導波路放出光解析による量子細線の光吸収測定 東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 岡田高幸
Chapter 1 序論 半導体T型量子細線とは 論文の構成
半導体T型量子細線とは 導波路の内部に平行に細線が埋め込まれている 構造が制御しやすい反面、作製が困難で品質が成長条件に大きく依存 さて、まずT型量子細線について簡単に説明をします。 まず、MBE装置内でガリ砒素基板上の(001)面に量子井戸を作製します。 次に試料をMBE装置から取り出した後、研磨、傷入れをおこない、今度はターゲットのほうに(110)面を向ける形でMBE装置に配置します。 そして、MBE装置内でへきかいし、 (110)面にもうひとつの量子井戸を作製します。 (クリック) 量子井戸の光線部分を拡大してみるとこのようになっています。 量子井戸の交点部分に電子と正孔が閉じこもっており、 スクリーンに垂直な方向に量子細線が形成されます。 我々は、こちらの量子井戸をTの腕という意味で、アーム井戸、 こちらの量子井戸をTの幹という意味で、ステム井戸と呼んでいます。 この構造のメリットは構造が制御しやすいことで、 デメリットは作製が困難であり、品質が成長条件に大きく依存することです。 導波路の内部に平行に細線が埋め込まれている 構造が制御しやすい反面、作製が困難で品質が成長条件に大きく依存 L. N. Pfeiffer et al., APL 56, 1679 (1990).
論文の構成 序論 本研究の背景と目的 T-細線の試料構造と発光スペクトル 低温における光吸収スペクトル 光吸収スペクトルの温度依存性 まとめ
Chapter 2 本研究の背景と目的 顕微透過測定実験 点励起導波路放出光フリンジ解析実験 Hakki and Paoli法とCassidy法 本研究の目的
顕微透過測定実験 Y. Takahashi, et al APL. 86 243101(2005)
点励起導波路放出光フリンジ解析実験 早水裕平, 博士論文(2005)
Hakki and Paoli 法とCassidy法 B. W. Hakki and T. L. Paoli, J. Appl. Phys. 44, 4113(1973) D. T. Cassidy, Appl. Opt. 22, 3321(1983) ; D. T. Cassidy, J. Appl. Phys. 56, 3096(1984)
本研究の目的 透過測定法では、その技術的な難しさのためにHe温度と室温の中間温度での吸収スペクトルが得られていない。 導波路放出光フリンジ解析法では、吸収係数の決定精度が悪い。 導波路放出光を利用した、透過測定法に替わる簡便な実験手法の開発 He温度-室温にわたる温度領域での励起子吸収スペクトルの測定
Chapter 3 T-細線の試料構造と発光スペクトル
3周期T-細線の作製方法 M. Yoshita, et al JJAP. 40, L252(2001) L. N. Pfeiffer, et al APL. 56, 1697(1990)
3周期T-細線の試料構造
発光スペクトル(細線に垂直方向にスキャン) 発光スペクトル(細線に垂直方向にスキャン)
発光スペクトル(細線に平行方向にスキャン)
発光スペクトル(励起強度依存性) arm exc. stem exc.
Chapter 4 低温における光吸収スペクトル 実験原理 実験方法と計算機シミュレーション 導波路放出光の測定 吸収スペクトルの導出 5Kにおける吸収スペクトル
実験原理
実験方法と計算機シミュレーション
導波路放出光の測定
吸収スペクトルの導出
5Kにおける吸収スペクトル
Chapter 5 光吸収スペクトルの温度依存性 100Kにおける吸収スペクトル 200Kにおける吸収スペクトル 297Kにおける吸収スペクトル 吸収スペクトルの温度変化
100Kにおける吸収スペクトル
200Kにおける吸収スペクトル
297Kにおける吸収スペクトル
吸収スペクトルの温度変化Ⅰ
吸収スペクトルの温度変化Ⅱ ① 測定したピークエネルギーと励起子吸収ピークエネルギーの理論値が一致した。 ① 測定したピークエネルギーと励起子吸収ピークエネルギーの理論値が一致した。 ④ ピークの積分強度が温度に対して保存した。 この吸収ピークの起源は1次元励起子である。 同一試料を用いて5K-室温にわたる励起子吸収の温度依存性を測定することができた。
Chapter 6 本論文のまとめ
まとめ 導波路放出光を利用した光吸収測定方法を開発した。 精度の良い結果を得るための実験条件を明らかにした。 同一試料を用いて1次元励起子吸収の温度依存性を観測することに成功した。