設入所者または寝たきり患者                       Am J med 1997 103:281-290